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もし親しい友があの少年Aだったら、あなたはどうする? 作家・薬丸岳さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
5月26日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、作家の薬丸岳(やくまる・がく)さんをお迎えしました。日本を代表するミステリー作家のおひとりですが、一方で、少年犯罪をめぐる人々を描いた社会派の作品も数多く発表しています。久米さんの質問に対してひとつひとつ丁寧に考えながら答える姿に人柄がにじみ出ていました。

薬丸岳さん

薬丸岳さんは1969年、兵庫県生まれ。東京に移った小学5年のときから名画座に通うなど大の映画好きで、将来は映画評論家や映画監督、役者に憧れるようになりました。高校卒業後は劇団に入りますが4ヵ月ほどで辞め、20代はバーテンダーをはじめ様々な仕事を転々としながら脚本家を目指してシナリオを書き続ける日々。とにかく「物語をつくる仕事がしたい」と思っていたそうです。しかし賞にはなかなか入選せず、漫画原作の賞で何度か佳作にはなったもののそれ以上のことはありませんでした。

スタジオ風景

転機が訪れたのは33歳のとき。通勤電車で読んだ『13階段』(高野和明による長編ミステリー。2001年の江戸川乱歩賞受賞作)に大いに刺激を受け、初めて小説に取り組んだのです。そこでテーマに選んだのが少年法でした。

薬丸岳さん

「江戸川乱歩賞の応募規定は原稿用紙550枚で、ぼくはそれまでそんなたくさんの分量を書いたことはありませんでした。これだけの分量を書くには相当な熱量がないと書けないと思ったんです。じゃあ、ぼくがそれだけの思いを持っているものって何だろうと考えたときに出てきたのが、少年法や少年犯罪だったんです」(薬丸さん)

久米宏さん

薬丸さんは小説を書き始めるよりずっと以前から少年法に興味を持っていました。そのきっかけは、1989年1月に東京・足立区綾瀬で起きた「女子高生コンクリート詰め殺人事件」。これは当時15歳から18歳の少年たちが女子高生を40日間にわたって監禁して暴行を繰り返し、ついには殺害して、遺体をコンクリート詰めにして捨てるという非常に残虐な事件で、ニュースやワイドショーで犯行の詳細が伝えられると社会に大きな衝撃を与えました。そして当時の少年法は加害者の少年たちを過剰に保護しているのではないかと大きな議論となり、のちに「少年法」が改正されるきっかけになりました。事件当時19歳だった薬丸さんも非常に大きなショックを受けたと言います。

著書

以来、心のどこかにずっと引っかかっていた少年法と少年犯罪について薬丸さんは1年8ヵ月かけて徹底的に調べました。そして少年法の理不尽な部分に対する怒りがアイデアとなって書き上げたのが処女作『天使のナイフ』です。若い母親を殺したものの少年法によって罪の問われることのなかった少年たち。被害者の夫は少年たちへの復讐を密かに誓う。しかし殺された妻にも夫が知らない暗い過去があった…。この小説は2005年、第51回江戸川乱歩賞を受賞し、薬丸さんは作家デビューを果たしたのです。

スタジオ風景

「少年犯罪のニュースを見ると、多くの人は真っ先に被害者に感情移入すると思います。ぼくも以前はそうでした。でも今は、被害者の家族はどうしてるんだろうとか、加害者の家族はどうしているのか、加害者の友人はどう思ってるんだろうと、違う視点が出てくるようになりました。多くの人は、裁判で判決が出たらそれで事件はおしまいだと思うんです。でも、事件に関わることになってしまった人たちは、その後をどう生きているんだろうと。そういういう、事件の“その後”を物語としてでもいいから知りたいと思って書いています」(薬丸さん)

友罪

現在、公開中の映画『友罪(ゆうざい)』(2018年5月25日から全国公開)は2013年に発表した薬丸さんの小説が原作で、心を許した友人がかつて重大な事件を起こした元少年Aだったらあなたはどうするか…という話です。これも事件の“その後”の物語。薬丸さん自身は、少年犯罪の物語を書くことは精神的に非常にきついので、1冊書き終えるともうしばらくは書きたくないと思うのだそうです。そうして次はエンターテインメント性の高い作品を書くのですが、またしばらく経つと少年法にまつわる別の怒りや疑問が浮かんでくると言います。ショッキングな少年犯罪が起きるたびにメディアは連日、過熱気味に報じますが、ひと月も経つと忘れられていきます。事件の“その後”を考え続けることの大切さが問われているのが、いまの時代なのではないでしょうか。

薬丸岳さんのご感想

薬丸岳さん

最初はガチガチに緊張して、どうなることやらと思っていたんですけど、久米さんは不思議な方ですね。話しているうちに緊張がすーっとほどけていって、自然な感じでお話しできました。

妻の話が出てきたのは想定外でしたけど(笑)。家で映画を観るためのスクリーンの話もどこで調べたのか、びっくりしました。でも楽しかったです。ありがとうございました。

「今週のスポットライト」ゲスト:薬丸岳さん(作家)を聴く

次回のゲストは、元吉本興業の“謝罪マスター”竹中功さん

6月2日の「今週のスポットライト」には元吉本興業の名物プロデューサーで、現在は独立してコミュニケーションコンサルタントとして活動している竹中功(たけなか・いさお)さんをお迎えします。吉本時代、所属芸人の謝罪会見に数多く立ち会った経験を活かし“謝罪マスター”として不祥事への対応や危機管理のコツをアドバイスしています。

2018年6月2日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180602140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)