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皮までうまい「もんげーバナナ」が農業を救う!? 国産バナナを実現した田中節三さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
6月9日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、いま話題の「もんげーバナナ」の開発者・田中節三(たなか・せつぞう)さんをお迎えしました。「もんげー」とは岡山の方言で「すごい」という意味。何がそんなにもんげーなのか? まず、普通のバナナと比べてとても甘い! しかもなんと皮まで丸ごと食べられる。そもそも熱帯・亜熱帯でしか育たないはずのバナナをこの日本で収穫することに成功したことが、いちばんもんげー! なのです。常識では考えられない国産バナナはどうやって実現したのでしょうか。

田中節三さん

田中節三さんは1949年、岡山県生まれ。戦後の貧しい時代、田中さんが何より好きだったのが台湾から輸入された甘いバナナ。当時は1本を家族で分け合うぐらい、貴重なごちそうでした。ところが「パナマ病」と呼ばれる病気の大流行で1960年代半ばに世界中の食卓から姿を消してしまいました。数年後、再び外国からバナナが入ってくるようになりましたが、田中さんは以前の味とはすっかり変わっていることに愕然としたそうです。パナマ病によって姿を消した昔のバナナは「グロスミッチェル」という種類で、1960年代以降栽培されているのは「キャベンディッシュ」。種類が違うのです。いま私たちが食べているのはキャベンディッシュ。病気には強いのですが、濃厚でクリーミーな味わいはグロスミッチェルに軍配が上がります。昔のバナナがどうしても忘れられなかった田中さんは、リサイクル事業や海運業の会社を経営するかたわら、私財を投じて、日本では無理だと言われたバナナの栽培に取り組んできました。

バナナは熱帯植物なのでとにかく寒くてはだめだと考えた田中さんは、自宅の庭にハウス(温室)を建てて、沖縄の農家から分けてもらったグロスミッチェルの苗を育ててみました。でも電熱器を入れると赤外線でバナナは枯れてしまい、石油ストーブを焚いてみると枯れずに育ちましたが実は成りません。様々な方法を試しますが失敗の繰り返し。「やっぱり日本でバナナは無理なのか…」。

スタジオ風景

あるとき田中さんは「5億2700万年前のソテツの化石が発見された」というニュースを見て、ひらめくものがありました。5億年以上前から日本でソテツが生き続けているということは、その間、何度も氷河期を乗り越えてきたということになります。田中さんの地元・岡山県に生息するカブトガニやオオサンショウオも氷河期で絶滅することなく現代まで生き続けています。「バナナも氷河期を乗り越えてきたのではないか?」。バナナの栽培は今からおよそ1万3千年前のインドネシアで始まったのですが、実はその頃はまだ熱帯ではありませんでした。最後の氷河期が終わろうとしていた時期で、日中の気温は12~13度。夜にはマイナスになるくらい寒かったのです。

「それでも絶滅しなかったということはバナナには本来、寒さに耐える力があるに違いない。熱帯でなければ育たなくなったのは、何万年もかかってバナナが熱帯に順応してしまったから。日本でバナナを栽培することは決して無理ではないはず」。

そう確信した田中さんは、バナナをあえて氷河期と同じような環境に置くことによってバナナが本来持っている耐寒性を引き出そうと考え、試行錯誤を続けました。

もんげーバナナ

そしてついに「凍結解凍覚醒法」という画期的な技術を開発したのです。これはバナナの苗の一部(根の成長細胞)を180日間かけてマイナス60℃までゆっくり凍らせたのち、ゆっくり解凍して、土に植えるというもの。こうすると遺伝子情報伝達物質(RNA)が変化し、熱帯植物の性質がリセットされ、温帯でも育つ性質に変わるのだそうです。こうして日本の気温でもバナナを十分育てることに成功すると、さらにより味の良いものにするために改良を重ね、ついに長年の憧れだった昔の台湾バナナのような濃厚な味が安定してできるようになったのが10年ほど前のこと。そして数年前から国産バナナの栽培と販売を本格化させたのです。気がつけば、研究を始めてから40数年の歳月がすぎていました。その間に投じた私財は5億円!

堀井美香AN

その話題性ゆえに品薄状態のもんげーバナナは、まだどこでも簡単に買えるわけではありません。今回はその貴重なバナナを試食させていただきました。久米さんも堀井さんも初めはおそるおそるという感じでしたが、そのうち「甘~い! このもちもち感!」「皮もおいしい! 噛んでいると甘い。竹の子みたい」。普通のバナナ(キャベンディッシュ)の糖度が18度であるのに対し、もんげーバナナ(グロスミッチェル)は25度と1.5倍もあるのです。そしてもんげーバナナは皮が薄く、また農薬を一切使っていないため皮まで丸ごと食べられるそうです。堀井さんは放送中、皮を食べる手が止まりませんでした。

もんげーバナナには成長が早いという特長もあります。普通のバナナは収穫まで1年半ほどかかりますが、もんげーバナナはなんとわずか4ヵ月。これも凍結解凍覚醒法によってRNAが変化したことの影響だそうです。

「私がやっているのは儲けるための農業ではなく、食べるための農業です」と言う田中さんは、もんげーバナナの栽培を全国の生産者にも広く呼びかけています。すでに現在、岡山、広島、鹿児島では市場に出荷されているほか、九州・西日本を中心に栽培は広がっていて、北は青森県や北海道でも栽培が検討されているそうです。

バナナは2016年にも「パナマ病」の感染が世界中に広がり、病気に強かったキャベンディッシュも大きな被害にあっています。再び世界中の食卓からバナナが消えてしまうと心配されているのです(2016年6月4日放送「『パナマ病』でバナナ絶滅の危機?」でご紹介しました)。そういったこともあって、田中さんの開発した凍結解凍覚醒法は海外からも視察に来るなど注目されています。

スタジオ風景

この凍結解凍覚醒法はバナナだけではありません。田中さんが技術責任者を務めている株式会社D&Tファーム(岡山市)では、コーヒー、パパイヤ、グァバ、パイナップル、ライチなど、230種類以上の熱帯果樹を栽培しています。日本全国の休耕地や耕作放棄地でこうした熱帯フルーツを育てれば、農業の雇用創出や農家の収入増加に大きく貢献できるかもしれません。中国・北部の黒竜江省でもパパイヤなど南国のフルーツの栽培が始まっているそうです。

さらにコメ、トウモロコシ、大豆、小麦といった穀類も凍結解凍覚醒法で育てることができます。田中さんの夢は、ロシア・シベリアで凍結解凍覚醒法による穀物栽培を実現することです。シベリアは極寒の地ですが、水が豊富で土壌も肥沃。ですから穀物が収穫できれば、世界の食糧不足は一気に解決すると田中さんは考えているのです。いまはもんげーバナナだけが注目されていますが、凍結解凍覚醒法は将来、日本や世界の農業を大きく変える可能性も秘めているのです。

田中節三さんのご感想

田中節三さん

久米さんは先の先まで話を読まれていますね。そして体の中に時計が入っているみたいでした。

私はしゃべりだしたら止まらないんですよ。特に農業については言いたいことがたくさんありますから。そして自分自身、研究をしているものですから、「こういう原因があって、こういう結果が生まれて、それでこういう現在があって、こういう将来になる」という話し方になってしまうんです。

だから30分で収めるのは無理なんよ(笑)。そこを今日は久米さんに、的確にリードしていただきました。ありがとうございました。

「今週のスポットライト」ゲスト:田中節三さん(国産バナナ開発者)を聴く

次回のゲストは、サッカー解説者・松木安太郎さん

次週6月16日、スペシャルウィークの「今週のスポットライト」には、誰より熱いサッカー解説でおなじみの松木安太郎さんをお迎えします。

いよいよ開幕のワールドカップ・ロシア大会。西野新監督でも結果が出ない日本代表。もはや戦術うんぬんより、どういう心構えでテレビの前に座ればいいのか、たっぷりお聞きします!?

2018年6月16日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180616140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)