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和紙で車を作ったデザイナー~堀木エリ子さん

コシノジュンコ MASACA

2019年9月22日(日)放送
堀木エリ子さん(part 1)
京都生まれの和紙デザイナー。2000年に株式会社堀木エリ子&アソシエーツを設立し、「建築空間に生きる和紙造形の創造」をテーマに、オリジナルの大型和紙でインテリアアートの企画、制作、施工まで手掛けていらっしゃいます。日本建築美術工芸会賞をはじめ、国内外で数々の賞を受賞していらっしゃいます。

JK:今日は京都からいらしたの? ありがとうございます! すごいダイナミックな作品ですよね。本人も背が大きいですね(笑)どっちかっていうと、宝塚の人みたい!

堀木:がっちりと男らしくて(^^;)私、和紙を初めて32年なんですけどね、ジュンコ先生とは30年ぐらい前からお目にかかっていて、まだ私が可愛らしかったころに(笑)大阪でのデザイナーの集まりとか、素晴らしいご縁をいただいてます。

JK:でも手漉きって狭い感じがするでしょ、手で作るから。でもこんなにダイナミック! 建築家ですよね。

堀木:そうですね、和紙を作るというよりは、環境を作るという。和紙のこちら側と向こう側の気配を作るのが私の仕事だと思っています。

JK:日本の伝統工芸ですけど、私たち一般人からいうと、和紙っていうと障子とか提灯とかは昔からあるわけですけど、それを現代やアート性のある壁面に生かすっていうのは独特の世界を作ったなと思います。

堀木:ありがとうございます。「移ろう」っていうのが和紙の魅力なんですね。本来なら、太陽光線がないと移ろっていかないんですけども、現代の建築では太陽光線が入らないような地下の空間だったり、ビルで密集しているところでも、LEDとか調光とかで太陽光線がなくても移ろう空間ができないかな、と思って。1枚に見える和紙でも、3~7層のデザインの違うものを漉き重ねて1枚にしてるんです。

JK:あ~、じゃあ厚み感がある?

堀木:和紙の表からライトをあてたときは1枚目のデザインしか見えないんですけど、裏側からライトを当てると、重ねたデザインが浮かび上がってくるという特徴があります。

出水:今までの和紙は何層ぐらい?

堀木:だいたい1~2層ですね。もともと職人さんがお持ちの技術なんですけど、それをアレンジして、工夫して。

JK:そうですよね、発見ですよね。作りながら発見して、考えて、また次々浮かんでくる。でも実際にはダイナミックな、大きい作品でしょう。工房も大きいんですか?

堀木:大きいですね。いまは福井と京都の工房で仕事してるんですが、福井の工房では畳3畳分の和紙を漉きます。

出水:た、畳3畳分?! はぁ~!それを何人で?

堀木:10人がかりです。

JK:だけど、一気にやるんですか? でないと半分乾いて半分は・・・ってことになるものね。

堀木:せーの!っていう掛け声で一斉に流し込んだりするんですけど、せーの!の「せ」で流し込む人もいれば、言い終わってるのにモタモタしてる人もいたりして。そういう人間のタイミングのずれとか偶然性が面白い作用をするんです。なので、私がこんなデザインを作りたいと思って、100%思い通りにしてやろうと思うと、ロクな作品はできません。

JK:だから失敗が成功だったり。何が成功かわかんないわね。

堀木:はい。偶然性が3割ぐらい関わって、人の作業が7割ぐらい。

JK:でも長年やってて、まだ偶然っていうか、見たことのないものが見つかりますか?

堀木:いまだに見つかります。毎回、毎日違います。たとえば、職人さんの肘からぽたっと水滴が落ちちゃうと、それは損紙になっちゃって捨てられてしまうんですけど、もったいないでしょう? せっかく苦労して漉いたのに、水滴1個で捨てられちゃう。それを見て、全体的に水滴を打ったらどうなるんだろう?と思って。そしたらそれがデザインになる。そういった失敗から発見したりすることも多いです。

JK:失敗は成功の元っていうから。だから、前ばっかり見ないで、裏もあるよ、みたいな発想ですよね。

堀木:あとは考え方の発見もあるんです。私たちは立体和紙というのを漉いてるんですけど、糊や骨組みを使わずに立体的に成形していく漉き方なんですけど、これを最初に発見したのは、建築家の方から「卵を作ってくれ」って言われたのがきっかけなんです。恐竜の卵ぐらい大きな卵型の照明。最初は竹ひごと針金で骨組みを組んで、平面の和紙をちぎって糊で貼って作ってみたんです。でも、素人の私が提灯屋さんの真似をして作るよりも、もっと面白いやり方はないかなと思って、ゆで卵を前にずっと考えてたんです。逸れである日気が付いたんです、卵に骨はないって。

JK:卵に骨はない? おもしろ~い!

堀木:卵に骨はないのに、なぜ私は骨組みを組んでたんだろうって。それで風船っていうのを思いついたんです。風船って卵型とはちょっと違うのでいろいろ考えたんですけど、たとえば大きな風船の中に、小さな風船を2つ入れて、膨らませたらどうなるのか? 小さい風船を膨らませた後、大きな風船の空気を抜いていくと、小さな風船の頂点から卵型になるんです。

出水:ええ~!

堀木:これもやってみないと分からなかったことですけど(笑)でも私、素人からこの世界に入ったので、できることも全く分からなかったけれど、できないことも全く分からなかったので、やってみたらできたってことがいっぱいあるんですよ。

出水:堀木さんの作品は、東京ミッドタウンガレリアやパシフィコ横浜、成田空港第1ターミナル到着ロビーなどでご覧いただけるんですが、非常に大きな空間アートですよね。

堀木:ありがとうございます。大きすぎて、和紙だと気づいてもらえないんですけど(^^;)一番大きいもので14m×4m、京都の歌舞練場の緞帳に使われてきます。

JK:一面壁ね! 緞帳ってことは上から降りてくるの? あらいいわね! それで光が差し込んだらきれいね。ヨー・ヨー・マの舞台美術もやったんでしょ?

堀木:はい、カーネギーホールで舞台美術をさせていただいて。ヨー・ヨー・マさんがたまたま私たちのショウルームにお越しくださって、1年後にソロのコンサートをやるのでぜひ使いたいとおっしゃってくれて。

JK:へぇ~。あちらも発見ね。何かわかったんでしょうね。

堀木:そうですね、曲の抑揚に応じてライティングを変えて、背景の環境を変えていくっていう演出をしたので。

JK:でもどうやって持っていくんですか?

堀木:和紙はロールにできるので! 巻いて持っていきます。

JK:ロール! あら、かっこいいわね(^^)

堀木:1年前から打ち合わせをしてたんですけど、実際にカーネギーホールに持って行って担当者が見たときに、あまりにも大きなシートなので、使ってもらっては困ると。カーネギーホールは世界一音響がいいところなのに、こんな大きな垂れ幕をつるされては音の関わり方が変わるからダメだって言われちゃったんです。そこでヨー・ヨー・マさんが出てきて「これからの音楽は耳からだけではない、目からも感動していくんだ、僕は五感で感じる音楽を目指していきたい、チャレンジをしたい」って言って説得してくださったんです。

JK:やったやった! だから私も想像がつかなかったの! でもヨー・ヨー・マのチェロも神秘的なんだけど、合ってますよね。

出水:堀木さんにとって一番挑戦的だなと思った作品は?

堀木:今までで一番挑戦的だったのが、2000年のハノーヴァー博覧会の時に、和紙の車を作ったんです。最高時速125kmまで出せて、二人乗り。

JK:エンジンはそのままで、殻を和紙で作るわけでしょ?

堀木:外装も内装も和紙で、光ってるんです。ハンドルもホイルキャップも全部和紙。和紙じゃないのはタイヤと動くための器具だけ。今はトヨタ博物館の中に保管されてると思います。

JK:それは車を、例えば置くような恰好で日本から送っていったの?

堀木:そうなんです。昼間は日本館に展示されてるんですけど、夜な夜な会場の中をゆっくり走るんです。雨の日もあれば風の日もあり、ハンドルも手で握るので手あかもつけば、背中やお尻もこすれるでしょう? ハノーヴァーは消防法の法規で燃えるものを会場に持ち込んではダメって厳しいんです。だから、燃えないとか破れないとか精度をあげるとか、いままでの和紙の難点を全部克服しなきゃいけなかった。そういうチャレンジが、のちのち建築空間に対していろいろ技術が磨かれていくことにつながったんです。

出水:和紙の車は出来上がるまでに、開発にどのぐらいの期間がかかったんですか?

堀木:1年間です。できなかったらどうするつもりだったの?って聞かれるんですけど(笑)

JK:私ね、五所川原の23mのねぶたを作ってるところを見たんだけど、結局和紙でしょ。燃えない、濡れない、雨になっても強いっていう。そこに絵を描いてるけどね。それもすごいわね。だから和紙ってすごくダイナミック。家まで建てられちゃうんじゃない(笑)和紙ハウス、ってどう?

堀木:和紙ハウスもできなくはないと思いますよ! 頭で想像できることって実現できると思うんです。やるか、やらないか。「できない」っていう選択を捨てちゃえばいいんですよ。そうすると「できる」しか残らないから(^^)

JK:そうですよ、やれないはずはない。できないっていうところから入るのは嫌よね。そこから新しいものができてくるからね。たとえ思ったものとは違ってても。

堀木:そこから発見がありますものね。

出水:お二人には京都美術工芸大学の客員教授という接点もありますが、堀木さんはどんな授業を?

堀木:私は体験談を語るだけなんです。人生にとって、モノづくりにとって一番大事なことは、ご縁と腹の底から湧き上がるパッションだって話をするんです。

JK:私も客員教授になってだいぶ経ちますね。私は「あなたにとって琳派とは?」というテーマで、一緒に山に登って、自分の世界の琳派を作ろうってやったんです!

堀木:一緒に山に登ってすごい楽しかった、って学生から聞きました! 私も行きたかった~!

出水:いつも高いヒールでキメているジュンコさんがどんな風に山登りしたのか、気になりますね(^^)

=OA楽曲=

M1. J.S. バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 / ヨーヨー・マ

M2. エミリーズ・リール / ヨーヨー・マ/エドガー・メイヤー/マーク・オコーナー

「コシノジュンコ MASACA」
TBSラジオで、毎週日曜17:00-17:30放送中です。ラジオは、AM954kHz、FM90.5MHz。パソコンやスマートフォンでは「radiko」でもお聴きいただけます。