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腰痛から復活!タイガー・ウッズが受けた最新手術

森本毅郎 スタンバイ!

アメリカ男子ゴルフの今シーズン最終戦、ツアー選手権で、タイガーウッズ選手が5シーズンぶりの優勝を果たしました。アメリカのスポーツ専門局ESPNは「スポーツ史上最高のカムバック」と称賛しました。この復活優勝の裏側には、タイガーウッズを苦しめていた腰痛の克服があります。

そこで、10月1日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、タイガーウッズが受けたと言われている手術について、注目します。

★タイガーが受けたとされる手術

アメリカのフォーブス誌によりますと、タイガーウッズは椎間板=腰骨の間にあって、クッションの役割を果たしている柔らかい椎間板が損傷し、神経を圧迫。これが激痛の原因で、苦しんでいた、と報じています。ウッズはこの腰痛で、2014年と、15年の9月、11月と3回も手術を受けました。

ところが痛みがなくなることはなく、ついに去年4月に4度目の手術を受けました。この結果、痛みが軽減され、奇跡の復活となったわけですが、その手術というのは、「ALIF(アリフ)=腰椎 前方椎体間 固定術」という手術だと報じられています。

ALIFは、腰椎が不安定になり、痛みが出る疾患に対して行う手術の1つです。報道によれば、ウッズの4回目の手術を行ったドクターは「リチャード・ガイヤー」氏で、ガイヤー氏によれば、ウッズは、腰椎のクッションとなる椎間板がすり減っていて、「腰椎の間が極端に狭くなっていた」ということでした。そこで椎間板に対して、この手術を行った、ということです。

★腰痛ならALIF(アリフ)で治るのか?

このALIFが有効なのは、どんな病気かというと、椎間板ヘルニアや、すべり症です。ウッズの病名については、一般的には「腰椎の椎間板ヘルニア」と報道されていますが、状況を見ると、もう1つ「腰椎すべり症」の可能性もあるのではとも言われています。この2つの病気をまず抑えてから、ALIFについて説明します。

まず「腰椎椎間板ヘルニア」ですが、腰椎のクッションである椎間板がすり減って変形し、腰椎の間から飛び出し、腰の神経にあたって刺激、その結果、腰痛を引き起こす病気です。日本でも120万人が悩まされているとされています。

一方「腰椎すべり症」ですが、こちらも椎間板がすり減った結果、本来規則正しく積み重ねられているはずの腰椎の一部が、前の方に滑りだしてしまい、腰椎の後ろにある脊髄神経が圧迫され、下半身に痛みやしびれが出現します。

また、長い距離を歩くと痛みやしびれが出現し、少し歩くのを休むことで楽になる「間欠性跛行」と言う症状も多く見られるようになります。腰部や殿部が重苦しい、だるいような痛みで、痛みは激しい運動や作業後に現われますが、安静あるいは活動を控えると軽減することが多いのです。

どちらも、最初は保存療法を取ります。消炎鎮痛剤、コルセット、電気療法、レーザー療法、あるいは神経ブロック注射などです。こうした保存療法でもよくならず、悪化した場合に、手術となります。

★タイガーの受けた4回の手術

ウッズは4回、手術を受けていますが、最初は椎間板ヘルニアの典型的な手術でした。2014年と2015年に受けた手術で、顕微鏡下椎間板ヘルニア摘出術という手術です。これは、内視鏡のように顕微鏡をのぞきながら、はみ出した椎間板を取りのぞくものです。はみ出して神経を圧迫している椎間板を取り除けば、痛みが減るだろうということです。

ただ、ウッズの場合、これだけでは不十分でした。そこで4回目の、ALIF=腰椎 前方椎体間 固定術となったと思われます。

このALIFの一番の特徴は、前方=お腹側から行う手術ということです。腰の手術と聞くと、腰骨が浮き出ている背中側を開くイメージが強いと思います。ただ、腰椎を輪切りにしてみると、確かに背中側には、神経や、様々な骨が突き出ています。椎間板自体は、前からの方が、ダイレクトにアプローチできるように見えます。そこで、この手術は、患者さんを横向きに寝かせて、脇腹の辺りを5センチ程度、切り開き、内視鏡などを使って、前方から、腰椎に迫ります。

そして、椎間板を切除し、症状に応じてヘルニアを摘出、さらに骨棘を削ったりします。その上で、つっかえ棒のようなもので腰椎間の高さを調整しながら、そこに、人工の椎間板を入れて高さを固定します。その中には自分自身の骨も入っています。最後に、前側から腰椎を覆うように金具を入れて、医療用のネジで固定するという手順です。ただ痛んだ椎間板を取り除くだけではなく、人工的に椎間板を再生して、腰椎と腰椎の間を適切な高さに保つ、というわけです。

移植した骨がきっちり着くまでは、プラスチック製の硬いコルセットをする必要がありますが、入院は2週間程度です。あとは2ヶ月半ほど家庭でコルセットをして過ごします。そして、ウッズの場合、主治医から、手術から8か月ほどで痛みを感じずにプレーできる、と言われていたようです。この方法は、多くの調査で良好な結果が得られることが報告されています。

★リスクは?

効果の高い手術ですが、リスクもあります。この手術自体は、すでに1932年に報告されていましたが、1970年代以降も、リスクが高いものとして見られていました。実際、お腹側から迫るので、腹部の動脈、静脈を傷つけないようにするなどのほか、神経損傷にも注意が必要で、やはり細心の注意が必要な手術であるようです。ただ、2000年代に入ってから手術法の細かな改良が進み、リスクも減っているようです。

★どこで受けられる?

整形外科や脳神経外科に力を入れている病院では行われています。患者さんは、今の主治医と相談し、病院を紹介してもらうのが良いと思います。もちろん、保険適用になっています。実際、すべり症の患者さんは、高齢であっても手術を早く行う人が増えているそうです。

 

※一口にALIFと言っても、厳密には、幾つかの手術方法があります。ここでは一例として、上記の手術方法をご紹介しました。実際にこの手術を検討される方は、主治医の方によく相談してみてください。

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20181001080130

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