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ノートルダム大聖堂のステンドグラスは大したことはない? ステンドグラス職人・加藤眞理さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
4月27日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、ステンドグラス職人の加藤眞理(まこと)さんをお迎えしました。ステンドグラスは私たちの知らないことばかり。今回はステンドグラスの〝真理〟に迫ります?!

加藤眞理さん

加藤さんは1954年、大阪府高槻市生まれ。ステンドグラス職人。ステンドグラスとの出会いは子供の頃。父親に連れられて行った教会や通っていた耳鼻科で見た独特な光は、いつまでも心に残ったそうです。高校を卒業すると美術大学を目指しますが受験に失敗。その後は上京して語学学校へ通ったり、縫製会社で働いたりと、なかなか自分の進む道が定まりません。25歳のときに思い切って会社を辞め、貨物船に乗り込んでアメリカへ。3ヵ月の放浪の末、ニューヨークで出会った画家に勧められたのがステンドグラスの製作でした。そのまま日本に戻って偶然見たテレビで、翌年東京・渋谷にステンドグラスのスクール(ステンドグラスアートスクール・プロ養成所)が開校することを知るのですから、なんというタイミングの良さ。アートスクールで3年間技術を学び、その後はスクールの助手を務めながら作品も製作。1987年、33歳のときに、スクールの後輩だった淳子さんと結婚し、神奈川県川崎市に「葛籠屋工房(つづらやこうぼう)」というアトリエを構えました。加藤さんはこれまでに修道院や病院、ホテル、駅舎などのステンドグラスを製作。また、また数百年前の古いステンドグラスの修復も行っています。

ふくろう

ステンドグラスというと、色ガラスを組み合わせたものというイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。でもヨーロッパでステンドグラスといえば、色ガラスを組み合わせてそこに「絵」を付けたもののことなのです。それが「ヨーロッパ式」と呼ばれる伝統的なステンドグラスの技法です。ちなみに色ガラスを組み合わせて絵は付けないのは「アメリカ式」といいます。

色付け前
色付け

組み合わせた色ガラスの上に「グリザイユ」という特殊な顔料でアウトラインや影を付けていくのですが、製作途中だとガラスが汚れているように見えますよね。これが「ステンドグラス」(Stained glass=汚されたガラス)の語源なのです。

修復中

上の写真は現在、加藤さんが修復中のステンドグラスで19世紀にイギリスの工房で作れらたもの。描かれている人物の筋肉の影にご注目。人体の骨格や筋肉の構造を正確に理解した職人が絵を付けたものです。加藤さんによれば、あのレオナルド・ダ・ヴィンチにも引けを取らないぐらい素晴らしいデッサンの技術だそうです。先日(2019年4月15日)フランスのノートルダム大聖堂が大火災に見舞われ、ステンドグラスの損壊を心配する報道がありましたが、加藤さん曰く、ノートルダムのステンドグラスは多くの人が考えているほど全てが古いものではないそうです。というのは、今回の火災の前にも宗教改革からフランス革命の破壊に遭うたびに大改修が行われ、職人の目で見ると今残っているものは上の写真のような細密描写を施したものとは違うそうです。

ツール

ノートルダム大聖堂の火災報道についてもうひとつ。加藤さんがどこかの報道を見ていると、ステンドグラスの色を「ノートルダム・ブルー」ともっともらしく解説していた人がいたそうです。パリから100キロほど離れたシャルトル大聖堂の見事なステンドグラスが「シャルトル・ブルー」といわれていますが、ノートルダム・ブルーと呼ばれてはいないそうです。

加藤さんは、友人がパリを訪れるときはノートルダム大聖堂へ行くのであれば隣接するサント・シャペルへ行くこともお奨めしているそうです。サント・シャペルはパリ最古の12世紀のゴシック教会で、破壊を免れた素晴らしいステンドグラスが残っているからです。

ステンドグラスの製作は、私たちが考える以上に(というより、考えたことがないかも)とても難しいと加藤さんは言います。それは日本人は「透過光」でものを見る経験がほとんどないからです。私たちは普段、ものに当たって跳ね返ってきた光「反射光」を見て色を感じています。ところがステンドグラスは、窓に差し込む光を通して色を見ます。教会が身近なヨーロッパの人たちは幼い時から透過光でものを見る経験をしています。

加藤眞理さん

「ヨーロッパ人は、生まれて最初に見る大画面がステンドグラスなんです。よくデザインの世界で、ヨーロッパ人と日本人は色彩感覚が違うと言われますけど、それは透過光でものをみる経験をしていることが関係していると思います。私もステンドグラスを作り始めた頃は、透過光でものを絵をイメージすることができなかったんです」(加藤さん)

例えばバラの花をステンドグラスで作る場合、白いキャンバスに赤い絵の具でバラを描くときと同じように考えてしまうと(つまり反射光の見方のままでデザインすると)、背景には透明なガラスを使ってバラの花は赤いガラスを使うでしょう。ところがそれだと、透明なガラスから差し込む光が強いため、赤ではなく黒ずんだ花に見えてしまうのです。これが透過光と反射光の違いなのです。加藤さんは透過光で絵をイメージできるようになるまで5年かかったそうです。

さらにステンドグラスの色合いを決めるのは、単に「赤」「緑」「青」などの組み合わせだけではありません。窓の方角やその土地の、季節、天候などによっても、その光の見え方は大きく違ってきます。フランスでステンドグラスが発展したのは気候の影響が大きいと加藤さんは言います。フランスは空気がからっとしていて光が明るいため、ステンドグラスが美しく見えるそうです。スペインやイタリアは日差しが強すぎてハレーションを起こしやすい。日本は湿度が多いため、日光が屈折して弱くなり、電球色のような感じになるそうです。

スタジオ風景

ここまでステンドグラスの絵付けや色の話をしてきましたが、教会などの建物に設置する作業は大変な重労働となります。また、ヨーロッパでは教会に関わる仕事ということでステンドグラス職人が人々からとても尊敬されているそうです。こうしたこともステンドグラスになじみの薄い私たちは知らなかった話でした。

加藤さんがステンドグラス製作の道に進むまでには、様々な人との出会いが影響していました。アメリカ放浪中に有名なジャズシンガーのアニタ・オデイさんと偶然出会って1週間ずっと一緒に過ごしたエピソードに、スタジオは笑いが絶えませんでした。

加藤眞理さんのご感想

加藤さん夫婦

久米さんがすごく事前に勉強なさって質問も的確でしたので話しやすかったです。例えばステンドグラスの本場はどうしてフランスなんですかとか、そういうところですね。

ぼくの海外の放浪のこともご存知でしたし。家内の出番があったのが意外なところでした。ありがとうございました。

「今週のスポットライト」ゲスト:加藤眞理さん(ステンドグラス職人)を聴く

次回のゲストは、外国語辞典編集者・頴川栄治さん


5月4日の「今週のスポットライト」には、外国語辞典の編集者・頴川栄治(えがわ・えいじ)さんをお迎えします。大手出版社で英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、タイ語など、20~30冊の辞典の編集を担当。とにかく辞典への愛情がすごい方で、仕事とは別に、今までにない引きやすさを追求した究極の和英辞典づくりに取り組み、なんとたった一人で30年がかりで完成させました。

2019年5月4日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190504140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)