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憲法改正、ぶっつけ本番の国民投票で大丈夫? 中身の議論の前にルールを決めなきゃ! 南部義典さん(国民投票広報機構・代表)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
2月9日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、シンクタンク「国民投票広報機構」代表で政治学者の南部義典さんをお迎えしました。

南部義典さん

辺野古埋め立ての是非を問う沖縄県民投票で「どちらでもない」という選択肢はアリ? 憲法改正の国民投票は今のルールではできないって本当? 国民投票制度の第一人者である南部さんにいろいろお聞きしました。

南部義典さんは1971年、岐阜県生まれ。京都大学文学部を卒業し、大学院在籍中に国会議員政策担当秘書の資格を取得。衆議院議員の政策秘書を務めました。2007年に制定された「国民投票法」では法案の起草から立法まで携わり、その後も国民投票制度の研究を続けています。憲法改正については改正の中身の議論ばかりが先行して、国民投票の制度や実際に行うときのルールの問題点がほとんど注目されていないということで、南部さんはインターネットをはじめ各メディアで積極的に発言しています。また2月24日に行われる沖縄の県民投票についても問題点を指摘しています。まずはその注目の沖縄県民投票の話題から。

久米宏さん

「沖縄の県民投票なんですが、5つの市が『賛成』『反対』の2択じゃいやだ、違う意見もあるだろうというようなことで、参加しないと言ってきました。沖縄県としてはなんとか全部の自治体で投票したいので、3択にした。そうしたら反対していた5市もOKして、結局全自治体で投票が行われることになったんですが、あれにはちょっと問題があるとお考えですか?」(久米さん)

「あれは沖縄県と県内41市町村とのけんかのような対立になってしまったわけですね。うちの市では投票や開票事務をお断りします、というようなことがずっと言われて。その原因は地方自治法という法律にあります。その法律を直さない限りは、都道府県のレベルでああいう県民投票をやろうとすると同じような問題がまた起こり得るという状況です」(南部さん)

「『どちらでもない』という選択肢にも問題がある」(久米さん)

「あれは、うちの自治体で投開票を引き受ける代わりに『賛成』『反対』のほかに『どちらでもない』という3つ目の選択肢を増やせということで、条例が再び改正されて増えてしまったわけです。あれは当然、投票を分散させようという意図でやられているので、非常に良くない例です。ですから今後、住民投票が行われる自治体ではあまり真似をしてほしくないなと正直思っています」(南部さん)

「どちらでもないという意見は汲み上げる必要はないということですか?」

「どちらでもないということはイエスでもなければノーでもないということなんですけど、政策決定や住民としての意思決定に関わることはまさにイエスかノー、オンかオフかが問われるものです。だから『どちらでもない』という選択肢は論理的にあり得ないわけなんです。2月14日に告示になって2月24日の投票日までの10日間で、賛成するのか反対するのかしっかりと見極めていただいて、そのいずれかに投票していただくのが筋だと私は思います。論理的にはそういうことです。これは政策決定ですから」(南部さん)

南部さんの著書

そして国民投票のお話。南部さんは憲法改正のための国民投票の法整備に関わりました。議員の方も国民もメディアも、憲法改正の中身の話は熱心なのですが、改正の手続きの進め方や憲法改正が発議されたあとのルールなどはほとんど知られていません。国民投票のルールは賛成派・反対派、双方にとって中立・公正でなければいけません。そして賛成派にも反対派にもルールをちゃんと説明してお互いが納得するような形でキャンペーンが進んでいくことが望ましいですよね。そのためには手続きの問題を専門に広く知ってもらうための活動を地道にやっていく必要があると考えた南部さんは、2017年に「国民投票広報機構」というシンクタンクを立ち上げて、講演会などを行っているのです。

スタジオ風景

「国会は憲法改正の発議をするところまでは考えているんだけど、発議したあと投票までどういう手続きを踏んで、誰が投票にかかる費用を出して、どういうふうにやっていったらいいのか、ということは国会議員は考えていないんですね」(久米さん)

「考えてないですね」(南部さん)

「国民投票と聞いてみんな、総選挙のときと同じように近くの小学校とかいつもの投票所で投票するんだろうなと思ってるんだけど、実はそんなことさえ決まっていないんですね」(久米さん)

「選挙のときには政見放送が流れますね。時間の枠がどれくらいあって、平日これぐらいの時間帯にやっているということはだいたい有権者のみなさんはご存じです。国民投票でも政見放送と似たような番組をやることにはなっているんですが、その最大で180日間とされている国民投票運動期間中は毎日そういう番組を流すのか、どの時間帯でやるのか、期間の途中で放送内容を変えるのか、そういうことを国会は全く決めていないんですよ」(南部さん)

「憲法改正のときに賛否を呼びかけるCMを流すことに関して民放連は、民放の良心に従って決めると言ってますけど、そのへんもまだ決まってないんですか」(久米さん)

「はい。極端な例を言いますと、憲法改正賛成を呼びかけるCMがすごく視聴率の高い時間帯に安い料金で大量に流れるとします。他方、憲法改正に反対するCMは深夜のほとんど誰もテレビを見ていないような時間帯にものすごく高額な料金でしかも数回程度。こういうことになるとメディアの力というものが賛成派と反対派に歪んた形で使われていることになってしまうんですね。こういった民放のコマーシャルのルールというのは一般の視聴者には分からないんですよ。どういう料金設定で、放送回数とか放送される枠とか、誰が決めているんだろうと」(南部さん)

「カネのあるスポンサーが出すというのが民放の常識ですから、賛成派は反対派かは分かりませんが、カネのあるほうが大量のCMを流すということが十二分にあり得ますよね」(久米さん)

「はい。今の国民投票法でも手当てはしているんですが、どうしても法律の抜け穴をかいくぐるような形でCMが流れてしまう。ですから国会のほうでルールを変えるか、もしくは民放連のほうで独自のルールを決めていただくかということになるんだと思います」(南部さん)

「海外では国民投票のときのコマーシャルに関してはどうなんですか」(久米さん)

「全面的に禁止する国のほうが多いです。久米さんがお金の話に触れましたけど、選挙であれば終わったあとに収支報告があるので、誰がいくらお金を出したとか誰がスポンサーになっているかというのは事後的にチェックをすることができるんですね、賛成派であろうが反対派であろうが。国民投票はそもそもお金の制限がなくて、収支報告という制度そのものもないので、だれが真の広告主なのか、資金源なのかということはチェックしようがないんです。この点について私は、イギリスの制度などを参考にして上限を決めたり、広告主の明示を決めたり、あとは収支報告も当然やるという制度にしないといけないと思います。EU離脱の国民投票をやったイギリスのように、国民投票はあとでいろんな混乱があってもやり直しがきかないんですね、選挙と違って」(南部さん)

国民投票は私たち自身が政策決定者となるので、それが即、決定事項となります。それなのに制度やルールの運用に欠陥や課題が山積みというのが、日本の国民投票法の実情なんです。そこに久米さんは非常に危機感を覚えると言います。

スタジオ風景

「日本では国民投票を1回もやったことがないというのは、ぼく最大の問題だと思うんです。憲法改正の国民投票をやるんだったら、やっぱり1回か2回、まったく別のテーマでリハーサルをやったほうがいい。だって投票所も決まってないんでしょ。誰が投票の費用を出すかは決まってるんですか?」(久米さん)

「まず憲法改正以外のテーマで国民投票をやるべきだという議論は昔からあります。憲法改正よりもまずは原発再稼働の是非だとか、数年前まででしたら天皇の退位の問題とか女性天皇の問題もありましたし、国民で直接賛否を決める政策レベルのいろんなテーマがあると思います」(南部さん)

「リハーサルをやらずにいきなり憲法改正の国民投票というのが不安だというもう一つのかなり大きな理由は、投票率が分からないということなんですよ。もし憲法改正の国民投票をやって投票率が50%未満だった場合。例えば40%ぐらいの投票率で憲法改正賛成がその過半数を取ったとして、全有権者のたった25%の賛成で憲法が変わっちゃっていいのかっていうことです。投票率に縛りはないわけですから。いきなりやるのはどうしてもまずいという結論になるんです、ぼくは」(久米さん)

「現行法ですと、投票箱を開いてみて賛成票が1票でも多ければ、もうそれだけで過半数となります。有権者の10人に1人しか投票していないのにその過半数といったらもう本当に低い数字です。それで成立してしまうというわけです」(南部さん)

「投票率が何%であろうと、過半数を取ったほうが勝ちなんです。投票率ってどのぐらいいくんですかね」(久米さん)

「実は今から23年前、沖縄で県民投票を一度やっているんです(1996年。日米地位協定の見直しと米軍基地の整理・縮小についての賛否を聞きました)。あの時の投票率が60%。イギリスのEU離脱を聞いた国民投票は72%。大阪都構想の住民投票が66%。だいたい60%から70%。やっぱり最低限それぐらいはないといけないでしょう。特に憲法というのは日本の根本規範で、日本の統治機構の基本となる法規範。それを国民が直接決めるわけですから、あまりにも低い投票率、得票率でそれが決まってしまうということになるとそれは相当な問題ですね」(南部さん)

「例えば60%以下の投票率だったら不成立という条件を付けるというのは無理なんですか」(久米さん)

「それはできます。国民投票法の改正か、もしくは憲法改正まで踏み込むかですけど。今は単純な過半数で決めるというルールなので、それに加えて一定の賛成の数を条件とするということは必要だと思います。私もその意見には賛成です」(南部さん)

スタジオ風景

「地方自治体の方が、今国民投票をやられるといちばん困るのは何ですか」(久米さん)

「実務的な話ですけど、国民投票をやりますということで国から都道府県や市町村に実費と手間賃を払わないといけないんですね。予算を自治体に流して、自治体に事務を投開票をやってもらう。その予算を付けないといけなんですけども、実はその基準額、実費と手間賃をいくらにするかという根拠法がないんですよ。国民投票に関して」(南部さん)

「それは総選挙にならってということになるんでしょ」(久米さん)

「そうなるんですけども、今は法律そのものがない。そのことに国会議員も気づいてない可能性があって、非常に恥ずかしい話だと思うんですけど」(南部さん)

「基幹データを変えるかなんかして(笑)」(久米さん)

「基幹データではなく、これは法律の根拠が必要なんですね。私は選挙のときに開票立会人というのをやったことがありますけど日当で8800円が出るんですよ。その根拠が法律にあるんです。誰にいくら払いなさいとか、開票場でこういう施設を使ったら会場費でいくら補助するというのが全部法律で金額が決まっているんです。選挙に関してはその根拠法があるんですけど、国民投票についてはまだ整備されていないので、もし今、国民投票を実施しようとしても自治体にお金が流れないわけです。そうなると自治体は自腹を切らないといけないんですよ」(南部さん)

「何度も同じことを申し上げて恐縮なんですけど、やっぱり憲法改正の国民投票をする前に最低1回は別のテーマでリハーサルしないと、これは危険すぎると思うんです。やったあとで『しまった!』ということが出てきても手遅れですから。みんなが関心を持っているようなことで国民の意見を聞きたいというテーマを見つけて1度リハーサルをしないと、絶対まずい。ぼくは南部さんのご本を読んでそう思ったんです」(久米さん)

「今回の沖縄の県民投票でも協力しないという自治体が出てきて、その請求代表者の1人の方がハンガーストライキを始めたということがありました。そこまでしないとこの住民投票の目的が達せられないのかと思いました。これはそもそも地方自治法という制度にいろんな欠陥があるんですね。そういうのを徹底的に見直さなければいけないし、国民投票法も今の条文のままではできません。運用の問題もいろいろ残っています。ですから一度、論点の棚卸をしてですね、国会でちゃんと議論をして与野党できちんと合意形成をして、憲法改正の中身の話をするのはそれからだと私は思います」(南部さん)

南部義典さんのご感想

南部義典さん

国民投票や県民投票という非常になじみのないテーマを久米さんが分かりやすい切り口で取り上げていただいたので、私もすごく話しやすかったです。リスナーのみなさんも、今の国民投票の問題点についていろいろお気づきがあったんではないかと思います。

国民投票は選挙と似ているようで違うんですよね。そのイメージづくりを、今日の番組をきっかけにしてリスナーのみなさんも深めていただければ、ニュースが面白くなると思います。今日はありがとうございました。




「今週のスポットライト」ゲスト:南部義典さん(「国民投票広報機構」代表、政治学者)を聴く

次回のゲストは、「宮本溶接塾」塾長・宮本卓さん

2月16日の「今週のスポットライト」には、いま数が足りないといわれる町工場の溶接職人を育成している東京・江戸川区の「宮本溶接塾」塾長・宮本卓さんをお迎えします。宮本さんは溶接の技術を活かして宇宙開発のプロジェクトにも携わっています!

2019年2月16日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190216140000

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