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アルツハイマー型認知症に「超音波」を使った治療法が登場

森本毅郎 スタンバイ!

一口に認知症と言っても、その原因によって、様々に分かれます。今日、注目するのは、認知症の中でもっとも多い「アルツハイマー型認知症」です。日本では、認知症の6割が、この「アルツハイマー型認知症」と言われています。このアルツハイマー型認知症について、今月、気になるニュースが2つありました。1つは、残念なニュースで、画期的とされた治療薬について、フランスが疑問の声をあげた事。もう1つは、期待したいニュースで、超音波で治療する方法が、日本で発表された事です。
そこで、関心が高い、この認知症の最新医療について、6月25日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★アルツハイマー型認知症の症状と、原因について

まず、症状ですが、アルツハイマーの典型的な症状というのは、記憶障害です。誰でも、物忘れ、というのはありますが、普通は、忘れている事を指摘されると、「そうだった、忘れていた」と思い出せます。しかしアルツハイマーの場合は、指摘されても思い出せず、「そんなはずはない」となります。

また、アルツハイマーになると判断力も低下します。料理など、日常的な作業の手順、何を入れるのか、何を捨てるのかが判断できなくなります。その結果、料理はもちろん、そうじ、片付けができなくなります。アルツハイマー型認知症の方の部屋が散らかるのは、こうしたことが影響しています。また、身体的機能も低下して、動きが不自由になり、寝たきりになることもあります。

★なぜ、アルツハイマーになってしまうのか?

アルツハイマーの原因は、まだ、はっきりとは、わかっていません。ただ、脳の機能に異変が起きて、通常は自然に分解されるタンパク質が、なぜか分解されず、どんどん溜まっていき、脳の神経細胞を変化させることが影響しているとみられています。それで、脳の中で記憶を司る「海馬」という部分を中心に、脳全体が萎縮し、神経に刺激を伝える物質「神経伝達物質」が減少し、アルツハイマーが進行するようです。

★現代の医療でも、治せないのか?

長い間、有効な薬さえない状態でしたが、1999年に、その状況が変わります。アルツハイマー型認知症に「ドネペジル=商品名・アリセプト」という薬が認可されました。これは、先ほど触れた、神経伝達物質が減らないようにする薬です。・根本的に病気を治すのではなく、記憶障害や認知障害という症状の進行を抑える薬です。また「意欲を向上させる」「表情が明るくなる」という別な効果もあり、して服用することで前向きな気持ちで生活できるとされています。神経伝達物質が減らないようにする薬は、その後、2011年に新たに3つの薬が発売され、現在は合計4つの薬が、アルツハイマーの主な治療法となっています。

ただ、ここに気になるニュースがあって、フランス政府が、この薬に異議を唱えました。薬の効果が不十分だとして、8月から、保険適用外にする、と発表したんです。確かにこの薬は、認知機能の低下を遅らせることはできますが、病気そのものは治せません。こうしたことが影響して、フランスは判断したようですが。今の所これは、フランスだけの話で、日本などでは、これまでどおり、変化はありません。ただ、これまで画期的で唯一とされた薬の治療法だっただけに、今後、世界がどう判断するのか、非常に気になるニュースです。

★今後に期待が持てるニュースもある

今月はアルツハイマー医療で一喜一憂でしたが、今後に期待出来るニュースも出ました。東北大学の研究チームが、超音波を脳に当てて、アルツハイマー病の悪化を防ぐという、新たな治療法の臨床試験を、今月中に始めると発表しました。この超音波治療は、東北大学大学院の下川宏明教授らの研究チームが始めました。

★超音波が認知症に効く?

アルツハイマーは、脳の中に、あるタンパク質がたまることが影響していると言いましたが、この新しい治療では、超音波でタンパク質を減らそう、というものです。特殊な超音波をあてて脳を刺激することで、脳内に新たな血管が生まれ、血流が改善、その結果、問題のタンパク質がたまりにくくする、という仕組みです。下川教授らのマウス実験では、アルツハイマーを人工的に発症させたネズミの脳に、超音波を当てたところ、3カ月後でも、健常なマウスとほぼ同等の認知機能を維持できたそうです。

★ヒトで効果が出るのか?

今回発表した臨床試験では、患者さんの頭にヘッドホンのような装置を付けて、こめかみ付近から、左右交互に超音波を断続的に当てます。最初は、5人の患者さんに対して、低い出力で超音波をあてて安全性を確認します。そのあと40人を対象に、3か月に1度、1日おきに3日間、60分ほど超音波を当てて、認知症の原因となるタンパク質の蓄積を減らせるのかどうか、そして認知機能の低下が抑制される効果があるのかどうか、1年半かけて調べる予定です。

★うまくいくのか?

これまでの認知症の治療は薬でしたが、この薬には難しさがありました。脳は、脳の安全のため、外部から血液に混じって異物が入ってくるのを防ぐ仕組みがあります。薬で治療しようとしても、血液に溶け込んだ薬の成分が、この脳の機能で邪魔されて、効果的に、脳に届きにくい、という問題がありました。これに対して、今回の超音波治療は、血液とは関係なく、直接、脳に働きかけるので、これまでとは違った効果が期待されています。5年後の実用化を目指す、ということですが、少しでも早く、実現して欲しいです。

この超音波治療のすごいところ色々あります。1つは、アルツハイマーの発症以前、軽い認知障害の段階で行うと、アルツハイマーの発症自体を抑えられるのでは、と期待されています。また、超音波を使うだけなので、痛みがなく、患者さんの負担も軽い。

加えて、安くできるということで、国の医療費の削減にもつながる可能性があります。実は、下川先生は、超音波医療の第一人者。すでに、狭心症など、心臓での治療についても、臨床を進めています。超音波治療は、今後、様々な分野で注目です。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180625080000

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