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「星野源の新曲『アイデア』から占う『これからの星野源』」(高橋芳朗の洋楽コラム)

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる音楽コラム

「星野源の新曲『アイデア』から占う『これからの星野源』」

「星野源の新曲『アイデア』から占う『これからの星野源』」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180824123736

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

【高橋芳朗】
本日のテーマはこちら! 「星野源の新曲『アイデア』から占う『これからの星野源』」。今週月曜日、8月20日0時に配信リリースされた星野源さんの新曲、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』の主題歌「アイデア」。ダウンロードの売り上げ記録を更新するなど、現在大ヒット中です。

本日はその「アイデア」を聴いてもらいつつ、この曲から連想した曲、主に曲の二番から連想した洋楽を2曲紹介したいと思います。まずはさっそく「アイデア」を聴いてもらいましょう。先に説明をしておくと、この曲は大きく分けて三部構成になっています。曲調が途中途中で大きく変わっていくんですけど、特に二番の歌詞とサウンドに注目して聴いてください。

M1 アイデア / 星野源


この曲、4月からスタートした朝ドラの『半分、青い。』のオープニングでは一番までしか流れていなかったんです。つまり、フルバージョンは解禁されていなかったんですね。それが今回、いざ全貌が明らかになったら組曲のような構造になっていたということで大きな反響を呼んでいます。しかも、配信リリースでみんな同じタイミングで一斉に曲を聴いたから余計に大騒ぎになっているという。

ただ、この組曲的な構造は単に奇をてらってつくられたというわけではないんです。星野さんがこの曲についてこんなコメントをしているので紹介しますね。「星野源としてやってきたことのすべてを含み、すべてを越え、すべてを壊し、未来に進むパワーを持つ楽曲、そんなものを作りたいと思いました」と。このコメントにあるように「アイデア」は星野さんの集大成となるような曲で、全三部の3つのパートにはそれぞれちゃんと意味があるんです。

順を追って説明していきますね。まず一番/第一部で表現されているのは、音楽的には「これまでの星野源」。歌詞的には「パブリックな星野源」という感じでしょうか。とてもポジティブな歌詞で、J-POPとエキゾチカ、J-POPとオリエンタルなサウンドを融合した従来の星野さんのイメージに忠実なものになっています。

続く二番/第二部。ここは音楽的には「これからの星野源」、歌詞的には「パーソナルな星野源」ですね。こちらではめずらしくネガティブな感情がぶちまけられた赤裸々な歌詞になっていて。サウンド面でもフューチャーベースやジュークといった先鋭的なダンスミュージックを取り入れています。

そして最後、第三部は星野源さんの原点である弾き語りのパートを経て、闇のなかから連れ出されるような格好で最初の「パブリックな星野源」に戻っていく。ざっくり言うとこんな感じの構成になっています。

こうしたなかにあって、やはり注目すべきは第二部になるかと。ここでなぜ心の闇を見せるような歌詞と尖ったダンスサウンドが打ち出されているかというと、まず星野さんにとって去年2017年はものすごく気持ちが沈んだ一年だったそうなんです。そのときのネガティブな感情がこの歌詞に反映されているんですね。そして、そんな落ち込んでいたときに彼が惹かれた音楽、自分を救ってくれた音楽が最新のエレクトリックな音楽だったりダンスミュージックだったと。星野さんは「そういう音楽が表現する孤独感みたいなものにすごく助けられた」と話しています。

ではいったい、消沈していた星野さんに手を差し伸べた音楽はどんなものだったのか、この二番の曲調にインスピレーションを与えた「これからの星野源」を示唆する音楽とはどんなものなのか、想像して2曲ほど選曲してみました。

まず1曲目は、アンダーソン・パークの「’Til It’s Over」。今年2018年の作品です。アンダーソン・パークはカリフォルニア出身のR&Bシンガーで、先日開催された夏フェス『FUJI ROCK FESTIVAL』にも出演していました。この曲では先ほど話したフューチャーベースと呼ばれるダンスミュージックが取り入れられています。ビートがせわしなく駆け回る非常に先鋭的なサウンドで一聴すると無機質な印象があるんですけど、フッと心に寄り添ってくるようなほのかなあたたかさがある曲ですね。

この曲を選んだ理由はもちろん曲調によるところが大きいんですけど、映像にインスパイアされたところもあって。実はこの曲、映画『マルコビッチの穴』などでおなじみのスパイク・ジョーンズが監督を務めているAppleのスマートスピーカーのCMで使われている曲なんです。このCMが都会の生活で疲弊した女性ーーロンドン出身のシンガーソングライター、FKAツイッグスが演じていますーーが音楽に救われていくさまを強烈な、魔法のような映像で描いた本当に素敵な内容で。このCMを星野さんに重ね合わせたところもあります。

M2 ‘Til It’s Over / Anderson .Paak


「アイデア」の第二部から連想した曲をもう1曲。2曲目は、ドニー・トランペット&ザ・ソーシャル・エクスペリメントの「Sunday Candy」。こちらは2015年の作品です。ザ・ソーシャル・エクスペリメントはシカゴ出身、ソウルバンドと紹介していいのかな? 先日開催された夏フェス『SUMMER SONIC』に出演していたラッパーのチャンス・ザ・ラッパーが参加しているグループです。

この「Sunday Candy」はゴスペル調で始まって途中でジュークというダンスミュージックに曲調が切り替わっていくんですけど、いま聴いてもらったアンダーソン・パークのフューチャーベースと共にこのジュークのビート感も「アイデア」の2番のサウンドに影響を与えているのではないかと。加えて、曲の構造自体が「アイデア」に通じるところがあるのも選曲理由になっています。

それから、この「Sunday Candy」はさっきも言った通りゴスペルがベースになった人生をセレブレートする曲、祝祭的な曲なんですけど、星野さんの「アイデア」も自分の過去を総括して新しい一歩を踏み出すにあたっての祝祭というか、セレブレーション的な意味合いを持った曲だと考えていて。これは「アイデア」のミュージックビデオを見てもらうとそのニュアンスが伝わるんじゃないかと思います。

M3 Sunday Candy / Donnie Trumpet & the Social Experiment


というわけで、星野源さんの新曲「アイデア」の二番にフォーカスして連想ゲーム的に選んだ曲を2曲聴いていただきました。

この「アイデア」という曲、サウンド、歌詞、それからミュージックビデオも含めて非常に情報量の多い掘り下げ甲斐のある曲、さまざまな解釈の余地がある曲だと思うんですけど、やはり最重要ポイントは「これからの星野源」を示唆する二番のサウンドになると思います。星野さんもインタビューやラジオなどでいろいろなアーティスト名やジャンル名を挙げてヒントを出してくれているので、それを踏まえてこの二番を聴き込んでみるとおもしろいのではないでしょうか。「アイデア」の特設サイトでは星野さんの発言を交えた曲の魅力に迫るコラムを執筆しているので、そちらも併せて読んでみてください。

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当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア。最新1週間のリストは以下です。

8/20(月)

(11:08)  Love and Mercy / Brian Wilson
(11:20)  The Waiting Game / Todd Rundgren
(11:32)  This One / Paul McCartney
(12:15)  This Town / Elvis Costello
(12:47)  朝色のため息 / 高橋幸宏

8/21(火)

(11:07) Cruel Summer / Bananarama
(11:24) What Is Love? / Howard Jones
(11:41) Always Something There to Remind Me / Naked Eyes
(12:14) Locomotion / Orchestral Manoeuvres in the Dark

8/22(水)

(11:04) Summer in the City / The Lovin’ Spoonful
(11:36) The Door Into Summer / The Monkees
(12:14) Red Rubber Ball / The Cyrkle
(12:51) Gray Sunny Day / The Cowsills

8/23(木)

(11:05) It’s Rocking Time (Rocksteady) / Phyllis Dillon
(11:20) The Time Has Come / The Versatiles
(11:32) I Will Get Along Without You / The Melodians
(11:39) I’ll Be Lonely / John Holt
(12:16) My Willow Tree / Alton Ellis

8/24(金)

(11:05) Hot Hot Summer Day / The Sugarhill Gang
(12:16) Can’t Keep My Hands to Myself / T.S. Monk