お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • コラム
  • 音声あり

おすすめラジオクラウド 荻上チキSession-22「メディアの薬物報道姿勢」

ラジオクラウド

こんにちは。文字起こし職人のみやーんです。僕が選んだラジオクラウドのおすすめコンテンツを紹介するコーナーの第30回目。
今回は『荻上チキSession-22』より「メディアの薬物報道」です。

有名芸能人の息子が薬物使用の容疑で逮捕されたことを報じるメディアの報道姿勢について、以前から「薬物報道ガイドラインを作ろう」と提唱してきた荻上チキさんが現状の問題点などを話していました。とても大事な提言になっているので、今回はトーク全文を文字起こししてみました。


荻上チキ:今日、ニュースを見ていて「それは外に頼ってくれ」という風に強く思った出来事があったんです。芸能人の方のご家族が薬物依存症で、薬物の再使用で逮捕されたというの報道があったんですね。この報道を見た時に「また来たな。またか……」っていう風に思ったわけです。この「またか……」というのは再使用についての「またか……」ではなくて、芸能スキャンダルとしてこの薬物依存症の問題を取り上げるような報道というのがもう始まってしまってるわけですね。

そうして芸能人のご家族だということがあって「どんな教育をしてるんだ!」というような意見もあれば、「家族に迷惑をかけて……」ということでその家族側の方に叱責を向けるような、そうしたコメントを述べるは人もいるわけです。テレビでいろいろとコメントをする人がすべて専門家というわけではない。というよりは、テレビをコメントする人の9割はその分野の専門家ではないけれども、とりあえずコメントしているというのが現在の状況なので。中には「そのコメントはいちばんやっちゃいけないやつだよ!」っていうのもあったりするわけですけども。

特に薬物依存症は家族を追い込んだり、あるいは当事者を責めたりしても何のプラスにもならないわけですね。

南部広美:はい。この番組ではガイドラインを作りましたよね。

荻上チキ:そうですね。報道ガイドラインというものを作りまして、理解を広める報道をしましょうということをいま、拡散運動をしてるわけですけども。薬物というのはやっぱり依存症なので、病気なので、回復するための適切な治療と、それからその治療をサポートしたり、その後に再使用、再び使うということを止め続けるという、それをサポートするためのコミュニティーとか周りの専門家とかのバックアップとか、そうしてものが必要になってくるわけですね。

南部広美:受け止める側の我々の意識も認知も変えてかなきゃっていうことですよね。

荻上チキ:叩くとその人の自己評価が下がる。自尊心が下がる。そうすると、そうした人をも受け入れてくれるっていうある種の「使用仲間」みたいなところ。薬物を使う仲間のところに惹かれていったりとかもするだろうし、あるいはその不安感などから「もう自分はどうしようもない」って……自尊心は元々低下してるわけなので。となると、「ダメだよ!」って言われても、それはもう使うことに対するブレーキにならなかったりするわけですね。むしろ不安感を紛らわせるために使用するということもあったりするわけです。

まあ人によって、当然ながらたとえば快楽原則に引っ張られるということとか程度問題はいろいろあるかもしれませんが。基本的にはこうした不安に追い込むということを改善していきましょうねというような、そうした議論というものが少なくとも薬物依存症に関する医学的なスタンダードになってきつつはあるわけです。だから、たとえば逮捕よりも医療へのアクセスをちゃんと作っていこう。家族が抱えるんじゃなくて、むしろ家族ではない人が抱えなくてはいけない。「抱える」と言うか、分散しながらサポートしていくっていうことが必要になってくるという風に言われてるんですね。

ただ、いまの報道というのは当事者を叩く、家族を叩く。「薬物はダメ!」「再使用は心の問題」「ひどい!」みたいな、そうしような言い方をする。なおかつ、これが芸能人の問題だということになると「甘やかした」みたいな、そうした発言がオンパレードになるわけですね。「過保護だった」とか。でも、過保護によって薬物使用になるのと、孤独によって薬物使用になるのと、どっちなのかか決着をつけてくれ!って思うわけですよ。

基本的に、過保護だからそうなるっていうようなものはいま、報道とかあるいはテレビを見ていて見える断片的な情報のどれかだけに答えを見出そうとするから、「じゃあ芸能人だったからきっとセレブな生活をしていて過保護だったから。そこに違いない!」みたいな。

南部広美:完全に思い込みですよね。

荻上チキ:そうですね。別にプロファイリングでその人たちに会ったわけではないし。実際に、もちろんその家庭事情でそうした当てずっぽうな憶測というのが当たる可能性だって場合によってはあるかもしれませんが、その「過保護」という一点だけで薬物使用になだれ込むということではないわけですよ。そんなことを言っていたら過保護だったみなさん、薬物使用になってくと思いますし。ある意味、「昔よりも現代の方が過保護」という風に評価されるような育児スタイルにどんどんと変わってきているので。そうすると使用者が増えてもおかしくないわけですよね? でもその「過保護」とはいったい何なのか? 何をもって言っているのか? 

結果論として「それが過剰だった」っていう風に言っているだけなので、それはいくらでも叩ける論理なんですね。過保護の過剰性というのは。そうしたような報道もそうだし、言論もそうだし。そうしたものを変えていきながら、具体的な使用者に対しては「こういったサポートがありますよ」って。たとえば医療関係者に繋がっていく。そのことによって警察なんかに捕まらないですからね。あの自分から医療関係者のとこに言ったら、医療関係者はそれを通報しないですから。あの(患者の)秘密を守らなくてはいけないので。そこで治療を重ねていくっていうようなことは必要になってくる。

で、薬物の所持が問題だけど、実際に使っていたんですっていうことで薬物の使用をやめ続けるっていうことは、これまた大事な治療プログラムということになるので。そうしたところに何かのきっかけで繋がっていくということは重要になる。だから何かの報道の時に「叩く! 叩く! 叩く!」ではなくて、「こういった窓口があるよ」「こうやって回復するよ」って。いまの刑法は「罰する」っていう方向ばかりに強くて、もし治療プログラムなどを選択した場合には、他の道にも行けるんだよっていう方向に改正が必要ですよね、みたいな。そうした議論にどんどんつなげていくっていうことが必要になってくるわけですよ。

これから、明日もどんな報道が繰り広げられるのかってちょっと心配なんですけれども。ちょっとこういった社会の側の知識っていうものを増やしていくことで、報道をアップデートして、よりよくして。で、社会の薬物に対する知識っていうものを広く改善していって。当事者の人には「抱えなくていいよ。外に頼っていいよ」という風に言えるような、そんな状況を作っていけるといいなと思いますね。あと今回、「4回目の再使用」みたいなことで。その逮捕が4回目だということで、「またか!」みたいな感じで注目されてるんですけれど、あまり「またか!」とは思わない方がいいと思いますね。

再使用って4回、5回というのは繰り返されてしまうものなんですよ。薬物などの。それを早期に、再使用ではない仕方で回復に向けていくためには、やっぱり懲罰的な、「なんだ、コラ! 反省しろ! 何してんだ! 甘えだ!」って言うんじゃなくて、「こういう助ける場所あるよ」っていうところに速やかにつなげていくことが必要なんですね。今回の報道されている当事者の方がどういった状況なのか分からないんですが、「一般論としてこういった知識があるよ」ということをこの報道に合わせて伝えることで、いろいろな命綱をね、報道が張っていくっていうこともできるわけです。

あとは当事者だけではなくて家族会なんかもありますから。家族の方も相談できるような。

南部広美:よりベターなつながる場所を提供っていうことですよね。

荻上チキ:そうですね。そういういろいろな役割というのが報道機関にも、それからいろいろなグループとか行政とかもあったりしますけども。少なくともひとつずつできるのは、この報道はいい報道か? それとも問題含みのちょっと古い報道かな? みたいな、そうしたことを見極めるようなポイントっていうのはね。

南部広美:受け止める我々1人1人の知識ですよね。

荻上チキ:それを踏まえた上でいろいろとチェックして、「ちょっといまのは違うんじゃないかな?」とか「いまのは良かった。じゃあちょっとシェアをしよう」とか、そうしたようなことを考える、そういうヒントを少しでも手に入れていただけると嬉しいなと思いますね。ちなみにこの薬物依存症に関する報道ガイドラインっていうものをこの番組で作りましたけども。番組のWEBサイトにその回のラジオクラウドが上げられているので聞くことができることと、文字起こしも上がっているのでそれを読むこともできます。

放送ログ 音声あり
【音声配信・書き起こし】「薬物報道ガイドラインを作ろう!」荻上チキ×松本俊彦×上岡陽江×田中紀子▼2017年1月17日(火)放送分

そのガイドラインというものも全部掲載されているので、検索すれば出てくる状況にあります。大事ですね。こうやってWEBサイトに上げ続けておくということは。アーカイブの機能というのも大事なので。

南部広美:インターネットは立派なライフラインですからね。

荻上チキ:そうですね。なおかつ、立派なライブラリーなので。そこからしっかり参照していくということを意地し続けていくということも大事だなという風に思います。

南部広美:そしてそこを「まだ見れるよ」という情報を情報を発信し続けることも大事ですよね。知らないとつながれないということですから。

荻上チキ:まあ、ある意味ラジオも残る時代ですから。頑張っていきましょう。


何度も繰り返されてアップデートされないメディアの薬物報道姿勢について、繰り返し問題を指摘し続けている荻上チキさんと南部広美さん。「依存症には適切な治療が必要」ということがもっと広まることを願っています。ぜひぜひラジオクラウドでお二人のトークもチェックしてみてください!

荻上チキSession-22「メディアの薬物報道姿勢」

ラジオクラウドアプリ誕生!