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サマータイム、体にいいのか悪いのか?

森本毅郎 スタンバイ!

2020年の東京オリンピック・パラリンピックをめぐって、サマータイム導入の議論が活発になっています。先週、IOC関係者がサマータイム導入について賛成を表明しました。ただ、このサマータイム導入に関して、日本の学会をはじめ、実際にサマータイムを導入している国の研究で、健康に悪影響があるのではないか、との研究が多く出てきています。

そこで、9月17日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、サマータイム導入による健康への影響について取り上げました。

★サマータイム導入をめぐる動き

サマータイムをめぐって、日本で先月は初めに安倍総理が、導入を検討する意向を示しました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの暑さ対策が理由です。一方で、世界の動きですが、サマータイムを導入しているEUは、廃止の是非についてこの夏に本格的な検討を始めました。その理由は、サマータイム導入による健康への悪影響など「利益よりも不利益が大きい」として廃止を望む声が多いためです。

EUがサマータイム制度を再検討するきっかけになったのは、加盟国フィンランドの提案があったからです。フィンランドは、緯度が高く、夏の日照時間が極端に長いため、サマータイムの意義がほとんどないという事情もあります。ただ、フィンランドがサマータイムを反対している理由は、それでけではありません。廃止派は、時間の切り替えが人間の睡眠などにかかわる「体内時計」を狂わせ、短期だけでなく長期でも、睡眠や心身の健康に悪影響を与えるとしているのです。

★どのような悪影響があるのか?

フィンランドのトゥルク大の研究チームの2016年の研究報告では、短期的には「脳梗塞」のリスクが上がる可能性が示されました。研究では、2004年から2013年のフィンランドでの脳梗塞の発症率に着目して、サマータイム切り替え後の1週間以内に発症・入院したおよそ3000人と、その週の前後2週間のうちに発症・入院した1万2000人弱を比較しています。その結果、サマータイム切り替え後の2日間では、脳梗塞の発症率が8%高くなることが判明したということなんです。特に65歳以上の人と、がん患者では影響が強く、発症率は20%から25%上昇しました。

★急性心筋梗塞のリスクも

また、脳梗塞だけではない、という研究報告もあります。スウェーデンの研究所が、1987年から2006年の19年間のスウェーデン国内の病気に関するデータを分析しました。すると、サマータイムによって「急性心筋梗塞」の発生リスクが増加していたことがわかった、ということなんです。

具体的には、サマータイム切り替え後の1週間平均では、急性心筋梗塞のリスクが5%高まり、逆にサマータイムが終わった直後の1週間平均では、リスクが1・5%低下したという。特に、女性や65歳以上の方、心疾患、糖尿病、高血圧を発症している人などで顕著だったそう。

また、クロアチアでも同じような結果が出ています。クロアチアで、2412人の急性心筋梗塞の患者を解析した結果、切り替え後の最初の平日の4日間では「心筋梗塞」の発症が1・29倍になり、サマータイム終了後では1・44倍になることが示されました。

★ロシアではサマータイム廃止

このように、海外ではサマータイム導入による、健康のリスクが多く研究されています。そして、実際にロシアでは、切り替えの時期に救急車の出動や心筋梗塞による死亡者が増加し、生体リズムに反していることや、省エネ効果がほとんどなかったとの理由から、2011年3月末のサマータイムへの移行を最後に、サマータイムを廃止しています。

サマータイム賛成派には、リスクは1年のうち数日で、発症率も大幅に大きくない、という声もありますが、制度としてサマータイムを導入すると国民のほとんどが影響を受けるため、研究結果は無視できないと思います。しかも、海外の研究は、サマータイムによって、時間を1時間ずらした影響をみています。日本が導入しようとしているのは2時間ずらすというサマータイム制度ですので、さらに影響が大きくなる可能性は否定できないのです。

★日本でのサマータイムに関する研究

日本睡眠学会は、今回のサマータイム導入案が出る前の2012年にサマータイムが睡眠の質や量に悪影響を与えるというリリースを出しています。それによりますと、サマータイム導入により生体リズムが乱れることで眠気や集中力の減退などが生じ、睡眠効率が10%低下するとしています。その影響で、睡眠の量もおよそ1時間減るということなのです。特に、若い世代や社会経済的な弱者、高齢者や病人などへ与える影響は大きく、日本は気候的にも高温多湿であり、早寝ができにくい環境にあると指摘しています。

体内時計が乱れるという点では、日本糖尿病学会が糖尿病、肥満、心血管疾患、そして、がんのリスクが高まると指摘しています。具体的には、マウスの研究により、本来と異なるタイミングで食事をとると、肝臓など代謝にかかわる臓器が応答し、これらの臓器では体内時計がずれてしまう、という。すると、体内時計のタイミングが臓器間でずれを起こすことになり、臓器と臓器の間に「時差ぼけ」に似た状態が生じます。臓器はお互いに連絡をとりあって活動しているので、このずれが体にとって負担となります。こうした体のリズムに合わない食事の摂取が、2型糖尿病をはじめとした疾患など、健康障害を引き起こす原因になっていると考えられている、ということなのです。

日本の研究者たちは『サマータイムの研究報告はすでに十分出されていて、なぜいまさらサマータイムなのか』とあきれた声が上がっています。サマータイム導入は、1人1人の健康問題以外にも睡眠不足による交通事故の発生率が11%程度上がるという報告もあります。

EUはサマータイムをやめる方向で話し合っています。日本は健康への道を逆走することになります。もし実施するのであれば、サマータイムが健康に関係ないという科学的根拠を示すべきです。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180917080130

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