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多数意見では無難になって刺さらないことも…「ベストセラー伝説」著者・本橋信宏

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28日(金)のゲストは『ベストセラー伝説』を新潮新書から出された、作家の本橋信宏さん。

武田:『ベストセラー伝説』という本は、1960~70年代の出版が活性化していた時代の社会現象になった雑誌や本ですね、本橋さんご自身の経験を呼び起こして書かれた本だと思うのですが、これはどういう入り口で昭和のベストセラーを書こうと思ったのですか?

本橋:ずっと前から思ってたんですよね。自分の少年時代に読んでいた本をどんな人が作っていたのかなって。あと私は散歩が趣味なので、東京をよく歩くんですよ。そこで出版社を見掛けることが多いんですね。「あそこで本を作ってたんだなぁ」と昔の記憶とリンクして。私は昔の話を掘り起こすのが大好きなので。映画も本編よりもメイキングを見る方が好きなので。

武田:本橋さんの作品に通底してますよね。メイキングへの意欲って。

本橋:その通りです。で、聞ける内に聞いとこうと。こういう話は地上から消えちゃうんですよ。

武田:ご自身が若かった頃に編集者をしていたと考えると、現在は80代の方も多いから、ギリギリ伝承できるタイミングですよね。実際に取材を重ねてみて、当時と今では雑誌のベストセラーの生まれ方というのは違うものでしたか?

本橋:基本的には変わっていないですが、今はコンプライアンスがうるさいかなと。で、編集者って自営業者ですから個人個人で独立しているので、それぞれ一子相伝の秘技は持ってるんですよ。で、意外とそれは言わない。「編集者は黒子であれ」という美学があるんですね。名前は出さない、表に出ない、手柄は全て作家のものにで良いというね。そういう黒子に徹する控えめな方にあえて出て来てもらい、せめて記録に残そうと。

武田:本橋さんが黒子であった人たちの秘技を引っ張り出してる本なので、そこが面白いですよね。読んでてびっくりしたのが、雑誌を売るときに付録を付けることってあるじゃないですか。ネガティブな言い方しちゃいますと、「雑誌を売ってるのか付録を売ってるのか分からない」と言われるじゃないですか。ただ、この本を読むと『科学と学習』の中で、付録をどう魅力的なものにするのかということにかなり力を注いだと。

本橋:『科学と学習』って付録が欲しいから買ってましたから。

武田:びっくりしたのが鉱物セットを作るときに、埒が明かないということで、鉱山まで行って「ここの石をくれ!」って言う(笑)

本橋:そしたらね、くれるんだよね。「子供たちのため」と言ったら、大人たちは無償の奉仕でくれたりするんですよ。『科学と学習』の付録が当時の子供たちに与えた教養はとても大きいと思いますね。子供たちはおもちゃっぽいものから入った方が良いんだよね。

武田:かつて『週刊朝日』の編集長だった扇谷正造という人のエピソードで、企画に迷ったら片方に『中央公論』みたいな総合誌を。もう片方に『主婦の友』を置くと。それで目を瞑ってパッと指せと。片方に”天皇制”の記事、もう片方に”朝食”の記事が出て来たら、「天皇制の朝食」という特集記事を作れと。つまり、自分の頭のなかで想像していることよりも、思い付きを一気に企画するスピードが当時の速度感を痛感しますね。

本橋:雑誌の雑の部分だよね。

武田:今だと色んなマーケティングとかね。「これをやったらこれぐらいしか届かないんじゃないか?」みたいなことを計算してやるけれど、実際はもっと出るみたいなことは本来はあるのにちょっとやりにくくなってますよね。

本橋:マーケティングの情報過多ですよね。

武田:自分が勤めていた会社で『大人の塗り絵シリーズ』というのがあって大ベストセラーになったんですが、企画会議を通すときに「何で大人に塗り絵をやらせるんだ!」と大反対があったんですが、結果は高齢化社会で脳トレに繋がって、思わぬところで紐付いてベストセラーになったんですね。これを読んで思い出すことがありますね。

本橋:多数の意見になると無難になって刺さらないということがありますね。壁村耐三という伝説の編集員がいるんですが、大多数の意見は聞かない人でした。『ドカベン』も最初は柔道漫画だったのを「野球に変えろ!」と言って。思い付きでやられたみたいですよ。

武田:他に全く知らなかったエピソードで『試験に出る英単語』とかにも迫っていて。英単語の本なのに、巻末に人をアジテートする文章とか載っていたりするんですよね(笑)当時の出版物の暑苦しさが出てて良いなと思ってましたね。当時の英単語は、本来の英語教育する側からしたら「本当にこれだけで良いのか?」というやり方だったんだけど、それを徹底して「これだけを覚えてくれ!」というので本を出したらベストセラーになったと。会議で合議制を敷いた英単語帳だったらもっときっちりしたものだったかもしれないですね。

本橋:『試験に出る英単語』の生みの親は、後のアクションカメラ系やハウツーSEX本とか、そういうエンタメ系の人なんですよね。振り返ると「1800語で良いんだ!」というのもエンタメっぽい。それを日比谷高校の森先生という人が明治時代から入試をずっとストックしていて、どういう単語の出題が多いのか聞きに行ったんですね。当時の受験生はエリートだから、シェイクスピアとかラッセルみたいな抽象的な文学や哲学の出題が多かったんですよ。だから抽象語がキーポイントだからそれを抑えろと。それが1800語。思い切った提案ですけど、それが当たった訳ですからね。

6月28日GUEST ACTIONを聴くhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190628162830

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