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「宿命」で音楽家の生きざまを見た瞬間:千住明さん

コシノジュンコ MASACA

2018年10月14日(日)放送

千住明さん(part 2)
1960年東京生まれ。東京藝術大学作曲科を卒業、東京藝術大学大学院を首席で修了。作曲家・編曲家としてグローバルに活躍され、日本アカデミー賞優秀音楽賞のほか、受賞作多数。現在は東京芸術大学の特任教師でもいらっしゃいます。

出水:千住さんは大学時代に作曲家・編曲家としてプロデビューしてらっしゃいますが、デビューのきっかけは?

千住:1年目ですね。大貫妙子さんの『アフリカ絵動物パズル』のアレンジメントをやることになって。ちょうど坂本龍一さんが『ラストエンペラー』にかかっているときで、もともと大貫さんのアレンジは坂本さんがやってらしたんですが、代わりにやらない?みたいな感じだったと思います。大貫さんのことは学生のころから大好きだったので、いきなりラッキーだなと思いました。

出水:先方からお話があったんですね?

千住:1回目の時はそうですね。本当に誰もやってないことをやろうと思って。妹の真理子に頼んで、多重録音のオーケストラを頼んだ。すっごい贅沢な録音をしたんです! 20回ぐらい弾かせちゃった(^^)

JK:兄妹だからできることね(笑) ふつうじゃ大変なことよね。兄妹の愛が実ったってことね。

出水:それ以降、TVやCMで楽曲を担当されただけでも数えきれないものがあって、TBSのドラマ作品だけでも「高校教師」「砂の器」「ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ」・・・全部数えると??

千住:いや、ちょっとわかんない!

出水:ピックアップするのは難しいかもしれませんが、印象に残っているものを挙げていただけますか?

千住:いくつかキーポイントになっているのがあって・・・デビューの時に映画『二・二六』をやらせていただいて、『二・二六組曲~昭和へのレクイエム』というアルバムを作ったんです。いきなりロンドン・フィルハーモニーと録音して、それはメモリアルでしたね。その次が『機動戦士Vガンダム』。これは富野由悠季監督というカリスマ監督と丸一年ガッツリ組ませていただきました。「これがあったから今の僕がある!」っていうのがガンダムなんです。最終的にはこれも組曲にして、ポーランドのオーケストラと録ってます。


千住:その後にきたのが、TBSの「砂の器」ですね。この中で流れるピアノ・コンツェルト「宿命」というのがあって、歴代に何作かあるんですが、松竹映画『砂の器』の「ピアノと管弦楽のための宿命」が名曲過ぎるんです。それを現代に甦らせて、なおかつ超えるものを、というオーダーが来た。しかも僕に決まったのが12月24日で、1月7日から放映スタート。

JK:ええ~?! そんな!

千住:最終回、中居君がこの曲を弾くシーンを撮るのが1月24日で、そこまでにきちっと仕上げろ、と。しかも、今の時代に合うようにっていうのは、ちゃんとしたコンツェルトにしろということで、25分のコンツェルトにしました。これはキツかったですね~!

JK:1月に、お正月もなにもないわね!

千住:まぁ、TVドラマはわりとそういうスパンでオファーが来るんですけど、クリスマス・イヴから書き始めて、正月もなく・・・ちょうどまだ母が生きてて、みんな仕事で誰もいなくて、家には僕と母2人きりだったんです。母があまりにもつまらないって言うもんだから、大晦日に年越しそばを一緒に食べに行った。その時間だけが唯一自由な時間でしたね! それ以外はどっぷり「宿命」を書いてた。だから、この曲には母と食べた年越しそばのイメージがめちゃくちゃあるんですよ(笑)

JK:ふふふ! でも集中力があるっていうか、時間を無駄にできないですもんね。やっぱり制限されてると出てくる。

千住:そう! ただ、本物のコンツェルトを書いたから、スタジオミュージシャンじゃなく本当のソリストに弾かせなければならない。クラシックのミュージシャンはだいたい1か月前に渡してくれって言うんですが、唯一、羽田健太郎さんだけが「数日前でいいよ」って言ってくださった。羽健さん、これが最後ですよ。その後TV番組で一緒にこの曲を演奏することがあって、羽健さんが最後の最後、病院から出てきて亡くなる数日前に、TV収録のリハーサルで弾いたのがこの曲なんです。もうほとんど弾けなくて。本人は弾いてるつもりなんだけど、テンポも音も出てこなくなった。オーケストラの人たち全員が悲しそうな顔をして・・・あの天才が弾けなくなった瞬間を見た僕たちは警鐘されたというか、羽健さんが身をもって音楽家の最後を見せてくれた。それを僕たちだけが見た、というのが「宿命」の思い出です。

JK:千住さん、今まで過去に「これはMASACA?!」っていう経験や思い出はありますか?

千住:そうですね・・・音楽をやったけど、音楽以外のところでへぇっと思うことがいくつかあって。さっき言った羽健さんの最後もそうです。音楽なんかどうでもいい。

JK:人間性ね。

千住:そう、人間性。もうひとつ僕は『乱歩』っていう映画で、ヴァーツラフ・ノイマンっていう巨匠の指揮者がいるんですけど、チェコフィルのノイマンといったらそりゃ有名で。彼が僕の曲を演奏してくれると言ってくれた。その時も、彼はほとんど振らないで、皆のまでで「はぁ~」と呼吸をするだけで。その程度で音が鳴りだすんです。

JK:ええ~!! すごーい!!

千住:僕はこれが音楽の正体だと思った。僕の曲じゃなくてもいい、何だっていいんだけど、こうやってみんなで作ったものが、「気」みたいなものが音楽なんだと。これを僕たちは追い続けるんだよ、というのを教わった瞬間です。

JK:指揮者ってそういう立場なんですか?

千住:そうですね。僕はそれまでの音楽はテクニックで書いてたから、こうなればこうする、って頭で考えて書いてた。それ以外にこういう世界があるんだ、って。別に曲なんかどうでもよくて、媒体なんか何でもいいんだけど、僕たちはアーティストとして何を最終的に作るのかといったときに、決して音楽じゃないんだな、というのを知らされた瞬間。結局そういうことで兄妹を見てみると、兄貴も妹も同じものをやろうとしているのが見えてきた瞬間です。

JK:それぞれの生き方は違っても、みんな気合は一緒。

千住:気というか、登っていく山は一緒というか・・・いわゆる巨匠たちに会うと、音楽家じゃなくても、そういうのは見ようと思えば見えてくる。最終的に「あっ、答えはここにあったか!」と。そういうものですよね。・・・今のでマサカになります??

JK:なります(笑) 藝大に入ったのがマサカかと思ったけど。

千住:あっ、それもマサカですね。その話もしときます? 僕は、真理子が12歳でデビューしてから何年間も、TBSの「オーケストラがやってきた」っていう番組に真理子と一緒について行ったんですね。そうすると、山本直純先生のアシスタントの人たちが頭を掻きむしりながらアレンジをしてくるわけですよ。直純先生の場合はヘッドアレンジでやっちゃうので、譜面台の横で書いとけ! みたいな感じなんです。これを見て僕は、こういう身体を使った作曲家にはなりたくない、音楽はやりたいけど作曲家じゃないな~と思っていたら、マサカ! 自分が同じことをやってるなんて!

JK:そういうことね(笑) やり方は違ってもね。

千住:僕は修行としてやったんですけど、まったく同じことを僕もやった。いまもアレンジャーをやるときは全く一緒ですよね。髪の毛を掻きむしりながら、まったく寝られない。結局、みんな寿命は短いんですけど(笑)

JK:じゃあ長生きしてください(笑)いま最高にノッてるって作品は?

千住:いまは一生懸命中国のミュージカルをやってます。

JK:中国のミュージカル??

千住:これがイチから作り直すのでものすごい! 日本ではこんなことできません。中国の劇団から頼まれて、日本人スタッフは僕一人なんですが、原作が日本の『白夜行』なんです。あれが中国語のミュージカルになります。11月30日から12月11日まで上海で公演して、オーケストラで生演奏をやって・・・今まさにプロダクションをやりながら、ワークショップをやりながらなので、どんどん変わっていくんです。演出家も香港の人だし、美術監督もダニエル・オースティンというKバレエもやっている人で・・・これは面白いですよ!

JK:中国も面白いですね。インターナショナルなことを本当にいろいろやるようになってるから。

千住:それで丁寧にやってる。こんなに丁寧にできるんだと思って。僕も日本で何本かミュージカルをやってますけど、TVドラマと同じように何週間で終わらせる感じです。それを、これだけ全部作り替えようという一大プロジェクトです。

出水:何曲ぐらい書かれたんですか?

千住:N番号的には29曲ぐらいなんですが、デモがバージョン6とか7ですから。平均すると5倍、100曲は超えてると思います。

JK:うわ~。それも中国語で。

千住:ええ。ただ、中国系のアーティストは世界を目指してる人たちで、ふるいにかけられてきた人たちだから、すごいレベルが高いですよ。すごく面白いです。みんなでコラボレーションしてる感じ。

JK:それは中国にいかないと見られないんですね?

千住:いまのところは(^^;)でもいずれ持ってきたいと思っています。

JK:中国っていえば京劇だけど、新しいものってあんまり見ないですもんね。

千住:多分、中国初のオリジナルミュージカルです。ただ、台本も中国語と日本語と英語で作っているので、出来ないことはないです。

=OA楽曲=
M1. ピアノ協奏曲「宿命」第1楽章より抜粋
  演奏/羽田健太郎(ピアノ)、小松長生(指揮)、日本フィルハーモニー交響楽団