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アンタッチャブル柴田も驚いた!カルロス・カイザーのサッカー人生とは?【書き起こし】

スペシャルプログラム

TBSラジオがお送りするスペシャルプログラム「ラジオワールド」(日曜20時~)
2019年5月19日に放送した『伝説のペテン師 カルロス・カイザーのサッカー人生』の書き起こしを掲載します。

MC:柴田英嗣(アンタッチャブル)
解説:カルロス矢吹(ライター)
   福島成人(ヨコハマフットボール映画祭主催)


現在、世界では年間100作以上のサッカー映画が公開されています。その中のひとつ、あるサッカー選手のドキュメンタリー映画が話題になりました。その選手の名は……カルロス・カイザー。ブラジル、アメリカ、メキシコ、フランスと世界各国の有名なクラブチームでプレーをした彼ですが、当時同じチームでプレーした仲間はカルロスのことをこう語ります。

証言1:彼はサッカーが下手! それが僕らが出した答えだ。
証言2:彼の弱点はボールさ。器用だけどボールは扱えない。

カルロス・カイザーがプロ生活20年間で決めたゴールはわずか1得点。なぜ彼は数々の強豪チームを渡り歩くことができたのでしょうか? 映画の冒頭でカルロス本人はこう語ります。

本人証言:俺は試合に出ず、ボールも蹴っていない。この映画は万能なスター選手の物語じゃないんだ。主役はフェイク選手だ!

■久しぶりにこの男がTBSラジオでMCを担当!

柴田:どうも、こんばんは。アンタッチャブル柴田です。久々のTBSということでございますね。ありがとうございます。まあちょっとね、最近TBSを離れてしまったのでご存知じゃない方もいらっしゃるかもしれませんけども。僕はですね、アンタッチャブルとして『アンタッチャブルのシカゴマンゴ』っていう番組を5、6年、やらせてもらってましてね。その後にいろいろとありまして……(笑)。その後に『LINDA!~今夜はあなたをねらい撃ち~』という番組を1年半ぐらいやらせていただきまして。

『LINDA!』なんかは生で僕と電話をつなぐという結構新しい番組だったんですけども。いまでもタクシーなんかに乗ると「あの時、よく聞いてたよ」とか「TBSに連絡したよ!」なんていうタクシーの運転手さんなんかによく会うんですけどもね。そんな馴染みのあるTBSラジオでございますけどもね。まあ別に裏切ったとかね、変な意味じゃないですよ。変な意味じゃないんですけども、おじさんになったから夜が辛いなっていうことで。別の局で朝の爽やかな放送をやらせてもらっています(笑)。

今回は伝説のペテン師、カルロス・カイザーっていうことでございますけれども。冒頭の説明でもありました通り、プロ生活20年でなんと1得点しかあげていない選手のお話ということで。このドキュメンタリー映画が非常に話題になったということですけども。

こう見えても私、静岡県清水市という、僕たちが子供の頃は本当に清水市出身だったらサッカー以外にやることねえみたいなね。変に勉強なんかしたら先生に「ボール蹴ってこい!」なんて言われてるような時代でしたから。そんな僕らからして、プレーしていて20年もやってて1点しか取ってないなんてことは考えられないですよね。本人も言ってましたけど、「俺はフェイクの選手なんだ」っていう。

逆にですけど、こう考えてみるとどうやって1点取ったんですか?って。その試合。ということでこの番組は海外サッカーに詳しくもない人にも違った方向から興味が出るようなお話を紹介してきますのでぜひ最後までお付き合いいただきたいと思います。お知らせの後、カルロス・カイザーのサッカー人生を紹介します!

■カルロス矢吹が解説!カイザーの素顔とは?

柴田:改めましてアンタッチャブル柴田です。では早速、カルロス・カイザーのサッカー人生を辿って行こうと思うんですが、カルロス・カイザー。そして海外サッカーに詳しい方にお越しいただきました。ライターの、偶然にも一緒なんですけども……カルロス矢吹さんです!

矢吹:はい、どうもー。カルロス矢吹でーす。

柴田:「カルロス」かぶりで呼ばれたってわけじゃないんですよね?

矢吹:まあ、本当に偶然ですね。

柴田:でも、実際にお詳しいんですよね?

矢吹:そうですね。海外サッカーを扱う専門誌にもいろいろと文章を書かせていただいておりますし、南米のサッカーの取材もずっと続けていますので。

柴田:南米、行っているんですか?

矢吹:ああ、行ってます。チリだのアルゼンチンだのウルグアイだの。いろいろと行っていますね。

柴田:南米専門っていうわけじゃないでしょう? ヨーロッパサッカーも?

矢吹:南米専門ではないです。ヨーロッパの方も見ています。サッカーの面白いところって、世界中どこ行ってもあるんで。そして世界中のどこに行ってもそれぞれの特色がやっぱりあるんですよ。なので、サッカーを見ているとその国の土地柄とかお国柄とかが出てくるんで。

柴田:僕もね、オープニングでも言いましたけど、静岡県清水市のバリバリのサッカーっ子ですよ。そんな僕がこのカルロス・カイザー、聞いたこともないわけですわ。相当有名な方だと思うんですよ。こう考えてみれば。まあ、まず日本じゃありえないですけどね。でも、日本にあまり入ってきてない情報ではないかなって思うんですけども。

矢吹:そう。日本にはまだまだ全然入ってきてないんですけども。実は彼が「こういうことをしました」っていうのを2015年ぐらいに告白しまして。で、それで1回、ブラジルの中でポルトガル語でバーッと拡散されたんですよ。

柴田:それはカルロスさん本人が告白したっていうことですよね?

矢吹:カルロス・カイザー本人が「実は俺、こういうことをやっていたんだよね」っていうことでバーッと広まって。それで、最近イギリスの会社がカルロス・カイザーの映画を作りまして。で、その映画を作ったことをきっかけにして、また世界中に広まっていったっていう感じですね。

柴田:南米なんてサッカーへの情熱、熱いじゃないですか。それこそ視聴率が90%みたいな世界でしょう? そんな中、南米でサッカーをやっていて「俺、ペテンでした」なんて言ったら、「ふざけんじゃねえ、バカヤロー!」みたいな風にならなかったんですか?

矢吹:そう思うじゃないですか。ところが、そうならないところがまたこのカルロス・カイザーの面白いところなんですよ。

柴田:愛されているんですかね?

矢吹:それが、やっぱり彼のキャラクターとか、彼がどういう風な人生を送ってきたかとか、そもそもブラジルがどういう国かっていうのといろいろと絡んでくるんですけども。

柴田:紐付いてくるわけですね。さあ、ということでじゃあ矢吹さん。20年のプロ生活で1得点しかあげていないというサッカー選手、カルロス・カイザーについていろいろと紹介していただきましょう。

矢吹:はい。カルロス・カイザーは1963年生まれ。ブラジル出身のサッカー選手ですね。で、本名はカルロス・カイザーではなく、カルロス・エンリキ・ラポーゾといいます。

柴田:あら? 「カイザー」が入ってないじゃない?

矢吹:はい。「カルロス・カイザー」っていうのはサッカー名です。これ、ブラジル人あるあるなんですけど、「ジーコ」とか「カカー」とか有名な選手はいっぱいいますけど、あれは全部本名じゃないんですよね。というのも、ブラジル人って「ロベルト!」って言うと、もう11人全員が振り向いちゃうぐらい、みんな似たような名前が多いので。だからみんな、サッカーネームっていうのをつけるんですよ。上手ければ上手いほど、サッカーネームっていうのをつけるんですけども。

柴田:うんうん。

矢吹:そこで、カルロス・カイザーがなぜ「カイザー」かというと、これはフランツ・ベッケンバウアーというドイツのとても有名な選手がいるんですけども。

柴田:皇帝!

矢吹:いま、柴田さんがおっしゃった通り、あだ名は「皇帝」でした。で、この「カイザー」っていうのが「皇帝」っていう意味なんですよ。で、プレーぶりがベッケンバウアーに似ていたから、周りがカイザーというあだ名をつけたという……。

柴田:いや、ちょっと待ってくださいよ。プレーぶりがベッケンバウアーに似ているわけないじゃないですか。だってボールも蹴れないのに。どういうことですか?

矢吹:それは本人は「周りがそういう風に名付けた」って言っています。本人は。

柴田:本当!? なんかさ、『ユージュアル・サスペクツ』っていう映画に「カイザー・ソゼ」っていうのがいたでしょう?

矢吹:カイザー・ソゼ、いましたね(笑)。

柴田:あの人なんか、もう超ペテンだったわけじゃないですか。そういうところの、この「カイザー」ってつくものにはなにか人を騙すとか、そういうのがブラジルの中とかあっちの南米の方で広がっているのかな? とか思ったんですけども。そういうことではない?

矢吹:これはですね、本人は「ベッケンバウアー由来だ」と言っています。ただですね、映画の中で友人に確認したところ、「そんなわけないだろ!」って(笑)。

柴田:フハハハハハハハハッ! 「そんなわけない」と(笑)。周りは「こいつは下手くそだ」って言っているんだから。

矢吹:当時、カイザーっていう名前の結構太めの瓶ビールがブラジルの中で流通してたらしいんですよ。で、その瓶ビールに体型が似てたから「カイザー」だったらしいですね(笑)。

柴田:そういうことでしょう? だからあと付けで「皇帝ベッケンバウアーがカイザーだから……」っていう風につけただけでしょ? そういうところもたぶんペテンなんですよ。きっと。本当はただのビール瓶のプニョっとしたやつが、「俺はこういうことで名前がついているんだ」って言うと、周りはちょっとね、「ああ、そうなんだ」って思いますもんね。

矢吹:ただ、それを納得させちゃうぐらい、カルロス・カイザーってちょっと男前なんですよね。

柴田:ああ、容姿はいいんですね。

矢吹:そうです。若い頃のミックジャガーみたいな。ちょっと端正な顔立ちで。

柴田:猫パンチ前ですね。……ああ、あれはミッキー・ロークでしたっけ?(笑)。

矢吹:猫パンチはミッキー・ロークですね(笑)。

柴田:ミック・ジャガー、全然違う(笑)。

矢吹:ローリング・ストーンズのボーカルですね(笑)。

■たったこれだけ?カイザーが使った騙しのテクニック

矢吹:彼は1979年から約20年ほどプロのサッカー選手としてってセンターフォワードとしていろんなチームと契約して渡り歩くんですけども。

柴田:言っても「センターフォワード」がわからない人もいるかもしれないけど。花形ポジションですよ。一番点を取らなきゃいけない、ストライカー。

矢吹:はい。点を取ることが仕事ですからね。それなのに20年のプロ生活で1得点。

柴田:信じられない。いや、これがね、フタを開けてみたらゴールキーパーだったとかだったらわかりますよ。それだったら逆に1点取ったの素晴らしいじゃないですか。いま、ヘディングとかで点を取る選手だっていますしね。ディフェンダーでもない。フォワードで1点しか取れないやつが20年間もプレーしていたわけでしょう? 謎。謎すぎる。

矢吹:で、彼のキャリアは実はブラジルではなく、メキシコから始まります。17歳の時にメキシコのプエブラというチームと契約するんですが、ここはもう半年ですぐにクビになります。

柴田:このプエブラというチームはまだあるんですか?

矢吹:もちろんあります。まだあります。結構大きいチームです。

柴田:そうなんですね。そこを半年でクビに?

矢吹:それでブラジルに帰ってくるんですが……ここから彼の真のサッカーの人生が始まります。

柴田:いや、こここそが真のサッカー人生じゃないかと思うんだけど(笑)。下手で辞めさせられたんだから。ここのメキシコのプロチームに入ったってだけでもすごいんですよね?

矢吹:まあ、だから最低限の能力はおそらく、あったんですよ。そもそもブラジルの名門クラブの下部チーム。要するにアンダー15とかアンダー13とか、そういうところには所属をしていた選手なので、一応サッカーはちゃんとやってはいたんですよ。

柴田:本当になにもなかったわけじゃないっていうことですよね。

矢吹:ただですね、メキシコのチームを半年でクビになるぐらいですから、それはもうブラジルの名門チームとは普通だったら契約できないはずなんですよね。

柴田:無理無理無理。

矢吹:で、柴田さん。ここで問題です。実力も実績もないカルロス・カイザー。どうやってブラジルの名門クラブと契約までこぎつけたでしょうか?

柴田:ええーっ? ノーヒントで? いや、「クビになった」っていうのがあるから、「君は何でクビになったんだ?」と。「僕、本当はもっとチームでやりたかったんだけど、やっぱり年俸。自分が言っていた金額を出してくれなかったから、辞めてきたんです。だからこのチームに入りたいんですけど、どうですか?」って言って入った。

矢吹:なるほど。それでも、ちょっといろいろと足りなくないですか?

柴田:足りない?

矢吹:「じゃあ、やってみろ」って言われたら、どうします?

柴田:ああ、たしかに。「やってみろ」って……じゃあ、プレーもしたっていうことか。「だったら、見せますよ。だったら1試合、出してください。それで僕の評価を決めてくれて構いませんから」って言ってまず出た。

矢吹:でも、そんなことをしたら下手なのはバレますよね?

柴田:そうかー。ねえ、このクイズってこんな何段階にもなっているの?(笑)。

矢吹:フフフ、正解はですね、「マスコミや有名選手と仲良くなる」です。

柴田:うん。

矢吹:これは契約をする前にまず、その下準備があるんですよ。で、マスコミと仲良くなっておいて、「自分はいい選手だ。メキシコでも活躍した」っていう嘘の記事を新聞記者に書かせるんですよ。

柴田:えっ、本当に?

矢吹:はい。それはもう、お金をいくらかは渡していたんだと思うんですけども。プラス、リオデジャネイロやサンパウロのナイトクラブで当時のブラジルの有名選手と仲良くなって、その有名選手からの推薦をもらっておくんですよ。

柴田:汚え野郎だな、おい! マジで? はー!

矢吹:で、この2点セットを持ってクラブと契約したら、「まあこんだけ実績のある選手らしいし、こういう有名な選手が推薦してくれてるんだったら、契約してみてもいいだろう」っていう。

柴田:要するに「うちのこいつが言うんだったら……」ですよね。

矢吹:しかも、その有名選手というのも、そのへんの選手じゃないですよ。当時のブラジルのスーパースター、ベベットだったり、レナト・ガウショだったり、あとはロマーリオ。こういった超有名選手からも推薦を取り付けていたんですよ。

柴田:マジで? いや、だから本当に極端かもしれないけど、まあさんまさんが「こいつ、おもろいで。吉本、取った方がエエで」って言ったみたいなことだよね?

矢吹:そしたらそれ、契約をするじゃないですか(笑)。

柴田:する! 絶対にする! ああ、そう? で、マスコミにも、だからわからないけど、ちょっとしたお笑い雑誌とかに「すごい新進気鋭の面白いのが出てきた」ってライターさんが書いているみたいなことでしょう?

矢吹:そうですね。TVブロスとかに載るわけですよ(笑)。

柴田:ああーっ! 絶対にほしい! ぜひ人力舎に!(笑)。

矢吹:フフフ、そこで「吉本を断って、人力舎に行きます!」って。そうなったら行くじゃないですか。

柴田:それは取りますよね。

矢吹:でも、実際に練習をしたら、「こいつは下手なんじゃないか?」っていうのはバレちゃうじゃないですか。で、ここで彼はもう一段階、テクニックを使うんですよ。医者とも仲良くなっていくんです。で、医者にケガの偽の診断書を書いておいてもらうんですよ。で、「僕は本当はちゃんと実力はあるんだけど、いまは残念ながら肉離れを起こしている。ご覧ください、この診断書を。なので、まずは2、3ヶ月、練習はちょっと外れてランニングだけさせてください。治療だけさせてください」っていうので2、3ヶ月、まずはもうランニングだけするんですよ。

柴田:うん。

矢吹:で、「そろそろ治るよね?」ってなったらもう1回、「ケガが再発した」って言って嘘の診断書をまた書いてもらうんですよ。

柴田:ええーっ!? すげえ……。

矢吹:で、それを繰り返して契約を満了して、また有名選手の推薦とマスコミの嘘の記事。これを持って別のチームに入団するんですよ。

柴田:いや、わかんないけど、いちばんはじめのこのブラジルのチームに入った時はどれぐらいいたんですか?

矢吹:まあ、ほとんどのチームは半年でスキップしていますね。

柴田:半年なんだ。じゃあ、本当にランニングだけして? でも、そんだけランニングしていたら、すげえ足腰が強くなって、本当にやったら活躍しそうだけどね(笑)。わからないけど。ああ、そうなんだ。だって下地はあるわけでしょう? こいつ、この努力があるんだったら別に本当に上手くなりそうだけどね。頭を使って練習もさ。でも、そうやって裏の手、裏の手で。

矢吹:それで「俺は給料はいらない。ほしいのは契約金だ」という名言を残しています。契約金をもらえれば、あとは半年ゆっくりして、また次のチームに移って……っていう。

柴田:でも、言っても契約金だってまあまあもらえるわけでしょう? これだけの選手になって。

矢吹:もらえます。しかも入ったブラジルのチームってボタフォゴとかフラメンゴとか、まあまあいいチームに行っているんで。そこでちゃんとね、一軍の選手として契約したら、もうブラジルの中では悠々自適の生活ができるぐらいの契約金や月給はもらえますからね。

柴田:だってジーコがいたり、ロマーリオがいたりするようなチームでしょう? そんなのは。でも、そこのチームにいたっていう実績がひとつ、また乗っかってくるのかな? 次に行く時に。

矢吹:その通りです!

柴田:はー! じゃあ次の契約金、なんにもプレーしていないのに上がっている可能性、ありますよね?

矢吹:そうです。

柴田:実際、上がっているの?

矢吹:上がっていることもあったらしいですね。

柴田:うわーっ、すごい! そりゃあすごいわ。で、そうやってうまくやっているのって、有名選手とかお医者さんだけ?

矢吹:そうですね。あとは、有名選手と仲良くなるだけじゃなくて、女性とも仲良くなりまして。

柴田:女性は関係あるの?

矢吹:女性を……いわゆるコールガール。売買春の仕事をしている女性とも仲良くなって。そういう人を仕切って、そういうチームの関係者とかに斡旋をしていたんですよ。

柴田:フフフ、ちょっと待って(笑)。なんかさ、最近そんな話、聞いたな?(笑)。

矢吹:フフフ(笑)。そういうこともしていたので……。

柴田:それは切りにくいね(笑)。

矢吹:チームとしても、切りにくいんです(笑)。

柴田:だからプレーする以外のフィールドを満たしてくれる選手? これは切りにくいね!

矢吹:そうです。試合が終わってからが本番だったんです。彼の仕事は。

柴田:まさにそういうこと。はー! よく考えるわー! これが本当にプロとしてやっていたっていうのがすごいですね。

矢吹:これを20年、ずっと続けて金を稼ぎ続けた男なんですよ。

柴田:基本的にはこれだけ?

矢吹:これです! これをひたすら繰り返すんです。

柴田:でもいつかバレるでしょう?っていう話だけどね。試合に出る時もあっただろうし。

矢吹:で、こんなことを続けてたので、想定外のことが起きてしまいまして。彼、フランスからオファーが来ちゃうんです。

柴田:オファーが来たんかーい! マジで?

矢吹:はい。

柴田:ブラジルのチームを転々として肉離れだけずっとしてランニングしてる男がフランスからオファーが来る?

矢吹:そうです。

柴田:はー! ヨーロッパから?

(写真左から福島成人さん/カルロス矢吹さん/アンタッチャブル柴田さん)

■フランスのチームでも華麗なペテン師ぶりで切り抜けた……

矢吹:(フランスのチームと契約したカイザーですが)で、バルセロナにネイマールが入った時とか、イブラヒモビッチが入った時とかって、ご覧になったことがあると思うんですけども、スタジアムにお客さんを入れて。そのお客さんの前でリフティングしたりしなきゃいけないんです。

柴田:はいはい。パフォーマンスね。1回ね。

矢吹:で、それはもうそのへんの人たちができるプレーじゃダメなんですよ。「やっぱりうちのクラブはいいのを取ってきたな!」って。そう思わせるプレーを見せなきゃいけないんですよ。

柴田:たしかに。あそこもね、簡単そうにやっているけど、すごいボールタッチだったり、柔らかさもそうだし、技術もすごいですもんね。

矢吹:そうです。で、フランスのチームにそうやって入って入団会見も用意されるんですが、これ、どうやって切り抜けたと思います?

柴田:えっ、やったの?

矢吹:そうです。入団会見を実際にやったんです。

柴田:でも、やったら終わりじゃん。だって。ええーっ? これはもう診断書じゃねえもんな、もうなー。これ、入団のお披露目会で実際にボールも使うんですか?

矢吹:ボールも使いました。

柴田:ボールも使った? ああ、わかった。お客さんとリフティング。パスで。

矢吹:ああーっ、すごい近いです!

柴田:パスで。「じゃあお前と一緒にやってやるよ」っていう風にやったんじゃなくて?

矢吹:それは半分正解ですね。正解は、もう客席にボールを全部蹴り入れたんですよ。要するに「君たちへのプレゼントだ」って。

柴田:なるほど(笑)。どこに蹴っても上手そうだもんね(笑)。

矢吹:で、全部蹴り入れて、最後はクラブのエンブレムにキスするっていう。

柴田:うわーっ、「愛していますよ」と?

矢吹:はい。これはもうサポーター、みんな喜ぶわけですよ。

柴田:モテそう! モテそうだし、ボールをもらったちびっ子はすごい歓喜するよね?

矢吹:そうですね。それで後でそのボールにサインのひとつふたつ、やっておけばいいじゃないですか。これで乗り切ったんですよ。

柴田:頭いいな、こいつ。マジで! それでもう、当然チームとしても迎え入れますよね?

矢吹:はい。

柴田:でも、まあフランスで実際にスカウトが来ました。入団でみんなにお披露目して認められて入りました。そしたら「じゃあ試合に出てくださいね」ってなるわけじゃないですか。そこからですよ。

矢吹:もちろん、半年間ひたすらランニングだけをして契約を満了しました。

柴田:フハハハハハハハハッ! そこでも?

矢吹:はい。

柴田:いや、わかんないけど、ポルトガルとかに行くならまだしも、フランスに行くってなると今度は言葉とかもあるわけじゃないですか。そうなると、有名選手と仲良くなるとか、女性をうまくまとめ上げるっていうのもそうだし。お医者さんなんか特にですよ。言葉の壁があるから、なかなかコミュニケーション使えないから、診断書を取るとか、選手からの推薦を取るとか、できないわけじゃないですか。

矢吹:でも、何とかしてたみたいですね。医者の診断書をちゃんと取って。「いや、怪我してるから」って言って。それで乗り切っていたみたいです。

柴田:じゃあ、なんかうまいこと使って、お医者さんの診断書を取り付けたんでしょうね。でもまあ、通常いまね、日本のクラブチームのサッカー選手もそうですけど、かならず通訳がつくじゃないですか。そういう人がクラブチームから1人、あてがわれて。「ちょっと悪いんだけど、ここ痛いから医者だけ頼めるかな?」みたいなことでやったんですかね?

矢吹:うんうん。おそらく、そういう人がいたんだと思います。

柴田:それか、通訳も抱え込んだか。

矢吹:ああ、その可能性もありますね(笑)。

柴田:「ちょっと本当は出たいんだけど、本当に申し訳ない。これ、ちょっと痛いから診断書だけもらってきてくれ」って言って、見せはしないけど診断書だけもらったとか。「お金あげるから」とかやって。

矢吹:おそらく、まあありとあらゆる手をフランスでも使ったんでしょうね。

柴田:というか、もうペテン師っていったらどこででもいろんな手口、いろんな鉱脈を見出して渡っていきそうじゃないですか。でも、この診断書と有名選手と女性っていうこの3本柱だけ?

矢吹:ただそれだけですよ。

柴田:これで20年、持つかね? いや、わかんないけど。でも、持ったんですもんね。

矢吹:で、当然ですけど、フランスからブラジルに帰ってきたら、またブラジルの記者に「俺はフランスですごく活躍した」っていう嘘の記事をまた書かせるわけですよ。

柴田:でもさ、調べりゃわかるじゃん? 出てねえんだから。

矢吹:いや、調べるのが新聞記事なわけですよ。いまはインターネットがあるから簡単にわかるんですけど……。

柴田:そうか、いまじゃないから!

矢吹:まだ1970年代とか80年代の話なんで、「新聞がそう言ったらもう全部本当だ」ってなっちゃっていたわけですよ。

柴田:そうか! 彼の情報がそこに出てるし、そこが嘘ついてるわけないですもんね。はー! いまやちょっと眉唾みたいなこともいっぱいあるじゃないですか。いろんなことが蔓延しているから。でも、信じるべきところが新聞とか、そういうことだ。なるほど! で、「活躍した」っていう風に書かせて。で、また半年したらブラジルに戻ってきて。で、またすぐに契約をするんですか?

矢吹:そうです。で、ブラジルに戻って契約したチームが結構とんでもないチームで。バングーACというチームでして。これはですね、マフィアの結構な大物が経営するクラブチームで。

柴田:いや、いよいよマズいじゃない。

矢吹:で、カイザーがそのマフィアにめちゃめちゃ気に入られるわけですよ。

柴田:フハハハハハハハハッ!

矢吹:そのマフィアに。まあ、気に入られそうじゃないですか。

柴田:いや、気に入られると思う。「ボス!」っつって。

矢吹:まあ、いろいろとうまくやって気に入られるんですけど、ボスは当然いい選手だと思っているわけですよ。で、最初は「ケガをしているよ」って言うと、「ああ、いいよ、いいよ。待つよ」ってニコニコして待つんですけど、やっぱり3ヶ月たち、半年がたつとやっぱり「お前、いい加減に出ろよ?」ってなるわけですよ。で、ついに初出場する時がくるわけです。

柴田:ヤバいよ、ヤバいよ……ヤバいよ! 出川さん状態入っちゃった。これ、ヤバいよ!

矢吹:さあ、柴田さん、問題です。これ、カイザー。試合に出た時にこれをどうやって切り抜けたでしょうか?

柴田:いや、でも本当にベタだけど、ケガするしかないじゃん? だからもう刈り込みに行くよね。「削る」っていうやつですけどね。まあ削りに行ったところ、相手にやられて。ちょっとラフプレーで退場を食らうっていう……。

矢吹:ああーっ! これはもう8割正解です! 正解はその通りで、わざとレッドカードをもらって。もう開始10秒で試合から退場させられるんですけども。

柴田:開始10秒(笑)。もうちょっと出ててもバレないけどね(笑)。たぶん前半出ているぐらいだったらバレなさそうだけどね。

矢吹:ただ、削りに行ったのは相手選手ではなく、金網を乗り越えて観客席のサポーターに蹴りを入れました。

柴田:えっ、どういうこと?

矢吹:これ、もう当然レッドカードを食らいますよね? で、もちろんその後、マフィアのボスは大激怒ですよ。「お前、なんでそんなことしたんだ!」と説明を求めたら、「いや、違うんですよ。あなたの悪口をサポーターが言ってたんです!」って。

柴田:あらま! 天才!

矢吹:「私は父親もいない。ただ、あなたも父親が代わりのようになってこのクラブに迎えてくれた。このクラブはファミリアだ」と。

柴田:そのファミリアのボスがようやく試合に出してくれたと思ったら、ボスの悪口を言いやがった!

矢吹:「私は我慢できなかったんです。申し訳ない!」って言ったらもうボスは満面の笑みで「いやー、ありがとう! 私は嬉しいよ!」と。それでまた新しい半年間の契約をゲットするわけです。

柴田:はー!

矢吹:恐らくですけど、そのマフィアのボスも最後の方は「こりゃあ掴まされたな」と思ったと思うんですよ。思ったんですけど、やっぱり一度あげた拳を下ろして、それをまたあげるのは難しかったんだと思います(笑)。

柴田:そのボスのプライドみたいなものもあるのかな? わかんないけど。でもまあ、そこが本当かどうかっていうのはわかんない。ケガの多い選手っていうのも当然いるわけで。で、本当ならすごいスーパースターのように活躍できたけど、野球選手もいるけどさ。それでも活躍できないっていう人、実際にいるじゃないですか。だからちょっと「そっちなのかな?」って信じてあげたくはなりますよね。ちょっと情が入ると。

矢吹:で、なんやかんやで20年間で1得点は取っているわけですよ。よく取れたな!っていう話なんですけども。(映画「カイザー」では)実際の映像が残っていまして。「こういう風に点を取りました」っていうのが残っているんですよ。

柴田:それはどこで? ブラジルで?

矢吹:それはブラジルです。ブラジルのリーグ戦で1点だけ取っているんですけども。

柴田:それはどういう……あんまり言わない方がいい?

矢吹:これは、まだ言えないですね。映画を見てからのお楽しみということで。

柴田:でも実際に自分で1点、ゲットしているわけだから。だからこれ、できるんだと思うんだよね。こいつ。やりたくねえだけで。

矢吹:ちなみに、彼はこういう告白を全部して、「全く悪いと思ってない」っていう。この告白は贖罪のためにやったわけではなくて、冒険譚じゃないですけども。「俺はこんなうまいことやったんだよね」っていうので告白してるんですけど。面白いのはですね、これブラジル人も、レナト・ガウショとかベベットとかもみんな、あんまり怒っていないんですよ。

柴田:たしかにインタビューを聞いていた時もなんか笑いながらしゃべっている感じだったな。

矢吹:これ、ジーコだけはちょっとだけ怒っているんですけど。これはなんでみんな、怒っていないかっていうと、まずサポーターの意見を言うと、彼はですね、サポーターたちから「現代のロビン・フッド」って呼ばれているんですよ。

柴田:どういうことですか?

■カルロス・カイザーは現代のロビン・フッド??

矢吹:要するに、ブラジル人の人たちの感覚からしたら「クラブは好きだ。ただしそのクラブを支えてる金持ちたちは気に食わない」っていう。これはね、「巨人は好きだけど、巨人のオーナーは嫌い」みたいな。まあ、日本でもそういうの、ちょっとあるじゃないですか。だからそういう感覚とおそらく一緒だと思うんですね。で、選手の方もベベットにしてもレナト・ガウショにしても、サッカーがなかったらもう本当に貧しい育ちの子供たちだったと思うんですよ。だから、自分たちはたまたま才能に恵まれたけど、もし才能がなかったら自分たちもきっとこういうことをしていたんだろうなっていう。そういう風なのがちょっとあると思うんですよね。

柴田:ちょっとこの話が英雄化しているっていうこと? はー! でも、これはわかんないけど。この時はまだベールに包まれているから信じたいっていう気持ちもあって。それでボスとかは怒らないよ。怒らないけど、これがいよいよ嘘でしたってなったらボス、本気を出しちゃうんじゃない?

矢吹:これ、ボスはもう亡くなっているんですよ。

柴田:うまいことできている!

矢吹:だから、言えるタイミングで告白しているんですよ。

柴田:ああ、そう? 「ここだ!」って思ったんだ。はー! なるほどね。

矢吹:で、この映画はどこで見れるの?っていう話なんですけども、6月8日(土)。これ、彩の国さいたま芸術劇場という所で行われる、浦和フットボール映画祭というサッカー映画を流す映画祭が行われます。

柴田:これはいくつもサッカー映画が流れるの?

矢吹:そうです。で、その映画祭の中でこのカルロス・カイザーの映画『カイザー!』という作品が上映されますので、皆さんご自身の目でお確かめください。

柴田:へー! すげえ話を聞いたよ! うまいこと映画につなげるための伏線張ったね(笑)。別にこれ、あなたにお金が入るわけじゃないでしょう?

矢吹:まあ、なんにも入らないですよ(笑)。

柴田:でも、見てほしいのね。了解しました。6月8日(土)、彩の国さいたま芸術劇場の浦和フットボール映画祭もぜひ、映画『カイザー!』を見に行っていただきたいと思います。

「浦和フットボール映画祭2019」
https://urawafootball-film.jp/category/movie/

 

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「ラジオワールド」
日曜日 20:00 – 20:55
TBSラジオがお送りするスペシャルプログラム。
音楽、お笑い、ドキュメンタリーなど様々なジャンルを網羅した特別番組を毎週お送りします。

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