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サッカーゴールネットを誰より熱く語る男! 六角形網目ネットの開発者・福井英輔さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
7月14日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、今やワールドカップやJリーグで主流になっている「六角形網目」のサッカーゴールネットを日本で初めて開発した「福井ファイバーテック」代表・福井英輔(ふくい・えいすけ)さんをお迎えしました。1ヵ月に渡って熱戦が繰り広げられたワールドカップ・ロシア大会も3位決定戦と決勝戦の2試合を残すのみとなりましたが、サッカーゴールの「網」についてこんなに熱く語った方はいないでしょう。スタジオに現れた福井さんはガッチリした体格によく焼けた肌、快活な話しぶりで、いかにもスポーツマンといった方です。

福井英輔さん

福井英輔さんは1955年、愛知県生まれ。故郷の豊橋では漁網(漁師網)の生産が地場産業として盛んで、福井さんの実家も戦後、祖父・道二(みちじ)さんが「福井漁網」という会社を創業しました。父・良輔さんが2代目を継ぎ、3代目となる福井さんでしたが、サッカーの才能が開花。地元・時習館高校から慶応義塾大学時代に進み、俊足のフォワードとして鳴らしました。ワールドカップ・ロシア大会で日本代表監督を務めた西野朗さんとは同い年で、早稲田と慶応で直接戦ったこともあるそうです。西野さんは高校時代からスター選手で、早稲田の試合のときは女子中高生のファンにいつも囲まれていたそうです。一方、慶応側には黄色い声援はなし。実力的にも早稲田に及ばず、福井さんが3年生のときに2部に降格してしまったそうです。でも福井さんは関東2部ベストイレブンに選出される活躍で、あの杉山隆一さん(1968年メキシコオリンピック銅メダルの代表メンバー)に見込まれ、実業団のヤマハ発動機(いまのジュビロ磐田の前身)で3年間プレーしました。

26歳で現役を引退した後はヤマハの営業マンとしてインドネシアに2年間赴任。さらにアメリカ・フィラデルフィアにも赴任してマーケティングや商品開発の仕事で大活躍し、なんと33歳の若さでアメリカ本社の管理職に昇進。そのままヤマハで出世街道を行くのかと思いきや、父の希望もあって1989年、34歳でヤマハを退職、実家の福井漁網に入りました。折しも漁網業界に陰りが出始めた頃で、福井漁網は漁網以外に土木や建築など様々な分野で使われる網の開発に取り組んでいるところでした。そんな中で福井さんは「六角形網目」のサッカーゴールネットの開発に乗り出したのです。きっかけは1990年のワールドカップ・イタリア大会でした。昼間、会社で六角形網目の土木用のネットの開発会議をやったあと、家に帰って深夜のテレビ中継を見た福井さんは、ゴールネットが従来の四角形の網目でないことに気づいたのです。

6角形の網目のゴールネット

「あれ、何だ? と思ってね。そしたら網目が六角形になってたんです。うちは網を作ってますからすぐに気がつきましたよ。網目を見たらラッセルといって特殊な機械で作る網なんです。日本の漁網会社でもその機械を持っているのはそう多くないんです。実はイタリアにうちの漁網のライバル会社があって、そこはその機械を持ってたんですね。さてはあいつらが作ったなと思って。そして四角形の網目よりも六角形のほうがデザインがかっこいいんです。こりゃあなかなかイタリア人はセンスがいいなと思って。負けてはおれんということで、次の日すぐに『おい、うちも六角形のゴールネット作るぞ』って言ったんです」(福井さん)。

当初、これまでにない六角形のデザインに魅力を感じて開発に取り組んだ福井さんでしたが、やがて機能面でも六角網目は優れていることが分かったのです。網目が四角形だとボールがネットに当たってもそれほど伸びないため、ボールがすぐにグラウンドに落ちてしまいます。一方、網目が六角形だとボールが当たったあとネットがぐーっと後ろに伸びてボールを包み込むようになるそうです

ボールの様子を実演

「だからボールがネットに止まったようになるんです。四角形だとボールがすぐにバンと跳ね返って下に落ちちゃうから、ゴールの瞬間を見逃しちゃうんですよ。でも六角形だと漫画の『キャプテン翼』みたいにボールがぎゅーっとネットを突き上げるから、『ゴォォォォォォル!』っていう感じになるんです。それはゴールの感動が全然違いますよ」(福井さん)。

福井さんは4年の歳月をかけて、ついに六角形網目のサッカーゴールネットを日本で初めて開発することに成功。1995年にはジュビロ磐田のスタジアムにそのネットが導入され、その後、ほかのスタジアムにも拡がっていきました。そして2002年の日韓ワールドカップでも福井さんの六角形ネットが採用されたのです。いまではJリーグのゴールネットはすっかり六角形になっています。そのうち半分ぐらいは福井ファイバーテック製ではないかということです(ちなみに福井漁網は新分野への展開を視野に入れ、2004年に社名変更したのです)。福井さんは、長年、漁網製造の技術の蓄積があったからこそ、ゴールネットの開発につながったと言います。

スタジオ風景

「うちは特殊な漁網を結構作っているんです。魚をやさしく獲って魚体を傷つけない。高級ちりめんじゃこになるイワシの小魚を獲っている漁網の半分ぐらいはうちの網が使われていますよ。高級ちりめんじゃこになるものだから傷つけちゃいけない。だからやわらかく包み込むつつみような網を作るわけです。サッカーゴールも同じなんです」(福井さん)。

より迫力あるゴールシーンの感動を伝えたいという一心で六角形網目のネットを開発した福井さんは、いまロシアのワールドカップのネットはサッカーを全然分かっていない! と注文を付けます。

網目の大きさの違い

「ロシア大会のネットは、六角形が小さすぎる。それに糸も太すぎる。キーパーの後ろからゴールネット越しにカメラがフィールドを映すとネットだらけですよ。せっかくのゴールシーンがじゃまで見えない。ネットが主役になっちゃいけないんですよ。私はできるだけネットがじゃましないようにできるだけ六角形を大きく、糸も細くしました」(福井さん)。

2002年の日韓大会のときと、いまのロシア大会のネットを見比べると、たしかに六角形の大きさと糸の太さが違います。福井さんに言わせると、ネットの張り方もロシア大会は強すぎてボールがすぐに跳ね返ってしまうのでダメ! ということです。これも日韓大会のときのゴールと比べてみると、ロシア大会のネットは網目が正六角形に見えるのに対し、日韓大会では六角形がタテ長になっています。つまり日韓大会のときはネットを緩めに張っているのです。そのほうがボールがネットにとどまる時間が長くなる。それだけ感動も長く味わえる! というのが福井さんの持論です。

サッカーゴールネットのこだわりについて熱弁を振るう福井さんですが、福井ファイバーテックの製品の中でゴールネットはほとんど儲かっていないのだそうです。というのも、サッカーゴールに使われる面積は、漁網に比べればごく限られています。それに福井ファイバーテック製のゴールネットはほとんど半永久的に使えるぐらい丈夫なので、リピート率が高くないのです。というわけで、福井ファイバーテックでサッカーゴールネットを担当しているのは社長の福井さんただお一人だそうです。

スタジオ風景

「全国の小中高校で使われれば、学校は年中張りっぱなしですから傷みも早くて何度も張り替えが必要になるでしょう。そうなればうちも儲かるんですけど、六角形のネットは値段が高いので学校ではなかなか普及しないんですよ。Jリーグは試合が終わるとネットを外してきちんとしまうので、なかなか傷まない(笑)。だからほとんど買い換えないんですよ」(福井さん)。

「それなら、Jリーグのゴールにネットを張るんじゃなくて、ゴール以外のところにネットを張るようにしたらどうですか。広いスタジアムを全部ネットで覆って、ゴールのところだけ穴が開いて、そこにシュートするという。それならネットが大量に使いますから」(久米さん)

「さすが久米さん! ぜひうちの広報に来てください(笑)」(福井さん)。

福井英輔さんのご感想

福井英輔さん

自分の得意な話をしゃべらせていただいて楽しかったです。ワールドカップを観ていて、ゴールネットの話をしているのはほかにあまりいないと思いますよ。サッカーと網の両方のことが分かっていないと、ネットなんかまず見ないでしょうね。

何よりびっくりしたのは、久米さんがいくら事前に勉強したとはいえ、本番で30分間、資料も何も見ないでしゃべっていたことですよ。プロは違うなあと思いました。僕がいちばん感動したのはそこですね。もし久米さんがうちの広報に来てくれたら、六角形ネットはもっと売れるでしょうから、受注をいまよりずっと増やす計画を立てますよ(笑)。

きょうは楽しい経験をさせてもらいました。ありがとうございました。

「今週のスポットライト」ゲスト:福井英輔さん(「福井ファイバーテック」代表)を聴く

次回のゲストは、TBSテレビ美術デザイナー・永田周太郎さん

7月21日の「今週のスポットライト」には、テレビドラマのセットを手がけているTBSの美術デザイナー、永田周太郎さんです。これまで『陸王』や『JIN – 仁 -』といった話題のドラマのセットを数多く作っています。7月15日(日)から始まる日曜劇場『この世界の片隅に』でもセットのデザインを担当し、太平洋戦争当時の広島県・呉の民家を再現しています。

2018年7月21日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180721140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)