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医療現場で子どもに寄り添う「チャイルドライフスペシャリスト」▼人権TODAY(2018年6月9日放送分)

人権TODAY

毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で8時15分頃から放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回のテーマは…2018年6月9日放送「医療現場で子どもに寄り添う専門職 “チャイルド・ライフ・スペシャリスト”」です。

チャイルド・ライフ・スペシャリストとは?

病気やけがで入院した時、大人であれば、どうしてこのような治療が必要なのか、治すためにはどれだけ我慢しなければならないのか、ある程度は理解できます。
ですが、子どもにとって、家とはまったく違う場所、見たことのない大きな機械や器具、消毒液の匂い、聞いたこともない大きな音…病院の中には、子どもたちの「日常」とはかけ離れた不安がいっぱいです。
チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)は、お子さんが病院で感じる不安を少しでも小さくして、医療に主体的に参加して乗り越えていってもらえるように、他の医療スタッフと連携しながら支援していく専門職です。
チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会会長で、自身もチャイルド・ライフ・スペシャリストである原田香奈(はらだ・かな)さんに伺いました。

「チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会」会長の原田香奈さん
子どもたちにとって、病院の中に入ることってとても緊張したり、注射だとか何か痛いことがあるんじゃないのかという思いを抱えながら入院してきます。医師や看護師に出会う場合には子どもたちは身構えてしまうこともある。そんな時に、子どもに白衣を着ていないスタッフが接したり、会話をしながら気持ちを和らげたり、遊びを介して、子どもと信頼関係を作りながらサポートをする存在がいるのは、とても意味のあることだと思います。アメリカの小児科学会では、入院している子ども15人に対して1人のCLSを配置することが望ましいと提言している。

チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会会長の原田香奈さん

チャイルド・ライフ・スペシャリストは、1950年代から北米で発展した専門職です。チャイルドライフスペシャリストの介入によって、子どものトラウマ体験の減少や、入院期間の短縮、鎮静剤の使用量の抑制という効果も実証されていて、小児医療に欠かせない存在と位置づけられています。

チャイルド・ライフ・スペシャリストの仕事

現在、日本国内で45人弱のチャイルド・ライフ・スペシャリストが働いています。小児がんの拠点病院や、首都圏のこども病院、大学付属病院など、規模の大きい病院に1人、ないしは2、3人配置されているという状況です。
東京・大田区にある東邦大学医療センター大森病院の小児病棟に勤務するチャイルド・ライフ・スペシャリストの宮脇真綸(みやわき・まりん)さんに伺いました。

チャイルド・ライフ・スペシャリストの宮脇真綸さん
チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)というものを初めて知ったのは、私の場合遅くて、大学三年生の時で、就職活動が始まるか始まらないかという時期でした。子どもに関係するような学部にいたわけではなかったのですが、学校外で子どもと接する機会が多くて、子どもの発達に興味が出てきて、大学院で違ったことを学びたいと思い、調べていくうちにこの仕事を知りました。

東邦大学大森医療センターで働くチャイルド・ライフ・スペシャリストの宮脇真綸さん

宮脇さんは都内の四年生大学の法学部に通っていたそうですが、サークルのボランティア活動を通じて、チャイルド・ライフ・スペシャリストという職業の存在を知ったそうです。現在26歳。2016年の12月からこの病院で働いているということです。
普段のお仕事について宮脇さんに伺いました。

チャイルド・ライフ・スペシャリストの宮脇真綸さん
きょうも点滴を嫌がっている子どもがいて、処置室に全然行こうとしない。どうしたらいいですかという連絡を受けたので、お話しに行きました。こうすると痛みがなくなるよとか、何を処置室に持っていきたいかとか、相談をして、実際に一緒に処置室に行って、処置の間もお話をしたり、気が紛れるようにサポートしてというのが午前中の活動でした。普段は、検査、手術の説明が多いですね。言葉での説明で伝わる年齢の子もいれば、遊びの中で説明する場合もある。人形を持ってきて、実際の医療資材を使いながら説明することもあります。怖さを増すためではなく、不安がなくなるようにするための説明です。

朝は、入院しているすべての子ども部屋を回り、医療的な場面での支援だけでなく、日常的な遊びにも付き合います。孤立しがちな子どもの気持ちに寄り添うには、普段からのコミュニケーションが大切だと言います。そして、親御さんをはじめ、患者家族側の気持ちを医療スタッフ側に上手く伝えることもチャイルド・ライフ・スペシャリストの大切な仕事です。

チャイルド・ライフ・スペシャリストになるには?

最近増えているのは、看護師として小児医療に携わっていた人。小児ケアに特化した仕事がしたいとチャイルド・ライフ・スペシャリストを目指すケースです。また、心理学や児童教育を日本大学などで学んだ人が目指すケース。それぞれの現場や学問を通してチャイルド・ライフ・スペシャリストの存在を知る方も多いそうです。そして、最初からチャイルド・ライフ・スペシャリストになることを目指して、協会に問い合わせてくる学生、中には高校生もいるのだそうです。
チャイルド・ライフ・スペシャリストになるためには、3つの条件があります。
*四年制大学を卒業していること。(学士か修士の学位を保持)
*CLSの資格認定団体であるACLP(Association of Child Life Professionals)が認めるアメリカの大学院で、必要とされる科目を履修すること
*チャイルドライフスペシャリストの指導のもと、一定期間のインターンを受け、CLSの資格認定試験に合格して資格を得ること…です。

制度の課題

「チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会」会長の原田香奈さん
日本の小児医療でCLSという職種があるというのは知られていても、雇用につなげられるかというとまだまだ難しい状況があります。CLSが介入していることは診療報酬の加算にはつながっていないのがひとつの原因。もうひとつは日本の大学での養成がまだまだ難しい状況にあるので、日本でも大学院でCLSのコースが設置されて、人数的にも資格を持つ人数が増えていけばいろんな病院にも配置できるようになるかと思います。

現在、日本には養成課程がなく、アメリカの大学院に留学する道しかありません。また、認定資格を得て日本に帰国しても、それを受け入れる病院側の経済的な問題や、どのような雇用形態を適用したらよいのか、働く環境の整備もまだまだです。まずは、小児医療の現場で、チャイルド・ライフ・スペシャリストの役割が今以上に認知され、医療者からの意見も必要だと言います。

チャイルド・ライフ・スペシャリストは、医療スタッフのような白衣を着ていません。アニメのキャラクターがプリントされた服を着る場合もあるということで、「不安を煽らないように服装には配慮しているんですね?」と伺ったら、原田さんから意外な答えが返ってきました。

「チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会」会長の原田香奈さん
私もたまにキャラクターの医療者向けスモックを着るんです。でも、乳幼児は大好きで気に入るのですが、その格好で、思春期の子どものお部屋に入ったときに、彼らはそれを見てどう思うか。「俺はそこんなガキじゃねえよ」って思う子どもだっていることでしょう。いろんな年齢層が同じ病棟で生活している場なので、医療環境としても配慮してあげなければならないのです。CLSとしては、子どもをよく観察することをいつも大切にしています。私は、初めて子どもと出会った時に、その子が何を持っているのかをよく見て、今はこのキャラクターやアニメが好きな時期なんだと判断します。○○も好きだったけど、今はもう△△が好きなんだ!と言われれば、それによってほかのキャラクターの話はその子の発達段階としても、自尊心としても、少し気をつけて話題にしたりしないといけないのだと考えています。そして、親の前と親がいない時での子どもの様子や言動の比較を大事にしています。親が自分の子どものことをこうだと思っていても、親がいなければ自分できちんと考えを伝えられる子もいますし。両方の場面で違いを必ず見るようにしています。

小児病棟には乳幼児期や学童だけでなく、思春期の年代の子もいます。普段から子どもをよく観察し、この子にはどう接してあげたらよいのか考えることは、子どもの成長段階に携わるお仕事にとって、とても大切なことなのだと感じました。

チャイルド・ライフ・スペシャリストの原田香奈さんと宮脇真綸さん

チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会
URL:http://childlifespecialist.jp/

(担当:瀬尾崇信)