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年間130万着の大ヒット「空調服」 開発者・市ヶ谷弘司さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
6月22日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、今や夏の工事現場では必須アイテムとなっている熱中症対策の作業着「空調服」を開発した株式会社空調服の会長・市ヶ谷弘司(いちがや・ひろし)さんをお迎えしました。

ソニーから独立してベンチャーを起業


以前、「スーツのような作業服」をご紹介したことがありましたが(2019年2月2日)、こちらは小型のファンが付いて、炎天下の屋外でも快適に働ける作業服。建設現場の近くを通ることがあったら、着ている作業員を見かけるかもしれません。ここ数年で建設業や電力会社などの間で急速に広がっていて、2017年は35万着、2018年が57万着、そして2019年は130万着の生産を予定しています。他の会社も次々に参入していて、今や空調服の市場は100億円とも300億円とも言われているそうです。そんな新しい市場を生み出したのが、市ヶ谷さんです。

市ヶ谷さんは、1947年、埼玉県生まれ。小さい頃から発明に興味があって、いろいろなアイデアが次々と浮かんでくるのだそうです。早稲田大学理工学部で電気工学を学び、1970年にソニーに入社。主にブラウン管の製造や性能測定の仕事に関りましたが、本当にやりたかったのは商品開発。ソニーに入ったのも、当時大変話題になったブラウン管「トリニトロン」を超えるような製品を作りたいと思ったのが理由でした。アイデアマンぶりが創業者の井深大や盛田昭夫に認められ、電子楽器の開発プロジェクトにも8年間関わりましたが、その後、中間管理職となったところで市ヶ谷さんは独立を決意しました。

1991年、43歳でソニーを早期退職した市ヶ谷さんは会社を設立。テレビのブラウン管の画質を分析・測定する機器を開発し、国内外のメーカーを相手に事業を展開していました。ところが90年代後半になると薄型の液晶テレビが普及し始めると、好調だったブラウン管事業は縮小。新規事業に取り組む必要に迫られます。そんな中で市ヶ谷さんは、ほとんどエネルギーを使わない、新型の冷房装置の開発に取りかかりました。1998年のことです。

冷房装置の開発を考えるようになったのは、営業で訪れた東南アジアでのこと。急ピッチで進む開発の様子を見て、「多くのビルにクーラーが必要となれば、地球温暖化は加速する」と実感したからでした。当初は、部屋や建物の全体を冷やす冷房装置を考えていた市ヶ谷さんでしたが、あるときふと思いついたのです。なにも部屋全体を冷やさなくても、「人」だけを涼しくすればいいんじゃないか―。この斬新な発想が「空調服」へとつながったのです。

人間自体が冷却装置


空調服はどうして涼しいのでしょうか? その原理は「打ち水」と同じです。撒いた水が蒸発するときに路面の熱を奪う…そう、気化熱です。

「人間には元々、高性能の冷却装置が備わっているんです。皮膚が温度センサーで、脳が制御装置。体が暑いと感じたら、ちょうどいい体温にするために必要なだけの汗を出すように脳が命令します。そうして汗が出るとそれが打ち水になって、気化熱で熱くなった体温を奪うんです。非常によくできた冷却装置なんです。これを私は『生理クーラー』と呼んでいます。ただ、唯一備わっていないのが、出た汗を気化するために体の表面に風を送る機能。そのために服にファンを取り付けたのが、この空調服です」(市ヶ谷さん)

いよいよスタジオで試着タイム。このときのためにわざわざ長袖のTシャツを着てきた久米さん、空調服に袖を通し、前のジッパーを閉めます。こうするととても暑そうですが、ファンで送った風があちこちからもれないようにするほうがいいんです。ファンが付いている腰のあたりから、襟元と袖口に向かって風が抜けるようにすると、上半身全体に風の流れができて広い範囲で汗が蒸発するからです。スイッチを入れると腰のあたりに取り付けられたファンから外気が取り込まれて、服が膨らんできます。すると…


「なるほどねー! 全身を空気が抜けるってこういうもんですかあ」(久米さん)

「汗かいてるときに本当は着てもらいたかった(笑)」(市ヶ谷さん)

「これは脇の下、脇腹、背中、首、胸、おなか…ムラなく通るってこんなに気持ちいいもんなんですね!。全身ムラなく…、これ気持ちいいもんですねえ」(久米さん)

「ちょっとうらやましい!」(堀井さん)

「よく『空調服を着ると体感温度は何℃下がるんですか?』って聞かれるんですけど、『何℃』ではなくて『ちょうどよい温度』になるんです。汗を気化させるための風を送ってやれば、脳がちょうどいい、快適な体温に調整してくれるんです」(市ヶ谷さん)

空調座布団で眠気さよなら!?


堀井さんが試したのは、空調座布団。半信半疑の堀井さんですが、どうでしょう?

「あ! あ! 座った瞬間、ヒヤッとしました(笑)」(堀井さん)

「人が座ったあとに座ると暑いですよね」(市ヶ谷さん)

「雀荘なんかでも嫌なもんですよ、席替えすると暑くてね」(久米さん)

「気分がシャッキリします。眠気が飛びます」(堀井さん)

「この人、本番中に寝るクセがありますからね」(久米さん)

「すごい目がはっきりしてきました(笑)」(堀井さん) 

「これ、学校でも勉強のときに…」(市ヶ谷さん)

「いいと思う!」(堀井さん)


空調座布団のほかに、ベッドの上に敷く「空調ベッド」、リュックサックと背中の間にはさむ「空調リュック」もあります。林家彦いちさんは、車のドライバーシートに使う「クールクッション」を数年前から愛用しているそうです。ブレイク前から使っていたなんて、さすが師匠、お目が高い!

試作品でズボンの前が…


空調服が完成するまでに、市ヶ谷さんは何度も試行錯誤を重ねてきました。初めは水を使って冷やす装置を考えて、ポンプやパイプが付いた怪しげな服を着て歩いていたら、水がもれだし、気がつくとズボンの前がじっとり濡れていたとか。ときには「実験中」と書いたプレートを下げた試作品を着て電車に乗って、奇異な目で見られたり。そんな苦労を7年間続けて、ついに2005年に完成。でも、それまで世の中になかったものというのは簡単には広がりませんでした。

「最初に使ってくれたのは大手のゼネコンではなくて、その孫請けの小さい会社。だいたい従業員10人ぐらいの規模の会社が使ってくれたんです。規模の小さい会社だと従業員の作業効率が良くなったことがはっきり分かりますから、また買ってくれるんです。調べてみると、買ってくれているところはリピート率が99%を越えていたんです。使ってくれれば良さが分かってもらえる。それで、これは絶対いいものだという確信を持ちました。売れたきっかけはバッテリーです。2010年にそれまで乾電池だった電源を充電式バッテリーに変えたら、売上が大きく伸びたんです」(市ヶ谷さん)。

ラインナップは30種類


現在、株式会社空調服のラインナップは約30種類。よく建設現場で見かけるような作業服だけでなく、バリエーションがかなり豊富。街着にしてもおかしくないスポーツウェア・タイプのものもあります。グループ会社も合わせると100種類以上になるそうです。

「空調服なんて簡単に作れるよとか、同じようなことは考えていたよって言う人がいますけど、やさしく見えるものほど誰も気がつかないんです。だって結局、今まで誰も作っていなかったんですから。最近は空調服をマネして作るところがたくさん出てきましたけど、私から見ると肝心なところを外している。だから、私たちは負けない自信があります。」(市ヶ谷さん)。

市ヶ谷弘司さんのご感想


私はこの番組を年中聴いているので、久米さんとお会いするのは初めてとは思えないです(笑)。

久米さんは技術的なことまでよく分かってらっしゃった。それと堀井さんには座布団を気に入ってもらえたので、今後使っていただければと思います。私もあれがないともう仕事ができません(笑)。

今後も基本的には汗と水と風を使って冷却するという目線は変えないで、ただ久米さんがおっしゃったように、どうしたら体に万遍なく効率よく風が行き渡るかというところが課題ですね。今の空調服もまだ効率が良くないと思いますので。ありがとうございました。



「今週のスポットライト」ゲスト:市ヶ谷弘司さん(「空調服」開発者)を聴く

次回のゲストは、元ニッポン放送アナウンサー・上柳昌彦さんさん

6月29日の「今週のスポットライト」には、元ニッポン放送のアナウンサー、今はフリーとしてご活躍の上柳昌彦さんをお迎えします。ラジオファンにはおなじみの「うえちゃん」がTBSラジオに登場。久米さんとはどんな接点があるのでしょうか? お楽しみに!

2019年6月29日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190629140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

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