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バッハの楽譜を出してドラクエ5の曲を弾いていたピアニスト清塚信也さん。「親は音感がないのでバレなかった」

ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ

清塚信也さん完全版トーク前編はこちらから↓↓

■ピアノ頑張ったらゲームを買ってくれるけど、やったらダメ

「マイゲーム・マイライフ」のゲストにやってきたのは、ピアニストの清塚信也さんです。『のだめカンタービレ』や『神童』で吹き替え演奏を担当し、『さよならドビュッシー』では俳優として出演しています。なんと、番組のリスナーでもあるとのことです。

幼い頃からピアノの英才教育を受けていた清塚さん。家にゲームはなく、やるなら友達の家でだったのだとか。それが小5の頃、「ピアノのコンクールで入賞したらゲームを買ってあげる」と言われ、3位入賞したことで買ってもらったのだそうです。ところが……。


清塚「コンクールで入賞するたびに買ってもらうんですけど、(ゲームを)やっちゃダメなんですよ」

宇多丸「!?」

清塚「フフフフ」

宇多丸「か、買ってあげるけど、やっちゃダメ!?」

清塚「こんな酷なことあります?」

宇多丸「ヤバいですね……。えっ、うちにあるわけですよね? (ピアノ)終わったら何分いいよ、とかじゃないんですか?」

清塚「違います、違います。ものすごくコンクールを頑張ったらやってもいいこともあるんですけど、普段はダメ」


宇多丸「コンクールってどれくらいの頻度であるんですか?」

清塚「だいたい一年に一回ですね」

宇多丸「ちょちょちょ! え! え! 家にあるのに!」

かわいそうな清塚さんですが、姉のバイオリン教室についていく日は親が家を6~7時間空けるため、そのときにこっそりゲームをしていたのだそう。しかし、それもバレて親は激怒。どうしても『マリオ3』をやりたくて仕方がなかった清塚さんは、家出します。

清塚「どんな(スパルタな)仕打ちにも耐えたけど、そのときだけ家出しました」

宇多丸「こんなことも許されないのか、と」

清塚「マリオだけはやりたい、と。で、家出して、近くのTSUTAYAのようなレンタルショップに行きました。デモンストレーションみたいに、ちょっとプレイができるコーナーがあったんですよ。それをやりに行って」

宇多丸「ううう~~~~!!! 泣けてくる!」

結局このゲームしたすぎて家出事件、すぐに捜索願を出され、補導されるという騒動まで発展してしまいます。帰った清塚さんは、親から泣きながらビンタされるわけですが、そのビンタは「8割くらいは、(心配というより)なんでこの家出していた時間にピアノの練習しないの? というビンタでした」とのこと……。壮絶すぎる……。


宇多丸「ゲームをそもそも買わないとか、壊されちゃう、捨てられちゃう、隠されちゃうとかになりそうだけど、そういうわけでもなく?」

清塚「そんな広い家でもなかったので、普通にしまうところに(ゲームが)ありましたね」

宇多丸「それが残酷ですよね……! 手を伸ばせば届く日常空間の中にあるのに!」

清塚「まず買ってくれるな、って話ですよ(笑)」

宇多丸「そうなんですよ! 逆に酷くない!? 買い与えておいて!」

ピアノの練習に忙しく、友達の家にも頻繁に行けるわけでもなく、結局は姉と親がバイオリン教室に行っている間にこっそりゲームをして、バレないように慎重にミリ単位で片付け、と根気よくやるしかなかったとのこと。唯一、コンクールでいい成績を取った日は、朝までゲームをするのが許されたのだそうです。
ただし!
翌日はまた朝早くから練習しなければならないため、「それまでの時間、寝るのか、ゲームするのか、自分で選択していいよ」。
怖すぎる。これは……躾というより、もはや調教の域なのでは……。これは番組ゲスト史上最も厳しい家庭かもしれません。

■バッハの楽譜を出してドラクエを弾けばバレなかった

しかし、清塚さんもやられっぱなしではありません。


清塚「ドラクエ5をやって、音楽を耳コピしてピアノで弾くというのが僕なりの反抗で。母はまったく音感がなかったので、バッハというクラシックの作曲家の楽譜を出しておけば、バッハ弾いてると思っちゃうんですよ」

宇多丸「タンタターンターンターンターン♪(ドラクエの序曲)をやってるのに、お母さんはバッハだと思ってる(笑)」

清塚「すぎやまこういち先生の曲、ちょっとクラシック調なので」

宇多丸「これ最大の! 最大のパンクですね!」

清塚「そうですよ」

宇多丸「のちにお母さんは知るとかあったんですか?」

清塚「その(弾いてた)ときはバレなかったんですけど、わりと最近になって『実は……』と明かしました。明かしたら、今となっては『そうだったんだ』って感じでしたけど」


宇多丸「成功されてますからね」

清塚「当時の僕としては、最高の娯楽でしたね。で、そこでたぶん僕、作曲とかアレンジとかの能力が身についたんだと思うんです。耳コピして、ピアノ用に一台で弾けるように編曲して演奏して(中略)改めて、バッハらしさみたいなのもわかりましたからね(笑)」

宇多丸「ははははは! こうやってやるとバッハっぽく聞こえる、とか」

清塚「おかげでバッハも向上しました(笑)」

衝撃です。バッハのふりしてドラクエを弾くって、バレないものなの!? そんなことあります!? それにしても、これは痛快。これは、この手の抑圧されてきた話を聞くたびに毎回思うことですが、あまりに厳しかった親のもとに生まれた子どもの、スキマをぬって考える工夫や発想の豊かさときたら。人間の持つ欲求の底知れなさを思い知らされます……。

ライムスター宇多丸とマイゲーム・マイライフ

■今回のピックアップ・フレーズ

清塚「(マリオ3の)たぬきマリオが大好きで、小4のときの習字で将来の夢を書いたんですが、みんなパイロットとか野球選手とか書いてたのに、僕だけ『たぬき』って書いてたんですよ」

宇多丸「ははははは!」

清塚「たぶんマリオ3の影響です(笑)。たぬきマリオが好き過ぎて」

宇多丸「お母さんからしたら、なんでピアニストじゃないんだよってツッコミも入るところですよね」

文/朝井麻由美(ライター、コラムニスト)

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