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選択肢のなかった患者さんに朗報。アトピー性皮膚炎の新薬について

森本毅郎 スタンバイ!

アトピー性皮膚炎と聞くと、子供の病気だと思う方が多いと思います。ただ、実は、大人の多くも悩んでいる病気なんです。その、大人のアトピーに向けて、これまでのステロイドが効かない患者さん向けに、去年、10年ぶりに新しい薬が出て、効果を上げています。

そこで、4月8日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、大人のアトピー患者向けの新しい薬についてお伝えしました。

★アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎は、ご存知の通り、かゆみを伴う湿疹の一種です。ただ、はっきりした原因が不明で、良くなったり悪くなったりを繰り返す厄介な病気です。痒いので、つい掻いてしまい、皮膚が痛々しく、見た目も辛くなるのが典型的な症状です。2014年の患者数は推計で45万6000人で、1987年の22万4000人からおよそ2倍に増えています。実際にはこの2倍から3倍は患者さんはいるとみられています。

そしてこのアトピー性皮膚炎には誤解があります。それは子供の病気と思われがちなことです。しかし実際には、大人のアトピー患者も非常に多く、厚生労働省の2014年の調査では、最も患者数が多い年齢層は、1歳から4歳で5万8000人ですが、2番目に患者数が多いのは、40歳から44歳で4万7000人となっています。40歳から44歳だけでこの数字ですので、もはや大人の病気でもあると認識してください。

アトピーのもう1つの問題は、辛さが伝わりにくい、ということにあります。痒い、というと、痛い、苦しいなどと比べ、軽く考えられがちです。しかし、アトピーの患者さんは、寝ている間もずっと皮膚をかいていて眠りが浅くなりがち。日常生活では睡眠障害で、日中の眠気や疲労感、かゆみによる集中力の低下などが起きます。精神的な負担としては、見た目の恥ずかしさ、気分の落ち込み、その先には、恋愛・結婚・就職・出産など将来に対する不安などもあります。ある調査では、13%の患者さんが「死んでしまいたいと思ったことがある」と答え、全体の8割が「精神面に影響がある」と答えていたということです。

こうした大人のアトピーの患者さんも、中心的な治療はステロイドの外用薬になります。しかし、ステロイドなどの標準的な治療では、必ずしも良くならない人も多いのが実態です。そうした患者さん向けにできたのが、話題の新薬「デュピルマブ」という薬です。

★新薬「デュピルマブ」とは?

ステロイドは外用薬、塗り薬ですが、このデュピルマブは注射薬です。専門用語では、抗体医薬と呼ばれるもので、病気の原因物質に抵抗する「抗体」を、バイオ技術を用いて人工的に作り出した薬で、注射によって体の中に入れて、体の中から、病気の予防や治療を行うものです。

具体的に説明するとアトピー性皮膚炎の原因は、1つではなく、皮膚のバリア機能の低下や、アレルギー症状を起こす物質など、複数の要因が絡み合っています。デュピルマブは、この中のアレルギー症状を起こす物質を抑える薬です。

アトピーの場合、皮膚から体内に入ったアレルギー物質に、免疫が過剰に反応して、免疫細胞が過剰に増えてしまいます。この免疫細胞から2種類のタンパク質が大量に放出され、それが痒みや炎症を起こします。この2種類のタンパク質が悪玉なのですが、そこで新薬のデュピルマブは、この2種類の悪玉タンパク質の働きを妨害して、痒みや炎症を抑えるという仕組みです。

臨床実験では、16週間後に、皮膚の病変は3人に1人の割合で「消えた」または「ほぼ消えた」となり、かゆみは、平均で半分以下になり、この効果は52週後まで続いたそうです。

また、臨床から関わった医師などによれば、皮膚の改善より、かゆみの軽減のほうが先に表れる、という特徴もあるようです。この、かゆみが早く消える、というのはアトピーにとっては重要です。先ほど、アトピーの原因の一つには、皮膚のバリア機能の低下もあると言いましたが、かゆいと、かいてバリア機能を低下させ、さらに悪化するという悪循環になるからです。その意味でも、注射薬のデュピルマブは効果的だと言えるでしょう。

★実際の治療は

実際に治療を受ける場合は、どうなるのか?

デュピルマブは初回600mg、2回目以降は半分の300mgを2週間ごとに注射します。ですので効果が出るまでは、2週間毎に通院する必要があります。

注射は、二の腕の外側、へそ周りを除いた腹部、太腿などに行います。これを続けて効果が出るのを待ちますが、ガイドラインによれば  「治療を開始して完治に近い状態が6カ月以上続いたら休止を検討する」とあります。これは、この薬で効果が出た場合は、注射をやめても効果が持続するケースが多いためです。

かゆみで掻いて、皮膚バリアを壊す悪循環から抜け出せる、ということです。

★副作用について

もちろん副作用には、気をつける必要があります。デュピルマブにより多く見られた主な副作用は頭痛、アレルギー性結膜炎などでしたが、ただ、こうした副作用は、高いものでも2%ほどだったそうで、比較的安全なようです。

★副作用以外の負担

むしろ大変なのは、通院の頻度、そして経済的負担が高いということです。デュピルマブは初回600mg、2回目以降は半分の300mgを2週間ごとに注射します。ですので効果が出るまでは、2週間毎に通院する必要があります。また、薬の価格は2回目以降の量で、1回8万1640円です。保険適用で窓口の支払金額は1~3割ですみますが、3割負担でも2万5千円くらい。「高額療養費制度」の対象ですのである程度安くできますが、それでも負担は軽くない…

★新薬デュピルマブの評価は

メリット、デメリット、双方紹介してまいりましたが、大人で、ステロイドも効かない、辛いという方には、もう1つの有効な選択肢です。

デュピルマブを使った患者さんでは、皮膚の炎症やかゆみなどが大幅に改善したほか、かきむしってごわごわになった部分のあった皮膚がつるつるになった人もいました。

症状がよくなれば、デュピルマブの場合は、注射を中断できる可能性もあります。デュピルマブを使い、ある程度皮膚の状態をいい環境に戻してから、適切な薬の使い方でコントロールしていく、ということができるようになるのです。

★ステロイド以外の選択肢として

なお、この注射薬は、ステロイドを止めて注射薬だけに絞る、というわけではありません。ステロイドなどの治療と併用しながら行うところに特徴があります。そこで重要なのが、ステロイド外用薬の正しい塗り方です。正しい塗り方の覚え方は「ワン・フィンガー、ツー・ハンド」です。軟膏を、人差し指の第1関節までをとると、手のひら2つの面積を塗る適量になります。ワン・フィンガー=1本の指の量で、ツー・ハンド=手のひら2つの面積という覚え方。こうした適切な薬の使い方で治療を続けることが、効果を高めるポイントです。

そのステロイドについては、アトピー性皮膚炎の患者さんの誤解が多いようです。例えば「皮膚が黒くなる」や「皮膚が厚くなる」などは誤解です。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190408080130

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