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肺がん治療は、個別の薬を処方される時代

森本毅郎 スタンバイ!

肺がんは日本人のがんの中で、最も死亡数が多いがんです。年間およそ11万人が発症し、およそ7万5000人が死亡しています。そんな肺がんですが、かつては、ほかの臓器に転移したり再発したりすると、治療の選択肢がほとんどありませんでした。しかし、最近では今月1日に肺がんの新薬が発売されるなど、進化が続いています

そこで、3月25日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、肺がんの最新の治療薬について取り上げました。

★進行度合いによって変わる治療法

肺がんの治療は、進行度合いによって変わります。

早期のI期は、がんが肺の中にとど止まっていて、リンパ節への転移がない状態です。I期の前半では、治療として手術が行われ、通常は薬物療法は行われません。

続いてⅡ期は、がんが肺の中にとどまっていて、肺の中のリンパ節にとどまっている状態。

Ⅲ期は、がんが肺の周囲に広がっているか、気管の周りのリンパ節に転移している状態です。

I期の後半からⅢ期のごく一部までは、手術が行われ、その後、再発予防として、抗がん剤などの薬物療法が行われます。

★進化する手術

その手術ですが、これもどんどん進化しています。最近では、7割は、胸を開かない胸腔鏡手術となっています。胸に、3〜4か所、1センチ程度穴を開けて、そこから器具を入れて手術します。胸を切り開かないので負担が小さく、高齢の方にも適した手術です。

そして、早い段階の手術であれば今では、縮小手術といって、摘出を、がんの周りの一部だけに縮小する手術があります。

また、胸を開く手術、というと、皆さん、胸の真ん中を首の付け根あたりから、お腹のあたりまでザクッと開く状況を想像されるかもしれません。しかし、今はそんなことはなく、脇の下を、8センチ程度切り開くだけで手術できます。去年からはロボット手術も保険適用となっていて、どんどん進化しています。

がんになった方の中には、手術を恐れて、他の治療法などに行ってしまう人もいますが、最新医学を信じて、早期発見、早期治療をお勧めします。

★手術できない場合には?

手術できない状況となった場合はどんな治療になるか。肺がんが最も進んだ状態のⅣ期が、その場合にあたります。

Ⅳ期では、がんが反対側の肺や、肺から離れた部位(肝臓、副腎、脳など)に転移しています。こうなると、手術はできない状態で、薬物療法が中心となります。しかし、これも、昔に比べると、延命が期待できる治療薬がどんどん出てきています。

その主役は、何と言っても「分子標的薬」です。肺がんの中でも、ある種の肺がんでは、特定の遺伝子の変異が、がんの発生や増殖、転移に関わっていることがわかってきました。分子標的薬は、そうした遺伝子変異を標的として作用する薬で、特定の遺伝子変異を持っているがんには、とてもよく効きます。

特に、肺がんの中でも「腺がん」と呼ばれるがんでは、この治療が注目されています。「腺がん」というのは肺がんの中でももっとも頻度が高く、60%を占めています。肺は、気管支が30回ほど枝分かれをした先に、ガスを交換する肺胞がありますが、腺がんは、この肺胞に近いところ、つまり肺の奥の方にできるがんです。

肺がんの症状は、咳が出る、血痰が出るなどありますが、腺がんは奥の方にできるので、早期では症状がなく、血痰、空咳、胸の痛みに気づいた時にはすでに進行がんとなっています。そのため、手術が難しいこともあり、薬物療法が重要になっています。

★薬物療法の種類

分子標的薬を使うにはまず、遺伝子検査を行い、どの遺伝子に変異があるかを調べます。例えば「EGFR」という遺伝子があります。これはがん細胞を増やすスイッチに当たる遺伝子で、この「EGFR」に変異があると、常にスイッチがオンになったような状態となり、がん細胞がどんどん増えてしまいます。そこでこのスイッチを抑える分子標的薬が、いろいろ進化して出てきています。

最初に登場したのが2002年の「イレッサ」です。副作用が少なく、腫瘍が小さくなるとして衝撃的なデビューを果たしました。ただ、これには問題もあって、使い始めて10か月もすると、耐性ができてしまい、およそ5割の確率で、効かなくなってしまうのです。

そこで次に第二世代の薬が出ましたが、これは強い分、副作用も多い問題がありました。そうした中、去年、副作用が比較的少なく、最初の「イレッサ」よりも耐性ができにくい薬、「タグリッソ」が登場しました。さらに今月1日、新薬「ビジンプロ」の発売が始まり、選択肢が広がりました。特に新薬の「ビジンプロ」は、がんを抑えて安定した期間を長く保つことができます。臨床試験では全生存期間がそれまでの分子標的薬よりも3割も延びました。

★ほかの薬は?

肺がんに関係している遺伝子変異はほかにもいくつか発見されています。「EGFR」のほか、「ALK」「ROS1」「BRAF」などで、それぞれ変異があると、タンパク質など特殊な分子を出して、がんを増殖させます。

このそれぞれに、別々の分子標的薬が出ていて、患者さん1人ひとりにあった個別の治療法をする時代になっています。

昔は、遺伝子変異がわからず、「肺がん」だからといって、同じ治療をしていました。これは、一口に「パン」と言っても、食パン、フランスパン、メロンパン、カレーパンなど、様々な種類があるのに、全部、いちごジャムをつけて食べていたようなものです。遺伝子変異に合わせた治療、これが今のがんの主流になっています。

こうした事もあって、分子標的薬では、70〜80%と高い確立で効果が出ます。分子標的薬は、多くの薬が飲み薬という簡単さもありますし、さらに特定の分子だけ、狙い撃ちするので、正常な細胞へのダメージが少なく、そのため副作用が少なくて済む。こうした点も大きなメリットとなっています。そして、今まで治療のしようが無かったけど、分子標的薬で5年生存している方もいます。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190325080130

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