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「どちらでもない」という民意はどう解釈すればいいのか?

森本毅郎 スタンバイ!

住民の声をどう解釈するか?「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」で、1月29日(火)、レポーター近堂かおりが、『「どちらでもない」という民意はどう解釈すればいいのか?』をテーマに取材しました。

★バンクシーで賑わう印西市「双子公園」

この3連休、大変賑わった場所があります。それは千葉県印西市にある双子公園。印旛沼のほとりにある小さな公園。こちらの公衆トイレの壁に、今話題になっている謎の芸術家、バンクシーの落書きが描かれていると騒がれて、この3連休、ひっきりなしに人が訪れました。

印西市双子公園。バンクシーを見に来る人がたくさんいました!

正体不明、神出鬼没、世界中のあちこちで、建物の壁にスプレー塗料のようなもので、風刺画を描くバンクシーが印西に? 銃を持って直立歩行しているサルと、その足元には子ザル。タテおよそ1.6m、幅およそ1mと結構大きな〝落書き〟。

(みなさんと同じように、アップでもパチリ!)

きのうは雪も残ってとても寒い中、大勢の人が入れ代わり立ち代わり公衆トイレの前に陣取って、盛んにカメラで撮影していました。

●「これが見たくて来ました。これかもしれないと思うと嬉しくなりますね。でも私も結構、偽物じゃないかと思ってますけど。」
●「消される前に見ておきたかったのはありますね。写真を撮っていて、後ろはトイレかと思うとちょっとアレでしたけど(笑)。」
●「今回話題になる前からバンクシーを知っていて、たまたま近くにあると聞いたので、本物、偽物にかかわらず見に来ました、とりあえず。」
●「近所なんだけど全然気がつかなかった。あそこのトイレの脇にあるよって言われたから、よし見に行こうって。雪解けたから。でもこれ、なんかシュッと何か吹き付けた感じね。なんかあやしいね(笑)」

このバンクシー風の落書きが先月、東京・港区の防波堤で見つかって、本物なら海外では数億円の値がついているということで、東京都はこれを保管して、本物かどうか鑑定に出しました。

一方、千葉県のほうは、公園を管理する土木事務所が『一般的な落書きと同様に扱い、鑑定には出さない。時期を見て消すことを検討する』ということで、今のうちに見ておこうとたくさんの方が雪の中集まってきたのです。

★鑑定ナシで消す。賛成?反対?どちらでもない?

インターネットでは、【消して当然】【いや、残しておくべき】と両論飛び交っています。そこで私は、きのう現地に見に来たみなさんに、この落書きを、鑑定することなく消すことに
【賛成】か【反対】か、聞きました。

40代女性
「本物だったらもったいないので【反対】。」
30代女性
「【反対】です。まず鑑定してから消すか消さないかを決めたらいいと思う。こんなにみなさんが来て楽しんでいるので。
このへんあまり何もなくて、いい観光名所じゃないかなって思います。」
30代女性
「私は本物ではないと思っているので【賛成】です。あくまで本物があちらこちらにあってほしいですね。鑑定はやったほうがいいかな。それで明らかにこれは違うものですよって消してもらえれば。」
40代男性
「そうですね、それでここに人が集まればいいんですけど、それをきっかけに落書きが増えてしまうのはよくないので、どっちともいえないんですけど、 ただ消すのは仕方ないので【賛成】です。」

鑑定ナシで消す。賛成?反対?どちらでもない?

鑑定せずに消すことに【賛成】という方が、15%。一方【反対】という方は、85%。圧倒的多数が【反対】。
ただ、さきほどのお声の中でも、賛成の人も反対の人も何かしら【条件】を付けてお答えになる方が多かったんです。鑑定に出したうえで…とか、もし本物なら…とか、本当はどっちともえいないんだけど…とか。

そこで賛成・反対の2択のほかに、もう一つ【どちらでもない】という選択肢を増やして聞いてみたんです。そうしたらなんと、85%だった【反対】は54%に、15%いた【賛成】は、なんと0%に減ってしままいました。その票がみんな【どちらでもない】に流れて、46%集まりました。

同じ住民のお声なのに
【賛成】15%、【反対】85% というのと、
【賛成】 0%、【反対】54%、【どちらでもない】46%
というのでは、ずいぶん印象が違うと思いませんか。片や「反対派が圧倒的多数。賛成派は少数」という印象です。でも片方は「反対派が約半数。賛成派はいない。残りの約半数は賛成でも反対でもない」。これだと「声をあげる人は多くが反対派で、賛成派は誰もいない。あとは無関心」という印象を受けるかもしれません。【どちらでもない】という選択肢が一つ加わるとアンケートの結果は変わってしまいますし、その結果から受ける印象も違ってきます。

★【どちらでもない】という選択肢は・・・

ところで、この【どちらでもない】という選択肢、あさって告示される沖縄県の県民投票(普天間基地の移設に伴う名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票)で、当初の2択から一つ増やされた3つめの選択肢。バンクシーの落書きとは重大さも内容もまったく違いますが、【どちらでもない】という選択肢を増やすと投票行動や結果に影響はないのか、専門家に伺いました。国内外の投票制度を研究している慶応義塾大学経済学部・教授の坂井豊貴さんのお話です。

坂井豊貴さん
「単に人々の意識とか世論調査だったらあっても構わない。世論調査は細かく調べること自体が目的だから。でも住民投票というのは住民たちが意思表示する機会なわけですよね。意思表示というのはするだけではだめで、意思表示の結果が第三者に伝わらないといけないわけです。ところが【どちらでもない】という選択肢は第三者からは解釈しようがないですよね。人々は【どちらでもない】という選択肢に込める思いは様々だと思うんです。でも残念ながら、第三者にはその込めた思いは分からない。せっかく人々が意思表示をしたのにもったいないですよね。だから結局、そういうふうに解釈しがたい選択肢が入ることによって、住民投票のインパクト自体が薄れてしまうわけです。」

この沖縄の県民投票の結果に法的な拘束力はありません。今回の投票は住民の意思をはっきり示すことだけが目的です。だからこそ意思表示の結果は誰もがきちんと解釈できるものでないといけない。そういう選択肢を作ってあげなければいけないと坂井さんは言います。【どちらでもない】という選択肢が、何も言っていないように見えてしまっては、ダメなのですから。

★2択でも、すでに狭められた選択肢なのです。

さらに坂井さんは、もう一つ大事なことを指摘します。

坂井豊貴さん
「あとは【賛成】【反対】だけでも実は沖縄の人たちの意思というのは、きちんと表示できていないんだということも本土の人間は理解しなきゃいけないことだと思います。例えば、あの選択肢の中に「県外」というものはないわけです。あくまで辺野古の埋め立てを賛成するか反対するかで、要するに【現行(普天間)でいくか、辺野古で行くか】みたいな選択肢なんですよね。だからあの選択肢が用意されている時点で、実は選択の幅は沖縄の人にとっては非常に狭いんです。沖縄県外の人間があの投票を本当にシリアスに受け止めないといけないんです。」

県民投票の選択肢を作るというのは大変重要なものだということですが、今回の3択の結果を沖縄県議会は県民にどう説明するのか。【どちらでもない】を、どう解釈するのか、前もって示しておく必要もありますよね。

今回の住民投票の結果を、賛成派にとっても反対派にとっても、納得のできるかたちにつなげないと、本当に意味のない県民投票になってしまいます・・・。そんなことはあってはならないことだと改めて思いました。