お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • コラム
  • 音声あり

おすすめラジオクラウド 荻上チキ「#WeToo JAPAN ハラスメント調査報告」

ラジオクラウド

こんにちは。文字起こし職人のみやーんです。僕が選んだラジオクラウドのおすすめコンテンツを紹介するコーナーの第39回目。
今回は『荻上チキ Session-22』より、「#WeToo JAPAN ハラスメント調査報告」です。


荻上チキ:今日は夕方ぐらいからちょっとお出かけをしてまして。今日のお出かけはですね、厚生労働省で記者会見をしてきたんですね。で、この記者会見がどういったものなのかというと、#WeToo Japanという活動している方々がいらっしゃるんです。NPOというよりはプロジェクトチームなんですけれども。タレントでエッセイストの小島慶子さんとか、様々な方々が日本のハラスメントを少しでも減らしていこうというようなその啓発活動というものをしていまして。この「#WeToo」っていうのは要は「#MeToo」のさらに発展バージョンということで。

「私たちはどのように減らしていこうか」っていうような格好で、その加害者とされる立場の人でも、あるいは自身の被害経験というものを告発するでない人たちも、「じゃあこれから、どう減らしていこうか」と言うような議論を展開されている活動があって。

南部広美:そうですか。はい。

荻上チキ:その#WeToo Japanの方々に僕がの依頼を受けてまして。それ依頼っていうのが、ハラスメントを減らしていくために、ハラスメントの実情を調査をしたいという。で、その実情を調査するにあたって、既存の研究結果とかでは明らかになっていないようなこと。なおかつ、社会的にいろいろな概念とか実態というものを広げていくひとつのきっかけになるような調査が何かできないかというようなことで、「じゃあ……」ということで僕が知り合いの研究者を。たとえば、この番組にも来ていただいている家族社会学者の永田夏来さんとか。複数の研究者に声をかけて調査をしたんですね。で、その調査の内容を今回報告するという、そうしたら会見を厚労省の記者クラブでやってきたんですよ。

南部広美:本日。そうでしたか。

荻上チキ:で、すでにいくつかのメディアではWeb上なんかね、報じていただいているんですけれども。この調査のポイントというものを、ちょっと番組のオープニングで少し紹介したいなと思うんですけども。通常、「ハラスメントって人間関係が一定程度継続するコミュニティーで発生するものだ」ということでいままで定義されてきたし、分析もされてきたわけですね。

具体的にはパワハラとかセクハラとか、そうしてものっていうのはその職場とか学校とか家庭とか、そうしたような状況の中で権力関係というのがそこにあって。で、明日からもこの関係が続いていく。だから逆らえないというような時に、その権力とかを使って言うことを聞かせる。「顧客だからNOということは言えないから……」とかっていうことで、性的な嫌がらせとかハラスメント、暴力とかあるいはパワハラとかを受けたりする。

南部広美:関係の固定してしまってるような。

荻上チキ:そうですね。で、そういったようなそのハラスメントがいろいろと注目されていたわけですけど。もともと英語圏では、そうではないハラスメントというのもいくつか紹介されていて。一見、権力関係が固定されていないような状況で、そうしたようなコミュニティーじゃないところでも、やっぱりハラスメントは起きる。その海外で注目をされている概念のいくつかの中に「ストリートハラスメント」っていうもうのがまずあるわけです。ストリートハラスメントというのは街中とかバスとか電車とか、そうしたところでいきなり受けるようなハラスメント。

南部広美:ああ、パブリックな場所で?

荻上チキ:そうです。クローズドな場所ではなくて、パブリックな場所で起きるようなハラスメントということですね。アメリカとかあるいはフランスとか、まあヨーロッパとかもそうかな。「キャットコーリング(Cat Calling)」っていうのが話題となったりしますけれども。女性が歩いてるだけで、次から次へと男性から侮辱的な性的な言葉をかけられる。それがただの誘い文句とかだけじゃなくて、「これから誰に抱かれに行くんだい?」とか「今晩、どうだ?」とかっていうようなことをバーッと投げかけていく。そうしたようなシーンというのが日常的に行われているんだということが、たとえばYouTubeとかにね、その女性の目線のところにカメラとかを置いて、そのままある通りを何十分か歩いてみたら、何件そのような声が飛び交うか……みたいな。

南部広美:ああ、実態映像みたいなことですか?

荻上チキ:そう。そういった実証の動画とかもあって話題になったりするんですが。日本でも、たとえばしつこいキャッチとかも含めて、声をかけることとか連絡先を渡されることとか、あとは痴漢なども含めた、やっぱりストレートでのハラスメントということでとりあえずくくってみたら、いろいろと共通して会う被害っていうものがあるわけですよね。じゃあ、それを調査してみようというのがひとつ。

南部広美:はい。

荻上チキ:それからまた別にオンライン・ハラスメントというものが実際に問題になってるんですけど。要はネット上で通常のつぶやきなんかをしているだけでも、いろいろな被害が来るわけですよ。女性だったら性的な声かけっていうものがTwitter上とかで行われるし、男性でも見た目に対する侮辱とかを全く知らない人からいきなりされるっていうようなこととかもあるわけですね。そうしたような実態を調査しよういう。

あとはそのセクシャル・コンセントと言って、これは「性的な合意」。あなたと私はこんな関係を築いていきましょうということを事前に結ばなければ、ハラスメントが生まれてしまいかねないので。そこを交渉しましょうねっていうこといま、呼びかけられてるわけですけど。現状、どういったセクシャル・コンセントに対する意識が共有されているのか? などなど、結構盛り沢山な調査を行って、それを発表したんです。

南部広美:はい。

荻上チキ:で、そうした調査の中で結構インパクトの強いものとしては、まずそのストリートハラスメントという格好で調査をすると、たとえば自分の体を触られる、体を押し付けられる、故意につきまとわられる、ぶつかられる、罵声を浴びせられる。あるいは、性器などを見せつけられると言ったように12項目を代表的な被害ということでピックアップして。その被害の経験のいずれかがある人というのは、女性の中で7割ぐらいいるわけです。男性でも3割ぐらいいるんですけども。その被害の状況というものがまず、把握できた。で、この被害というものは何と関係しているのか? というのも、いくつか調査したんですね。

で、非常にその強い関係が見られたのが、まずは「通勤時間と通学時間」なんです。で、本人がどんな格好してようが、通学時間や通勤時間が長ければ長くなるほどリスクが高くなるんですね。だから、本人のなかなかコントロールし難いような環境によって、そもそも遭遇リスクが高まっている。ということはそれだけ、電車とかバスとかストリートとか駅とかね、そうしたところの危険性っていうのは元々あるので。そこに滞在しているということ自体がもうリスクなんだということが前提としてあるわけです。

で、一方でよく、制服なんかを着ている学生に対しては「スカートを短くしないようにしましょう。そうしないと、痴漢にあいますよ」っていうようなことが言われたりするんですけれども、スカートの丈が短い人とそうじゃない人と比べると、若干短い人の方が被害にあうという風に言えなくもないという結果も出たわけですけれども。逆に言うならば、「スカートを長くする」というような対策をしたとしても、若干しかリスクが減らないっていうようなことも言えるわけですね。

で、逆に別の項目で「そもそも中学校時代どんな制服でしたか?」ということで、いくつの制服のタイプを聞いて。ブレザーとかセーラーとかね。あるいは制服がなかったとかっていうような項目もあったんですけどもそれらを比較してみると、そもそもブレザーだろうがセーラー服だろうが、制服である段階で被害にあう確率がものすごく上がるわけです。で、私服の場合だと被害の割合っていうのは減るんですね。

南部広美:そうなんですか。

荻上チキ:はい。これまでの人生での被害経験という点で言うと、私服の人が28.9%なのに対して、ブレザーだと48.7%。セーラー服だと47.2%なんですね。これが「自分の体を触られる」という、いわゆる痴漢の被害です。あるいは、「見ず知らずの異性から連絡先を渡される」というものだとブレザーが10%。セーラー服が10.3%。でも私服だと2.2%ということになるので、もう4倍、5倍ぐらいのリスクになるということになるわけですね。なので、「スカートの短さ」というものを議論するぐらいだったら、そもそも制服を着てるという段階でもうターゲットをされる確率がグンと上がるので、その是非というものも議論しなくていけないということも明らかになってきたわけですね。

後はそのオンライン・ハラスメントという点であれば、そもそもたとえばネット上、特にTwitterだと、罵倒とかあるいは性的アプローチを受ける割合がもともと高いっていうようなことが明らかになったりして。やっぱり本人が、たとえば「情報発信に気をつけましょうね」っていうことだけでなく、そうしたものが蔓延しがちなネット空間をどうして行きましょうか?っていうことが議論として必要だったりする。

あとはセクシャル・コンセントに関する調査。性的合意ですね。それに関する調査では、たとえば「次の行動のうち、『セックスをしてもいい』という同意が成立してるのはどれですか?」っていうようなことを聞いて。たとえば、「2人きりで食事」「2人きりで車に乗る」「露出の多い服を着ている」「2人きりで飲酒」「手を繋ぐ」「キスをする」。そして「どれも該当していない」っていうような、そうした項目で聞いているわけです。

で、「2人きりで食事」では合意を得られたと考える人が4.4%。「2人きりでお酒を飲む」が13%。「キスをする」だと64%ということなので、キスをしたら64%人は「それはセックスの合意でしょ?」っていう風に判断をする。でも逆に言えば1/3の人々が「キスはキスで別に合意じゃないよ」と捉えているわけですね。

で、調査者である私たちの意図としては、合意というのはあくまでも当人同士の関係なので、「こういうものをしたら合意だよね」っていうようなものを一方的に社会の通念で押し付けることが間違いなんだということは伝えたいことなんですけど……2018年の調査。で、今回2019年に発表をしたわけですが、2018年段階では、まだ64%の人が「キスをすれば合意だ」と思っているという現状がわかった。

だからそれを改善していくことが必要ですよねっていうような形でも、このデータは使えますし。あるいはその合意に関する性差というものもあって。たとえば「2人きりで飲酒をする」っていうことを性的合意だとみなす人は男性の方が多かったりする。

南部広美:そうですか。

荻上チキ:でも、「車に乗る」ということが合意だという風に判断する人は女性の方が多かったりする。それはそのジェンダーによって差が違うと思うんです。女性がたとえば「2人きりで車に乗る」っていった場合には、主に男性がドライバーでその助手席に乗るっていうことが想定されると、それがひとつの積極的な意思表示になるんじゃないかと考える人が多いから、こういったデータに出るというようなことも、たとえば解釈としてできたりするわけですね。などなど、いろいろなその今回、データを取って合意についてであるとか、ハラスメントについての実情というもの。あるいはその価値観というものを浮き彫りにしたんですね。

で、これをきっかけに、やっぱりいろいろなハラスメントを減らしていくために、なんとなくで何かを叩くとかではなくて、やっぱりその危険な状況にあるストリートやオンライン上の空間というものを何とかしましょうという議論と、あとは人々の合意というものはまだまだ得られていない部分があるんだけど、でも少数かもしれないけど3人に1人は少なくとも「キスをしようがそれは合意ではない」と捉えているんだから。じゃあ「キスをしたら社会的合意としてセックスの同意だ」っていう理解は、それは間違ってるよねとは言えるわけですね。

南部広美:うんうん。

荻上チキ:で、これが仮に9割だろうが、99%だろうが、合意としてはいけないわけです。本人同士の問題ですから。だけど「ここは合意だ」っていう風に一般的に議論されてしまうような状況というものをどういう風にこれから改善していくことができるのか。そうしたようなひとつの議論の材料として、今回のような調査が使われると嬉しいなということで発表したんですね。

ちなみにその年齢と、たとえばここ1年間で痴漢の被害にあったというようなものをクロスして集計すると、10代の人はこの1年間に22%の人が痴漢の被害にあっているということになるわけですね。で、40代の人は7.5%ということになるわけです。よくネット上とかで、たとえば女性専用車両の話とか痴漢の話をしたりする時に、40代の女性とかが「女性専用車両を使います」っていう風に発言したり、あるいは「痴漢、怖いです」って発言したりすると、なぜか叩かれるみたいな出来事があるわけですよ。「もうそんな年齢じゃないでしょ?」と言わんばかりに。

南部広美:そうですね。

荻上チキ:でも、10代から40代になっても逆に言えば、痴漢被害経験率は1/3にしか減らない。7%の人が被害にあうということは、これはかなりの確率だという風に言えると思うんですね。そういったような状況の中で、具体的な被害にあってる人。あるいは年齢を重ねていけば重ねていくほど、これまでの累計被害件数が増えるので。40代になると、何かしらの被害を……たとえば体を触られてるという経験を持つ人って、約60%になるわけですよ。10代の頃は26%ぐらいだったのが、それが60%ぐらいになるという。そうした過去に恐怖を味わう経験をした人が、いますぐ経験があるかどうかわからないけど、合理的選択として危険から逃れるということを選択をする。そのことを笑うなんてことはできないですよね。

南部広美:おっしゃる通り。

荻上チキ:だから、こういったようなデータからも、年齢に関わらずリスクというのは一定程度付きまとってしまうようなぐらい、電車とかバスとかストリートってまだまだ危険がある。安全に安心して移動の権利というものを行使できるのがこの社会のよりベターなあり方だと思うんですけど。まだこの社会はそうなっていない。なので、その環境をより良くしていきませんか?っていう議論にこういったデータを活用してほしい。

逆に「そんな、自意識過剰な」とか「お前が気をつけろよ」みたいな形で被害者を追い込むような議論というのは前向きではないし。こういったようなデータからも「別にそれは自意識過剰でもなんでもなくて、被害の実態としてあるんです」というようなことが浮き彫りになる。そうしたようなことをきっかけに、データというひとつの事実を浮き彫りにするアイテムを使って、幅広くハラスメントと議論を前に進めていこう。そうしたようなことを今日はお話しさせていただいたというわけです。

南部広美:具体的提案ということですね。

荻上チキ:ちなみに、この調査のためにはクラウド・ファンディングで協力してくださった方に調査費用を支えていただいてるわけです。で、今回12000人規模のアンケートを行ったので、12000人規模のアンケートでしかもいまのような問題数の多い、設問数の多いアンケートとかだと、調査費に数百万かかるんですね。お金として。で、このクラウドファンディングはまだ継続中なんです。もう調査報告は今日したんですけども、でもその目標金額にはまだ達していないということで。「調査費、集まったらやります」じゃなくて、ここからは「こんな調査をしたんで、何もならおひねりいただいて、一緒に支えたっていうようなことにしてください」っていうので。まだ継続はしてるんですね。

南部広美:あらかじめ、こういう内容が出ていますっていうポイントなんですもんね。

荻上チキ:なので、いまのところまだ目標金額まで達成してないので、ン10万とかは我々の自腹という形になってるわけです。なので、これを少しでもカバーできると助かるなというようなこともそうですし、またこの活動を通じて啓発などを進めていきたいということで、ある意味では自分もコミットしますという宣言として、こういったクラウドファンディングを活用していただけるとありがたいなという風に思っております。

キャンプファイヤーというサイトでですね、「#WeToo JAPAN」というプロジェクトネームで活動していますので、もし気になる方はちょっとチェックしていただいて。そしてネット上でもいくつかのウェブサイト……バズフィード・ジャパンさんとか、ハフィントンポストさんとか、あとは弁護士.comさんとかね、そうしたところがすでに詳しく報じてくれたりもしているので。そうしたところで気になる方は是非、目を通していただけると嬉しいなと思います。

まあハラスメントに関する調査だったんですけど、個人的関心である学校の校則との関係で言うと、やっぱり制服との関わりということが調べられたのは今回はひとつの調査で二つうまいみたいな、そうしたものがあるんですけど。調査の内容を見ると別に「うまい」っていう言葉で表現するのは不適切だなって思うぐらいシビアな……僕の調査した実感としては「地獄か!」っていうような、そんなような数字が出たんですが。それが共有されたことで議論が前に進むといいなと思いますし、また私もね、いろんな形でこういった結果を生かしていけるような動きができればなと思っております。


個人的にはこの調査結果から浮き彫りになったハラスメント被害の実情、知らないことだらけでした。いままで世間で一般的に言われていたこととのギャップも大きいようなので、この調査をきっかけにハラスメント被害を減らすための運動が盛り上がることを期待します。荻上チキさんの調査報告、ぜひラジオクラウド音源でチェックしてみてください。

荻上チキSession-22「#WeToo JAPAN ハラスメント調査報告」

ラジオクラウドアプリ誕生!