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素手で打ち続ける能楽師~大倉正之助さん

コシノジュンコ MASACA

2019年4月7日(日)放送
大倉正之助さん(part 1)
能楽師、大鼓奏者。1955年生まれ。室町時代から続く宗家大倉流の長男として生まれ、初舞台を踏んだのは9歳。能舞台での活動の他、総理官邸で行われる晩餐会での演奏、政府主催の演奏会など、国内外を問わず、様々なパフォーマンス活動など幅広く活動していらっしゃいます。重要無形文化財総合認定保持者。

JK:うわぁ、楽しみ! 何が始まるのかしら??

出水:今日は実際に鼓をお持ちいただいて、組み立てていただきます!

大倉:はい、これ毎回組み立てるんですよ。

JK:ああ~なるほど。終わったらまた取って、また組み立てて。

大倉:これは馬の革なんですけどね。表と裏。これを麻の紐で結わえます。

JK:そうとう擦り切れてるわね。

大倉:実は擦り切れるのにも問題があって(^^;)麻も、昔の麻と今の麻では違うんですよ。昔はちゃんと麻の栽培が各地でなされていたから、こういう調べ紐に適した麻が栽培されていたんです。ところが今は衣服用の麻がメインでしょう。そうするとどうしても繊維が弱いんです。だから擦り切れちゃう。

出水:あっ、柔らかい! 私たちが知ってる麻のイメージとは違いますね!

大倉:そう。本当はもっと硬いんです。

JK:オレンジの色は染めてるの? この朱の色が厳かで高貴ですね。あっ、すごい! こういう風になるの!

大倉:これは古いので室町。新しいので江戸時代のものです。

出水:えっ、新しいので江戸時代ですか?!

JK:まぁ~蒔絵がきれいですね~。牡丹と唐獅子。美術品よね! それを普通に使ってらっしゃる。それに、鼓をそうやって組み立てながら力も入りますよね?

大倉:まぁ……コツはいりますね(笑)この構造を見てください。両方が……ほら。

出水:ジュンコさん、貴重なものですから落とさないでくださいね! 通常は美術館のガラスの向こう側にあって、触れないものですからね(;・∀・)

JK:すごいモダン! シンプルで。琳派のものかもしれない。このすすきはそちらの大倉家の?

大倉:ええ、富士とすすきが家のシンボル。これは大倉流の扇ですが、柄が富士とすすきのすかし絵になってる。裏表でね。扇なんて人様に見せることはないんですけれど、そういうところにこだわっている。まぁ、これで組みあがって打つんですが……蕎麦も「打つ」っていいますが、鼓も叩くのではなく「打つ」って言います。

JK:ああっ、そうですね!

大倉:物理的には叩いてるんだけど、実は「打つ」っていうのは「歌う」っていう言葉から来てるんです。だからメッセージなんです。メッセージを発信している。

JK:へぇ~!! でも手で打つんでしょう? ふつうは何か、ゴムみたいなのつけて?

大倉:指革といって、最近の能楽師は指にサックをはめていますが、本来は使ってなかった。使い始めたのは戦後ですよ。

JK:大倉さんは素手でやるのが有名ですよね。

大倉:なんというか、他にも素手でやる方は京都にもいたんですよ。でもこの数年でリタイアされてしまった。だから、現存しているのは私だけ。天然記念物みたいになってきた(笑)

JK:でも大倉さんの場合は、鼓のすごさの音と、ご自分の声が強烈ですよね!

大倉:みなさんもやってるんですよ、「お手を拝借、よぉ~お!」って。同じなんです。

JK:この「ポンッ!」っていうのがすごい。宇宙に響きますよね!

大倉:響き方が、実は鼓の中で振幅を起こしてるんです。中でぎゅっと絞られて、後ろの皮にあたって、それがまた前に戻って。そして拡散。僕はこれを、宇宙のトーラス構造の原理じゃないかなと思っているんです。両方に広がって、中で絞られて、回る構造。宇宙のエネルギーの流れ方とすごく似ている。私の私見ですけれどね。

JK:宇宙が凝縮してるのね!体と鼓が一体化しちゃって。力が入るじゃない?

大倉:のどを鍛える鍛え方とかそういう教え方よりは、いわゆる真似ですね。小さいころから父も、「やってみろ」って言って、やってみると「違う」って言われる(笑)

JK:真似って学ぶことですよね。

大倉:そう。昔はよく「芸を盗め」って言われましたよね。人のを見てね。

JK:日本の邦楽は楽譜がないじゃないですか。だから、お師匠さんがいて、真似て、学んで、自分のものにする。外国では通じないですよね。

大倉:まぁ、楽譜みたいなものは一応あるんですけれど、それも下地が入っていないとわからない。

JK:私いつも不思議で。1人だったらアレンジしてもわからないけど、みんな一斉にバンッ!とやったりするじゃないですか。どこでどうなってるのかしらって。

大倉:一応「八ツ割」とかそういう風にはなってるんですよ。ひとつの拍を生み出すために、その前のコミがある。コミは見えないけれど、お互いが息を合わせる。そして、今度は拍。それが掛け声であって、間を作る。だから息で声を作って、声でお互いの間合いを測るんです。

JK:男の声じゃないと似合わないですね(笑)

大倉:最近は女性で活躍している人もいますよ。うちの流派にもいます。

JK:手にマメがいっぱいじゃない?

大倉:そんなでもないですよ。

JK:いや、でもやっぱり人間の手じゃないわね(笑)

大倉:昔はもっとすごかった。結局、指革をつけて打つようになったもんだから、皮も頑丈になってた。それを知らないで素手で打ってたもんだから、爪が全部割れちゃって。全部破壊されちゃった。それで手のひらに大きなタコができて、打ってると時々飛んでいくんですよ。

JK:……タコが飛んでいく?!

出水:はがれてしまうってことですか??

JK:だって、骨がもろくなるんじゃないかと思うくらい強く叩くでしょ。

大倉:逆に強くなるんですよ(笑)空手の突きと一緒で、どんどん強くなるんです。

出水:あえて素手にこだわっているのはなぜなんでしょう?

大倉:というか、もともと素手で打ってたというのがある。私は小鼓でデビューして、17歳で大鼓に転向したんですが、その時はまだ素手の方もいらっしゃったから、私も素手で打ってたわけですよね。指革も一時使いかけたんだけど、待てよ、と。音のことを「調べ」って言うじゃないですか。調べって何だろうと探っていくと、音は人間が決めているもの。ドレミとか。私はこの音を出したいとか、明確にビジョンがある。でも「調べ」にはないんです。調べっていうのは季節によって変化するもの、場所によって変化するもの。空気によって変わるもの。湿度が高い場所、雨の日、晴れの日、それによって皮のコンディションが変わりますよね。そうすると、自分はこういう音を出したいと思ってもそうはいかない。雨の日にコーンッ!と澄んだ音を出したくても、難しい。だから皮を火で乾かしたり、指にもはめて打つ。それは人間の知恵ですよね。これは「音」だと思うんです。「調べ」っていうのは、ある程度人間が努力をするんだけど、あとは自然にゆだねる。その時の自然条件が加味されて、「調和」したものが「調べ」なんです。僕はそう思っています。

=OA楽曲=
M1. 三番三 / 大倉正之助

「コシノジュンコ MASACA」
TBSラジオで、毎週日曜17:00-17:30放送中です。ラジオは、AM954kHz、FM90.5MHz。パソコンやスマートフォンでは「radiko」でもお聴きいただけます。