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おすすめラジオクラウド Session-22「ピエール瀧・逮捕報道と薬物報道ガイドライン」

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こんにちは。文字起こし職人のみやーんです。僕が選んだラジオクラウドのおすすめコンテンツを紹介するコーナーの第42回目。
今回は『荻上チキ Session-22』の中から「ピエール瀧・逮捕報道と薬物報道ガイドライン」です。

俳優・ミュージシャンのピエール瀧さんが麻薬取締法違反で逮捕されたことを報じるメディア各社の報道姿勢に対し、荻上チキさんが自身が作成した「薬物報道ガイドライン」と照らし合わせながら、どのような形で報じるのが望ましいのか? 現状の問題点なども含めつつ、紹介していました。


塚越健司:こんばんは。塚越健司です。

南部広美:こんばんは。南部広美です。今夜のピンチヒッターは情報社会学がご専門、拓殖大学非常勤講師の塚越健司さんです。よろしくお願いします。

塚越健司:よろしくお願いします。

南部広美:荻上チキさん、溶連菌感染症のため体調不良ということで本来は今日まで大事をとってお休み……だったんですが、「大事なことなのでどうしても今夜のうちに話したいことがある」ということで、オープニングだけスタジオに来ていただきました。

荻上チキ:こんばんは。荻上チキです。この通り、声は順調にしゃべることができるんですけど、いまかすれ気味なのは3日間黙っていたので。久々にしゃべったなっていう感じです(笑)。

南部広美:なるほど。声がようやく出せたみたいな感じですか?

荻上チキ:そうですね。声がいまはじめてこんにちはした感じですね。で、今日、話したかったことは、まあTBSラジオのリスナーの方はずっとお聞きいただいてるかと思うんですけれども。ピエール瀧さん……今年はウルトラの瀧さんとして活動されている瀧さんがコカイン使用疑惑ということで、麻薬取締法違反で逮捕されたということになるわけですね。

リスナーの方もとても心配された方、多いと思いますし。今日、TBSラジオをつけていても、やっぱりみなさん、縁のある方が多いですので。非常にどういう反応したらいいのかということ。思い入れがあることと、でもそのメディアの人間としての責任があるということの両方で引き裂かれるようなコメントをね、されていた方がとても多いなという風に思ったんです。

南部広美:そうでしたね。

荻上チキ:この番組『Session-22』では私、荻上チキがたたき台を作って。で、薬物依存症問題の当事者や家族会、それからの専門家の方。そしてリスナーのみなさんと一緒にね、「薬物報道ガイドライン」というものを作りました。

南部広美:2017年でしたね。

荻上チキ:そうですね。で、このガイドラインに沿っていろいろなメディアの報道をより良くしていくことによって、より社会が薬物依存症について理解をしていく。そうしたような好循環が生まれてほしいなと思って、こうしたガイドラインを作ったんですね。で、今日実は1日、テレビ。いろんな番組を見てたんですよ。とにかく瀧さんに関する報道してるようなものがあれば、それを延々と見て。

塚越健司:結構Twitterでもね、それをつぶやかれたりしていて。

荻上チキ:そうです。とにかくメモってメモって。で、同じくガイドラインを作った仲間もその動画を全部録画しているので、みんなでチェックしながらガイドラインに沿った報道がされてるかどうか。あるいは今回の報道の問題点や課題点はどういったところがあるのか?っていうことをいろいろと整理をしていたんです。

塚越健司:どうですかね? 実際見てみて感想といいますか。

荻上チキ:まず感想としては、とにかくガイドラインを抜きにしても、報道としての問題点というのがたくさんあるということ。それから報道が具体的に何を目指しているのかが分からないような、そうしたような局や番組というのがとても多くありました。後ほど、ガイドラインをちょっと紹介するんですが。今回のような事件があると、通常の事件報道。「犯罪」として報道するというやり方と、それから芸能人のスキャンダルというような出来事として報じるようなやり方。こうしたようなやり方は、いろんなテレビ局がそれぞれ番組を作る中でもう慣れてる常套手段ですが。「薬物報道」と呼ぶべきような丁寧な報道というのはほとんどなかったです。

塚越健司:やっぱりスキャンダルとか、そういうものとかに引っ張られてしまって、本来伝えるべきことが少し削げ落ちるということもあったかな、みたいな。

荻上チキ:そうですね。「薬物依存症ならではの問題」というものを掘り下げられているという番組がほとんど見当たらなかったというのが残念な実情だったんですね。じゃあ、薬物報道ガイドラインがどういったものなのか。作った報道ガイドラインでは「メディアが避けるべきこと」というのと、「メディアがすべきこと。すると望ましいこと」の2つに分けてガイドラインを作ったんですね。そのガイドラインをですね、ちょっと紹介したいと思います。まずはメディアが避けるべきことを紹介しましょう。

南部広美:避けるべきこと。白い粉や注射器といったイメージカットを用いないこと。薬物への興味をあおる結果になるような報道を行わないこと。「人間やめますか?」のように依存症患者の人格を否定するような表現は用いないこと。薬物依存症であることが発覚したからといって、その者の雇用を奪うような行為をメディアが率先して行わないこと。逮捕された著名人が薬物依存に陥った理由を憶測し、「転落や堕落の結果、薬物を使用した」という取り上げ方をしないこと。

「がっかりした」「反省してほしい」といった街録・関係者談話などを使わないこと。ヘリを飛ばして車を追う、家族を追い回す、回復途上にある当事者を隠し撮りするなどの過剰報道を行わないこと。薬物使用疑惑をスクープとして取り扱わないこと。家族の支えで回復するかのような美談に仕立て上げないこと。

荻上チキ:というわけで、いくつか避けるべきことを紹介しました。で、私たちが普段、ニュースとかワイドショーとかを見ていると「あれ? 全部やってるじゃん。むしろこれを使わなければ、どんな薬物報道がありうるの?」っていうような印象も持つ方もいるかもしれません。それは後ほど「望ましいこと」ということで、「こうしたことならできますよ」ということ紹介したいと思うんですが。

たとえば「白い粉や注射器といったイメージカットを用いないこと」。なぜ、この記述が生まれたのか?っていうと、この社会にはすでに薬物を断ち続けてる方。つまり回復の最中にある方というのがたくさんいるんですね。そうした方々がそうしたイメージカットを見ることによって、再刺激される。つまり再使用するような……「もう1回、使いたい!」という欲求に駆られるようになってしまう。ということは、そうした報道をすることが、「薬物使用を止めたい」という思いで報道しているにもかかわらず、むしろ再使用を促してしまうというような間違った方向に行ってしまう可能性があるわけです。

塚越健司:逆効果を生んでしまうんですね。

荻上チキ:で、今日見た報道の中でも、そうしたイメージカットを一切使わずに報道してるものもあったんですよ。イラストであったりとか、あるいはそれすら使わずに淡々と、過去の瀧さんの活動の動画などを流して紹介するようなものもあったんです。つまり、そうしたイメージカットがなくても報道はできるんですよ。ただ、たとえば今日見ていた中だと、僕は全部を見れてるわけじゃないんですけどね。日テレの『news every.』とか、それからTBSの『Nスタ』なんかは、その紙幣をストローのような形に巻いたもの。「実際に吸引をするためにこうやっているんですよ」っていうのをわざわざ再現したものを撮影していたりであるとか。

あるいはNHKの『ニュース7』と、それから『ニュースウォッチ9』は白い粉をわざわざ撮った動画を紹介していたりということがあったわけです。たとえば『ニュースウォッチ9』なんかは先週かな? 薬物依存症問題を改善するためのイベントを丁寧に報じていたりもしたんですよ。それだけいい報道もしている一方で、その知見が翌週の報道に生かされてないというのは結構残念だなという風に思ったんですね。

あとは「『がっかりした』とか『反省してほしい』といった街録などを使わないこと」というのも挙げていますよ。これはなぜかというと、薬物使用者というのは不真面目な人とか、あるいは社会に対して反抗的な危険な人っていうイメージがありますけれども、概ねそうではなくて。むしろ、様々なプレッシャーを抱えたり、そうしたようなところから薬物というものの反復使用がやめられない方も多くいるわけですね。

塚越健司:あれですよね。「更生」っていう言葉がいっぱい使われていて。本来であれば「回復」っていう言葉を使うべきなんですけれども、やっぱりメディア報道だとまだ「更生」っていうのが多いということもチキさんもよくおっしゃってますよね。

荻上チキ:そうですね。つまり、「何か罰するべきこと」で「本人の心の弱さの問題」ということにしてしまっていて、「適切な支援や適切な手が差し伸べられていなかったんじゃないか?」という観点が抜け落ちてしまいがちだと。で、「がっかりした」とか「反省してほしい」とかっていう街の声をそういった形に流したりすることで、むしろ本人や、あるいは本人以外の使用者や回復者の方々を自己嫌悪により追い込むような言説というものを作っていくわけですよね。

たとえば、フジテレビの『バイキング』とか『プライムニュースイブニング』とか、そういったような番組がやはりこうした「がっかりした」とか「反省してほしい」とか、そうしたあの言葉を繰り返し使っていましたし。たとえば『ニュース7』なんかは、わざわざ瀧さんの地元の静岡市に行って、街の声を聞いて「がっかりしました」というような声を撮ってくるというような形で。

そうすることのニュースバリューって何の意味があるのかわからないんですよ。わざわざ街に行って、同じ地元だからということでコメントを取って。で、「がっかりした」って言ってほしいんでしょう? それで言ってもらって、「はい、使います」って……何の新鮮味もないし、何の報道価値もないし、薬依存症問題について解決をするための助けには一切ならない。

塚越健司:そうですよね。やっぱり悪と善の二項対立みたいなものをより際立たせてしまうというか。やっぱり……もちろん悪いことなんですけれども、すごく悪者になっていて。反面、見ている方は「自分たちはいい人間である」ということを印象付けることにもなると思うんですけども。でも、やっぱり薬物の問題というか、広く依存症の問題っていうのは誰でもなり得る。

一歩間違ったら……ということは誰にでもあるわけですよね。特にインターネットなんかでいろんなものが手に入れやすくなったりもするし。誰でも、どうにかなってしまうっていう前提を共有するだけでも、報道の仕方は変わるし。見ている方も「自分もそうなるかもしれない」っていうことを考えておくということは非常に重要だなと僕なんかは思うんですけど。

荻上チキ:そうですね。だからその芸能報道とか犯罪報道って、特にわかりやすい形ができてしまっていて。「悪い誰かを叩こう」っていうモードになってしまいがちだと。でもそうではなくて、薬物報道に求められるものは「医療目線」とか「社会問題としての目線」。それから「当事者の目線」。つまり私たちがどうやって改善していこうかという目線が大事になってくるわけですね。そこで薬物報道ガイドラインのメディアが放送すべき望ましいこと。そちらもリストアップしています。

南部広美:望ましいこと。薬物依存症の当事者、治療中の患者、支援者及びその家族や子供などが報道から強い影響を受けることを意識すること。依存症については逮捕される犯罪という印象だけでなく、医療機関や相談機関を利用することで回復可能な病気であるという事実を伝えること。相談窓口を紹介し、警察や病院以外の出口が複数あることを伝えること。友人、知人、家族がまず専門機関に相談することが重要であることを強調すること。

犯罪からの更生という文脈だけでなく、病気からの回復という文脈で取り扱うこと。薬物依存症に詳しい専門家の意見を取り上げること。依存症の危険性および回復という道を伝えるため、回復した当事者の発言を紹介すること。依存症の背景には貧困や虐待など社会的な問題が根深く関わっていることを伝えること。

荻上チキ:というわけで、今回はこの望ましいことをできているメディアというのは、放送メディアではほとんどありませんでした。毎日新聞や、あるいはBuzzFeedであるとか、紙媒体やウェブサイトでは相談機関を紹介した理であるとか、医療関係者のコメントなどが掲載されていることもあったんですが、やはり放送についてはまだまだ課題があるなと思ってます。

で、放送にも、「薬物依存症の専門家」とされる方が繰り返し、同じ方が複数の局に出ているということが今日、あったんですけど。その方は概して「元薬物取締役官」という立場で。要はやっぱり取り締まる立場の方なんですね。とてもお詳しい方でコメントが大きく外れてるというわけではないが、「使っちゃダメですよ」っていうメッセージがとても強くて。「使っている方はこうします」とか「回復というのはこういうプロセスですよ」というような、そうしたアナウンスっていうのはほとんどされていなかった。それが今日1日の、僕が見た限りでの報道ですね。

塚越健司:そうですね。やっぱり自分事と言いますか……どうしてもテレビとかで見ていてそういう報道が多い、他人事みたいな感覚になってしまうんだけれども。やっぱりどれだけ自分のことに近づけてこういったを問題考えられるかっていうことにどれだけ気を配れるかっていうことですよね。見ている方も、そういう目線で見るっていうことも非常に重要なんじゃないかなっていう風に。私もいくつか今日、テレビを見てましたけど。そういう感じがすごくしましたね。

荻上チキ:はい。結構印象的だったのが、いままでの薬物報道のあり方とちょっと違って。今回の薬物報道が各番組、ぎこちないんですよ。というのは、みんな瀧さんと知り合いの方が多いんですね。で、急に「瀧容疑者」っていう風に言っていく。ニュース原稿などで紹介する際にはなぜ「容疑者」という呼び方にするのか?っていうと、まだ犯人だとは決まっていないから「犯人ではないですよ」というエクスキューズをつけるため。「まだ容疑の段階ですから」っていう意味で「容疑者」なんです。

だから、普段から知り合いだった人が「いや、今回瀧さんがね……」っていう風に言う分には何の問題もないはずなのに、なにかいままで知り合いだった方も、いきなり「いや、瀧容疑者が……」みたいなことを言い出すわけですよ。それのぎこちなさっていうのが、多分これは僕の感触でもあるんですけど。普段やっぱり依存症当事者などに対しては「犯罪者で厳しくコメントしなきゃいけない」っていう切り口でいろいろなテレビに対して向き合ってきたから、「ああ、身内だから甘くしてるんだな」という風に思われないために、「しっかり厳しくしなきゃ!」っていう、そういった考えにたぶんとらわれていると思うんですね。

でも、僕が考えるのは逆で、もしたとえば瀧さんにシンパシーを抱いていて、心配をして。また彼とともに笑い合いたいと思うんだったら、他の容疑者とされていた様々な使用者に対しても、逆に同じような優しさで報道したり、向き合ったりすることが必要なんです。だから、回復の道があることを伝え、メディアが雇用を奪うことをやめる。そしていろいろな情報をむしろ伝達していくことで、使用そのものを防いでいく。そうしたようなことが必要になってきますね。

塚越健司:どうしても線引きっていうのを強く印象付けられてしまうということがあると思うんですけど。その線の引き方っていうのは非常にいま、問題になってるっていうことですね。本当にチキさんがおっしゃってるように、強い線っていうものに何か、見てる方も、出ている方たちも違和感を感じながらやっているっていうのをすごく感じますよね。

荻上チキ:そうですね。だからせめて明日以降、メディアの方にお願いしたいのは、報道のトーンとか、あるいは取材で得たもの以上のことをしゃべるというのはいきなりできないと思いますし。どんな専門家と繋がってるのかって、もうすでにメディアの方って新しくこういった事件があってから急に探すって実はできなかったりするんですよ。いざ、どんなリアクションをニュース番組とかがするかというと、普段どんな専門家と繋がってるかで質が変わってきてしまうところがある。

でも、たとえば厚労省のウェブサイトなどには薬物依存当事者などの相談窓口などが一覧とし載っているんですね。たとえばネット上で「薬物 相談先」。この2つのキーワードで検索をするだけで、たくさんのウェブサイトが出てくるという状況になってるんです。それを見て、たとえばどこかの電話番号をテロップで紹介する。別にコメンテーターとかキャスターの人が読み上げなくてもいいですよ。テロップでただ紹介をするだけでも、「そういった道があるんだ」っていう後味の捉え方も変わってきますよね。

あとは、たとえば精神保健福祉センターが各地域にあります。「そうしたところで相談できますよ」というようなアナウンスもあります。アスクとかダルクとか、あるいは家族の方だったら薬家連(全国薬物依存症者家族会連合会)とか。いろいろな立場によって相談できる、いろんな相談先というのがありますという。そうしたような情報を一言、添えてくれるだけでも社会の受け取り方は変わっていくと思うんですよね。

だから今日、どうしてもそのオープニングでこの話をしたのは、明日も報道祭りみたいなものが始まってるというか、続いてしまうからなんですよ。でも、明日の放送からそうしたような内容にぜひメディアの人は変えてほしいし。リスナーの方もね、たとえばテレビとかいろんな報道に触れる際には「ああ、この放送はこの一言は言ってくれたな。よしよし!」っていう形でそのメディアに対して「最後、一言言ってくださってありがとう」とか、「この情報をつけてくれてありがとう」とか。そうしたようなリアクションをしてくれると嬉しいなという風に思います。

南部広美:この薬物報道ガイドラインですけども、ウェブ上に文字起こしとか、音声でもアクセスすることができますのでね。「より詳しく」と思われた方はそちらもお願いいたします。

https://www.tbsradio.jp/108928

荻上チキ:はい。

南部広美:ということでチキさん、2時間生放送までは本調子ではないようなご様子ですので。明日はチキさん、本復帰して薬物依存問題を特集します。それまで、しっかり声と体力を温存しておいてください。

荻上チキ:というわけで塚越さん、あとはよろしくお願いします!

塚越健司:とんでもないです。ありがとうございました。

荻上チキ:ありがとうございました。

南部広美:荻上チキさんでした。


このような事件が報道されるたびにいつも薬物報道ガイドラインを繰り返し紹介する荻上チキさん。少しずつ浸透はしてきているようですが、まだまだ時間がかかりそうですね。チキさんがガイドラインをもとに各社のチェックをしなくて済む日が来ることを望みます。ぜひぜひラジオクラウドの音源でも聞いてみてください。

Session-22「ピエール瀧・逮捕報道と薬物報道ガイドライン」

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