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「体で東京を感じています!」オーストリア人のタクシードライバー ウォルフガング・ルガーさん(東京・日の丸交通)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
1月12日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、東京のタクシー会社「日の丸交通」の外国人ドライバー、ウォルフガング・ルガーさんをお迎えしました。日本で暮らして30年以上というルガーさん。ずっと新潟のスキー場周辺で働いていましたが、突如としてタクシードライバーに転身。東京の街を走っています。

ウォルフガング・ルガーさん

ルガーさんは1967年、オーストリア生まれ。ウィーンから60~70キロ南にあるテルニッツという自然豊かな田舎町で育ちました。「日本人から見ればオーストリアは、ウィーン以外はどこも田舎ですよ。テルニッツは山があって、新潟の湯沢に似てますね」とルガーさん。小さい頃から映画やテレビや本で日本のことを見て憧れていたルガーさんは地元の工業専門学校を出たあと、日本の金属加工機械メーカー「アマダ」のオーストリア支社に就職します。ところが知り合いから「日本においでよ。新潟のスキー場でインストラクターをやらないか。夏は山のレストランで働けるから」と誘われ、1987年、19歳のときに日本にやってきました。オーストリアではスキーは国民スポーツだったのでそちらには自信がありましたし、人と話すことが大好きなルガーさんにとってレストランの仕事も魅力的だったのです。こうして越後湯沢や岩原などのスキー場で冬はインストラクター、夏はレストランのコックやツアーコンダクターとして働きながら、30年間、新潟で暮らしてきました。その間、日本人女性と結婚し、娘も生まれました。

50歳を迎えた2017年、娘さんの大学入学などもあって、ルガーさんは奥さんの実家がある埼玉に引っ越してきました。新しい仕事を探していたところ、東京・文京区に本社を置く日の丸交通が外国人ドライバーを募集しているのをインターネットで見つけ、「これは面白いかな」とすぐに面接に行き、その年の11月に入社しました。

近年、タクシー業界はドライバーの人手不足と高齢化が深刻さを増しています。全国のドライバーの平均年齢は毎年上がり続けていて、いまは58.7歳。いちばん多いのは60~64歳のドライバー。このままいけばあと10年で4人に1人が70歳以上のドライバーになるといわれています。さらに、増加する訪日外国人へのサービス対応の充実という大きな課題も抱えています。こうしたことから外国人ドライバーの採用がここ数年で広がってきました。全国ハイヤー・タクシー連合会はいまは全国で500人ほどしかいない外国籍ドライバーの倍増しようと取り組んでいるところです。日の丸交通が2017年から外国人ドライバーの募集を始めた背景にはこうした動きがあるのです。日の丸交通はいま1500人のドライバーがいて、そのうち外国人ドライバーは40人ほどだそうです。

タクシードライバーになるのは簡単ではありません。まず、合格率30~40%といわれる二種免許を取得する必要があります。そして東京(23区と武蔵野市、三鷹市)で営業するタクシー会社のドライバーになるためには公益財団法人「東京タクシーセンター」が実施する4日間の「新規講習」を受講し、その中で実施される「地理試験」(地理+法令)に合格しなければいけません。この地理試験がさらに難関。道路の名前、交差点名、地名、有名な建造物の名前、公園、各地の名所、旧跡、駅などを憶えるだけで日本人でも大変なのに、外国人、特に漢字文化圏以外から来ている人にとってはかなりハードルが高い。それだけでなく、法律(道路運送法、タクシー業務適正化特別措置法など)、安全(交通事故の防止や事故が起きたときの措置など)、接客(基本的な心構えや高齢者・障害者などの対応など)といったことについての試験もあるのです。8割以上の正解で合格となりますが、合格率は40~50%とこちらも厳しい。これを母国語でない日本語で受けなければいけないのですから大変なことです。

ルガーさんは3ヵ月間の社内研修を経て二種免許試験に合格。そして日本人でも1回でパスすることは難しいといわれる地理試験も一発合格。晴れて去年(2018年)4月にドライバーデビューしました。

久米宏さん

「タクシーの運転手さんって、お客さんが乗るまでどこに行くか分からないわけですよね」(久米さん)

「そうなんですよ。だから最初の1週間ぐらいは『なに言われるかなあ…』とか思ってたんですよね」(ルガーさん)

「去年の4月、最初に乗ってきたお客さんのこと憶えてます?」(久米さん)

「もちろん。はっきり憶えてますね。足立区の国道4号線でスーツケースを持った女性の方に停められて、『東京駅八重洲口。高速使って』と。いきなりそれだけ(笑)。いまは、ただまっすぐ行けばいいだけだと知ってますけど、そのときはお客さんにはっきり『すみません、今日が初めてのお客様なんです』って言いました(笑)。そうしたら『分かりました、教えます』って言ってくれましたね。ラッキーでした」(ルガーさん)

ルガーさんがお客さんからいちばんよく言われることは「道、知ってる?」なんだそうです。試験の難しさを知っていたらとてもそんなことは言えないと思うのですが、ルガーさんはそう言われても悪い気持ちにはならないそうです。

スタジオ風景

「そうやって聞かれると会話に入りやすいので、マイナスなこととは思っていません。お客さんに道を教えてもらうことも結構ありますから、ありがたいですね。道が分からないときには正直に聞きますけど、ひどいことを言われたり、嫌な思いをしたことはありません」(ルガーさん)

普段タクシーを利用するときにほとんど意識していないことですが、行き先を告げるときに地名を言う人もいれば、番地、通りの名前、坂の名前を言う人もいます。お店や建物の名前を言う人もいますが、東京だと建て替わっていることも多いので、以前の東京の地理を知らない外国人ドライバーには苦労するところです。また、地名を省略して言われることもあって、例えば「二子玉川(ふたこたまがわ)」(東京・世田谷区)はよく「にこたま」とも言われるのですが、外国人にはそれが分からないそうです。「秋葉原」を「アキバ」と言うのも同じです。こうしたことは経験を積んでいくしかないようで、ルガーさんたち外国人ドライバーは私たちが想像する以上に苦労が多いのです。

でも売上に関しては、外国人ドライバーは日本人に負けていないんです。日の丸交通の方の話では、ルガーさんをはじめ外国人ドライバーの売上は日の丸交通のドライバー全員の平均の売上よりも高いのだそうです。それは営業スタイルの違いが影響しているのではないかと、日の丸交通の方は教えてくれました。

日本人ドライバーは自分のホームグラウンド的なテリトリー(例えば大きな駅のロータリーなど)を持っていて、お客さんを降ろしたあとはまた自分のテリトリーに戻ってくる人が多いのだそうです。一方、外国人ドライバーたちは自分のテリトリーというものに執着せず、お客さんを降ろしたらそのエリアで流し、またお客さんを乗せて別の場所に行ったら今度はそこで流す…という人が多いそうです。ルガーさんもそのタイプ。結果的にはそのスタイルのほうが多くの売上につながっているのです。

ウォルフガング・ルガーさん

「ぼくがそうするのは、もっと東京の街を勉強したいんですよね。ですから、いろいろなところに土地勘をもっと作りたい」(ルガーさん)

「でも1年近く乗って、もうずいぶん憶えたでしょう」(久米さん)

「いやあ、でもまだまだですよ。たぶん5年乗っても、まだまだだと思います。住宅街の奥に入るといつも知らない道が出てきますよね」(ルガーさん)

「東京の世田谷の道に入っちゃって、バックもできない、前にも進めないというような経験はあります?」(久米さん)

「ありますね。世田谷の狭い道。目黒もそうですね」(ルガーさん)

「日本の道はどうしてこうなんだって、頭にきたりはしませんか?」(久米さん)

「頭にくるとかそういうことは全くないですね。それより、どうやって出ようかなって(笑)」(ルガーさん)

とてもソフトにお話しするルガーさんですから、お客さんにもいい印象を持ってもらえていると思います。久米さんが途中、国道4号線を水戸街道と間違えて言ってしまったとき(日光街道が正しい)、ルガーさんはそれを指摘せず、優しく微笑んでいました。間違っていたことに気づいた久米さんが、どうして指摘しなかったのか尋ねると、「私が言う立場ではないと思って…」とルガーさん。オーストリアより日本で過ごした年月のほうがはるかに長くなって、日本人的な配慮が身についてしまったようです。

スタジオ風景

「お客さんも会社の人もみんな優しくしてくれます。たぶんぼくは、観光で日本に来た外国の方や、IT企業で働いている外国人とは全然違った東京を見ていると思います。ぼくはいま毎日、楽しいです。東京を体で感じています」(ルガーさん)

ウォルフガング・ルガーさんのご感想

ウォルフガング・ルガーさん

緊張しましたねえ(笑)。いまはほっとしました。久米さんにうまくリードしてもらいましたので、あっという間に30分経ちました。

思ったのとは別の方向にも話がいきましたね、家族のプライベートの話。でもいい機会でした。ありがとうございました。

「今週のスポットライト」ゲスト:ウォルフガング・ルガーさん(外国人タクシードライバー)を聴く

次回のゲストは、「食品ロス」問題の専門家・井出留美さん

1月19日の「今週のスポットライト」には、まだ食べられるのに大量に廃棄されてしまう「食品ロス」の問題に取り組んでいるジャーナリストの井出留美さんをお迎えします。去年12月にお越しいただきましたが、まだまだ話をお聞きしれなかったという久米さんたっての希望で、2度目のご出演です。

2019年1月19日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190119140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)