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10年で全国2954の峠を制覇した「峠研究家」中川健一さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
9月15日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、日本全国にある2954の「峠」をすべて制覇した〝峠研究家〟中川健一さんをお迎えしました。

中川健一さん

その肩書きを見たときからどんな方なんだろうと思っていましたが、面白い方でした! こんなに峠を熱く語る方にお会いしたのは初めてです。峠めぐりなんてそんなに面白いの? と思う人もいるでしょう。でも中川さんの熱量がすごいので久米さんも堀井さんもどんどんお話に引き込まれていきました。

中川健一さんは1948年、東京都生まれ。若い頃にはA級ライセンスを取ってレースに参加するほどクルマは好きでしたが、峠を回り始めたのは60歳になってから。サラリーマン生活がもう終盤を迎えた頃に休日を利用して関東近県の峠をめぐるようになってからハマってしまい、仕事をリタイヤしてからは年間180日も峠に出かけるほどのめり込みました。そして今年(2018年)1月、ついに全国にある2954の峠すべてを制覇。その成果を本にまとめて自費出版したところじわじわと評判が広がり、8月に『全国2954峠を歩く』(内外出版社)として出版されました。

峠に行き始めたのは、断層を見てみようと思ったのがきっかけでした。建築・土木資材メーカー「岡部株式会社」にお勤めだった中川さんは、安全な建物を作るには地盤が大事だと感じていました。1995年の阪神淡路大震災と1999年に台湾で起きた大地震で危機感を募らせた中川さんは、日本最大の断層である「中央構造線」について調べるようになり、断層帯が地表に現れている場所を見てみたくなりました。断層帯がいちばん見やすい場所、それこそが「峠」なんです。峠は山を切り崩して道を通していますから、断層が露出しているんです。こうして地盤への関心から峠めぐりを始めてみようと思い立つと、中川さんはまずどこにどんな峠があるのか調べました。

スタジオ風景

「山については深田久弥が書いた『日本百名山』という本がありますね。実は峠についても『日本百名峠』という本があるんです。でもこの本は8人で書いているんです。だから見ている人によって関心や視点が違うんですよ。また、このやり方だと評価も違ってきますよね。ある人はきれいだと言っても、別の人はそうでもないと言うかもしれない。それはだめだと。どうせやるならひとりの人間が全部調べてどれが1番、どれが2番と言いたいと思ったんです」

日本全国には3773の峠があります。そのうち山岳峠や離島にある峠を除くと、普通の人が歩いて行ける峠は2954。中川さんは関東近県を手初めに、地盤を確かめる目的で各地の峠を回り始めました。

「最初はそれがきっかけだったんですけど、行き始めてみたら、峠というのはとんでもない歴史の宝庫だったんです。峠にはお地蔵様とか馬頭観音とか道祖神がだいたいあって、その裏をちょっと見てみるとびっくりするぐらい古い年代が彫ってあるんですよ。えっ、そんな前からここにあるのということが分かるわけです。一体ここは何なのかと思って郷土資料を調べてみると、ヤマトタケルノミコトが越えた峠だとかとんでもない話になってくるんですよ。そうしたらどんどんハマりますよ!」(中川さん)

全国の峠をめぐるといっても、中川さんの場合、クルマですいーっとトンネルを通っておしまいというような生半可なことではないんです。実はひとつの峠にもいくつもの峠道が存在するケースがたくさんあって、中川さんはそのすべてを〝制覇〟しているのです。

久米宏さん

「峠というのは、今は下にトンネルができちゃってるから、かつての峠は上のほうにあるわけです。中川さんは峠研究家であって、トンネル研究家じゃないんです(笑)。今はトンネルができてそこも峠だけども、本当はそのもっと上にある、昔いちばん初めにいちばん上を死ぬ思いをして越えたところがそもそもの峠なんで、そこまで研究していらっしゃるんですね。だから明治時代にできたトンネルがあって、昭和にできたトンネルがあって、同じところに何世代も峠があったりする」(久米さん)

「静岡県の宇津ノ谷峠(うつのやとうげ)なんて奈良時代にできたものから、豊臣秀吉がつくった道や、明治・昭和・平成にかけて6世代もあります。そうすると、峠をやっている人間としては6世代全部行かないといけないんですよ」(中川さん)

「峠をやっている人間って、いいなあ! そこなんですよ(笑)。中川さんの場合、1ヵ所に行ったらトンネルも含めて通れるところは全部見ないと気が済まない(笑)」(久米さん)

「じゃあ、『2954峠』といってももっとたくさん…!」(堀井さん)

「数で言ったら、もうそんなもんじゃないです」(中川さん)

峠のデータをファイル化

そう言って中川さんが見せてくれたのは、全国の峠に行った記録をまとめた1冊のファイル。なかを見ると、峠の標高・緯度・経度、所在地、道路名、その道やトンネルができた年代といったデータがびっしり! 1ヵ所で何世代も峠道があるような場所は、そのすべてを通って記録をつけています。3世代の道が存在するような峠は全国にたくさんあるそうです。新しいトンネルはクルマで行って、その上にある1世代前のトンネルまではバイクや電動自転車に乗り換えて林道を上っていき、さらにその上にある最初の峠道までは徒歩で。すごいですね! 山梨県の雁坂峠などは徒歩で4時間半かけて上ったそうです。峠に着くと10分ほど写真を撮りまくり(100枚ぐらい!)、すぐに下りてしまうんです。というのは、1日にだいたい10ヵ所ぐらい回るからなんです。最高で1日に23ヵ所行ったこともあるそうです。朝5時半から出発して撮影ができる夕方4時半頃までの間にすべての峠を回るために、ひと筆書きで行けるようなルートを綿密に計画して行くんだそうです。

「最初は1000峠ぐらいやろうと思っていたんです。それでまだ会社に勤めている間に東北から近畿にかけて回って、そのぐらい行けたんです。そうしたらオートバイ仲間に『中川さん、ここまできたら本州の峠、全部でしょう』って言われて、じゃあやろうと(笑)。中国地方や山陰地方はやっぱり遠くて行くのが大変なので、これは退職してからじゃないとできないなと。でも、ここまで来たら日本全国、絶対やってやろうという思いがふつふつと湧いてきましたね。それで退職3日後には山に行きました。年間180日ぐらい山に入ってましたね」(中川さん)

中川さんの峠リストには、堀井さんの故郷・秋田にある峠も載っていました。

スタジオ風景

「私、男鹿に住んでいたんですけど、地元の人しか知らない茶臼峠っていう小っちゃい峠があるんですけど、ちゃんと入ってました。びっくり! あの小っちゃい峠も行ったんだと思って、感動しました」(堀井さん)

「峠はどんどん変わっていくんです。豪雨や地震や台風で傷めつけられて、崩落して、今は通れなくなってしまったところもあります。それから、人が通らなくなるとすぐに自然に戻ってしまします。アスファルトの舗装道路でも7~8年も経つとすっかり植生も変わってしまいます。だから、峠というのは〝生もの〟なんです」(中川さん)

全国2954 峠を歩く

8月に出版された本『全国2954峠を歩く』には全国の峠のリストに加え、中川さんが厳選した153の峠の楽しみ方が書かれています。道路が整備された現代では、峠は〝通過するだけの場所〟かもしれませんが、昔の人たちにとっては大変な難所でした。だからみんなそこでひと休みし、安全を祈願しました。あらためて峠で足を休めて周りを眺めると、地質、歴史、物流、地名、昔の人たちの知恵…様々なものが見えてくると中川さんは言います。リタイヤ後の趣味としてもとてもいいと思います。なんだか峠に行きたくなってきませんか?

中川健一さんのご感想

中川健一さん

まず私がびっくりしたのは、久米さんが大変勉強家だということです。私は今まで峠を10年かけて調べてここに来たわけですけども、中央構造線についてここまでお話しした方はいませんでいた。日本の地質だとか地形をこんなに知っていらっしゃるというのは、相当勉強されたんだと思います。ですから久米さんとのやりとりや質問で食い違うことはありませんでした。それと、こちらの間合いとか呼吸をよく見てらっしゃる。その余裕は、事前に完璧に準備していないとできないです。やっぱりさすがです。

きょうのメッセージテーマ(まだ辞めないで! と言いたい人、もう辞めて! と言いたい人)に合わせて言えば、久米さんは私より4年先輩ですけども、話のスピードも切り返しも同年代の方より圧倒的に速いですし、当分引退は考えずに頑張っていただきたいと思いました。引退を決めるのは年齢ではなく、その人の取り組み方とかスタンスだと思うんです。そういう意味では、峠をまわることもみなさんやってみたらいいと思います。

今日は大変楽しかったです。今度は久米さんとお酒を飲みながら、ぜひお好きなクルマの話をしたいですね。ありがとうございました。

「今週のスポットライト」ゲスト:中川健一さん(峠研究家)を聴く

次回のゲストは、「旅するおむすび屋さん」菅本香菜さん

9月22日の「今週のスポットライト」には、「旅するおむすび屋さん」という活動を行って全国を回っている菅本香菜(すがもと・かな)さんをお迎えします。地元の食材を使ってみんなでおむすびを作って食べる…それだけでたくさんの人が集まってくるそうです。

2018年9月22日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180922140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)