お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • 放送ログ
  • 音声あり

宇多丸、『デッドプール2』を語る!【映画評書き起こし 2018.6.8放送】

アフター6ジャンクション

宇多丸
さあ、ここからは週刊映画時評ムービーウォッチメン。このコーナーでは前の週にランダムに決まった映画を私、宇多丸が自腹で映画館にて鑑賞し、その感想を20分以上に渡って語り下ろすという映画評論コーナーです。それでは今夜評論する映画は、こちら! 『デッドプール2』

(Celine Dion『Ashes』が流れる)

これね、セリーヌ・ディオンの新曲で。要は『007』のタイトルバックのパロディーみたいになっているという……例によってクレジットもめちゃめちゃふざけた感じになっている、ということです。ということで、マーベル・コミックきっての型破りヒーロー、デッドプールの実写映画第二弾。恋人との生活を取り戻したデッドプールの前に、未来からやってきた戦士ケーブルが現れる。とある少年を殺そうとするケーブルを止めるため、デッドプールは特殊能力を持ったミュータントを集め、Xフォースを結成する。ライアン・レイノルズなど前作の主要キャストは続投。新たにジョシュ・ブローリン、日本からも忽那汐里などが参加。監督は『アトミック・ブロンド』などなどのデビッド・リーチということでございます。

ということで、この『デッドプール2』をもう見たよ、というリスナーのみなさま、<ウォッチメン>のからの監視報告(感想)をメールなどでいただいております。ありがとうございます。メールの量は、多め。ああ、よかったです。一作目の時にはそんなになかったんですよね。『シビル・ウォー』とか(の公開時期)が近くて、『シビル・ウォー』はガーッと(感想メールが)来たのに『デッドプール』は少なくて、僕は「どうなってるんじゃ!」みたいなことを言っていたんですけど、ちゃんと多めになったということで。評判を呼んでいるんですかね。賛否の比率は、今週も褒めが9割、否定的なのが1割。最近この感じが多いですね。

主な褒める意見は、「小ネタ満載のおバカ映画風の見た目だが、シリーズのテーマである人種差別、家族愛などに向き合っている……」。人種差別はでも……今回のは言いがかりでしたよね(笑)。「お前、人種差別はやめろよ!」って、完全に言いがかりっていう(笑)。「……志の高い映画」「前作からのキャラクターはもちろんのこと、新キャラクターたちにもちゃんと見せ場があり最高&爆笑」「前作よりも数、派手さ、容赦なさがパワーアップしたアクションもかっこよかった」という。一方、否定的な意見としては「物語のスケールが小さい割にアクションや小ネタばかりが目立ち、映画としてのバランスが悪い」「映画に詳しくないのでパロディーなどわからない部分が多く、乗り切れなかった」。たしかにね、完全に話上は不要なパロディーで、しかもそこ、別に話が進んでないとか(笑)、結構今回は多かったんでね。「普通のアメコミ大作になってしまった」というようなご意見もございました。

■「正統派ヒーロー・デッドプールへと変貌する姿に大感動!」(byリスナー)

代表的なところをご紹介いたしましょう。褒めている方。ラジオネーム「醜男」さん。「僕的に今回の『デッドプール2』はX-MENシリーズの中でも最高。いちばんの作品です」。まあ、どちらかというとMCUの流れじゃなくてX-MENの方の流れということですよね。「デップーが言っていた通り、前回の『デッドプール1』がラブストーリーなら今回の『デッドプール2』はまさしく家族愛。それどころか人類愛なんじゃないかと思いました。前作では復讐に燃える男だった主人公ウェイドが今作ではひょんなことからミュータントのため、差別される側の人たちのために立ち上がる正統派ヒーロー・デッドプールへと変貌する姿に大感動しました。サブカルネタ満載のおバカ映画の皮をかぶっているけど、実はちゃんとX-MENシリーズのテーマである人種差別についてしっかり向き合っている、すんごい映画で、個人的には『ブラックパンサー』を超えました」というご意見でございます。

一方ダメだったという方。ラジオネーム「とても柔らかい」さん。「『デッドプール2』、鑑賞してきましたが賛か否かで言えば否の方にカウントしてください」と。まあこの方、全然楽しんでいるんですね。「すごく笑ったり、最高だと感じました」と言いつつ、「宇多丸師匠は前作の評論でデッドプール的意匠を説明しつつ、作品のバランスの良さを褒めていたと記憶しています。その意味で言うと、僕は本作『デッドプール2』はバランスの悪い作品だったと感じました。破壊的なギャグや過剰な残酷描写ゆえのバランスの悪さなら歓迎なのですが、本作は感傷的なムードやテーマ性を押し出しすぎるという意味でのバランスの悪さを感じてしまいました。もちろんすぐにギャグが中和してバランスを取ったりはしているんだけど、それも言い訳がましく響く感じがあります。あと、今作は予算が増えてそれはそれで喜ばしいのですが、アクションの多さは逆に散漫にも感じました。より普通の大作映画に近づいてしまった印象です」ということでございます。

といったあたりで、私も『デッドプール2』を、TOHOシネマズ六本木で2回見てまいりました。昨日なんかもちょろっと言いましたけど、割と真面目そうな……一作目もそうだったんですけどね。一作目は男子高校生が連れ立ってキャッキャキャッキャと見に来ている感じがよかったし。昨日も、すごいジャンパースカートの真面目そうな女子高生みたいな皆さん、6人ぐらいでコーラを持って見ていて。すごくね、「いいな! いい映画館の感じだな!」って思いましたけどね。ということで、みんな大好きデッドプール、待望の映画第二作目ということです。

ご存知の無い方のために軽くおさらいをしておくならば、前作の映画は2016年6月18日に私、前の番組で評しましたが、このデッドプールは……MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)を中心にいま、アメコミヒーロー物映画は非常に花盛りでございます。ヒットもしておりますが、その中でもこのデッドプールというキャラクターは、たとえば……これはビギナー向け説明ですからね、すいませんね、繰り返しになりますけども、たとえば「第四の壁」を破って、観客側、こちら側に話しかけてくる。自分も含めたキャラクターとかこの物語が、フィクションの中の存在であるということを踏まえた、いわゆるメタフィクション的なギャグとか揺さぶりを、絶え間なく仕掛けてくる。そんでもって、非常に良識お構いなしの言動を取りまくる、非常にバイオレントな行動も取る、ということで、まあ要は非常にエグめの、クセのある超人気キャラクター、ということになりますね。

それゆえ、映画会社もずっと、映像化に関しては二の足を踏んでいた、ということなんですけども、前作の監督を務めたティム・ミラーさんという方。この方、長編映画の監督を務めるのはこの『デッドプール』が初だったんですけど、そのティム・ミラーさんが、自分でCGで作ったテスト映像というのがネット上に「なぜか」流出し、それが大評判を呼んで。「じゃあ、これだけ評判なんだったら、お前に監督させるからやってみろ」っていうことでゴーサインが出たという。とは言え、やっぱり通常のアメコミヒーロー映画と比べても、相当な低予算だったみたいですし。どれだけ切り詰めて作られていたのか?っていうのは、僕の一作目の『デッドプール』評、みやーんさんの書き起こしもまだ読めますので、そちらをぜひ読んでいただきたいんですけども。低予算。

■素晴らしい脚本と、「ライアン・レイノルズ=デッドプール」というハマりっぷりが生んだマジックが宿る1作目

で、その分、広い観客層向けに、たとえばデッドプールっていうキャラクターの本質をソフト化したりねじ曲げたりすることなく、堂々のR指定バージョン。要はアメリカでは17才以上しか見れません。日本だとR15、15才以上しか見れませんというバージョンで、いざ蓋を開けてみると、大方の予想を大幅に上回る、世界的大ヒット。日本でもちゃんとヒットしたということですね。で、まあ今回、予算も3倍になって、今回の続編につながっていった。ただ、予算3倍って言ってますけど、それでもたぶん、MCUとかよりは全然少ないと思いますね。たぶんね。で、その作品的な大成功の背景には、さっき言ったようなメタ構造ギャグを当然のようにふんだんに盛り込みながらも、実は『オペラ座の怪人』型の悲劇、ラブストーリーという物語の芯が、ブレずにちゃんと1個通っているという、そういうバランスで。

むしろ、さっきから言っているようなデッドプールならではの露悪的な笑いの要素は、主人公たちが背負ったあまりにも過酷な運命に抵抗するための、生きる知恵なんだっていう風にね……要は露悪的なギャグも、キャラクターとかストーリーの厚みとして昇華してみせたという、脚本の時点で非常に優れていた、という。これ、レット・リースさんとポール・ワーニックさんというコンビ、この仕事がまず非常によかったということですね。そして、さらに何より、主役を演じたライアン・レイノルズ。彼は、アメコミヒーロー物に関しては、特にデッドプールに関しては、人一倍思い入れがあったにもかかわらず、作品に恵まれずに。特にアメコミヒーロー物映画に関しては、忸怩たる思いを抱えてきた。

『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』の、同じウェイド・ウィルソンでも、なんじゃこりゃ?っていう役だとか(笑)。あるいは『グリーン・ランタン』。これはDCの方ですけども、それを演じたりして。まあ自分でも「(アメコミヒーローが人一倍)好きなのに俺、なんでこんなことになっているんだよ?」って、たぶん忸怩たる思いを抱えてきたに違いないライアン・レイノルズが、自分の持っている圧倒的なアドリブ力……デッドプールのおもしろセリフの数々はですね、もう彼がガンガンにやるアドリブを取り入れているという。そういう圧倒的なアドリブ力と、あとはやっぱり自分の、いま言ったようなキャリア……なかなかフィルム、作品に恵まれなかったキャリアを、自虐的にネタにするメタ視点。そのメタ視点でギャグを言えるようなクレバーさ。

すなわち、まさにデッドプールそのもの!な資質を、もともとライアン・レイノルズは持っていたんですけど、それをついに……ここで積年の恨みを晴らすと言わんばかりの気合いでついに全開させての、いまとなっては彼以外のキャスティングは考えられないような、もうキャラクターとの「完全一致」ですね。もう「デッドプール=ライアン・レイノルズ」だし、「ライアン・レイノルズ=デッドプール」というぐらいの完全一致。素晴らしい脚本と、ライアン・レイノルズのハマりっぷり。それらが起こした化学反応、マジックというのがあって、大成功したということですね。

■続編で盛られているのはアクション、そしてギャグとパロディー!

で、今回の続編でも、基本的にその脚本コンビ、レット・リースさんとポール・ワーニックさんの脚本、そしてライアン・レイノルズも共同脚本でアドリブをガンガンにカマして、というところのシフトは同じ。だから根幹、背骨のところは引き続きなんだけど、残念ながら、前作の大成功の立役者の1人でもあるティム・ミラーさん。彼が作ったCG映像がすべてを動かしたわけですから。僕は当然続投するものだと思っていたら、どうも今回の続編を作る過程で、ライアン・レイノルズらとの続編というものに対する方向性の違いから監督を降板したという。ティム・ミラーさんはね、もうちょっと小規模の状態でやりたかったらしいんですよね。

で、まあ代わりに監督として白羽の矢が立ったのは、当代随一のスタントアクション会社で、「87Eleven(エイティーセブン・イレブン)」というのがございます。こちらを率いて、たとえば2014年の『ジョン・ウィック』であるとか、そして僕の大好きな『アトミック・ブロンド』(2017年)、これらのような数々の画期的なアクション映画を連発してきた、87Elevenを率いるデビッド・リーチさん。この方が監督として指名されたわけです。ということで、当然のごとく今回の『デッドプール2』では、特に格闘・射撃アクションのフィジカルなスキルと、あとはそのアクションのコリオグラフィー(振り付け)の複雑さというのは、格段に上がっていると思いますね。

で、増量されたのはアクションの見せ場だけじゃなくて、今回はギャグやパロディーの投入量がとにかく多い。前作以上に、はっきりコメディー色が強まったつくりになっていると思いますね。たとえば、他のヒーローいじりみたいなのは、前作はX-MENシリーズ中心に色々とやっていましたけども。あとは自分のキャリアの自虐。ライアン・レイノルズのキャリアの自虐、っていうのをやっていましたけど、今回はもうはっきり、DCも標的になってね。だからすごい言われてましたけどね。「そしてヤツのお母さんの名前もマーサだった」っていうね(笑)。あの『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』の……詳しくは『バットマン vs スーパーマン』の僕の評を聞いてほしいですけども、「なんじゃそりゃ? なにそれ?」っていう理屈の部分ね(笑)。「ヤツのお母さんのの名前もマーサだった」っていうのを、まあ完全に小バカにして、それを出していたりとか。

あとはまあ、『氷の微笑(原題:Basic Instinct)』のパロディーとかね。あれとか、もうストーリーとは何の関係もないですからね(笑)。そういうのが今回は多かったりとか。で、ギャグ的な極めつけは、今回ね、Xフォースというあのデッドプールを中心としたヒーローチーム。これはまあ、原作のコミックにも出てくるXフォースというチーム。出てくるメンツも、原作に出てくるメンツを含めたメンツですよね。で、Xフォースでちゃんとやるのかな? と思いきや、彼らのオーディション&初出陣、初参戦のくだり……ここ本当に、ふざけすぎですよね(笑)。いくらなんでもふざけすぎだろ?っていうぐらい、本当にギャグとしてすさまじい破壊力のことをカマしてくれています。僕、あまりのことに声出して笑っちゃいました。全く予想していないレベルでふざけすぎている!っていうね。

■1作目に比べてバランスが崩れた2作目。でもそれでいい!

まあ、ということで、コメディーとして非常に破壊力を増している。コメディー色が強まっている。で、ですね、先ほどの否定的なメールにもあった通り。たしかにおっしゃる通りなんです。それゆえ、一作目のストーリーやキャラクターのエモーションとか、あとテンポ感。テンポ感を損なわないギャグとか笑いの入れ方。実はすごい絶妙に計算されたバランスというのが、一作目にはあったわけです。これはティム・ミラーさんも、ライアン・レイノルズとか、デッドプールの相棒役というかバーテンのウィーゼル役のT・J・ミラーさん、彼らが山ほどアドリブとかをやって、入れたいのは山々なんだけど、とにかくテンポアップを心がけた(とインタビューなどで語っていた)。そういうのをバランスよく入れていったのに対して……だから一作目は非常に、絶妙に計算されたバランスを保っていてあの名作っぷり、っていうのがあったんだけど。

今回はぶっちゃけ、そのバランスは、先ほどの否定的なメールにもあった通り、僕もそこは同意です、バランスは崩れていると思います。細かいギャグ描写、パロディー、小ボケの連発で、とにかく話そのものが前に一切進んでいないくだりが長い(笑)。いくらなんでも長いだろ?っていうところとかね。で、もう見ているうちに「もういいよ、その件は!」(笑)って、見ている側もツッコミを入れたくなるようなところも多々あります。で、これは『映画秘宝』で、この番組にも出ていただいてます光岡三ツ子さんもそのように評されていましたが、そういった「バランスとか知ったことか!」なやりたい放題っぷりこそ、でもそれこそが真の意味でのデッドプールらしさ、でもあるわけです。そもそもデッドプールが「バランスがいい名作」であったという、一作目のバランスがまず奇跡的というか、一種デップーらしからぬ部分だった、ということで。

で、その「バランスとか知ったとか!」ってやりすぎちゃうぐらい、バランスが壊れちゃうぐらいが「デップーらしい」んだよ、っていうのは、おそらくライアン・レイノルズをはじめ脚本チームとか作り手は、おそらく意識的なはずですね。これはね。一作目のバランスに対して、今回はもうバランスを崩しちゃっていいんだっていう。ゆえに、たとえば劇中で2回ぐらい出てきますね。「脚本ひどいよね」って、セルフツッコミを入れたりするわけですよ。なので、意図的にちょっとバランスの悪さっていうのは取り入れている節もある。ということで、僕は、奇跡的バランスでできていた非常に完成度の高い一作目に対して、作品全体の方向性は同じくしつつも、「歪ささえも魅力」という方向に振り切ってみせたこの二作目というのは、僕はこれはこれで完全に正しい続編のあり方じゃないかな、っていう風に、光岡さんに同意で思いますね。

■『デッドプール2』が見せてくれた「善を貫くという行為ゆえに勝つ」というロジック

で、なによりも僕がこのやり方で間違っていないと思うのは、彼、デッドプールの露悪的な言動のベースには、生身の人間としてのハート、その痛みと熱さがあるって先ほど言いましたね。彼が露悪的なのは、彼が背負ったあまりにも過酷な運命に抵抗するため、闇に飲み込まれないため、腐りきらないために、生きる知恵としてそういう言動を取っているんだ、というあたり。つまり『デッドプール』というこの作品の魂というか、コアな部分。特に映画版がちゃんと一作目で成り立たせた部分というのは、ある意味前作以上にしっかり描いている、ということですね。まあその分、ウェットな場面が増した、という意見もわからいでもないんですけど。

で、なにしろ僕が今回の『デッドプール2』で、「ああ、よくぞやってくれた! 感服いたしました」っていうぐらいに思ったのはですね、先日の5月11日にこのムービーウォッチメンで評した、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』評。あれはあれで非常によくできた作品でしたけども。その終わりの方で僕は、アベンジャーズの次作への、これはもうあくまでも個人的な期待として、というのを言いました。サノスという圧倒的な……こちらもジョシュ・ブローリンが演じていて。今回も「おい、サノス」なんてセリフがありましたけども……あのジョシュ・ブローリン演じる、圧倒的なサノスの強さ、というのがあって、まあ『インフィニティ・ウォー』というのは非常に重苦しい終わり方をするわけですけども。それに対してこの次回作、この流れの話の完結編であろう次回作への期待として、僕はこういうことを言いました。

単にヒーローが、「より強い力」でヴィラン(悪役)を倒すとか、あるいは「たまたま幸運が味方して」勝つとか……アクションエンターテイメントとされるものは、結構このレベルの作品が多い。まあこのレベル、より強い力で倒す、たまたま幸運が味方して勝つ、というレベルでも全然いいんだけど……大抵の作品はそうなんだけど、『インフィニティ・ウォー』でここまでやりきったんだったら、その完結編はそうじゃなくて、それを超えて「ヒーローならではの正しさ、ゆえに勝つ」っていう、つまりサノスっていう圧倒的な力の論理を振りかざしてくるヴィランに対して、ヒーローは「正しいから勝った」んだ、正しさゆえに勝ったんだ、っていうような物語的なロジックが、しっかりある着地であってほしい。ただしこれは非常にハードルが高い要求なので……なんてことを言って僕、『インフィニティ・ウォー』評を締めましたよね。

……それ、『デッドプール2』、できちゃってるじゃん!っていうことなんですよ。ヒーローならではの正しさ、善を貫くという行為ゆえに、勝つ!というロジックが、『デッドプール2』はできているんですよ! とかね、これはオチの部分だったりしますけども。あるいは最初の方で、デッドプールはこんなことを言います。「5分待って考えろ。それができればみんなヒーローになれる」って言うんですよ。なんて素敵な考え方だろう!っていうね、こんなことを言う。まあ、ただしですね、デッドプールさんは、5分待って考えた、結果取る行動の乱暴さが……(笑)。あと、即物性ね。やはりデッドプールはデッドプールだなって、彼らしくて笑っちゃうんだけど。

■感動的な「ヒーロー論」へと踏み込んだ『デッドプール2』

と、いうようなことを言ったりして。つまりですね、一作目の『デッドプール』が、先ほど言いましたように『オペラ座の怪人』風のラブストーリーっていうのをちゃんと芯の、真ん中に据えて。だから悲劇的ラブストーリーが、最後にちょっとハッピーエンドとして成就するところに、ついつい涙をしてしまう。『Careless Whisper』が流れる中でついつい泣いてしまう、というものだったのに対して、今回は「ファミリームービーだ」なんて言い方をされていましたけど、僕は今回は、「ヒーロー論」というところに踏み込んだな、っていう風に思うわけですね。つまり、前はラブストーリー。自分の幸せのために戦うという話だったのが、今回はそれをも超えて、利他的な善をなすということ……やっぱり人間、生きている以上は、ちゃんと全体のことを考えて、利他的な善をなしてこそ、人生というのは意義があるんじゃないか? そしてそれをなせばこそ、ヒーローたりえるんじゃないか?っていう、ヒーロー論というところまで踏み込んでいる、という風に僕は思うわけですね。

で、これをデッドプールのような、要は「本当のことを言いすぎる人」。本当のことを言いすぎる、欺瞞ゼロのキャラクターが言うからこそ、グッと来るわけですよ。おためごかしのきれい事じゃない人が言うからこそ、なんですね。で、加えてそういう場面での、たとえば音楽演出。もちろん『デッドプール』一作目から引き続き、タランティーノ的なというか、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』以降のというか、とにかくポップミュージック、特に80’sネタ的な選曲の妙で聞かせるんですけど、単にそれが……一見ウケ狙いの選曲に聞こえるんですよ。

たとえばアニーの「Tomorrow」であるとか、そういう風に聞こえるんだけど、それは単にその場限りのウケを狙った選曲じゃないってことは、僕は2度見たので余計にわかるんですけど、実はちゃんと前の方の場面で、たとえば「Tomorrow」のイントロだけ小さめにうっすら流していたり。そして当然アニーの「Tomorrow」、つまり子供が逆境を跳ね返していく話であるとか、あるいは未来に希望を託そうというテーマ性であるとか、とにかく歌詞とか楽曲の文脈も、やっぱりちゃんとストーリーとかテーマと一致させた演出をしているじゃないか、と。と同時に、「アニーかよ!」っていうツッコミも成り立つ、という絶妙な選曲になっていたりとか。

あるいは、a-haの「Take On Me」が使われてますね。これは80’sポップネタとしては大ネタ中の大ネタで、それ自体は別にフレッシュな選曲ではないですよ。ないんだけど、たとえばa-haの「Take On Me」がここで選ばれているというのは、有名な「Take On Me」のビデオがありますよね。そのビデオの世界観、こちらの世界とあちらの世界とが、境界を超えて邂逅する。それがミュージックビデオの世界。で、a-haのこの「Take On Me」って、やっぱり誰もがあのミュージックビデオを見たことがあるし、その世界観も知っているという、その文脈を踏まえた選曲でもあり、同時に画づくり、画の構成を含めた演出なわけです。このあたり、さすがやっぱり『アトミック・ブロンド』で、80’s引用ネタのいちばん見事な形を見せてくれたデビッド・リーチ、これはお手のもの、といった感じじゃないでしょうかね。

■一度目は爆笑! 二度目は……というエンドロール

といった感じで、今回もやっぱり僕は、最終的にはしっかりと泣かされてしまう出来になっているなと思いました。ねえ。チンコとかゲロとか、あとは人の悪口とかさ(笑)。現実に存在してる人の悪口とかばっかり言っている映画なのに、結局最後は泣かされてしまう、という。そしてエンドロール。途中で後日譚というか、おまけ映像が付くんですけど。ここに本作最大の爆笑ポイント、かつ、実は本作でいちばん熱い部分が入っているというあたり。絶対にこれ……(僕が観た回でも)途中で席を立って出ていっちゃう人とかいて、「バカバカバカバカ! ここなんだよ!」っていう。さっき言ったライアン・レイノルズの積年の思い、長年の思いがこの一点にぶつけられたような、ある仕掛けがございます。

ちなみに僕はここで……最初、1回目に見た時は大爆笑をしました。でも二度目は、ここで泣いちゃって。最後の、あの脚本を見て、若きライアン・レイノルズが、「大作映画に出れるーっ!」って喜んでドン! からの……なんて言うのかな? ライアン・レイノルズの人生を思って泣いちゃって(笑)。「よくお前、ここまで来たな!」っていうことだと思います。最高の男ライアン・レイノルズ。そして、最高の男デッドプール、ということだと思います。

忽那汐里さん、決して出番は多くなかったです。そして、ある種ステレオタイプなアニメ的な女の子キャラとも言えるけど、ちゃんと大事な扱いをされていて。あと、やっぱり忽那さんのすごく美しいルックスみたいなのが最大限に活かされていて、僕はすごいよかったですし。彼女が活躍する場面ももっとこれから見たいな、っていう風にも思いましたね。

ということで、続編として僕的には文句なし。歪なところも含めて僕はすごく楽しんだ、そして泣いてしまった、文句なしの続編だと思います。ぜひぜひ劇場でウォッチしてください!

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画は『万引き家族』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。