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「追悼:ニューオーリンズの巨星ドクター・ジョン〜その魅力と影響力を細野晴臣作品から聴く」(高橋芳朗の洋楽コラム)

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる洋楽コラム

「追悼:ニューオーリンズの巨星ドクター・ジョン〜その魅力と影響力を細野晴臣作品から聴く」

【高橋芳朗】
本日はこんなテーマでお送りします。「追悼:ニューオーリンズの巨星ドクター・ジョン〜その魅力と影響力を細野晴臣作品から聴く」。

BGM Iko Iko / Dr. John

Iko Iko

【高橋芳朗】
昨年3月9日放送のこのコーナーにおいて、星野源さんの「ドラえもん」で彼が取り入れたニューオーリンズ発祥のセカンドラインというリズムを特集しました。そのときにセカンドラインのサンプルとして「ドラえもん」と聴き比べたのが、いまBGMで流れているドクター・ジョンの名盤『Gumbo』収録の「Iko Iko」だったんですよ。

【ジェーン・スー】
覚えてる!

【高橋芳朗】
そんなわけでニューオーリンズを代表するミュージシャン、ドクター・ジョンが6月6日に心臓発作で亡くなりました。77歳でした。ドクター・ジョンはこれまでにグラミー賞を6度受賞、2011年にはロックの殿堂入りも果たしている偉大なミュージシャンですが、なによりもニューオーリンズの音楽を世界に広めた最大の功労者と言っていいと思います。まさにニューオーリンズ音楽の親善大使ですね。

そのドクター・ジョンの影響は欧米はもちろん、ここ日本のミュージシャンにも当然及んでいます。その象徴的な存在と言えるのが、先月にも特集したばかりの細野晴臣さん。今日はドクター・ジョンやニューオーリンズ音楽の魅力をわかりやすく知ってもらうにはこのアプローチがベストなのではと思いまして、細野晴臣さんの作品を通してドクター・ジョンの魅力と影響を聴いていきたいと思います。

まずは細野さんも大変な衝撃を受けたというドクター・ジョンの1972年リリースのアルバム『Gumbo』から「Big Chief」を聴いてもらいましょう。この曲はドクター・ジョンのルーツにあたるニューオーリンズの伝説的ピアニスト、プロフェッサー・ロングヘアが1964年にヒットをさせた曲のカバーになります。なんでも細野さんはドクター・ジョンの『Gumbo』を大瀧詠一さんから教えてもらったそうなんですよ。「すごいレコードが出たぞ!」って。

【ジェーン・スー】
へー!

【高橋芳朗】
その『Gumbo』の中で、細野さんはこれから聴いてもらう「Big Chief」に最も衝撃を受けたということです。細野さん、この曲のイントロのオルガンのフレーズを一生懸命コピーしていたんですって。

M1 Big Chief / Dr. John

Big Chief

【ジェーン・スー】
もうすごいね!

【高橋芳朗】
スーさん、この曲を聴いている時点ですでに「ちょっと細野さんみあるね」と。

【ジェーン・スー】
歌が入るとすごく土着的に聴こえるんだけど、イントロだけを聴いてる都会で暮らす余裕のある人たちの音楽というか、ちょっとふざけてる感じというかさ。

【高橋芳朗】
うん。めちゃくちゃシャレてるんだよね。

【ジェーン・スー】
そうそう、ソフィスティケートされてるよね。なるほど、細野さんはこういうところからあのニュアンスをいただいていたわけだ。勉強になるなー。

【高橋芳朗】
細野さんはドクター・ジョンの『Gumbo』を「ニューオーリンズの音楽を知るための教則レコード」と紹介してるんですけど、まさに『Gumbo』はニューオーリンズのリズム&ブルースのスタンダード集なんですよ。言ってみればニューオーリンズ音楽への招待状みたいなアルバム。実際、アルバムのライナーノーツにはドクター・ジョン本人による詳細な楽曲解説が載っていて。つまり、これはもともとニューオーリンズ音楽の魅力を広く伝えたいという意図のもとに作られたアルバムになるわけです。

おそらく細野さんはこの『Gumbo』をガイドにしてニューオーリンズ音楽のルーツをたどって、そのサウンドの秘密に迫っていったのではないかと思います。そして、その研究の結実といえるのが1976年にリリースした細野さんのソロアルバム、いわゆる「トロピカル三部作」の二作目にあたる『泰安洋行』になります。ドクター・ジョンの『Gumbo』と細野さんの『泰安洋行』を聴き比べると、細野さんがドクター・ジョンやニューオーリンズのサウンドの影響をどのように自身の作品に落とし込んでいったのかがよくわかるんですよ。

たとえばドクター・ジョンの「Blow Wind Blow」と細野さんの「蝶々-San」、それからドクター・ジョンの「Huey Smith Medley」と細野さんの「Roochoo Gumbo」などを照らし合わせてみたりすると結構感動的で。そして、いま聴いてもらった「Big Chief」の影響がわかりやすく聴き取れるのが「東京Shyness Boy」。この曲は『泰安洋行』の収録曲のなかでも最もストレートにニューオーリンズ音楽の影響が打ち出されている曲で、さっき話したプロフェッサー・ロングヘアのオマージュといっていいでしょうね。

M2 東京Shyness Boy / 細野晴臣

東京Shyness Boy

【ジェーン・スー】
うん、かっこいい!

【高橋芳朗】
この『泰安洋行』はドクター・ジョンの『Gumbo』を通してニューオーリンズサウンドにアプローチした作品になるわけですが、細野さんはこのあと、より直接的にドクター・ジョンへのリスペクトを表明することになります。どういうことかというと、細野さんが中心になって1984年に結成したプロジェクト、F.O.E./フレンズ・オブ・アースとしてドクター・ジョンが1973年に放った彼の最大のヒット曲「Right Place Wrong Time」をカバーするんです。次はこの「Right Place Wrong Time」のオリジナルとカバーを聴き比べてみましょうか。まずはドクター・ジョンのオリジナルから。これはヒップホップでもよくサンプリングされているかっこいいファンクです。

M3 Right Place Wrong Time / Dr. John

In the Right Place

【高橋芳朗】
では、続いて細野さんのフレンズ・オブ・アースによるカバーバージョンを聴いてもらいましょう。これは1986年という時代をを感じさせるニューウェーブ調のアレンジ。オリジナルが泥臭いから最初はびっくりすると思うんですけど、これがまた超クールなファンクに仕上がっているんです。

M4 Right Place Wrong Time / Friends of Earth

FRIEND or FOE?

【ジェーン・スー】
これが1986年!? なんか先月にでたばかりの新譜みたいですね。

【高橋芳朗】
たしかに、ちょっといまっぽさがあるかもしれない。

【ジェーン・スー】
しかし我々は恵まれておりますね。現在進行系でこのへんのアーティストの過去もそんなに難しくなく掘れるし、現在進行系の新譜も聴ける。豊かだわー!

【高橋芳朗】
そうですね、サブスクがあればこういう聴き比べもサクッとできちゃいますから。で、細野さんとドクター・ジョンの関係はこのあとちょっと意外な展開を迎えることになります。2008年にリリースされた細野さんのトリビュートアルバム『細野晴臣 STRANGE SONG BOOK: Tribute to Haruomi Hosono 2』。なんとこれにドクター・ジョンが参加するという。

【ジェーン・スー】
ええーっ!

【高橋芳朗】
いまBGMで流れていますけど、ここでドクター・ジョンは細野さんの1993年の作品「AIWOIWAIAOU」をカバーしているんです。

【ジェーン・スー】
ふーん!

【高橋芳朗】
これもドクター・ジョンの良さが存分に発揮された味わい深いナイスカバーなんですよ。

【ジェーン・スー】
へー、すごいね!

【高橋芳朗】
そんなわけで本日はドクター・ジョンと細野さんの作品を聴き比べてきましたが、とにかくまずは世界にニューオーリンズの音楽を広めたドクター・ジョンの『Gumbo』、その影響を昇華して日本にニューオリンズの音楽を紹介した細野さんの『泰安洋行』。この2枚をぜひゲットしてみてください!

―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ――
当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア。最新1週間のリストは以下です。

6/10(月)

(11:04) Another Rainy Day In New York / Chicago
(11:23) I Don’t Wanna Lose You / Daryl Hall & John Oates
(12:16) Echoes of Love / The Doobie Brothers
(12:51) I Say Who / 惣領智子

6/11(火)

(11:06) Pocky A-way / The Meters
(11:24) (Everybody Wanna Get Rich) Rite Away / Dr. John
(11:38) Last Train / Allen Toussaint
(12:09) Sneakin’ Sally Through the Alley / Robert Palmer
(12:50) killer tune kills me feat.YonYon / KIRINJI

6/12(水)

(11:05) As〜永遠の誓い〜 / Stevie Wonder
(11:38) One Man’s Junk / Billy Paul
(12:13) Love the Feeling / Leroy Hutson
(12:25) Do it to My Mind / Johnny Bristol

6/13(木)

(11:04) The More I See You / Chet Baker
(11:23) Love Me or Leave Me / Nina Simone
(11:36) Be a Clown / Chris Connor
(12:08) We’re Together / Blossom Dearie
(12:21) Taking a Chance On Love / Rita Reys

6/14(金)

(11:06) Can’t Let Go / Earth Wind & Fire
(11:24) No Time for Fooling Around / Evelyn Champagne King
(11:36) I Want You for Myself / George Duke
(12:13) You Bet Your Love / Herbie Hancock