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自死をひきとめる牧師を描く映画「牧師といのちの崖」▼人権TODAY(2019年4月20日放送分)

人権TODAY

毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回のテーマは…『牧師といのちの崖』という映画を紹介します

自死をひきとめる牧師を描く映画「牧師といのちの崖」

映画「牧師といのちの崖」


 

和歌山県白浜町に三段壁(さんだんべき)という観光地があります。海に面して切り立った岸壁が続いて、洞窟などもある名所ですが、高い岸壁から飛び降りる自殺者が多いことでも知られています。映画『牧師といのちの崖』はその三段壁の断崖付近に「いのちの電話」と書かれた電話番号入りの看板を設置し自殺志願者の保護活動を続けているキリスト教の牧師に密着したドキュメント映画です。

この活動をしているのは白浜バプテスト基督教会の牧師・藤藪庸一(ふじやぶよういち)さんで、自身の活動について本も出しています。

「自殺志願者でも立ち直れる」

「あなたを諦めない」

飛び降りをためらって電話をかけてきた人がいるといつでも車でかけつけて話し相手になり、食事や泊まる場所などを提供し、社会復帰の手助けをしています。1979年から活動を続け、これまで900人以上を救っています。
    
藤藪さんが保護した人たちにどのように接しているか映画の中のあるシーンでこんなふうに語っています

映画「牧師といのちの崖」藤藪庸一さんの言葉より
 死のうと思ってる人は、ずっと死にたいって思い詰めてるわけじゃないです。三段壁に来たのは「もう死のう」と思って考えてきてるけど、そこからまたいろいろ考えるから波があるわけです。
 で、三段壁から離れてしまうと、もう死ぬ場所からひとつ離れてしまうわけですよ。死ぬ場所から離れる。死にたいと思ってた場所から離れてしまうわけです。
 ちょっと間が空くんですよ。もう今こそ死のうと思ってたところから、今日はちょっとあきらめるか………でもこれが大事なんです。これを積み重ねていくだけでいいんです。
 
 僕はたいていの人とはこういう約束をするんです。今からよかったらゆっくり休んでください。話を聞ける時間なら話をする。そのあとでこういうんです。「明日6時15分からミーティングがあって、うちに住んでる人はみんな集まる。その時に僕、声かけるから」要はひとつ約束をするんです。約束を繰り返していくことでその人をつなぎ止めて行くことができるんです。

 
    
 映画は、藤藪さんが牧師の仕事だけでなく、弁当店を経営し、かつて自殺しようとした人たちを雇って共同生活している日常を映し出します。
 人々が迷いながら暮らす様子や立ち直ってゆく過程を彼らの言葉を交えつつ描いています。自殺を考え、それをためらった人たちと向き合うことがいかに大変なことであるか、映画は伝えています。
 いっぽう藤藪さんは牧師ですが、映画の中ではジャージーを着ているシーンが多く、時に共同生活する人たちをきつく叱ったり、とても人間的な方だとわかります。
    
 この映画を撮った加瀬澤充(かせざわ あつし)監督は自身の師匠だったドキュメンタリー作家が自殺したことに複雑な思いを持ち続けていた中で藤藪牧師の活動を知り作品にしようと思い立ったそうです。
 

加瀬監督と煙草谷P


 
加瀬澤監督は映画についてをこのように語っています。

「牧師といのちの崖」 監督・加瀬澤充さん
人は死にたいのではなく、生きたいという気持ちをずっと持ち続けているというのは、取材してる中ですごく感じたことで、そのことを見つめて取材する中で進めていけた感じはありますね。
 自分の中でどこまで撮っていいかとか、倫理観が問われる現場だったのですごく悩んだし、その悩んだ過程そのもの、プロセスも含めて映画にしようと思いました。
 企画の立ち上げからでいくとと2012年から、6年ぐらいかかってます。時間をかけて話を聴きながら自分も一緒に生きていくことは何なのかなと考えて取材していく感じでした。

  自殺者の問題は簡単に答えを出すことができません。映画の結末はとても意外で、改めてそのことを考えさせられます。
    
    
 実はこの「牧師といのちの崖」が封切りされたのは今年1月です。いったん上映が終わって、3月下旬から追加上映が始まりました。ドキュメンタリー映画では異例の公開延長で、いかに多くの人が関心を持っているかを示しています。映画を見たお客さんは、こんな感想を語ってくれました。
    

「牧師といのちの崖」を見たお客さん
●(男性)兄弟が10年ぐらい前に(自殺)未遂をしてるんですよ。それで(自分にとってテーマが)深刻なんですよね。関わってる人は、必死だと思いますね。
●(女性)牧師さんがどんな感じで本気でやってるのかに興味があって、葛藤などない方なのかと思ってたら、いっぱい葛藤しながら仕事をしているのがいちばん印象に残りました。
●(女性)深さのような感覚を得ました。考えるためのヒントになったって感じですね。た。

  
 自殺については、私たちが普段、積極的に語ろうとしない問題だけに、こうした映画が改めて考えるきっかけになりそうです。
 深刻に生きづらさを感じている人たちに対して 我々が何ができるか、映画から受け取ってほしいと思います。
    
 映画「牧師といのちの崖」は4月27日まで中野区の劇場「ポレポレ東中野」で上映されています。
 その後も各地で上映が行なわれる予定です。詳しくは映画の公式サイトなどをご覧ください。

 映画「牧師といのちの崖」公式サイト https://www.bokushitogake.com/
 twitter https://twitter.com/bokushitogake
 ポレポレ東中野 https://www.mmjp.or.jp/pole2/

(担当 藤木TDC)