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宇多丸、『アベンジャーズ/エンドゲーム』を語る!【映画評書き起こし 2019.5.17放送】

アフター6ジャンクション

宇多丸:

(BGMに合わせて)ディレクターの蓑和田くんが勝手にセリフを重ねて喜んでいるという、放送上には全く反映されないというくだりがありましたけども。マーベル・コミックを原作とする映画シリーズ、「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の第22作。アイアンマン、キャプテン・アメリカ、マイティ・ソーなどのヒーローが集結する『アベンジャーズ』シリーズの完結編です。前作『インフィニティ・ウォー』で最強の敵サノスに敗北したアベンジャーズが、失った仲間たちを取り戻すために再び立ち上がる。『インフィニティ・ウォー』に続きアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟が監督を務めました。あと、脚本チームなど諸々も引き続き続投でございます。

ということでこの作品を見たというリスナーのみなさま、<ウォッチメン>のからの監視報告(感想)を多数、メールでいただいております。メールの量は、もちろん大量です。『アフター6ジャンクション』が始まって以来、最高クラスでございます。まあ、それはそうでしょうね。賛否の比率は、「賛」が8割。その他が2割。主な褒める意見としては「11年間、シリーズを追いかけてきてよかった。感謝です」「シリーズの集大成として完璧」「冒頭からエンドロールが終わるまで泣きっぱなし」「気になる部分やツッコミどころがあるのは認めるが、それでも大満足」「上映中、思わず何度も拍手しまった。3時間、あっという間」「シリアスな展開と随所に挟み込まれるギャグなどのバランスも絶妙」といったあたりでございます。

一方、否定的な意見としては「宇多丸さんが『インフィニティ・ウォー』評で言っていた『ヒーローならではの正しさで勝つべき』という課題の答えにはなってなかった」。でもこれは僕は、「これをクリアするのはかなり難しいので、ちょっと無理かもしれないけど」という、あくまで願望として言っていたラインですけどね。「サノスの信念に対するヒーローたちの答えがないのも残念」「あまりにもファンサービスが過剰すぎる」「3時間、長い」といったものがございました。

■「この後の人生でこれを超える映画体験ってあるのかな?」(byリスナー)

代表的なところをご紹介いたしましょう。「西山コタツ」さん。「『アベンジャーズ/エンドゲーム』を鑑賞してからというもの、僕の中で『趣味=映画鑑賞』が完結してしまったような、そんな気がしています。初日、レーザーIMAXで味わった、脳みその産毛が逆立つような興奮が忘れられず……」。しかも、みんなMCU好きの人と同時に見たら、それは最高ですよ! 「……ふと、この後の人生でこれを超える映画体験ってあるのかな? と桁違いの感動と同時に強い喪失感に襲われるほどでした。

正直、『アイアンマン』一作目が公開された時にはMCUなんて無謀な企画にちっとも期待していなかったのに、映画として成立するかも怪しかった『アベンジャーズ』一作目を難なくクリアしてきたあたりから、次々と自分たちが作り上げてきたハードルを超え続けていることに驚愕し、いまや恐怖さえ感じています。

もし『エンドゲーム』以上の映画に出会えるとしたら、やっぱりMCUしかないんじゃないか? だけどさらに10年も待ったところで、この感覚は訪れないんじゃないか? 様々な気持ちがグルグルと渦巻いて、いまは正気じゃありません。こんな大作にリアルタイムで出会えた喜びにとにかく感謝の気持ちでいっぱいです」という西山コタツさん。もうMCUどっぷりな方、っていう感じですね。

一方でダメだったという方。ラジオネーム「ソー」さん。「『エンドゲーム』、ウォッチしてきました。率直に言って面白くありませんでした。自分は『アイアンマン』からずっとMCUを追い続けてきたファンですが、本作は悪い意味で我々のようなファンに対するサービスに溢れていて、その結果映画として、あるいはヒーロー映画としてあるべき姿勢が崩れてるように思えます。宇多丸師匠は以前『インフィニティ・ウォー』評の中で『サノスののロジックに対してはヒーローならではのアンサーで返してほしい』という旨のことをおっしゃっていましたが、その点に関して本作はうまい着地ができていたとは思えません。

『大義のためには命の犠牲など構わない。邪魔者は徹底的に排除する』という思想のサノスを、『お前こそ邪魔だ』と言わんばかりの有無を言わせない報復で文字通り黙らせるというのは、現実世界の問題とも少なからずリンクさせてきたヒーロー映画としては、どうなんでしょうか? またヒーローの存在を認知している世界の反応、市井の人々のヒーローに対する視点が描かれていないというのも問題だと思います。特別な者だけのケンカの話のようにも感じました」。僕も実は、これはたしかに小さくない問題な気もします。

「……過去作やコミックにつながるアイテムやセリフがたくさん用意されていましたが、なんだか作り手から『これが見たいんだろ? これが聞きたいんだろ?』と言われてるようで、どれも全く心には響きませんでした」。だから、同じ部分の裏表ではあるんですよね。「ファンサービスが行き届いている。でも、それでいいのか?」みたいな部分。

■衝撃だった『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の待望の続編

さあ、ということでリスナーの皆さん、メール本当にありがとうございます。私も『アベンジャーズ/エンドゲーム』、もう入院中はね、見たくても見れなくて。「うう~っ!」となっていたんですが、退院してすぐにTOHOシネマズ六本木で字幕2D、そしてT・ジョイPRINCE品川でIMAX3D字幕、さらに同じくT・ジョイPRINCE品川で吹き替え2Dと、「3エンドゲーム」していますね。

ちなみに今回の映画は、前回の『インフィニティ・ウォー』と合わせて、ハリウッドの長編映画では初の全編IMAXデジタルカメラ撮影作品なので、まあIMAX鑑賞がまずは第一候補ですかね。おすすめです。監督のルッソ兄弟からはね、5月6日に、すでにネタバレ感想解禁宣言が出ている、というのを踏まえつつですね……今日ここでの評は、とはいえまだ見てない人、なんならMCUビギナーな人もいるというのを念頭に置きつつ、「あの人がこうなっちゃう」的な決定的な部分、決着の部分に関しては、やっぱりバラさないようにしつつ、お話していこうかなと思います。

まあ、ファンの人はもうすでに何度も見てね、語り尽くしてると思いますんでね。どっちかっていうと、これから見る可能性がある人に面白みをちょっと伝えていきたいな、と思ってます。とにかくまあね、マーベル・シネマティック・ユニバースが約10年以上に渡って着々と置き続けてきた文字通りの「布石」を一気に回収する、集大成にして大きな一区切り。で、その二部作のまずは前編として、2018年、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』というのがあったわけですね。

僕もこの番組で昨年5月18日に評しました。公式書き起こし、いまでもホームページで読めますので是非、読んでください。その評の時点ではまだ、一応ぼかした言い方をしておきましたが、もうそこはいいですよね? 要はヒーローたちが、完膚なきまでに敗北してしまう、というね。最強のラスボス・サノスのもくろみ……「宇宙のバランスを取り戻すために、全生命の半分を消し去る」というですね、大雑把にも程がある(笑)、行きすぎたおせっかいがですね、結局まんまと成功してしまい。我らがヒーローたちも、ランダムに塵となって消えていってしまう、というですね。まあ、続きがあるっていうのはわかってるにしても、なかなかにショッキングな、絶望的な展開で終わっていたのが、『インフィニティ・ウォー』だったんですね。

■綺麗に三分割された上映時間181分。全然長くない!

ただ、その劇中でですね、ドクター・ストレンジというキャラクターが、「1400万605分の1の確率でなら勝てるかも……」みたいなことを言う。なんてことを示唆しつつ、自らあえてタイム・ストーンという、要するに6つ揃うとなんでもできちゃう石のひとつを、あえて自分から渡していた、という件。要するに、勝算がそこにあるから渡しているんだろうという件。そして、『インフィニティ・ウォー』後に公開された2本のMCU映画、『アントマン&ワスプ』と『キャプテン・マーベル』。この2本で示された可能性……おそらく、続く二部作の後編の勝機がここに用意されてるのではないか、というのが予想されていたわけですね。

……と、まあここまでが、その二部作後編にして、MCUの流れがここでひとまずの締めくくり、ひとつの完結編となる今回の『エンドゲーム』鑑賞前の、最低限踏まえておくべきこと、ということですね。脚本のクリストファー・マルクスさんとスティーブン・マクフィーリーさん、そしてアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟・監督という、まあ『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』以来のチーム……まあ、脚本チームは『キャプテン・アメリカ』を全部手がけてますね。

などなど、製作チームは当然引き続きというか。やっぱりキャップの話がね、MCUはずっと背骨になってきたので。このチーム、力量的にも納得のあたりですけどね。で、上映時間181分。『インフィニティ・ウォー』の149分っていうのも「おおーっ(長い)!」ってなりましたけども、まあ今時のハリウッド製ブロックバスター超大作としては、異例の長さ。シネコンは回転を早めたいですから、3時間の映画なんかは嫌うところですけども、それだけ送り手も、今回だけは特別な一作として扱っているのは明らか。で、ですね、実際にでも見てみると、この3時間、ほぼきっちり約1時間ずつ……本当にきれいに3等分ですね。約1時間ずつ、3パートに分かれていて。一般の3幕物っていうよりは、本当に等分の3パート。

1時間の3つのドラマが3個続いている、みたいな感じになっていて。それぞれ非常に狙いがはっきりしていて、分かりやすく色分けもされている。だから構成とかは、実はとってもシンプル。『インフィニティ・ウォー』も、サノスの視点をメインに絞って非常にシンプルにしていたけど、それ以上に、ある意味非常にシンプルだし。むしろ、それぞれの1時間の中でひとつの起承転結をやりきりながら、っていうことなので、話し運びがすごいスピーディーなんですよ。なので181分は、ぶっちゃけ全然、体感として僕は長く感じませんでした。特に2回、3回見ると、どんどんどんどんスピード感が上がっていく感じがありましたね。1個1個、行きますけども。

■まずは冒頭、風格のあるゆったりとした語り口

まず最初のパート。ここだけややね、語り口がゆったりめなんですね。たとえば冒頭、ホークアイの家族が出てきますけど、あのくだりなんかはあえての非常にゆったりしたテンポで。その後の一気呵成な2時間、2パートとの展開のメリハリも付いてるし、何よりですね、なんか往年の超大作映画のような、ちょっとした重みとか風格みたいのが、このパート1のですね、あのゆったりした語りによってもたらされていて。そこは非常に好ましいな、という風に思いました。

あとやっぱりね、MCUはね、出てくる人たちが、普通にみんなアカデミー賞級とかだったりする超上手い俳優さんたちなので。1個1個の演技の味わい深さが、やっぱり並じゃないので。ちょっとしたやりとりだけでもう、見応えがめちゃめちゃあるんですよね。それが非常に堪能できるところでもある。とにかく要は『インフィニティ・ウォー』での完膚なきまでの敗北から、アベンジャーズたちがいかに再び立ち上がるか、勝機を見つけるか、というパートですね。

特に、『インフィニティ・ウォー』のラストシーンもそうでしたけど、原作のマーベルコミックにおける原案のひとつ、『インフィニティ・ガントレット』というのがあります。これ、日本版も出ていますけども。『インフィニティ・ガントレット』そのままに、サノスが一仕事終えた感でですね、農園で慎ましく暮らしている。あの鎧がカカシになってるところとか、本当にモロに『インフィニティ・ガントレット』そのままですけど。そのもとにですね、アベンジャーズ生き残り組が、「おう、この野郎! 1人で土いじりか、この野郎!」(笑)なんつって急襲をかけてくる。しかも、なにしろ今回は、とにかく強すぎて正直MCU作品世界のパワーバランスを根本から揺るがしかねない、キャプテン・マーベルが同行している。

■「勝てるわけねぇじゃん!」サノスが仕掛ける容赦なき追い込み

『キャプテン・マーベル』を見終わった時に、「うん? こいつが1人いればいいのでは?」って思った人、いっぱいいると思うんですけど(笑)。だから「勝機あり!」と思いきや……一同は逆に、事態の取り返しのつかなさを思い知らされ、サノスにある意味、二重に敗北することになってしまう、というこのくだり。これね、やっぱり『インフィニティ・ウォー』と今回の『エンドゲーム』、サノス二部作に共通してですね、この「えっ? じゃあ、勝ちようがねえじゃん?」っていう絶望の深まりっていうのが、何段階にも用意されてるところ。

もちろんそれは、後の逆転劇のカタルシスをより巨大なものにするためのフリでもあるんだけど、とにかくその、徹底したヒーローサイドの追い込みぶり。「えっ、じゃあ勝てるわけねえじゃん?」みたいなのの、積み重ねがすごい、なんかしつこいっていうか、徹底して容赦ないんですよね。それがまず素晴らしいですし。あとはさっき言った、「ぶっちゃけキャプテン・マーベルが1人いれば勝てるんじゃね?」と思いきや……もちろん彼女が圧倒的なパワーを発揮してスカッとするところもあるはあるんだけど、そういう強さ勝負、腕力勝負では、やっぱりどうにもならない話でもあるんですよという、言わばゲームのルール設定。そのバランス感覚も見事ですよね。力勝負じゃないんですよ、っていうことを最初に言うわけですよ。

■重々しいスタートから徐々にカラッとしたトーンへ戻していく

「じゃあ、どうするんだ?」っていうところで、まあ『アントマン&ワスプ』の最後で量子世界に行っちゃってたアントマンさんからの、とある提案がある。これは後ほど言いますけども、とある提案。「ああ、なるほど。それならたしかに勝てる可能性があるかも……」ということで、各地に散り散りになって失意のうちに生活を送っている仲間たちに、再招集をかけていくという。これが第一パートの後半ですね。で、たとえばその「ローニン」という殺人マシーンと化したホークアイがですね、我らが真田広之さんと、長回しで、まあ『ブレードランナー』や『ブラック・レイン』風に雨が振っている、東京っぽい……東京を示しているのであろう街の中でですね(笑)、チャンバラを繰り広げる、というあのくだり。

正直、僕はここで……皆さんもそうだと思いますけど、ジェレミー・レナーさんの日本語セリフが、全く聞き取れず。「どうせお前、ローニンのマスクしてるんだったら、吹き替えでいいだろう?」とかですね。っていうか、MCUでも日本描写はこんなもんなのか……っていうところで、ちょっと少なくないがっかりを僕はここで味わったんですけども。まあ、ともあれ全体に重苦しくなりがちな――このローニンのところは非常に重苦しいですけども――そんな完全敗北からの立ち直り描写の中にも、特にやっぱりソーがすっかりダメ人間になってる、とかですね、そのあたりで笑わせどころもしっかり置いて。

まあ、『インフィニティ・ウォー』は全編にわたって非常にウエットだったんですけど。で、僕はそのウエットさがちょっとな……って言っていたんですけど、そのウエットさに対して、次第にだんだんカラッとしたMCU本来のタッチに、少しずつ戻していく。この感じもまあ、非常に巧みですね。スムーズでしたね。で、1時間かけて再集結した生き残り組アベンジャーズが、そこから先の1時間、真ん中のパートで何をするのかというと……というところで、ここなんですよ。僕ね、最初の1週目に『エンドゲーム』評をやるってなった時に、ここに触れないのは難しい、と思って悩んでたんですけど。大きな種明かし。これ、避けて通れないので。

■第二幕は過去のMCU名場面を巡る「映画内映画」が楽しめる

まあ5月6日の、監督ルッソ兄弟のネタバレ解禁宣言も経ているので。どうしても情報を完全遮断して初回は見たいという方は、もう一旦ラジオを切っていただいて、7時過ぎたらもう1回、聞いてください……っていうかさ、そんぐらいのヤツはもう、すぐ『エンドゲーム』行けよ、お前! バカ!(笑) はい。言いますよ。言いますよ? 要は……「タイムトラベルをする」。「過去にさかのぼって6つのインフィニティ・ストーンを回収して、サノスに消された人たちを復活させてから、石を戻せばいい」という理屈。で、ここでですね、ああでもない、こうでもないと、タイムパラドックスをめぐる議論をするわけですけどもね。

その中で、しきりと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』いじりが出てくるんですけど。まあタイムスリップと言えば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ということで。これは音楽が、今回もアラン・シルベストリ。当然、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でおなじみのアラン・シルベストリなのを考えると、まあそういう楽屋オチっていうのかな、そういうのも感じられて面白いですし。

ちなみにプロデューサーのケビン・ファイギさん曰く、このタイムスリップのネタは、『新スタートレック(Star Trek: The Next Generation)』の最終話、177話、178話の『永遠への旅(All Good Things …)』というエピソードがあるんですけども、これにインスパイアされた、なんていうことも公言されてますけどね。まあとにかくこの二部は、そのタイムトラベル×ケイパー物……いわゆるチーム強奪物ですね。あるお宝をチームで──スパイ映画的なと言うか──忍び込んで盗む、という。タイムトラベルとケイパー物の掛け合わせ。これが2パート目、真ん中の1時間の、メインなんですね。

で、これが単にタイムトラベルを利用するっていうだけのアイデアなら、ちょっとご都合主義すぎない? ちょっといくらなんでも、タイムトラベルってどうよ?って感じで終わりかねないところなんですけども。今回の『エンドゲーム』のこのくだり、何が楽しいって、ここのパートはご覧になった方はお分かりの通り、MCUの過去作の名場面再訪ツアーというか、そんな機能を果たしていて。要はちょっと、メタ的な作りになってるわけですね。たとえば、やっぱりまず「2012年、ニューヨーク」ってドーンと出ると、そこで繰り広げられているのは、まさに2012年公開、一作目『アベンジャーズ』の……しかもアベンジャーズ集合シーンの、有名なグルーッと回るショットが、そこでもう1回、出てきたりするわけです。

要するに、現実のMCU映画を見てきた我々に対する、メタ的な目配せが……“映画内映画”が入ってるっていうか。そういう感じでもあったりする。あるいは、その同じ2012年のニューヨークの場面で、キャプテン・アメリカが、エレベーターの中で、実はハイドラとという悪の組織のメンバーでもあるシールドメンバーたちに囲まれている、という。これはルッソ兄弟の名を知らしめた傑作『ウィンター・ソルジャー』の中でも印象的な、あのエレベーター内格闘シーンを思わせる……「うわっ、これもやってくれるんだ!」っていうオマージュ。

しかもそこを、「『ウィンター・ソルジャー』よりもちょっと人数が増えているけど、キャップ大丈夫?」みたいに思っていると、これはやっぱり『ウィンター・ソルジャー』を見ていた人なら思わず爆笑しつつ拍手したくなるような、ある非常にウィットに富んだ切り抜け方をする。で、その後に(『ウィンター・ソルジャー』にも出演していた)ロバート・レッドフォードも出てきたりとかですね。さらにあるいはですね、みんな大好き『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の、あのレッドボーンの『Come and get Your Love』が流れる、最高にイカすオープニングを、やっぱりファンなら爆笑ものの視点で、もう1回再演してみせる、とかですね。

■MCUファンへのご褒美てんこ盛りの中盤

事程左様に、MCUファンへのご褒美のようなシーンの連発。それだけでもMCUファンはもう、多幸感に包まれてしまう、というわけですよね。あと、僕はここは、ビギナーの方が、要するにそこがサービスシーンなのはなんとなく分かると思うんで、ここからさかのぼってどういう場面なのかを見たくなる、という効果もあるんじゃないかなとは思いましたけどね。

加えて、キャップ vs「あの人」っていうですね、これもコミックにもある展開だったりする、楽しいサービス展開があったり。あと、タイムトラベル物ならではのドラマ性。ずっと会いたかったけど会えなかった人……たとえば、すでに死んでしまった愛する人との再会、っていう、まあタイムトラベル物ならではのドラマ性、みたいなものも盛り込まれていたり。さらには、絶対に誰かは犠牲にならないと手に入らないソウル・ストーンをどうやってゲットするのか? という、ある意味究極の選択が迫られるシーンとかもあってですね。この2パート目は本当にもうてんこ盛り。盛りだくさんという感じで、ポップに進んでいきます。

■第3幕目は血湧き肉躍る総力戦! カタルシスがデカイ!

そして3パート目。最後の1時間。要は最終大決戦のところですね。さっきから言ってる「タイム泥棒」作戦に気づいてしまった、2014年の、つまり『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』一作目、2014年のサノスっていう……だから毎回、(現実の)公開年なのがまた笑っちゃうんだけど。その2014年のサノスが、物語上の現在の地球に、逆タイムトラベルをかけてきて急襲してくる、という。

で、「全世界の生き物の半分とか、中途半端なことを言っていたからダメだったんだ。今度はもう全部、最初から作り直さないとダメだな!」っていう風に、嫌な方向で考え方をブラッシュアップしてしまい(笑)、最初にトニー・スタークが危惧していた通り、よりひどい事態になってしまいかねないことになる。「ええっ? こんなことなら何もしない方が良かったのでは?」って、ついつい思っちゃうわけですよね。

ここもやっぱり、さっき言ったように「えっ、もうこれは本当にダメじゃね? 絶望じゃね?」っていう、その絶望のたたみかけ方が、やっぱり本当に念入りで。しかも今回は、打てる手は全部打った後、なわけだから。そこで「ええっ? もっとひどいことになっちゃったんですけど……」っていうのは、結構絶望が深いわけですね。ところがやっぱり、さすがここは逆襲編にして完結編。ここまでやり返しては負け、やり返しては負け、絶望して絶望に絶望を重ねてきただけに……まあ詳しくは言いませんけども、ここでのヒーロー勢揃い。

そして、「こっちには仲間がたくさんいるぞ!」っていうのが、ここまで嬉しいものだったなんて! 「うわーっ、みんなありがとう!!!!!(泣)」っていう感じがね。やっぱり絶望の積み重ねがすごい念入りだから、とてもカタルシスがデカいし。そして、そこで満を持して放たれる、キャプテン・アメリカの、あの一言。『アベンジャーズ』シリーズをここまで重ねてきて、いままであえてMCUが出さずに取っておいた、あの一言。「キターッ!」って……それはさ、エクスタシーに達しますよ、それは。普通にね。

で、そこから本当に、血湧き肉躍る総力戦が始まる。その間に、キャラクター同士の再会があるわけですね。要するに、消えてた人との再会があって。で、劣勢からの加勢が来て逆転、劣勢からの加勢が来て逆転! あ、やっぱりサノス強え……という劣勢からの、(思わぬところから)加勢が来て、逆転ざまぁ!というのが、どんどんどんどんテンポよく、段階的に積み重ねられていく、という感じなんですけども。当然ここね、大変な数のキャラクターが入り乱れているわけで。並の映画監督だったら、何が何やら、大掛かりなだけで訳がわかんない、で、結局は退屈なシーンだなってことになりかねない、なりやすいところを……これ、僕が前から言ってるように、ルッソ兄弟の特徴として、アクションシーンの空間の見せ方、示し方が、めちゃめちゃ上手い。

■ラストは各キャラクターの丁寧な送り出し。史上最高級のファンムービー!

僕の用語で言う「映像的論点、映像的争点が明確」。画面内で誰がどの位置にいて、何のために何を争ってるのかが、非常に明確。今回で言うと、基本この決戦のシーンは、ものすごい数が入り乱れますけども、基本的に、アベンジャーズ軍は左、サノス軍は右に映して。そして基本、アベンジャーズ軍は、左から右へ進軍していく。そして、新しいインフィニティ・ガントレットを左から右へ運んでいく“インフィニティ・ラグビー”が(笑)、そこで行われていく。この、左から右への動き。

映画全体でもね、アベンジャーズが左から右に行く時には希望に満ちている、みたいな、そういう動きを全体で設計してるんですけど。こんな感じで、基本的なゲームの流れ、見せ方がはっきりしてるので、こんだけの大合戦なのに、観客が全く混乱しないようになっている。めちゃめちゃ上手いですね。で、その間にたとえば、女性キャラクターが総集合でピーター・パーカーを守るとか、「キャラクターを立てる」展開もしっかり入れ込んでいく。で、最終的なサノスとの決着の部分。これも腕力勝負ではなく、チームプレーとトンチの勝利という部分で、僕は……非常に僕の中で高いハードルがあった部分まではクリアしてないにしても、決めゼリフの妙も含めて、まあ納得です!

あの、ドクター・ストレンジの言っていた1400万分の1っていうのを、(クライマックスのここぞという瞬間に)セリフではなく(ある身振りで)示すあたりも、非常にスマートで鳥肌が立ちましたし。まあ納得です! で、そこからの幕引き。ここも、いくらでも愁嘆場にできるところを、ウエットさは必要最低限に抑えて、「あの人」に対して、むしろ労いと愛を示す、っていうところに重きを置いたような、あのバランス。品が良い。誰もギャーギャー泣き叫んだりしない。そして、各キャラクターに対する、丁寧な丁寧な送り出し。

特にやっぱり製作チーム的には、MCUの背骨たるあの人の決着。「そう来たか!」っていう……若干ちょっとネタバレっぽいことを言うと、「○△※×○と来たか!」みたいな感じですよね(笑)。で、これ以外はないと思えるような、非常に愛のあるエンディングに着地して。「ああ、そう来たか! でも、これしかないよね」……からの、やはり愛とリスペクトに溢れきった、あのエンドロール! もう、史上最高級のファンムービーですよね、これはね。

■奇跡のように幸福なシリーズ。MCUありがとう、そしておつかれさま!

ということで、ここまで丁寧で愛にあふれ、作品的な筋も通った「完結編」というのは、他には僕は、あえて言えば『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』ぐらいしか思いつかないですけど。あれはでも、三部作ですからね。こんだけいっぱい作品があって、こんだけの着地をして……なんて幸福なシリーズなんだろう! という風に思います。まあ、細かく言えばね、言いたいことはいっぱいあるんです。ラストのあの人の選択も、これはガイガン山崎さんの指摘で「ああっ!」と思いましたが、残された「彼」の立場や気持ちは?って考えると、「えっ」っていう感じもちょっとなくはないし。

あと、インターネット・ムービー・データベースにいっぱいツッコミが乗っていて、爆笑しちゃうものもあったんですけど、それはまたいつか別の機会に言いますね。ただ、そのへんはわりとどうでもよくて。僕がやっぱり気になるのは、(特にクライマックスにかけて)「普通の人々」が、完全にもう存在しないも同然な、見えない存在になっちゃってる。それは、ヒーローの存在意義に関わる部分だと思うんですよね。普通の人々にとってヒーローがどういう存在なのか。特にこの世界の半分が消えたっていうのは、普通の人々にとっても当然大事件なはずなのに、なんか一部の選ばれし人たちの揉め事のようにも見えちゃうのは、実はちょっと小さくない問題をはらんでいるような気もします。

あと、キャラへの愛の強さっていうのと裏表なんですけど、ファンムービー化の強さっていうのも、本当は、これでいいのかな?っていうちょっとアンビバレントな気持ちは、たしかに僕の中にもあります。「このままでいいのか? これが一番のエンターテイメントっていうことでいいのか?」っていうのはちょっとあるんですけど……ただ僕は、やっぱりMCUファンでもあるので! MCUファンとしては、やっぱり11年間、22作、よくぞここまで持ってきた。だって、『アベンジャーズ』だって成り立つかどうかわかんなかったわけですから。よくこんな奇跡のようなことをやってのけた、奇跡のように幸福なシリーズだと思います。

やっぱりMCUをリアルタイムで追いかけられて、同じ時代に生きられて、本当によかったなぁと思う。というか、今回の『エンドゲーム』を見終わって、「ああ、オレってこんなに、本当にMCUが好きだったんだな……!」って、改めて思いました。ありがとう。そして……お疲れ様でした。ぜひ、いますぐ劇場に見に行ってください。

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画は『ザ・フォーリナー/復讐者』です)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

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