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「追悼リック・オケイセック~ザ・カーズの遺伝子を継ぐ者たち」(高橋芳朗の洋楽コラム)

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる洋楽コラム

「追悼リック・オケイセック~ザ・カーズの遺伝子を継ぐ者たち」

追悼リック・オケイセック~ザ・カーズの遺伝子を継ぐ者たちhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190920123150

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

【高橋芳朗】
本日はこんなテーマでお送りいたします。「追悼リック・オケイセック~ザ・カーズの遺伝子を継ぐ者たち」。

You Might Think / The Cars

【高橋芳朗】
主に1970年代後半から80年代にかけて活躍したアメリカのロックバンド、ザ・カーズの中心メンバーであるリック・オケイセックが15日に亡くなりました。75歳でした。ザ・カーズは1976年にボストンで結成後、1978年にデビュー。ニューウェイヴ時代のロックンロールバンドとして人気を博しました。1988年には解散してしまいますが、2014年に再結成しています。ザ・カーズが活動期間に残したアルバムは計7枚。その総売り上げはアメリカだけでも約2300万枚に及んでいます。去年には晴れてロックの殿堂入りも果たしていますね。

そんなザ・カーズの代表作といえるのが、いまBGMで流れている1984年アルバム『Heartbeat City』から生まれた大ヒット曲「You Might Think」。この曲はまだ普及して間もなかったコンピュータグラフィックスを導入したミュージックビデオが話題を集めて、第1回のMTVビデオミュージックアワードで最優秀ビデオ賞を受賞しています。

【ジェーン・スー】
あー、ザ・カーズといえばMTVという感じはすごくある!

【高橋芳朗】
うん。しかも、この第1回MTVビデオミュージックアワードでの大賞受賞はマイケル・ジャクソンの「Thriller」やポリスの「Every Breath You Take」を抑えてのものですからね。インパクトありました。

いまスーさんがおっしゃっていたように、ザ・カーズというとMTV黎明期の象徴的なアーティストとして語られることも多いんですけど、90年代以降のオルタナティヴロックに絶大な影響を及ぼしているバンドでもあるんです。今日はリック・オケイセック追悼の意味を込めて、ザ・カーズの遺伝子を受け継ぐバンドを紹介していきたいと思います。

では最初はこれぞカーズのスタイルといえる、たくさんのアーティストにコピーされてるカーズの代表曲を聴いてもらいたいと思います。1978年のデビューシングル「Just What I Needed」。この曲、作者はリック・オケイセックですがボーカルはベースのベンジャミン・オールが務めています。まずはこの曲をしっかりと耳に焼き付けてください。

M1 Just What I Needed / The Cars

【高橋芳朗】
それでは、この「Just What I Needed」を頭のなかで反芻しつつザ・カーズの遺伝子を受け継ぐバンドを紹介していきましょう。最初は1994年にデビューしたロサンゼルス出身のロックバンド、ウィーザーです。リック・オケイセックは彼らのキーになるアルバム3作品のプロデュースを手掛けているんですけど、今日はそんななかからデビューアルバム収録のヒット曲「Buddy Holly」を聴いてもらいたいと思います。

【ジェーン・スー】
さっきの「Just What I Needed」を聴いて「ああっ、ウィーザーっぽい!」って思ったよ。

【高橋芳朗】
確かに、すでにもうビビッときた方もいるかもしれないですね。ウィーザーはデビューにあたって当初はセルフプロデュースでアルバムを作ろうとしていたみたいなんですけど、レコード会社から名前の知れた実績のあるプロデューサーを立てろと命じられて当時気に入って聴いていたザ・カーズのリック・オケイセックを指名したそうです。

ウィーザーの面々はリック・オケイセックとの顔合わせの際、彼に敬意を表していま聴いてもらった「Just What I Needed」のカバーを披露したんですって。当時ウィーザーのメンバーだったマット・シャープはそのころのことをこんなふうに回想しています。「僕たちはカーズの初期の作品に夢中になった。音楽的に自分たちと近いものを感じていたんだ。コード進行やギターのダウンストロークの使い方、メロディセンスも僕たちに似ていたし、タイトなサウンドも共通していた。『Buddy Holly』は『Just What I Needed』に似てるとも言えなくもないね」と。そんなわけでこれからかける「Buddy Holly」、当事者も認めるカーズからの影響を聴き取ってもらえたら幸いです。

M2 Buddy Holly / Weezer

【高橋芳朗】
ちなみにウィーザーは2011年公開のピクサー映画『カーズ2』のテーマソングとして冒頭で聴いてもらったザ・カーズの「You Might Think」をカバーしています。ある意味師弟関係的というか、最もザ・カーズと結びつきの強いバンドと言っていいかもしれませんね。

You Might Think / Weezer

【高橋芳朗】
ザ・カーズの遺伝子を受け継ぐバンド、続いては2001年にデビューしたニューヨーク出身のロックバンド、ストロークスの「12:51」。2003年の作品です。ストロークスはゼロ年代を代表するロックバンドとして高い評価を獲得していますが、彼らもザ・カーズからの強い影響を受けていて。ライブでは先ほど聴いてもらった「Just What I Needed」をカバーしていたこともあるんです。これからかける「12:51」は「Just What I Needed」のキーボードの音色を思いっきり取り入れているのでそのあたり注目して聴いてみてください。

M3 12:51 / The Strokes


【高橋芳朗】
ザ・カーズの遺伝子を受け継ぐバンド、最後は1996年にデビューしたニューヨーク出身のロックバンド、ファウンテンズ・オブ・ウェインの「Stacy’s Mom」。これも2003年の作品です。この曲は究極のカーズ・トリビュートと言ってもいいかもしれませんね。

まず、この「Stacy’s Mom」のイントロが先ほど聴いてもらった「Just What I Needed」のイントロにそっくりなんですよ。この曲を初めて聴いたリック・オケイセックが「Just What I Needed」をサンプリングしていると思った、なんてエピソードが残っているぐらいそっくりで(笑)。

しかも、おそらくファウンテンズ・オブ・ウェインはこれを確信的にやっているんですよ。というのも、「Stacy’s Mom」はガールフレンドのステイシーのセクシーなお母さんに魅了される男の子の歌なんですけど、この曲のミュージックビデオの撮影にあたってバンド側はステイシーのママ役にリック・オケイセックの奥様、スーパーモデルのポーリーナ・ポリスコワに出演をオファーしているんです。ポーリーナはザ・カーズの大ヒット曲「Drive」のミュージックビデオに出演していた女性ですね。

Drive / The Cars

【ジェーン・スー】
ええっ! それでどうなったの?

【高橋芳朗】
これはあえなく断られてしまいます(笑)。

【ジェーン・スー】
だよねー(笑)。いや、ザ・カーズについてはなんとなく聴いたことあるぐらいでよくわからないという私と同世代の女性でも、リック・オケイセックの奥様のポーリーナのことはきっと見たことがあるはず。なぜなら、当時彼女はエスティローダーの広告塔をやっていたから。東欧初のスーパーモデルと言われた女性ですよ。名前を聞いてピンとこなくても顔を見たらすぐにわかると思います。

【高橋芳朗】
ポーリーナが「Drive」のミュージックビデオに出演したのは彼女がまだ19歳のころで。リック・オケイセックとはその撮影を通じて知り合って結婚に至ったみたいですね。

そんなわけでポーリーナのミュージックビデオ出演は叶わなかったんですけど、ファウンテンズ・オブ・ウェインはそれでも懲りることなく今度はリック・オケイセック本人に出演を依頼して。まあ、これも残念ながら断られてしまうんですけどね(笑)。最終的には子役の男の子にリック・オケイセックのコスプレをさせたり、車のナンバープレートに「I ❤︎ Ric」とメッセージを入れたりすることでザ・カーズ愛を表明しています。

ファウンテンズ・オブ・ウェインのザ・カーズに寄せる思いはこれにとどまらず、この「Stacy’s Mom」のミュージックビデオにはほかにもザ・カーズへのオマージュが含まれています。1982年に公開された青春映画の名作で『初体験/リッチモンド・ハイ』ってあるじゃないですか。あの映画にはザ・カーズの「Moving In Stereo」をバックにフィービー・ケイツがプールサイドでビキニを脱ぐめちゃくちゃ有名なシーンがあるんですよ。たぶんアラフィフの男性だったらみんな見たことあると思うんですけど、ここではその名場面をわざわざ再現していたりもして。

【ジェーン・スー】
おおっ! もうどんだけ好きなんだと(笑)。

【高橋芳朗】
そう、めっちゃ熱心なザ・カーズのファンなんですよ。なので本来であれば「Stacy’s Mom」はミュージックビデオと併せて楽しんでほしい曲なんですけど、とりあえずはリック・オケイセックがサンプリングしていると思ったほどに酷似しているザ・カーズの「Just What I Needed」を頭に浮かべながら聴いてみてください。

M4 Stacy’s Mom / Fountains of Wayne

【ジェーン・スー】
いやー、なんかオルタナありパワーポップありのハッピーな時間だったね。青春!

【高橋芳朗】
ザ・カーズというと日本では「You Might Think」がヒットした1984年のアルバム『Heartbeat City』の人気が高いんですけど、後続のバンドへの影響ということでは断然「Just What I Needed」が収録されている1978年のファーストアルバム『The Cars』が筆頭にくると思います。このアルバムには「Just What I Needed」だけじゃなく『初体験/リッチモンド・ハイ』で使われた「Moving In Stereo」も入っているし、収録曲の「My Best Friend’s Girl」はニルヴァーナが、「You’re All I’ve Got Tonight」はスマッシング・パンプキンズがカバーしているんですよ。

My Best Friend’s Girl / Nirvana

You’re All I’ve Got Tonight / The Smashing Pumpkins

【ジェーン・スー】
ああー、すごいね!

【高橋芳朗】
そうそう。非常に聴きどころの多いアルバムだと思うので、これからザ・カーズを聞いてみようという方はまずデビューアルバムの『The Cars』から入ってみるのもいいかもしれませんね。

―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ――
当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア。最新1週間のリストは以下です。

9/18(水)

(11:06) Cecilia / Simon & Garfunkel
(11:07) Photograph / Astrud Gilberto
(11:38) Awaiting On You All / George Harrison
(12:13) Brighter / Carole King
(12:25) I Believe in Love / Georgie Fame
(12:51) Country Road / Al Kooper

9/19(木)

(11:24) Balanco Mar / Ana Lucia
(12:36) Mar Amar / Claudette Soares
(12:12) Deixa Como Esta / Doris Monteiro

9/20(金)

(11:04) I Got My Mind Made Up (You Can Get it Girl) / Instant Funk
(11:27) Pass the Buck / Love Committee
(11:37) First Choice – Double Cross
(12:09) Handy Man / Double Exposure