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相次ぐ画像診断の見逃し問題。現状、そして対策は?

森本毅郎 スタンバイ!

ここ最近、見過ごせないほど相次いで起こっているのが、X線やCTなどの画像診断で、病気を見落とすという、とても深刻な問題です。検査でがんが見つかったのに、適切な治療につながらず患者さんが死亡してしまうということは起こってはいけないことです。

そこで、8月27日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、なぜこうした見落としが起こってしまうのか、再発防止策はないのかを解説しました。

★相次ぐ画像見落とし

画像診断の見落としという深刻な事態は、ここ数年、相次いで起こっています。東京都港区の東京慈恵医大病院では去年1月、70代の男性が画像診断で肺がんの見落としがあり死亡。千葉市の千葉大病院でも、今年6月、患者9人に画像診断で見落としがあり、70代の男性と60代の女性が死亡。同じ時期に、横浜市立大病院でも60代の男性が死亡。先月には東京都杉並区の河北健診クリニックで40代の女性が3度の画像診断の見落としで死亡しています。

大きな病院で目立っているのですが、病院の大小関係なく、これは本当に深刻な問題です。命を守るために検査をして、病気があるかないか確かめているにもかかわらず、その検査結果を見落とすという、あってはならないことがこうして起こっている現状はとても許されることではありません。

★見落としは、なぜ起こるのか?

大きく2つ、考えられます。まず1つめ、「連携不足」です。これは論外な問題ですが、東京慈恵医大病院ではCTで「肺がんの疑い」が見つかったんですが、画像診断報告書を主治医らが確認せず、およそ1年放置していました。また、名古屋大病院では、CTで「大腸がんの疑い」が見つかったのですが、担当医がおよそ7ヶ月確認せず、治療が遅れて50代の男性が死亡しました。

横浜市立大病院では、放射線科医がCT画像の異常に気付き、画像診断報告書にがんの疑いについて記入したのですが、主治医は報告書を見ていませんでした。こうした医師、主治医は医療従事者としての基本を忘れてしまっていて、資格がないと言っていいと思います。

2つ目が「診断ミス」です。千葉大病院では患者9人に画像診断ミスがあり、このうち70代の男性は「肺がん」、60代の女性は「腎がん」の診断が遅れて亡くなりました。また、杉並区の河北健診クリニックでは胸部X線検査でこぶの影があったにもかかわらず「異常なし」と判定され、その後に肺がんと診断を受け亡くなりました。

★診断ミスが起こる理由は?

ここも大きく2つが考えられます。まず、検査が増えているのに医師が足りない、という問題があります。OECD=経済協力開発機構の、2010年度版のデータによると、人口1000人あたりの日本の医師の数は2・2人。一方で、加盟国の平均は3・2人で、日本は諸外国より医師の数が少ないことがわかります。こうした医師不足の現状があるなかで、検査項目は細分化されて増えています。検査が増えているのに、医師が足りず、結果、ミスが起こりやすくなっているのです。

もう1つは、「技術が進化しているのに医師の技量が追いついていない」ということです。例えばCTの撮影は、対象となる臓器だけ撮影するのでなく、上半身全体、という形で広い範囲を撮影します。すると、自分の専門領域以外も鮮明に見えます。ところが医師は、自分の専門の領域を見ることはできても、そのほかの領域については、見落としてしまう可能性もあるのです。これでは技術が進歩して広い範囲で鮮明に画像撮影できるようになっても、見逃しが増えてしまう、ということになってしまいます。

また、こうしたことは、医師の経験年数に関係なく起こることもわかってきました。日本医療機能評価機構というところが、2015年〜2017年までの3年間に発生した32件の画像診断による見落としを調査したところ、それが裏付けられました。

★対策は?

まずは、さきほどお話したように、医師不足と、医師の技量については、課題があり、この点については、一刻も早く解決して行かなければならないのは前提です。その上で、体制が整うまでは、診断ミスをなくしていくことが重要になっていきます。そのためには、制度的に画像診断の二人体制を義務化することだと思います。現在、二人体制で画像診断をしているところももちろんありますが、一人で行なっている病院も少なくありません。これを制度として二人体制にするのです。

それから、二人体制で意見が分かれた場合は、リスク回避のために必ず精密検査を行うことです。今回、杉並区の河北健診クリニックでは、内科医と放射線科の医師の二人体制で画像診断が行われたのですが、実は内科医が「要精密検査」診断していたんです。しかし、放射線科の医師は「異常なし」と診断。結局、より専門性が高いという理由で、放射線科の医師の意見が優先され、「異常なし」とされてしまったのです。どちらかの意見を優先するのではなく、どちらかが精密検査が必要と判断した場合、精密検査をする、ということが必要だと思います。

また、放射線科医が画像診断書を主治医に渡す時に、異常などについて言葉でも行うべきです。それで、連携不足を潰せます。一方、別の角度から対策に乗り出す動きもあります。それがAIを使った診断です。理化学研究所と国立がん研究センターの研究グループは先月、AIを使って早期胃がんを発見することに成功したと発表しました。関係者によると、0・004秒の画像検査でがんの80%を見つけることができるそう。

ただ、AIが導入されても、最終的には医師が判断してしなければなりません。また、AIばかりに頼りすぎても、医師の技術向上にはつながりません。あくまでAIは補助的な役割として考え、根本的な問題を解決する必要があると思います。AIでお現時点で、80%なのです。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180827080130

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