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匂いのある作品【冬の夢】

ラジオシアター~文学の扉
毎週日曜、夜9時からお送りしている
【ラジオシアター~文学の扉】

今週は先週に引き続きゲストに鶴見辰吾さんをお迎えして、フィッツジェラルドの『冬の夢』をお届けしました。

主人公のデクスターは自分にそれなりの自信があり、きらめくもの自体を手に入れたいと思っている若者。
美しく金持ちの家に育ったジュディの存在を、探し求めていたきらめきそのものだと思い、彼女に恋をします。

今回のラジオドラマは比較的少ない登場人物でお届けしました。
その分、登場人物二人の関係性が変化していくお芝居をじっくり楽しむことができました。

鶴見さんはフィッツジェラルドの作品について「不思議な作品なのだけれど、その匂いがしてくる」と仰っていました。
ジュディがもう美しくないと知り、夢が消え去ったあとのデクスターのモノローグには、まさにフィッツジェラルドの作品の匂いが感じられました。
人生を綴ったあとの静かなクライマックスで、虚しさをドライに描きます。

原作を読むと、他の短編も含め実にリアルを淡々と書いているように感じられました。
偉人の伝記を読んでいるのかと錯覚してしまうほど。
そう思っていると『冬の夢』の終盤に「デクスターが若い頃抱いた夢と直接関係のない事も混入しているものの、これが彼の伝記ではないことを忘れないで頂きたい」という一文が。
周囲の人々や環境の情景描写も含めて、表現豊かな文学作品であることを念押しされたようでした。
物語の最後に付け加える形でデクスターの夢が消え去る下りを書くあたりは、非常にクールだなと感じます。

フィッツジェラルドの作品には奇妙な物語も多いのですが、読者は心動かされながらもリアルに感じることと思います。
「事実は小説よりも奇なり」とも言いますが、人生はこんなものだと言ってのけられた感覚です。
それが押し付けがましくないところが魅力的。
皆さんも是非、原作の短編集をお手に取ってみてください。

by 田上真里奈

 

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