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オルタナティブ・アート専門の美術館「もうひとつの美術館▼人権TODAY(2018年8月4日放送分)

人権TODAY

毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で、8:20頃に放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

「オルタナティブ・アート」って何?

栃木県の東部・那珂川町の馬頭地区にある「もうひとつの美術館」という名前の美術館に行ってきました。馬頭地区は宇都宮から自動車や、電車・バスを乗り継いで1時間ほどの自然豊かな山あいです。「もうひとつの美術館」は日本では数少ないオルタナティブ・アートの専門美術館でNPO法人が運営し、年間約3000人の入場者があるそうです。

園田康貴さんの作品


    
オルタナティブ・アートというのは、知的障害のある人や、独学で創作活動してきた人など、既成の手法にとらわれない独創性の強いアート作品をそう呼んでいます。「アウトサイダー・アート」や「アール・ブリュット」など、いろいろな呼称がありハンディキャップのある作家の作品については端的に「障害者アート」と呼ばれる場合もあります。
    
取材に訪れた「もうひとつの美術館」はで従来の価値観にとらわれない自由な美術作品という意味でおもに「オルタナティブ・アート」という言葉を使っています。「オルタナティブ」は「もうひとつの選択肢」「もうひとつの価値」という意味があり、「もうひとつの美術館」という名前も「オルタナティブ・アート」に由来しいています。

「もうひとつの美術館」は建物も魅力的

  

館長の梶原紀子さん

「1999年ぐらいに東京都美術館で全国のいろんな施設のハンディキャップを持った人たちの展覧会がありました。今まで見たことのないような作品だったんですよ。なぜこんなにすごい作品なのに分からなかったんだろうか、そういうことが引っかかっていて、ひとつぐらい専門にハンディキャップをもった人たちの作品を主に展示する美術館があってもいいんじゃないかというのがあって、2001年に開館しました」

 

「もうひとつも美術館」は明治・大正時代に建てられた木造の小学校をほぼそのまま美術館として活用しています。昭和世代の人間にはとても懐かしい空間です。廃校のが決まって自治体が校舎の保存再利用を検討した時期と、梶原館長が美術館設立を構想した時期が、うまく重なったそうです。「もうひとつの美術館」は2001年8月4日にオープンちょうど開館17周年に当るそうです。

もうひとつの美術館

私が訪れた7月に開催されていた企画展は「碧い森(あおいもり) under25 アートの育ち方」と題された、25歳以下の若者の作品展です。静岡県、群馬県、栃木県には特別支援学校の生徒や卒業生に、学校の外で美術活動を支援しているサークルや企業、NPO法人などがあるんですが、そうした環境で創作された、32人の若い作家たちの作品、約100点を展示する催しです。ハンデキャップのある若者達のアート作品を見せるだけでなく、彼らが支援学校を卒業したあと創作から離れることなく、職場やサークルでアートに携わることができる取組みを紹介し、見た人に「アートする人の育つ環境」を考えさせる企画展になっています。

館内の様子


    
細かい図柄をびっしり描き込ん物語的な世界を構成した作品や非常に鮮やかで衝撃的な色使いで表現した静物画や抽象画、顔や時計など、ひとつのモチーフに独特のこだわり方をしたもの立体作品では色のついた針金で魚・昆虫・爬虫類などを表現したものなど、多様で圧倒される、イメージが爆発したような作品が多くありました。

黒沢直啓さんの針金アート

作品を展示している作家の一人、飯山太陽さんに話を伺いました。飯山さんは軽度の知的障害があり、作品は細かい線画でSF的な世界を描くのが特徴で、これまで20作品ほど完成させているそうですが、今回の展覧会では絵画を6点、展示しています。どれも素晴らしい絵でした。

飯山太陽さんの作品

画家・飯山太陽さん

「こういった大きいところで展示されるのは、2回目で、これまであまりなかったですね。普段の日常生活の中でパッと出てきたものを書いたりしてます。この美術館は見たんですが、大きな作品って結構迫力があって、そういうのをやってみたいなと思いますね」

飯山太陽さん

また、私が取材に行った日は、美術館で展示している若い作家たちとお客さんが一緒に創作するワークショップ「もうひとつのくらぶ」が行われました。このワークショップは11月まで毎月第3日曜日に行われています。

ワークショップの様子

この日のワークショップでは、会議机の上一面に紙を張って、みんなでコラボレーションしながらいろいろな画材で自由に絵を描きました。私もそこに交じって、余白の部分に様々な書込みをしましたが、作家の皆さんの創作意欲や絵を描いてゆくアクションに強く触発され、大変楽しい、新鮮な経験でした。
    

展示を見に来ていたお客さんの感想

●「あれだけの感性というんですか、色使いとか観察を持てることには驚きますよね。」●「綺麗だし楽しいよね、発想というか感覚が。良いと思います」●「このひとつ前の展示も来たし、新しい展示が入ったら見に来たいです。これを作らなきゃいけないっていうのがあった作品なので、そういう意味ではほかの美術とも共通するところがあってそこが面白いです」

「常設」の障害者アート美術館

オルタナティブ・アート、障害者アートの展示イベントは「もうひとつの美術館」以外でも増えていて、各地で大小さまざまな規模で行われています。それでもこうしたアートの存在は、まだよく知られていない状況もあります。アートの観賞を通じて障害者の才能や、彼らの見たり感じる世界を理解することができるので、もっと多くの人びとに見られるべきだと思います。その意味では、常時オルタナティブ・アートを展示している「もうひとつの美術館」は非常に貴重な施設と思いました。
    
館長の梶原紀子さん

「自由な発想ですよね。自分が書きたいから書いている、作りたいから作っている、そこからスタートしているのがダイレクトに伝わってくるんですよね、作品を見て感じ取ることが大事かなと思います。ハンディキャップを持った人と分からないで見てもらうのが一番いいかなと思います」

               
今回の「もうひとつの美術館」の企画展「碧い森 under25 アートの育ち方」は11月25日まで開催されているので、夏休みやその他の機会にぜひ訪れてみてほしいと思います。

羽石充花さんの作品


    

「もうひとつの美術館」ホームページ http://www.mobmuseum.org/

(担当:藤木TDC)