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宇多丸、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』を語る!【映画評書き起こし 2018.4.13放送)

アフター6ジャンクション

実際の放送音声はこちらから↓

宇多丸:

さあ、ここからは土曜の夜から金曜夕方にお引越ししてきた週間映画時評ムービーウォッチメン。このコーナーでは前の週にランダムに決まった映画を私、宇多丸が自腹で映画館にて鑑賞し、その感想を20分に渡って語り下ろすという映画評論コーナーです。私、昨日も深夜、行ってまいりました。それでは今夜評論する映画は、こちら! 『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』

Guns N’ RosesWelcome To The Jungle』が流れる)

このガンズ・アンド・ローゼズの「Welcome To The Jungle」が(映画の)最後に流れて。この、日本題になると冠詞を略すのが逆に(言いづらいところもあって)……Welcome To The Jungle」って言い慣れちゃっているからあれなんだけど。(なので、今日の評のなかでも)ひょっとしたら「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」って言っちゃうかもしれないですけども。1995年の映画『ジュマンジ』の続編で、『ワイルド・スピード』シリーズのドウェイン・ジョンソンが主演を務めるアドベンチャーアクション。ふとしたことから『ジュマンジ』という古いゲームソフトの中に入り込んでしまった4人の高校生たちが、ゲームの中から脱出するため冒険の旅を繰り広げる。共演にジャック・ブラック、カレン・ギラン、ケビン・ハートら。監督は『バッド・ティーチャー』などのジェイク・カスダンでございます。

■「姿形を変えてでも、人から忘れ去られないために必死に生きながらえようとする作品の生存本能」(byリスナー)

ということで、この『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』をもう見たよというリスナーのみなさま、<ウォッチメン>のからの監視報告(感想)をメールなどでいただいております。メールの量は「普通」ということです。結構大々的に公開はされておりますが。賛否の比率は、褒めが8割。普通が1割。否定的な人が1割。主な褒める意見は、「突っ込みどころがあるのは認めるが、そこが気にならないくらい面白いのでOK」「アドベンチャー映画としてだけでなく、2010年代版『ブレックファスト・クラブ』とでも言うべき、主人公たちが成長していく青春映画としても良作」。後ほど『ブレックファスト・クラブ』の話、しますけどね。あとは、「ドウェイン・ジョンソン、ジャック・ブラックなどゲーム内のアバターたちのボンクラ演技っぷりが最高!」ということでございます。

一方、否定的な意見としては「舞台がゲームの中になってしまったことで、『ジュマンジ』というゲームの怖さが薄まってしまった」。前作の設定がひっくり返っているのでね。「ゲームの中という設定なのに、映像的にそれが上手く表現されておらず、世界観に入り込めなかった」というご意見でございます。

代表的なところをご紹介いたしましょう。ラジオネーム「西山コタツ」さん。「僕は前作『ジュマンジ』が好きすぎるあまり、高校時代には全学年の全生徒を体育館に集め、クソ高いフィルムと映写機を生徒会の権限を使って借り、強制的に『ジュマンジ』を見せて、『なあ、面白いだろ?』と友人に迫りまくるという好きのカツアゲ行為を繰り返してきました」。これ、素敵ですね。いいなー! これ、グッと来ちゃう。「……そんな『ジュマンジ』の新作が作られたと聞き、予告からは全く『ジュマンジ』らしさを感じねえ……とさんざん愚痴をもらしていましたが、いざ映画本編を見たら全ての不満が吹き飛びました。なんてったって、ファーストカットの海辺のシーンから明らかに作り手の愛を感じるのです。正真正銘の続編なのです」。まあ、一作目のね……一作目のケツはでも、女の子がちょっとフランス語みたいなのをしゃべっていたから、あれはフランスなんじゃないの?っていう気もするんだけど。まあいいや。

……僕は『ジュマンジ』が『人間が生存するためには娯楽は不可欠である』という最も根源的な表現をすることの意義を扱っている作品だと思っていました。それが今作では、人間から見放された娯楽が実際にどういった末路をたどるのか? という残酷な面まで掘り下げてくれましたし、かつ、この作品自体はしっかりと人間に寄り添う娯楽になっていることがもう、神業に思えてなりません。映画の続編ばかり作られることを嘆く方も多いですが、僕は姿形を変えてでも、人から忘れ去られないために必死に生きながらえようとする作品の生存本能のような見えない力に感動してしまい、僕はこれからもこの世に生まれた娯楽作品に人生の全てを費やして生命を与え続けていこうと決意を新たにしました。『ジュマンジ』、ありがとう!」。ある意味、この『ジュマンジ』という映画シリーズそのものが、『ジュマンジ』の生命力というかね、それにも重なるという見方ですかね。素晴らしいですね。もう、これでいいんじゃないか、評論(笑)。

一方、ダメだったという方。「イソッチ」さん。「物語の骨子である若者の成長や友情の物語としてはとてもよかったと思います。ただしこの映画、アクション映画なのにアクションがいまひとつ面白くないのがやはり見過ごせません。ノンプレイヤーキャラクターが同じ言葉をオウム返しで繰り返すとか、変なところだけゲームに寄せて笑いを取ろうとしているけど、そのためにこの世界自体が実は安っぽい作り物だと感じられてしまったため、この世界を救うことの意義や、ひいてはこの世界を牛耳ろうとしている悪役に対しても全く重みを感じられなくなってしまったと思います。要はこの世界設定、ゲームと現実の悪いところ取りになってしまったと思います」というね。まあ全体にね、軽い感じっていうのがこの作品の持ち味かもしれませんけどね。

■アメリカでは予測を超える大ヒット

といったあたりでみなさん、メールありがとうございます。私も『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』、見てまいりました。T・ジョイPRINCE品川でIMAX字幕3Dと、昨夜バルト9で字幕2D2回見てまいりました。吹き替えとの見比べみたいなのがちょっと、この番組を始めてしづらくなっちゃったっていうのはあるかもしれないですけどもね……ということで、これ『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』、日本はともかく世界中では本当に、事前の予測を大きく超える、もう特大メガヒットとなっております。まあ、『スターウォーズ/最後のジェダイ』を超える大ヒットとなって。ソニー・ピクチャーズ史上でも、『スパイダーマン』シリーズを超えて歴代トップ。

あと、ロック様ことドウェイン・ジョンソン主演作の中でも、『ワイルド・スピード』シリーズを超えてヒットしているとか。これはちょっとね、とてつもないことですよ。まあ『ジュマンジ』、1995年の作品の、続編なわけですね。95年といえば、1993年の『ジュラシック・パーク』登場の2年後。映画における特殊効果というのが、それまでのアナログな「特撮」という世界から、CG中心へと移行していく、まさにその過渡期的な時期の作品なわけ。まあ、いまから見れば過渡期的な作品。なので、CGとかは、いまの目で見ると非常に初期CGCGCGしたCGと、あとはちゃんとジョー・ジョンストンが監督でもありますから、いわゆるアナログな特殊技術が、共存している感じ。

この時代のハリウッドでしか味わえない映像的感触っていうのかな。いまだったら全部CGでやっちゃうところに、ちゃんとアナログなものも混ざっていて。で、そのCGのちょっと拙い感じとか、これはこれでひとつの味になっている、そんな時代の作品なんですけどね。ちなみに『ジュマンジ』、続編の『ザスーラ』という2005年の作品がありまして。これの監督はジョン・ファヴロー。後にマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)第一作目『アイアンマン』、2008年の作品の、製作総指揮・監督を任される人ですよね。そして『ジュマンジ』の監督は、さっき言ったようにジョー・ジョンストン。つまり、やはりMCUフェーズワン、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』、2011年の作品の監督に起用されている方なわけ。つまり、「『ジュマンジ』から『ザスーラ』っていうこの流れが、現在に至るMCU帝国の素地となった」という見方が、できなくもない、というような感じですかね。

■意外とダークでヘビーだった一作目

ともあれ、その1995年の『ジュマンジ』という作品。1982年に出版された絵本が元になっていますけどね。テレビとかでもすごいやっている作品ですし、人気作。いまだに人気がありますから、一度はどこかでご覧になった方も多いと思われるので、見た方はみなさん、お分かりだと思いますけども……『ジュマンジ』という作品は、ファミリー向けコメディーアドベンチャー的なパッケージングはされていますけども、実際に見ると、意外とダークで、ヘビーなテイストが持ち味の作品なんですね。

こういうことじゃないですか。「大昔から生き残り、受け継がれてきたパンドラの箱的なブツを、若者がうっかり起動させてしまったばっかりに、怪異な現象が起こりはじめ……それは日常を破壊しつくし、ついには主人公たちも飲み込まれてしまうまで、決して止まらない」という。これ要は、話の骨格は完全にホラーですよね。『ヘル・レイザー』とか『死霊のはらわた』と、やっていることは同じなわけですよ。だからはっきり言って、怖いわけです。で、またこれね、主演の……2014年に亡くなってしまいました、ロビン・ウィリアムズ演じるアラン・パリッシュというキャラクター。今回の『ウェルカム・トゥ・ジャングル』にも名前が出てきますけども。このアラン・パリッシュというキャラクターの、あまりにも悲惨な人生と、そのあまりにも悲惨な人生の果てにただよう、まさにこれはロビン・ウィリアムズの十八番ですよね、狂気じみた危うさみたいなものがあったりとか。

まあ、主人公の姉と弟も……これ、お姉さんの方は、まだあどけないキルステン・ダンストがお下げ髪でやっていますけども。これも、両親を事故で亡くしているという、悲劇性を背負っていたりとか。とにかく、この『ジュマンジ』というゲームが与える試練をなんとかクリアして、人生を取り戻さなきゃ!っていう切実さが、結構重たくのしかかってくる話でもあるんですよ、一作目の『ジュマンジ』。極めつけは、劇中の最大の悪役であるヴァン・ペルトっていうハンター。しつこく追いかけてくるハンターが悪役なんですけど、これは、ロビン・ウィリアムズ演じるアラン・パリッシュっていうキャラクターのお父さんと同じ役者さん、ジョナサン・ハイドっていう役者さんが二役で演じている。お父さんの役と悪役を、二役で演じているわけです。

つまり、これが示しているところは明らかですよね。『ジュマンジ』が起こす怪現象っていうのは、実はプレイヤー当人の潜在意識の具現化なのかもしれない、っていう匂わせもあるわけですよ。厳格で常に強さを求めるお父さんっていうのが、そのアラン少年にとっては、常に恐怖であり、敵でもあった。なんだけど、そのお父さんに対するコンプレックスを克服することが、そのまま『ジュマンジ』というゲームをコンプリートすることにもつながって。そしてついに、永遠のピーターパンだったロビン・ウィリアムズ……まさに1991年に『フック』でピーターパン役を演じているロビン・ウィリアムズは、ついに本当の意味で、お父さんを克服して、大人になるっていう。そういう話なわけですよ。

■うって変わってカラッとコメディー方向に振り切った続編

そんな感じで、意外と深い含みもありつつ……でもラストは、ちょっと藤子・F・不二雄風な、ライトなSF的なオチもついて、爽やかに幕を引くという。と、思いきや、さっき言いましたよね? 海岸に流れ着いた『ジュマンジ』のゲームが、また不気味なドラム音を響かせ始めて……っていうね。やっぱりホラーだろ、この終わり方!っていう感じなんですけどね。その意味では、22年ぶりの続編となる今回の『ウェルカム・トゥ・ジャングル』。前作のオマージュ的なディテールは本当に抜かりなく散りばめつつも、前作の持ち味だったダークさとか重さみたいなものは、ほぼカットされて。割とはっきりコメディー方向に振り切った、カラッとしたつくりになっている。同じ藤子・F・不二雄でも、完全に『劇場版ドラえもん』っていうか。ジャイアンとのび太とスネ夫が一緒に大活躍みたいな、そんな感じになっているわけですね。

で、もちろんコメディー方向に振り切ったカラッとしたつくりだからこそ、ここまでのメガヒットになったというのはあると思いますけども。ただ同時にですね、この作品のこういうキモの部分。「『ジュマンジ』というゲームを通じて主人公たちが成長し、実人生の葛藤を乗り越える」という話。前作ではそれがお父さんだったのが、ねえ。これがイマっぽいところですよね。前作では乗り越えるべき対象がお父さんだったのが、今回は、自分のコンプレックスとかエゴとか、あとはなんなら人間関係……SNS時代というかね、すごくイマっぽい乗り越えるべき葛藤に置き換えられているけども。その主人公たちが『ジュマンジ』を通して成長するという、で、実人生の葛藤を乗り越えるという、このキモの部分。

あともうひとつ、「『ジュマンジ』にとらわれて人生が止まってしまった人、もしくは人たちに、救いをもたらす」という、この2つの、要するに物語の根幹をなすテーマのキモの部分は、しっかりと今回の『ウェルカム・トゥ・ジャングル』も押さえているわけです。なので見終わるとやっぱり、「ああ、やっぱりこれはなるほど、『ジュマンジ』だったな」っていう風に、ちゃんとそういう印象もしっかり残るという感じで。僕はこれはやっぱり、まずはストーリー、脚本を手がけた、クリス・マッケーナさんという方が率いるチームがいて。これは『スパイダーマン:ホームカミング』とか、その『スパイダーマン』の次の新作と、あと非常に評判の高かった『レゴバットマン ザ・ムービー』。どっちも2017年の作品ですけども。

ともに実にいい仕事をしていた、クリス・マッケーナさんの脚本チームと、あとこれまではジャド・アパトー一派として、割と大人向けコメディーみたいなのを手がけることが多かったんだけど、今回はあえてちょっとコメディーの感じを、抑えた調子にして……それにしても、下ネタとかはちょいちょい入ってくるんだけど(笑)、またそれが功を奏しているという感じの、監督のジェイク・カスダンさん。この方、なんとローレンス・カスダンさんの息子というね。びっくりしてしまいますけどもね。ジェイク・カスダンさん。彼らの、要はもともとコメディーを非常に得意としているチームが、ファミリー超大作に合わせて、なおかつ『ジュマンジ』の本質を押さえながらも、自分たちのテイストも入れて……ファミリー大作に落とし込んだ彼らのテイストが、職人的に「ちょうどいい」塩梅にハマった、っていうのが成功の要因じゃないかなという風に思いますね。

特に、昨年2017729日に僕が評しました『パワーレンジャー』実写版と同じく、先ほどのメールにもあった通り、1985年ジョン・ヒューズ監督不朽の名作『ブレックファスト・クラブ』的な……『ブレックファスト・クラブ』オマージュはいま、流行っているのかもしれませんね。まあ、要は異なる学園内階層、いわゆるスクールカーストに属する複数の若者たちが、偶然居残りで一緒にさせられて。で、その居残りという場が、一種通過儀礼的なきっかけとなって、それぞれが内に抱えているコンプレックスやエゴ、そしてここですね……自分のことだけじゃなくて、「他者」と向き合うことによって成長していく、という、まさに『ブレックファスト・クラブ』的構造を今回のメインに置いた点。ここがまず、非常に優れている点だし。

そして何より今回はね、ゲームの中に入ってしまうという話なんだけど、この発想そのものはそれこそ1982年の『トロン』とかもそうですし、特に珍しいものじゃないし、(ゲームが)現実を侵食してくるという前作『ジュマンジ』のスリリングな部分っていうのは、むしろ後退したとも言える。だからメールで「こんなの、『ジュマンジ』の面白い部分がないじゃないか」っていうのはこれはひとつ、理があるんだけど……まあ、ゲームの中に入っちゃうっていう設定そのものにはそんなに新しみはないんだけど、そこで主人公たちが、現実世界の人物像とはある種正反対のキャラクター、アバターの外見になってしまうというこのアイデア。つまり、そのことがまさにさっき言った、それぞれが……要するに外見とか、そもそも日常で自分が「演じている」キャラクターじゃなくて、図らずも違うキャラクターの中に入ってしまうことで、もともと内に抱えている、芯にあるコンプレックスとか、エゴの問題だとか。

そしてやっぱり「他者」ですよね。(アバターの外見になってしまった状態では)自分そのものが他者なわけだからさ。たとえば女子高生がおじさんになっちゃうとか……(そこから)「他者と向き合う」ということを学んでいく。つまり、(現実の自分とは)違うアバターになっちゃうっていうことそのものが、主人公たちの成長のプロセスの一部になっている、ということ。なおかつ、その設定で、ドウェイン・ジョンソンがヘタレ童貞オタク男子の中身であるとか、あとはジャック・ブラックの中身がイケイケ女子高生とか……『転校生』とかね、まあ『君の名は。』でもいいですけど、そういう「入れ替わりもの」的な楽しさっていうのも当然、醸し出せるし。特にドウェイン・ジョンソン、ロック様は、全体が「ロック様批評」っていうか、メタ視点ギャグにもなっていて、めちゃめちゃ楽しいわけですね。全体が非常に楽しい。

とにかくこの三点。①『ブレックファスト・クラブ』的な構造をメインにして、②主人公たちの外見が変わってしまうという設定をテーマ性ともリンクさせた上で、③「入れ替わりもの」的な楽しさ ……ドウェイン・ジョンソン、ケビン・ハート、ジャック・ブラック、あるいはネビュラちゃんことカレン・ギラン、あるいは元ジョナス・ブラザーズのニック・ジョナスとかも出ていますけども、とにかく芸達者たちが喜々として、(中身の)入れ替わりを楽しく演じてみせるという、この三点が、上手いバランスでハマったことが、非常に成功した要因なのかなという風に思いますね。ドウェイン・ジョンソン、ケビン・ハートは、『セントラル・インテリジェンス』っていう2016年の作品でコンビを組んで……これ俺ね、見れていないんです。不勉強にも。これ、ちょっとすぐに見ます。めちゃめちゃ面白そうなんで。

■本作でいちばん楽しいのは、芸達者な役者たちによる生身の体技

で、その前の『ジュマンジ』は、さっき言ったように視覚効果の、いまからすれば過渡期的な作品だったので、やっぱり当時のリアルタイムでのビジュアルインパクト……「えっ、こんなことできちゃうんだ!」みたいなインパクトをいま再現するのは、はっきり言って困難というか、そんなところに挑戦するのはハナから無駄だっていう風に、たぶんつくり手は判断したがゆえに、「現実に侵食してくる」っていう設定は止めにして……今回の『ウェルカム・トゥ・ジャングル』の、ゲームの中に入っちゃうっていうVFXは、もうリアリティー(の追求)では別にない。動物がブワーッて出てくるのも、別に本当っぽく見せるというのはもうハナから投げていて。逆にそのバーチャル世界ならではの……しかも設定上若干古めのゲームという設定でもあるわけだから、若干人工感とか嘘っぽさ感を含む、ケレン味のために使われている。

これね、『バーフバリ』におけるCGの使い方にも通じるものだと思う。CGは、リアルさの追求ではなく)ケレン味の方のために使っている、っていう。で、それ以外の部分は、意外とアナログなライブアクションを多用している。たとえばバイクアクションとかはライブでやっているし、格闘も自分でやっていますから。カレン・ギランとかもね。なので、非常にクレバーなバランスでつくられているな、という風に私は思いました。なにしろ、やっぱり本作でいちばん楽しいのは、さっき言った芸達者たちによる、生身の体技の部分。だからもうVFXが見せ場じゃない。生身の演技の部分の方が面白いんだと。ジャック・ブラックがカレン・ギランに……おじさんが、かわいい女の子に、「かわいい女の子のセクシーな仕草」指南をして、しかもそれを実践させるくだりとか、本当にバカすぎて最高!っていうね。カレン・ギランの不器用にやってみせるところとかも、本当に面白かったですし。

あとドウェイン・ジョンソンも、まず登場した瞬間に、いきなりあの表情。もう、「ザ・ロック!」っていう表情をいきなりして、いきなりそこで爆笑を取っていくという。そんな感じで、さっき言ったように全編が、ザ・ロック、ドウェイン・ジョンソンという存在に対する批評的パロディー、みたいにもなっているわけですよ。なので、本作は何よりも、その二重性ですよね。劇中の人物……しかも劇中の人物は、屈強なキャラクターでありながらその中身は童貞のオタクであり、しかもそれ全体がロック様というものの批評的、メタ的なギャグになっており、っていう二重性みたいなものを、見事な自然さ、力の抜け具合で、(一見)なんてことなく演じきっているドウェイン・ジョンソンというスターの、すさまじい懐の深さと、上手さ。上手いですよ、やっぱりこの人。そしてやっぱり、圧倒的なチャーミングさ。これを愛でる作品っていうことは、もう間違いないと思いますね。

最大の爆笑ポイントは、このドウェイン・ジョンソンとカレン・ギランの、世にもみっともない「ファーストキス」のシーンですね。よくこんな顔をスクリーンに大映しにするな、と(笑)。俺、IMAXで見ながら……IMAXで映された画の中で、いちばんバカバカしいと思うよこれ(笑)、っていう感じだったと思いますけどね。で、まあそういうわかりやすいところ以外にもね、たとえばある作戦が上手くいって、「やったー!」ってなって。で、他のキャラはみんな自然にハグし合っているんだけど、ドウェイン・ジョンソンとカレン・ギラン……中身は奥手な男の子と女の子同士だけは、こうやってハグしようとするんだけど、なんかね、腰の位置がズレていて。なんかギクシャクしている、みたいなのを、特にアップにするでもなく、画面の結構隅の方で、それをサラッとやっているんだけど。それとかがまたおかしいし、かわいいしでね。ぜひ、このあたりをみなさん、見逃さないでいただきたいと思いますね。

■重ためな作品が多い中で求められていたカラッとしたファミリーエンターテイメント

あと、ここはさすが、普段はもっと毒気強めなコメディーを撮っているチームなだけあって、たとえばジャック・ブラックが最初に『ジュマンジ』空間に入って、川の前でブーたれていると……とか。ケビン・ハートが、「ケーキが弱点ってさ、ケーキがやめられねえってことじゃねえの?」とか言って、ガハハハッとか笑っていたら……っていうところとか。割と不謹慎めな笑いが、ちゃんと不意に挟み込まれたりして。このへんも楽しいあたりだと思います。まあ全体に、たしかに試練とか葛藤の乗り越えはあっさりめです。サクサク全てが解決していっちゃう感じっていうのは、たしかにあります。

ただ、こういう軽めの作品っていうのはあってもいいんじゃないかな?っていうか。はっきり言って最近、全世界的に、エンターテイメントがちょっとウェットだったり重たい方向に寄りがちっていう傾向があって。たぶん観客もそこは、ちょっとだけ辟易している空気があったから、こういうやっぱりカラッとしたファミリーエンターテイメントがヒットした、っていうのはあったりするんじゃないですかね。

それでいて終盤、前作『ジュマンジ』以上にエモい、ある再会シーンがあるんですよ。俺、この場面の感動は、前作を完全に超えていると思うんだけど。最も厄介だったキャラクターの、ちょっと苦さも含む成長っていうかね……大きく言えば、他者と関わっていく人生の豊かさ。ただ自分の欲望を満たすんじゃなくて、たとえば恋愛を成就させるとかじゃなくて、他者と関わって、他者にも奉仕していく人生の豊かさを知るっていうことが、説明的にもウェットになりすぎもせず、スマートな着地になっていて、とっても素敵なエンディングになっていると思いましたね。これ、この場面は前作を完全に超えていると思いました。私、ここはホロリとしてしまいました。落涙しました。

個人的にはね、ただひとつ大きな文句を言えば、これは絶対に僕、必要だったと思うところが、足りていないと思うんだけど。要は「居残りを命じられた」、これが成長をするきっかけじゃないですか。(ならば)居残りを命じた校長なり何なりが、彼らの居残りの後の変化とか成長を、なんにせよ見て驚くっていうくだりは、絶対に僕、このテーマ的には必要だった、という風に思いますけどね。でね、また最後に『ジュマンジ』らしい終わり方… …要は「まだ『ジュマンジ』は終わっていないのか?」っていうさっき言ったホラー的な終わり方かと思いきや、まあ膝カックンなラストになって。で、そっからボンッ!っと……

Guns N’ RosesWelcome To The Jungle』が流れる)

……これが流れ出してっていうね。ガンズ・アンド・ローゼズ『Welcome To The Jungle』が流れ出して。この明快なバカっぽさ。だってさ、ガンズのこの曲って、別に「ジャングル」のことを歌っているわけじゃないんですけど(笑)。あの、街のことだと思うんですけど。このストレートなバカっぽさも含めて、なんかスカッと抜けがよくて。僕はこれも好ましいなと思いました。まあ、文字通り本当に気軽に楽しめて、でもちょっとだけしっかり感動もさせられて、でもウェットにも行きすぎず、っていう感じで。この軽さ、あっさりさも込みで、本当に全方位的というか。非常に楽しい作品なのは間違いないと思います。IMAX 3Dとかも本当にね、とにかく大映しで見られる世にもアホらしいキスシーン(笑)とか諸々、とにかく絶対に見ておいた方がいい場面満載です。非常に楽しかったです。ぜひぜひ劇場でウォッチしてください!

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画は『クソ野郎と美しき世界』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

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