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「光触媒」が世界を変えた! 52年前に発見した藤嶋昭さん(東京理科大学栄誉教授)

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
5月11日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、「光触媒」研究の第一人者、東京理科大学栄誉教授・藤嶋昭さんをお迎えしました。

藤嶋昭さん

高層ビル、住宅、自動車、鉄道、医療、農業と、今では世界中、様々な分野に用途が広がっている光触媒。それは52年前、まだ大学院生だった藤嶋さんの発見から全てが始まったのです。毎年のようにノーベル賞化学賞候補として名前があげられる方なんですが、とても気さくにお話しくださいました。

藤嶋さんは1942年、東京都生まれ。1966年に横浜国立大学を卒業すると東京大学大学院に進み、写真光学・光化学の研究室に入りました。当時はドイツやアメリカで半導体を水の中に入れて光を当てたときの反応をみる研究が始まったばかり。藤嶋さんも半導体と光の研究に打ち込みます。そしてまだ誰にも使われていない材料を探すなかで、「酸化チタン」と出会ったのです。下の写真は、当時、実験に使った酸化チタンの電極を再現したもので、今も東京理科大の藤嶋さんの部屋に置いてあります。

電極

1967年、藤嶋さんは、水の中に入れた酸化チタンの板に光を当てると酸素が発生していることを発見。これは大変なことが起きている! と驚いたそうです。当時すでに、酸化亜鉛を水に入れて光を当てると酸素が発生することはすでに知られていました。でもそれは、酸化亜鉛が溶けることによって酸素が発生すると考えられていたのです。ところが藤嶋さんが見た酸化チタンは酸素が発生しても溶けていませんでした。酸化チタンに光を当てただけで水が酸素と水素に分解され、電気が得られることを世界で初めて発見したのです。これが光触媒の第一歩です。

でも、翌年このことを学会で発表しても誰にも信じてもらえませんでした。当時の常識では、電圧もかけていないのに水が電気分離することなどをあり得ないことだったからです。いくつかの学会で発表するたびに「もっとよく電気化学を勉強して、出直してこい!」と批判の嵐。そんな状況ですから、この「世紀の大発見」をまとめた博士論文(下の写真。貴重!)も一部の先生からはなかなか認められなかったそうですよ。

論文

国内の学会で認められなかった藤嶋さんは、指導教官の本多健一先生(当時は助教授。のちに東大名誉教授)とともに「それなら世界一権威のあるところに論文を出そう」とイギリスの科学誌「ネイチャー」に送ると、1972年に論文が掲載されたのです。そして翌1973年にオイルショックが起きるとエネルギー問題が喫緊の課題となり、2人の発見は一躍、世界から注目されるようになりました。すると海外の反響を受けて、国内の反応が一変。それまでさんざん批判してきた学会も藤嶋さんたちの発見を認めるようになったそうです。

久米宏さん

「1968年に同じ内容の論文を国内で発表したときには『おととい来やがれ』って言っていたのが、72年にネイチャーに掲載されたとたんに『先生!』って(笑)。これが分からないんです」(久米さん)

「欧米で評価されたら無条件で評価する。日本人の悪いクセですね」(藤嶋さん)

「世の中、手の平を返したそうですね」(久米さん)

「朝日新聞の元日トップ記事になりました(笑)」(藤嶋さん)

1974年の元日、朝日新聞は1面トップで「太陽で〝夢の燃料〟 日本科学者発見の原理に脚光」と報じました。このときの記事は酸化チタンの光触媒反応を「ホンダ・フジシマ効果」と書きました。今では世界で通用する言葉になっています。

朝日新聞が「夢の燃料」と書いたように、光触媒が当初注目されたのは、太陽光と水から水素ガスを作れる点でした。光触媒を使って安全に、安定的に、効率的に水素を手に入れることができれば、石油がなくなっても大丈夫かもしれないと期待されたのです。時代の要請を受けて藤嶋さんは東京大学の屋上で実験を続けました。その結果、酸化チタンを使って1日に7リットルの水素を取り出すことができました。でも火を付ければ一瞬で燃え尽きてしまう量です。太陽光に対するエネルギー変換効率はわずか0.3%。光触媒をエネルギー問題の解決に向けて実用化するのは時間かかると藤嶋さんは実感したといいます。普通ならここであきらめてしまいそうですが、藤嶋さんは光触媒に別の可能性も見出していました。

スタジオ風景

「光触媒には、強い酸化分解力と超親水性(水と非常になじみやすい性質)がある。これを利用して、抗菌・脱臭や、汚れの防止に応用できるんじゃないか」(藤嶋さん)

抗菌・脱臭や、汚れの防止に応用する研究を進めました。そのうちに光触媒の面白い性質が分かってきました。酸化チタンは光(紫外線)を当てることによって、強い分解力だけでなく「超親水性」も発揮するのです。水がとてもなじみやすくなって「水玉」にならず、表面に薄く均一に広がる性質です。つまり、光触媒は汚れやニオイなど有機物を分解し、超親水性によって表面に付着した油などを浮かせてしまうのです。面白いことに、光触媒の発見者である藤嶋さんも超親水性には長年気づいていなかったそうです。藤嶋さんの研究室がTOTO(当時は東陶機器)の渡部俊也さん(のちに東京大学先端科学技術研究センター教授。現・東大副学長)たちと共同研究を始めてからそのことを発見しました。1995年のことです(これも1997年に「ネイチャー」に論文が掲載されました)。これを契機にまずトイレなどに使う抗菌タイルが世に出て、そこから1990年代半ば以降、光触媒の実用が一気に広がりました。

パンフ

いまでは、ビルや住宅の外壁、病院の手術室、東海道・山陽新幹線のぞみ号の空気洗浄機、東京駅八重洲口の白い屋根「グランルーフ」、東京「新丸ビル」、成田空港、道路(東京の環状7号線。目的は空気浄化)、トンネル内の照明、日光東照宮(防カビ対策)。以前この番組にお越しいただいた建築家・坂茂さんが設計したフランスの「ポンピドゥ・センター・メス」の屋根にも光触媒が使われています。さらに今後、歯科(ホワイトニングやインプラント)、がん治療、国際宇宙ステーションなどにも利用が期待されていますし、中国・上海では水質を浄化し飲料水へ利用する大プロジェクトが進行中だそうです。52年前に光触媒を発見したときにはこんなにいろいろなところに広がるとは想像もしていなかったと藤嶋さんは笑います。でも、科学は本来、世の中の役に立つべきだというのが藤嶋さんの考え。

「もちろん基礎研究は大事ですが、科学技術の最終目的は世界の全員が、それぞれ望んでいる天寿を全うすることに寄与すること。私はそう思っています」(藤嶋さん)

実は藤嶋さんは、前々回(2019年4月27日)のゲスト、ステンドグラス職人・加藤眞理さんとお知り合い。加藤さんが最近、藤嶋さんのご自宅の玄関とトイレにステンドグラスを施工したそうです。

スタジオ風景

「やっぱり光触媒の研究者だから光がお好きでステンドグラスを入れたのかと思ったら、加藤さんに頼んだのは藤嶋さんではなくて奥様なんだそうですね」(久米さん)

「そうなんです。うちに帰ったらトイレの窓が変わっていたので驚きましたよ(笑)。でもステンドグラスの光はいいものですよ」(藤嶋さん)

藤嶋昭さんのご感想

藤嶋昭さん

久米さんはよく勉強なさったのか、光触媒の本質的な部分を知っていらしたので本当に驚きました。私が研究を始めた最初のところから、酸化チタンの単結晶のことや、光の波長がどういったものであるかとか、蛍光灯の光はどうかとかLEDはどうだとか、全部本質的なところを押さえていてすごいなと思いました。

光触媒の今後の話がほとんどなかったのがちょっと残念だったかな(笑)。ありがとうございました。



「今週のスポットライト」ゲスト:藤嶋昭さん(「光触媒」研究者)を聴く

次回のゲストは、保育士でカバディ選手の緑川千春さん

5月18日の「今週のスポットライト」には、普段は週5日、東京都内の保育園に勤務しながら、カバディの日本代表としても活躍している緑川千春さんをお迎えします。「保育士とカバディ、どちらも私の夢」という22歳!

2019年5月18日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190518140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)