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それ認知症じゃないかも?「甲状腺機能低下症」の検査と治療

森本毅郎 スタンバイ!

認知症かなと思っても、一旦は、「認知症じゃないかも?」と疑うことも重要という話。というのも、現在、認知症として治療を受けている方の1割は、 実は全く別の病気の可能性があると言われています。適切な治療をすれば治るのに、認知症と間違えて治療を続けると、病気が悪化してしまいます。

これは検査をすれば簡単に見分けられるのですが、先日、ショックな調査結果が出ました。この検査を受けている人が、少ない、3割程度だ、ということなんです。つまり、治るはずなのに、治らない、悪化させる治療を受けている人がいるというわけです。

そこで今日は、ちゃんと見極めて治してもらえればと思い、この問題にについて8月7日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★「甲状腺機能低下症」という病気

認知症と間違えられやすい病気、それは「甲状腺機能低下症」という病気です。認知症の原因の多くは3つあり、アルツハイマー型・脳血管性型・レビー小体型。名前は難しいですが、これらはすべて脳に原因があり、認知症とされます。これに対して甲状腺機能低下症は、脳ではなく、甲状腺ホルモンの低下が原因の病気です。

このように全く別の病気なのですが、実際に現れる症状は、認知症に似ています。甲状腺のホルモンが低下すると、体の新陳代謝が悪くなります。その影響で、頭の働きが低下し、物忘れ、錯乱、被害妄想、記憶力の低下、無気力になります。

この症状から、甲状腺機能低下症は、アルツハイマー型認知症と間違えられやすいのですが、認知症と間違えて、認知症の薬を飲み続けると、脈拍が減るなどどんどん悪化してしまいます。というのも、この病気は、心臓など機能が低下するので、認知症のような症状だけでなく、心疾患など体調が悪化する可能性もあるのです。

日本国内の認知症患者は2012年の推計でおよそ462万人いるとみられています。このうち、海外のデータなどから、1割前後は「甲状腺機能低下症」ではとされています。つまり、46万人は、認知症ではなく、甲状腺機能低下では、というわけです。

治るはずの46万人のためにも、認知症と、甲状腺機能低下症を見分ける検査が重要です。日本(にほん)神経学会など複数の学会は、2017年に策定したガイドラインで、認知症と診断した場合に甲状腺ホルモンなどを測定する検査の実施を推奨しています。

★検査は広がっていない

冒頭にも紹介しましたが、見分ける検査が広がっていないという調査結果が出ました。医療経済研究機構というところが行った調査結果によりますと、認知症と診断されて認知症の治療薬を出された65歳以上の患者さんのうち およそ3分の2の患者さんが、甲状腺機能検査を受けていないことが分かりました。

また、検査を実施している診療所は、26%しかなく、さらに、専門的な治療を行う認知症疾患医療センターに指定されている医療機関でも 57%しか、甲状腺機能の検査を行っていなかったことがわかったんです。

認知症と似た甲状腺の病気がある、ということを知っている患者さんは少ないでしょう。だからこそ、病院では、ちゃんと検査して欲しいのですが、その検査率が一般は26%、 専門の病院でも5割程度では、ちょっと酷すぎるのではないでしょうか?

病院には、しっかり検査してもらいたいと思うと同時に、この際、自己防衛として、 患者さんたちも「認知症と似た甲状腺の病気がある」と覚えて、検査をしてもらいましょう。

★どんな検査をするのか

まずは血液検査です。甲状腺の働きを調べるために、血液中の甲状腺ホルモンの量、それから甲状腺ホルモンを分泌させる物質の量、さらには、血液中の抗体など、多角的に調べて判断します。

血液の検査を行ってもはっきり診断できないときには、甲状腺の腫れの状態を超音波検査=エコー検査で確認したりします。

近年、検査技術の発達により、血液検査や超音波検査で診断がつくことが多くなっています。これらの検査で甲状腺機能低下症と診断されたら治療に移ります。

★どんな治療なのか

甲状腺の機能の低下が見られた場合には、不足している甲状腺ホルモンを薬で補います。不足している分の甲状腺ホルモンを薬で補うというものです。特に体に症状が出ていない場合でも、血液中の甲状腺ホルモンの量が少なければ薬の投与を行います。理由は、甲状腺ホルモンが不足した状態が続くと、心臓や肝臓の機能が低下するなど全身の新陳代謝低下の影響が様々な臓器に現れてくるからです。

治療薬としては、「チラーヂンS」という飲み薬が主に使われます。甲状腺ホルモンは身体から分泌されているものですので、副作用もほとんどありません。

ただし、ホルモンの量がかなり不足しているからといって、いきなり多量のホルモンを補給してしまうと、心臓などに負担をかけてしまいます。症状としては、息切れや動悸、極端な例では狭心症や心筋梗塞を誘発することもあります。

ですので、薬の服用は、少ない量からスタートして、2~3カ月かけて徐々に増やしながら適切な量を探ります。

★どれくらい飲み続けるのか

基本的には薬を飲み始めると服用をやめることはありません。薬を服用し続けるうちにホルモンの量が正常になることがありますが、血液検査などによるチェックと医師による慎重な判断が必要です。自己判断で薬をやめるのは非常に危険ですので、絶対にやってはいけません。

★そもそもなぜ検査が広がらないのか

認知症の症状が出たからと言って、甲状腺ホルモンを必ず検査しなさいとは言われておらず、「推奨」ということになっています。これは、医療の現場では、医師の判断を尊重するということからですが、見逃されている人が多い現状を考えると、ここは見直すべきではないでしょうか。

国がきちんと制度などを設けて、認知症患者さんには必ず、専門外来を受診するようにする制度作りが必要なのではないかと思います。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180806080000

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