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「映画『ロケットマン』を見る前に知っておきたいエルトン・ジョンのこと」(高橋芳朗の洋楽コラム)

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる洋楽コラム

「映画『ロケットマン』を見る前に知っておきたいエルトン・ジョンのこと」

映画『ロケットマン』を見る前に知っておきたいエルトン・ジョンのことhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190823123428

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

【高橋芳朗】
本日はこんなテーマでお送りします! 「映画『ロケットマン』を見る前に知っておきたいエルトン・ジョンのこと」。いよいよ本日公開になりました、エルトン・ジョンの半生を描いたミュージカル映画『ロケットマン』。

【ジェーン・スー】
楽しみ! どうだった?

【高橋芳朗】
題材的にもタイミング的にも、それから監督がかぶってることからもクイーン/フレディ・マーキュリーの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』との比較は避けられないと思うんですけど、これが負けず劣らずの傑作で。

【ジェーン・スー】
おおっ!

【高橋芳朗】
本日はその『ロケットマン』を鑑賞するにあたって、エルトン・ジョンの「これだけは知っておきたい!」というポイントをお話したいと思います。

【ジェーン・スー】
よろしくお願いします。

【高橋芳朗】
エルトン・ジョンは現在72歳。50年以上のキャリアを誇るイギリス人シンガーソングライターです。ミュージシャンの歴代セールスランキングでいくと、1位がビートルズ、2位がエルヴィス・プレスリー、3位がマイケル・ジャクソン、4位がマドンナ、そして5位にくるのがエルトン・ジョン。

【ジェーン・スー】
そうなんだ!

【高橋芳朗】
シングルやアルバムなどの累計セールスは約3億枚になるそうです。スーさんや堀井さんがエルトン・ジョンについて知ってることってどんなことですかね?

【ジェーン・スー】
うーん、ピアノ。

【高橋芳朗】
うん、いわゆるピアノマンですよね。

【堀井美香】
うーんと……73歳ぐらい?

【高橋芳朗】
フフフフフ、それいま僕が言ったことですよ(笑)。メガネがトレードマークになってるとかね。

【ジェーン・スー】
派手な衣装とか?

【堀井美香】
結構日本に来る?

【高橋芳朗】
あんまり日本に来ないです(笑)。同性愛者であることは知ってますよね?

【ジェーン・スー】
ああ、そうですね。

【高橋芳朗】
そんなエルトン・ジョンに関して、一般的にはあまり知られていないことなんだけど、でも『ロケットマン』を見るにあたってしっかりと念頭に置いておいてほしいことがあるんです。それは、エルトン・ジョンの作品は基本的に作詞家のバーニー・トーピンとの完全分業体制で作られているということ。これは1968年のソロデビューから現在、2019年に至るまで約50年ずっとそうなんです。

【ジェーン・スー】
すごいね! もうずーっと?

【高橋芳朗】
うん。途中70年代後半から80年代の頭ぐらいに5年ほどコンビを解消していた時期はあったんですけど、エルトン・ジョンの楽曲のほとんどはバーニー・トーピンの作詞とエルトン・ジョンの作曲によって作られています。エルトンとバーニーは1967年の夏に出会ってすぐに意気投合してエルトンの実家で共同生活を送ることになるんですけど、この時点でもうふたりの分業スタイルは確立されることになります。なんでもエルトンとバーニーは同じ部屋で暮らしながら二段ベッドで寝ていたそうで。

【ジェーン・スー】
へー、寄宿舎みたい。

【高橋芳朗】
上のベッドでバーニーが歌詞を書いて、完成したら下のベッドにいるエルトンに渡して。それでエルトンがピアノのある場所に移動してメロディーをつける。そういうプロセスで曲を作っていたんですって。

【ジェーン・スー】
つまり詞が先だったんですね。曲が先ではなかった。

【高橋芳朗】
その通り。『ロケットマン』ではこうしたふたりのケミストリーや曲作りのプロセスの確立をエルトンの出世作、1970年に大ヒットした「Your Song」の誕生と共に描いています。バーニーは朝食を食べながら歌詞を書いて、エルトンはそれに20分程度でメロディーをつけたと言われています。

【ジェーン・スー】
うわー、鳥肌が立つね! そんなふうにして作られた曲がいまも歌い継がれてるということでしょ?

【高橋芳朗】
そうなんですよ。でも確かに言われてみれば朝に作られた雰囲気のある曲だし、さらっと書き上げた曲という感じもありますよね。では、この「Your Song」がいったいどんなことを歌っているのか、歌詞の大意を読みますね。「胸の奥から言葉にできない不思議な感情がわき上がってくる。僕は自分の気持ちを隠すのが下手なんだ。僕はお金持ちでもなければ偉大な彫刻家でもない。だから僕が君にできる精一杯のことはこの曲を贈ること、ただそれだけ。とてもシンプルな歌だけど気に入ってくれるといいな。君がこの世界にいるだけでこの人生は素晴らしい。そんな思いを込めた歌なんだ」。この歌詞、なんの背景も知らずに聴いたら普通に素敵なラブソングだと思いますよね。実際、映画『ムーラン・ルージュ!』ではユアン・マクレガーがニコール・キッドマンに自分の思いを伝えるときに「Your Song」を歌っていました。でも、これがこのあと50年続くバーニーとエルトンの友情を踏まえて聴くと、微妙に受け止め方が変わってくると思うんです。要は、「Your Song」の歌詞はバーニーが敬愛するパートナーのエルトンに捧げたメッセージと解釈できるんじゃないかと。この「Your Song」に顕著なんですけど、エルトン・ジョンの曲って暗にエルトンとバーニーの友情や絆、ふたりが置かれている状況、相手に寄せる気持ちを歌ったと思われる曲が結構あるんですよ。そう考えると「Your Song」の日本語タイトル、「僕の歌は君の歌」はこのコンビが作る曲の構造を端的に捉えた素晴らしい邦題だなって。

【ジェーン・スー】
ああーっ! わかっていたんだ!

【高橋芳朗】
つまりエルトンの歌はバーニーの歌でもあるし、バーニーの歌はエルトンの歌でもあるということ。言ってみれば、ふたりの曲作りのプロセスは歌詞とメロディーの往復書簡のようなところもあったんじゃないですかね。『ロケットマン』はエルトン・ジョン作品のこうした構造を念頭に置いて見るとより理解が深まると思います。

M1 Your Song / Elton John

【高橋芳朗】
うーん、何度聴いても素晴らしい。

【ジェーン・スー】
切ないね。堀井さん、この曲好きなんでしょ?

【堀井美香】
たまたまなんですけど、最近知り合いにギターで弾いてもらったものをiPhoneで録音してずっと聴いていました。

【高橋芳朗】
インストゥルメンタルなんですね。

【ジェーン・スー】
歌詞も聴いてくださいよ。バーニーのことも考えて。

【堀井美香】
だからいま歌詞を知ってすごいなって。

【高橋芳朗】
『ロケットマン』はこうしたエルトン・ジョンの曲の特異な構造をうまく物語に活かしていて。クライマックスではドラッグとアルコールに溺れるエルトンと決別するバーニーの思い、そこから再生を図ろうとするエルトンの思い、この双方の心情や立場をエルトンのある有名曲を使って見事に描いているんです。このシーンはもう爆泣でしたね。

【ジェーン・スー】
すごいよね、ドラッグやアルコールであそこまでぐちゃぐちゃになった人がいま普通に活躍していてお元気なんだもの。

【高橋芳朗】
2014年にイギリスで同性婚が合法化されたときには同性パートナーと結婚して養子もとっていますからね。話をエルトンとバーニーの関係に戻すと、さっきも軽く触れた通りふたりは70年代後半から80年代前半にかけて一時的にコンビを解消しているんですけど、1983年のアルバム『Too Low for Zero』で完全復活します。次はこのアルバムから最初のシングルとしてヒットした「I Guess That’s Why They Call It The Blues」を聴いてもらいましょう。この曲はバーニー・トーピン曰く当時の彼の奥様へのラブレターとして書いたそうなんですけど、これがエルトンとのコンビを完全復活させたアルバムの最初のシングルであることを考えると、むしろエルトンとの絆を確認するような歌に聴こえるんですよ。歌詞の大意を読みますね。「いつまでもこんな状況が続くなんて思ってない。君と僕の関係はこれからもっと良くなっていくんだ。きっと人はこんな気持ちをブルースと呼ぶのだろう。この手のひらに乗せた時間はすべて君と過ごすためのもの。子供のように笑い、恋人のように寄り添う。君がいない人生なんてなんの意味もないんだ」。

【ジェーン・スー】
これをバーニーが書いているわけですね。

【高橋芳朗】
うん。ある意味、再出発を切るにあたってバーニーがエルトンに捧げた第二の「Your Song」みたいなところがあると思うんです。

M2 I Guess That’s Why They Call It The Blues / Elton John

【高橋芳朗】
いま聴いてもらっているハーモニカはスティービー・ワンダーの演奏ですね。

【ジェーン・スー】
ああ、そうなんだ!

【高橋芳朗】
最後にもう一曲、これは個人的に映画を見たあとで改めて噛み締めたいと思った曲です。いま紹介した「I Guess That’s Why They Call It The Blues」が収録されている『Too Low for Zero』の次のアルバム、1984年の『Breaking Hearts』からヒットした「Sad Songs (Say So Much)」。この曲のタイトルは直訳すると「悲しい歌は多くを語る」という意味になるんですけど、まずは歌詞の大意を読みますね。「本を書き綴ることができるほどつらい目にあったならサッドソングを聴けばいい。きっと歌詞の一行一行が心に沁みて気持ちを楽にしてくれる。サッドソングが歌いかけてくれるものはとても大きいんだ」。波乱万丈の人生を送って一度は決別したエルトンとバーニーが、再びコンビを組んで「悲しい歌は多くを語る」なんて曲をこのタイミングで作っていることにぐっときてしまうというか。あと、この曲って同じ1984年にヒットしたクイーンの「Radio Ga Ga」と同様にラジオ賛歌なんですよ。曲中にはこんな一節もあります。「時として僕たちはどんな小さな痛みでもシェアする必要がある。つらい思い出を引きずりながら心を癒していくことは難しい。そんなときこそラジオをつけて昔ながらの悲しい歌と自分の苦い経験を分かち合うんだ。ラジオをつけてサッドソングを流そう。希望を失くしたらラジオをつけてサッドソングを流すんだ。望みを失ったときこそサッドソングは多くを語るのさ」。これはもう、ラジオで音楽を流すことのなんたるかを見事に言い切ってると歌詞だなと。

【ジェーン・スー】
番組選曲をしているあなたの役目ですよ!

【高橋芳朗】
そう、そうなんですよ! ラジオで選曲するときってどうしても楽しい曲や心地よい曲を選びがちで。でもこの曲で歌われているようにサッドソングならではの効力も確実にあるし、サッドソングを必要としている人もまちがいなくいるんですよ。今回『ロケットマン』からの流れでひさしぶりにこの曲に行き着いて、やっぱり折を見てサッドソングを電波に乗せていかなくちゃいけないなって思った次第です。

M3 Sad Songs (Say So Much) / Elton John


【高橋芳朗】
というわけでエルトン・ジョンとバーニー・トーピンの関係性を追いながら計3曲聴いてもらいました。まとめますと、エルトン・ジョンの曲はエルトンの作曲、バーニーの作詞による分業体制で作られていること。そして時にそこにはふたりの友情や絆がほのめかされていること。『ロケットマン』はこの点を踏まえて見てみてください。

【ジェーン・スー】
行く! 絶対に行く!

【高橋芳朗】
必見です!

―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ――
当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア。最新1週間のリストは以下です。

8/19(月)

(11:10) Hot Fun in the Summertime / Sly & The Family Stone
(11:25) California Soul / The 5th Dimension
(11:36) Groovin’ / The Young Rascals
(12:12) Make The Music Play / Frankie Valli
(12:24) Gimme Little Sign / Brenton Wood
(12:51) Sunny / Stevie Wonder

8/20(火)

(11:03) Those Lazy, Hazy, Crazy Days of Summer / Nat King Cole
(11:26) Bossa Nova Baby / Elvis Presley
(11:37) The Coffee Song / Eydie Gorme
(12:14) Cry Your Sadness / The Hi-Los’s

8/21(水)

(11:06) Walking On Sunshine / Katrina & The Waves
(11:37) Going Down to Liverpool / Bangles
(12:14) Show Me / The Pretenders
(12:50) London Boy / REBECCA

8/22(木)

(11:06) On The Beach / The Paragons
(11:36) Breaking Up Is Hard to Do / Alton & Hortense Ellis
(12:15) Love Me Forever / Carlton & The Shoes
(12:26) I Shall Be Released / The Heptones
(12:51) Nice Time / Bob Marley & The Wailing Wailers

8/23(金)

(11:05) Saturday Night’s Alright for Fighting / Elton John
(11:37) Crocodile Rock / Elton John
(12:11) Honky Cat / Elton John