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音楽の心理学、そしてショパンの別れの謎・・・ピアニスト:清塚信也さん

コシノジュンコ MASACA

2018年9月9日(日)放送

清塚信也さん(part 1)
1982年生まれ。桐朋女子高等学校音楽家を首席で卒業後、モスクワ音楽院に留学。2000年のショパン国際コンクールinアジアで1位を獲得すると、国内外のコンクールで数々の賞を受賞。また、劇伴音楽を数多く手がけ、TBS系ドラマ「コウノドリ」では劇中の音楽を監修。役者としても出演するなど、多方面で活躍していらっしゃいます。

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JK:はじめまして! 今日は楽しみね

清塚:こちらこそ! お会いできて光栄です。

JK:清塚さんは5歳の時からクラシック音楽で。ピアノ1本?

清塚:ピアノ1本で。母がクラシックに憧れていたんですけど、自分はやらせてもらえなかったというのがコンプレックスで、その夢を僕と姉に託して。

JK:お姉さんもピアニスト?

清塚:バイオリンをやっています。今もオーケストラで演奏しています。

JK:お姉さまと一緒にコンサートやるとかはないんですか?

清塚:今はないですね。子供のころはちょっとやってましたけど。今は恥ずかしくて。

JK:なんで?

清塚:音楽のセッションって、セクシーというか、とくに男女でやっていると、愛を語り合うようなところも出てくるので・・・それが照れくさくなっちゃって。姉はそういうのないかもしれないですが、姉相手に、「この甘いメロディ、どう?」っていうのもちょっと(^^;)

JK:あら、そう。お姉さまから言われないですか?

清塚:言われないですね。だから姉も同じこと思ってるんじゃないですか? ちょっと照れくさいところがある。

JK:でもピアノ1本で、作曲から何からいろんなお仕事されてますね。

清塚:そうですね。本当にクラシックだけじゃなくて、ポップスとかジャズとか、映画音楽も子供のころから夢だったので、すごく幸せです。

JK:子供のころ映画はお母様と一緒に行くわけですか?

清塚:いや、本当は映画館で見たかったんですけど、まったく娯楽の時間は許されていなかったので・・・

JK:英才教育もいいいところですね。

出水:余暇の時間はすべてピアノの練習に充てられていたんですか?

清塚:もう全部です。たとえ休んでいたとしても、休んでいることがピアノにどう関係してくるか考えなさい、みたいな。

JK:あっら~!

出水:朝起きて学校に行くまでにも練習して?

清塚:そうです。朝は必ず5時に起こされて。

JK:えっ?! なんか体育会系ですね?!

清塚:そうなんです、うちの母は。母は音楽に関してはド素人で、楽譜はもちろん読めないし、音感も人より以下なんですよ。カラオケでも前奏でいきなり歌い出しちゃう人なんで(笑)

JK:でも、どうしてここまで・・・親の気持ちがあるのかしら。自分もやりたかったけどできなかったから。

清塚:そうですね、やりたかった、出来なかったっていうのもあるし、小さいころに関してはコンクールも含めて、お母さん同士の戦いもあるんですよ。受験みたいなもので。そうすると、他のお母さんはピアノの先生だとかピアニストを目指していたとかで、それに劣等感を感じた母は、私には専門的なことは何もできないから、少しでも厳しくやるぞと決意したみたいで・・・

JK:それでモスクワに留学されたんですか?

清塚:いや、モスクワに行ったのは18の時だったので、むしろそういう母とか先生から逃げたくて、海外に行ったんです。

JK:解放されたくて? でも18っていうのは遅いって言ったら変だけど、普通だったらショパンコンクールに挑戦するとか・・・あれって18までですよね?

清塚:いや、ショパンコンクールは28までです。

JK:じゃあ十分余裕があったじゃないですか?

清塚:むしろ日本の音楽教育で言うと、大学まで出てから留学する方がほとんどなので、僕はむしろ早いほう。

JK:ロシア語、大変じゃないですか? 英語じゃなくてロシア語。

清塚:そうですね、言葉の違いも大変ですけど、やっぱり寒いっていうことと、あとは意外とわかってもらえないのが「暗い」っていうこと。

JK:私も先日行ったんです、モスクワに。もう暗い。

出水:それは雰囲気ですか?

JK:そう思ってたんだけど、私が行ったのは白夜だったから明るかった。思ってる暗さじゃなかった。
楽しかったですよ。私の思うロシアじゃなかった。明るくてきれいで上品で・・・「こんな明るいロシアだとは思わなかった」って言ったら、「今だけよ」って言われた。

清塚:その時はいいんですよね。本当に5時間ぐらいしか夜がなくて。これが9月に入るとコロッと逆転します。

JK:そこから本気でプロになろうと?

清塚:そうですね。それまでは親とか先生に敷いてもらったレールを頑張ってやってきたんですけど、初めて自分の意思で音楽というのを見つめました。

JK:でもなんでモスクワなんですか? 普通だったらウィーンとかパリとかドイツとか・・・ロシアはバレエってイメージ。

清塚:でも、ロシアもモスクワは特にピアノやバイオリンといったクラシックもかなりレベルが高いんです。パリとかウィーンとかには高校生の時に短期留学で一夏行かせてもらってたのですが、あまりにも日本人が多くて。どうせ行くなら、厳しいとこ露がいいなと。やっぱり日本人が多いと、和気あいあいとしちゃって。比較的ヨーロッパの中では日本人が少ないので。

JK:じゃあ言葉も通じなくて、日本人も少なくて・・・大変だったでしょう。

清塚:そうですね、最初のころは苦労しましたけれど、すぐ慣れたし。こういう試練を待っていたと思って受け入れた。

清塚:僕は劇伴をやらせてもらっているんですが、ドラマとか映画の音楽をやるときは音楽のスキルもそうですが、洞察力は必要。

JK:心理学ですね! 場の空気を読むというか。音楽って空気ですよね。空気をデザインするというか。

清塚:まさにその通りです。ナレーション、説明になっては絶対いけないので。例えばオドけたシーン、役者さんが笑いを取るときに、いかにもなメロディだと、ちょっと安っぽくなってしまう。「みんな笑う時間ですよー」みたいな感じになりすぎると・・・

JK:ちょっとシラける。なんか押し付けですよね。

清塚:だから笑いの時は、もっとシンプルなメロディで、「あれっ、音楽いたっけ?」ぐらいに思うほうがちょうどいい。

JK:思いやりですね。やっぱり主役があって、それを盛り立てるってことですね。

清塚:そう、歯車になるということです。

出水:そういう劇伴音楽だけではなく、もちろんコンサートプログラムではクラシック音楽も披露されていますが、クラシックというと敷居が高いと感じている人も多いと思いますが、清塚さんなりの効かせ方はありますか?

清塚:僕は必ず、作曲家や作品の解説をしゃべりながら弾いてます。

JK:いいわね! それ聞きたい!ウィーンに行ったんですけど、ここでベートーベンが第九を作曲した場所に行って。ベートーベンってオーケストラにすごく嫌われて、引っ越しだらけだったんですって。

清塚:そうなんです。追い出されるに近い形で。ゲーテなんかは、もう二度と会わないって言ったぐらい素行が悪いというか、ぶっきらぼうだった。でも諸説あって、ベートーベン自身は自分の遺書と言われるものの中で、耳が聞こえないのがバレないために嫌な奴を演じていた、と書いていたりもする。地で行っていたのか、演技だったのかいろいろあるんですけど、そういうことを知って聞くとまた面白いと思います。

出水:清塚さんのコンサートでは、MCで笑いが起きるそうですね。

JK:音楽会って笑いがあまりないじゃないですか。だからちょっと心が緩んで、一緒に楽しめますよね。だって、すごい拘束されて肩がかちっとしてて、みなさん動かない。

清塚:咳ひとつしただけで怒られる、みたいな。ルーツとしては、ヨーロッパの貴族が温めてきた音楽なので、そういうところもあるんです。例えば子供が走り回ったりギャーギャー泣いたりしてもいいよ、というクラシックもあるんですけど、それでは本質はあまり捕らえられない。だから、そこを下げるのではなく、格式高いとか緊張感があるのはどうしてなのかがわかると、苦痛じゃなくなるんです。

JK:環境がわかると、子供もふざけたりしなくなる。環境ですよね。

清塚:なんでこんなに緊張しなくちゃいけないんだろうってなるとストレスだけど。

JK:他にエピソード聞かせてください。

清塚:たとえば、誰もが知っているショパンの「別れの曲」。実は、「別れの曲」は近年日本人が勝手につけた題名で、ショパン自身がつけた題名は「練習曲第3番」。

JK:えー、全然違う! 映画でもそうよね、日本語でしか知らないから、向こうで英語に直すと誰も知らない。

清塚:そうなんです。向こうのピアニストに「ショパンの『別れの曲』弾いてください」って言ったら、「そんな曲ないです」って言われる(笑) ショパンというのは、題名をつけたことはほぼなくて、他の題名も、他の人が勝手につけたものがほとんど。あとは出版社が楽譜を売り出すときに、売り文句としてつけたのがほとんどなんです。なんでかというと、文学的要素をつけると、みんながそれぞれにイメージして、それが前提になってしまう。そういうのがショパンはイヤで。優しい曲をつくるくらいですから神経質なんです。

JK:それは失礼なことをしましたね(笑)

清塚:ショパンは今ごろ天国で、「別れの曲じゃねぇし(-_-メ)」とか思ってるかもしれない(笑)だから、日本人がこの曲を演奏すると、非常にロマンティックでメランコリックなんですけど、本当のショパンの連取局としてはもっと軽やかだった可能性も高いんです。

出水:じゃあ、ショパンはそもそも、曲の講釈を残してないんですか?

清塚:あんまりそういったことに立ち入ってこないのがショパンのスタイル。そういったところに含みを残す、ミステリアスなところもショパンの人気のひとつ。コンサートではそういったことを説明したうえで、「じゃあ皆さん、今日はどっちで弾きます? 日本ぽくいく? ショパンぽくいく?」みたいな(笑い)

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TBSラジオpresents 清塚信也×NAOTO アコースティック・デュオ

日時:2018年12月14日(金)18時30分開演
会場: 紀尾井ホール
出演:清塚信也(Pf),NAOTO(Vn)
料金:全席指定 7,000円(税込)
購入はこちらから
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=OA楽曲=
M1. 即興生演奏 / 清塚信也
M2. Baby, God Bless You / 清塚信也