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難病「多発性硬化症」を知っていますか?

森本毅郎 スタンバイ!

目が痛いので眼科に行く、手がしびれる、感覚がないので整形外科に行く、トイレが近いので泌尿器科に行く、でも治らなくて、原因もわからない。そんな難病、「多発性硬化症」って知っていますか?

8月19日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、あまり知られていないけれど症状が辛い難病「多発性硬化症」について取り上げました。

★難病の問題点

難病というと、患者さんの数が少ないため、マスコミでも取り上げられることが少ないです。そのため、周りの理解が広がらず、人知れず悩む人も多いんです。また患者さんが少ないため、市場が小さいとして、薬の開発も遅れがちです。

難病はこうした問題を抱えがちですが、今朝はその中の一つ多発性硬化症に注目します。
新しい治療法が広がっているのでご紹介しつつ、周りの理解も広げたいと思います。

★多発性硬化症とは

多発性硬化症という名前は、文字の上では、硬化=硬くなることが多発する、と書きます。脳などの中枢神経に異変が起きて、あちこちで症状が多発する病気です。

患者さんを検査したところ、悪いところが硬くなっていることがあることから、この名前になりました。ただ、実際には、その症状は多岐にわたるので、病名からは理解しにくい病気です。

★症状は多岐にわたる

この病気がわかりにくいのは、中枢神経のどこに異変が起きるかによって症状が変わることです。「手足の痺れ」「力が入らない」「視力低下」「視野欠損」「失語症」「記憶障害」「歩行障害」など、「多発性硬化症」という名前からは想像がつかないような様々な症状があります。

そして、完全に治すのは難しく、寛解と発症を繰り返しながら進行していく病気です。治療をしないと、「歩行障害」の場合は、15年で杖、20年で車椅子になる、怖い病気です。

★病気の仕組みは電気コードのショート

そもそも中枢神経に異変というのはどんなものか。

普段は体を守るはずの免疫が、突然暴走してしまうのが原因。自己免疫疾患です。その暴走した免疫が、脳や脊髄の中枢神経を守っているカバーを破壊してしまう病気です。

この仕組みは、よく、電気のコードに例えられます。

コードは、ショートしないように、ビニールのような絶縁体でカバーされていいます。それと同じように、脳や脊髄の神経も、この絶縁体のようなものでカバーされています。

コードでそのカバーがはがれると、電気が放電されたりショートしたり異常が起きます。それと同じように、脳や脊髄で、免疫が暴走して、カバーが攻撃され、壊れてしまうと、むき出しになった神経で、神経伝達が乱れ、異常が出る、という仕組みです。

★中枢神経の異常と症状の関係

この時、どこの神経のカバーが壊れるかによって、現れる症状が変わります。

*大脳の場合、体の片側だけの感覚が異常になったり、片側の視野が欠損する半盲、あるいは、言葉が出ない失語症になったり、記憶・学習障害など。感覚異常では、熱いものに触れて火傷しても気づかないこともあります。

*小脳や脳の中央の幹の部分=脳幹のカバーが壊れた場合は、物が二重に見えたり、重症の場合は物がジャンプしているように見えることもあります。

*脊髄で異常が出た場合は、腕や指に力が入らず筆記が難しくなったり、片方の足に力が入らず歩けない、また手足が突っ張る、身体中がビリビリする、トイレが近くなって、仕事中に何度もトイレに行かなければならなくなることも。

*そして視神経では、目の中や周囲に痛みを感じ、目を動かせなくなったり、視野欠損になったりします。

★多発性硬化症は気づきにくい

症状が1つなら病名にすぐ結びつくが、症状がこれだけ多岐に渡ると、病名にたどり着くのが大変です。

この多発性硬化症は「神経内科」の専門になりますが、目に異常が出れば眼科、手足のしびれは整形外科、トイレが近くなれば泌尿器科、など直接の科に行くのが普通です。

しかし、こうした症状は多発性硬化症の可能性もあること、そして、直接の診療科所で改善されないなら、神経内科を考えることが大切です。

また多発性硬化症の症状は、同時に発症する、というよりは、1つ発症して、それが治ると、別の症状が発症して、と続くようです。これらの症状が、期間を開けて、順繰り起きた場合、多発性硬化症でないか?中枢神経のあちこちのカバーが破れていないか?と考える必要があります。

★多発性硬化症の診断

多発性硬化症かどうかの診断は、神経内科で、問診から始まり、次に3つの検査で診断。

①まずは「MRI」。この検査によって、神経のカバーが壊れている部分が白く映ります。

②そして「髄液検査」。腰の部分に針を刺して、脳髄液をとって検査します。脳や脊髄のカバーが壊れている場合は、そこに炎症があります。脳脊髄液に炎症反応があるかどうかを調べ、多発性硬化症かどうか検査します。

③そして3つ目は「誘発電位検査」。体に刺激を受けると、電気信号が誘発されて神経の中を流れます。しかし、神経のカバーが壊れていると、この電気信号が効率よく流れません。そこを調べることで、多発性硬化症かどうかを見極める検査です。

★多発性硬化症の治療

多発性硬化症の治療は、急性期に症状を抑え、寛解期に再発を抑え、慢性期に対処療法をします。

★急性期の治療

①まず「ステロイドパルス療法」というステロイド治療です。500mgまたは1000mgのステロイド剤を、2〜3時間かけて1日1回点滴、これを3〜5日間行い、症状次第で、もう1サイクル、同じように3〜5日間行います。これは、神経の炎症を抑え、同時に、炎症を起こすタンパク質も抑える仕組みで有効な治療です。

②これでも症状が改善されない場合は「血液浄化療法」です。これは、人工透析のような仕組みで、血液の中にある病気に関連する成分を入れ替える治療です。

★寛解期は再発防止の治療

こちらは2000年に再発を長期にわたって抑えるインターフェロン系の薬が出てから進化しました。現在は6種類の治療薬がつかわれています。

自分で注射するタイプの薬としては、インターフェロン系の薬など3種類。1か月に1度、点滴するタイプの薬が1種類、そして内服薬として2種類。

それぞれ、病状や生活スタイルに合わせて、医師と相談して決められ、選択の幅が広がったのはよかったです。

★慢性期の治療

なお痛みが続く慢性期については、痛みやしびれに対するリハビリなど、対症療法を行います。

★ポイントは早期発見

多発性硬化症は、完治させるのではなく寛解を維持する治療。完治とならないのは、一度、傷ついた脳神経組織の修復は、現在の医学では難しいんです。だからこそ、治療に取り掛かるのは早ければ早い方がいいです。

まずはこの多発性硬化症という病気、症状を知って、疑わしい場合は、神経内科へ。

★日本でも増えている

多発性硬化症は、欧米に比べ日本人には少ないと言われてきました。

しかし、昔は10万人に1人とも言われたが、今は、10万人に15〜18人。全国におよそ2万人の患者がいると推定されています。

症状が「感覚」に関わるものが多く、周りから理解されにくいのですが、周りの方も、この病気を知って、理解をしてください。

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190826080130

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