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中小企業の危機

森本毅郎 スタンバイ!

忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)8時からは、話題のアンテナ「日本全国8時です」

全国ネットで、日替わりゲストとともに放送。
毎週木曜日は、東京大学名誉教授、月尾嘉男さんの「雑学コラム」!

月尾嘉男

解説は東大名誉教授の月尾嘉男

6月21日(木)は「中小企業の危機

 

中小企業の危機

今日は中小企業の危機について紹介したいと思います。中小企業については中小企業庁が定義をしていますが産業分野ごとに基準が違います。

製造業では資本金が3億円以下か従業員が 300人以下、卸売業では1億円以下か100人以下、小売業では5000万円以下か50人以下、サービス業では5000万円以下か100人以下と定義されています。

名前のように中小だから産業全体にとって、それほど重要ではないかと思われるかもしれませんが、実は日本に存在する企業382万社のうち381万社、すなわち99・7%は中小企業で、大企業は1万1000社しかありません。

雇用についても、日本全体の従業者数はおよそ4800万人ですが、7割の3360万人は中小企業で働いている人々なのです。

★日本の中小企業の現状

しかし、製造業の場合、企業数では全体の1%にもならない大企業が付加価値額のほぼ半分を占めていますから、やはり中小企業は経済全体では重要ではないと思われるかもしれませんが、これも間違いです。

日本には完成車を生産している自動車製造会社は8社ありますが、これらの会社は自動車を組立てるのが仕事で、必要な部品の大半は外部の会社から調達しています。

その企業数は110万社にもなり、ほとんどは中小企業ですから、それらの企業が存在しなければ自動車産業は成り立たないのです。

コンビニエンス・ストアも大手3社は数兆円を売り上げる大企業ですが、そこで販売している弁当や菓子なども中小企業が生産しているものが大半で、やはり中小企業がなければ成り立ちません。

これは生物世界と同様の構造で、例えば海中では、無数の植物プランクトンが基礎となって多数の動物プランクトンが生存し、それに支えられて小魚、さらに大きな魚、そして最後に少数のクジラやアザラシなど哺乳動物が生存する仕組みと同じです。

そして哺乳動物は重量の合計で大きな魚の10倍、小魚はその10倍、動物プランクトンはさらに10倍が存在しますから、産業構造と似ています。

★激減する中小企業

第一の危機は数が急速に減っていることです。2001年には中小企業は470万社が存在していましたが、急速に減って2014年には381万社になっています。(3年毎しか調査しないため、2014年が最新です)

13年間で20%も減ってしまったのです。これは不景気で倒産が増えたと思われるかもしれませんが、倒産よりも休業や廃業する数が圧倒的に多く、昨年1年で倒産した中小企業は8000社ほどですが、休業や廃業は2万8000社になっています。

この原因が第二の危機で、実は休業や廃業した企業の半分は黒字だったのです。原因は経営不振ではなく、後継者がいないためということです。それを象徴するのが中小企業の経営者の年齢分布で、2000年には50から54歳が最大比率でしたが、2005年には55から59歳、2010年には60から64歳、2015年には65歳から69歳に移っています。

つまり5年毎に5歳ずつ高齢になって行くということは後継者が見つからないために、そのまま同じ人が経営をしているということを意味します。

2025年には、中小企業の経営者の3分の2が70歳以上になり、そのほぼ半分の企業では後継者が決まっていないという推定さえあります。

★外国との比較

企業の廃業と開業の状況を国際的に比較してみると、ヒントが発見できます。

アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、日本について、企業全体のうち新規に開業した企業の比率を調べてみると2001年から2016年までで、イギリスが平均すると毎年12%、フランスが13%、アメリカが10%、ドイツが8%ですが、日本は5%程度です。

日本は新規の企業の誕生が少ない社会ということになります。当然、新規に開業する企業も最初は中小企業がほとんどですから、日本は廃業する中小企業を補充できるほど新しい企業が登場しない社会なのです。

その対策としては人材が中小企業に就職することが重要ですが、15歳から64歳までの生産年齢人口は1990年頃の8600万人から、現在では7600万人になり、大企業との奪い合いです。

★中小企業の復活

中小企業の新規採用が困難になると、結果として後継を託す社員もいないという悪循環になるわけです。

政府は税制優遇措置や様々な支援措置を始めていますが、すぐには効果が現れません。そこで期待されているのが、ITを導入して少人数でも企業経営が可能な体制にすることとともに、中小企業のイメージを変えることだと考えられています。

先ほど、欧米では新規に開業する企業の比率が高いという数字をご紹介しましたが、その多くが情報産業分野のベンチャー企業で、それらの中からアップル、アマゾン、グーグル、シスコなどが短期間に成長してきたわけです。

これも驚くような調査結果ですが、日本の中小企業のIT利用は遅れており、ワードやエクセルなどのオフィスシステムや電子メールを十分に利用している企業の比率は60%弱、給与計算などを自動で行うシステムも40%、受発注の管理システムは20%でしかなく、その理由は導入し利用できる人材がいないということです。

ささやかな例ですが、東京の都心にある飲食店ではお皿にご飯を盛り付けるロボットを導入し、注文は券売機で受けるようにしたところ、客の回転率が向上し、面積あたりの売り上げが2倍になったという例や、地方都市の金属加工工場で危険な作業にロボットを導入し、女性でも操作できる自動運搬装置を導入したところ生産性が2・3倍になり、女性の従業員が半分以上になり求人難を乗り切ったなど数多くの成功例が登場しています。

海洋の環境が悪化して生態系の基礎となるプランクトンや小魚が減っていけば、頂点に位置する大型動物も生存できないように、日本の産業も基礎である中小企業が衰退すれば、大企業のビジネスも成立しないことになるのでぜひ若い人々が参入する企業環境を作っていくことが重要だと思います。

 

月尾嘉男の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180621080000

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