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宇多丸、『大脱出3』を語る!【映画評書き起こし 2019.10.4放送】

アフター6ジャンクション

TBSラジオ『アフター6ジャンクション』の看板コーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。ライムスター宇多丸が毎週ランダムに決まった映画を自腹で鑑賞し、生放送で評論します。

今週評論した映画は、『アス』(2019年9月6日公開)。

オンエア音声はこちら↓

宇多丸:

さあ、ここからは私、宇多丸がランダムに決まった最新映画を自腹で鑑賞し評論する週刊映画時評ムービーウォッチメン。今夜扱うのはこの作品……『大脱出3』! そうそう。このエンディングの……たぶん『007』オープニング風なんだろうけど。ちょっとこの(曲が流れる)エンディングの奇怪さの話も後でしますね。

シルベスター・スタローンが主演を務める脱獄アクションシリーズの第三弾。脱獄のプロフェッショナル、レイ・ブレスリンが誘拐された社長令嬢と仲間を救うため、これまで誰も脱出したことがないという――そんなこと言ってましたっけ?(笑)――謎の監獄「デビルズ・ステーション(Devil’s Station・悪魔砦)」攻略に挑む。スタローンの他、前作にも出演したデイヴ・バウティスタ。さらに『イップマン』シリーズとか『グランド・マスター』で一躍注目を浴びました、マックス・チャンが出演。監督は『2days トゥー・デイズ』や『15ミニッツ』などのジョン・ハーツフェルドさん、ということです。

ということで、この『大脱出3』をもう見たよというリスナーのみなさま、<ウォッチメン>からの監視報告(感想)をメールでいただいております。ありがとうございます。メールの量は「少ない」。これはしょうがない。公開規模がそんなに大きくないですからね。それにしては皆さん、ちゃんと律儀に送っていただいて。劇場を埋めていた結構な何割かは、ウォッチメン……『アフター6ジャンクション』リスナーなんじゃないか、という気もしますけどもね。

賛否の比率は褒めが4割。ダメだったという方が6割。両陣営ともテンションは低めということでございます。褒めている方の主な意見は「スタローンやバウティスタの肉弾戦が見れて満足」。まあ、『2』はほとんどなかったんでね。「前作よりも今回はスタローンがちゃんと主役として活躍している」。前回が本当に15分しか出てませんでしたからね。「マックス・チャンがたっぷり見れて嬉しい」。たしかにマックス・チャン、大活躍でございます。

一方、否定的な意見は、「話が行き当たりばったりすぎるし、そもそも全然脱出してないじゃん」とかね。「前作にあったかわいげがなくなり、ただのつまらない映画に成り果てた」とかですね。「主人公ブレスリンに全く好感が持てない」などがございました。代表的なところをご紹介しましょう……ラジオネーム「タケシ」さん。

■「敵や味方や囚人がウロウロしながら、たまに出会って殴りあったり撃ちあったりするのを見て楽しむ映画」(byリスナー)

「『大脱出3』、ウォッチしました。今回は謎のSF要素がなくなったことで、前作にあった『俺は何を見せられているんだろう?』という虚無感はかなり減っていました。また今回は、アクションシーンにおいて程よいゴア描写(残酷描写)があることにより、スタローンが悪魔砦に潜入してからラスボスと決着をつけるまでの過程では、思いがけず手に汗を握ってしまうこともありました。まさか『大脱出3』で手に汗を握ることになるとは……。またマックス・チャン、バウティスタ、スタローンのそれぞれの個性を活かしたアクションシーンや、スタローンが唐突な自分語りをしながらラスボスをボコボコをする場面等、クライマックスにテンションの上がる場面が集中していました。そのため、鑑賞後はわりと手堅いB級アクション映画を見たような後味を感じることができました。

そもそもスタローン映画を見に行くという行為そのものが平成生まれの僕にとっては噛み締めたくなるくらい嬉しい奇跡なので、僕はこれくらいの作品なら満足です。『ロッキー』や『ランボー』もいいけど、こういう小ぢんまりとしたアクション映画も大好きなので、『バレット』の続編もぜひ作ってください」というね。ウォルター・ヒル『バレット』の続編、たしかに見たいね。

一方、ラジオネーム「とむとむ」さん。「『ロッキー、ランボーに続くスタローンの当たり役』と言うのには抵抗のあるレイ・ブレスリン・シリーズの第三弾をウォッチしてきました。シュワちゃんとの濃厚なデート映画だった第一作から、中国市場への忖度ムービーへと変貌した二作目に続き、中国市場を意識した話になっていました。簡単な話のはずが異常に分かりにくかった二作目の反省からか……」。僕ね、「イ・チャンドン監督『バーニング 劇場版』よりも難解」って言いましたからね(笑)。

「……囚われのお姫様を救出しに行く以外にストーリーの無い脚本がひどかったです。看守も監視システムもほとんどない、刑務所って何をするところだったかと根本的なことを考えさせられる悪魔砦を舞台に、多くない敵や味方や囚人がウロウロしながら、たまに出会って殴りあったり撃ちあったり。デイヴ・バウティスタがひょっこり現れたりするのを楽しむ映画でした。前作ではパワハラえこひいき上司として好感度の低かったブレスリンですが、今作では無駄に残虐でいまいち好きになれませんでした。

マックス・チャンのアクションは素晴らしかったですが、『大脱出』という作品でなくてもよかったのではないかと思いました。次回作あたりではデイヴ・バウティスタ主演になりそうだと思います」ということです。はい、皆さん、ありがとうございました!

■何も知らないで見たらそれなりに驚ける第1作目

でもね、なんだかんだで『大脱出3』を見に行くという行為をキャッキャと楽しんでいる感は伝わってきましたね。私もそうですよ。今回私も、T・ジョイPRINCE品川で2回、見てまいりました。

お客さんは、わりとスタローン好きそうなおじさんたちと、あとは僕が見た回は、中学生男子4人組チームぐらいがね……でも出ていく時には、若干しょんぼりした空気も漂ってなくはなかったですけども(笑)。ということで、一応『ロッキー』『ランボー』『エクスペンダブルズ』に続き、我らがシルベスター・スタローン第四のシリーズ物となった『大脱出(Escape Plan)』シリーズでございます。それでいいのか?っていう気もしなくもない、という感じですけども。

どんなシリーズなのか、ざっくりとおさらいをしておくと……一作目、2013年、僕は前の土曜日にやってた番組時代、2014年1月18日に評しましたが。まあスタローンは、セキュリティ・コンサルティング会社をやっているレイ・ブレスリンという脱獄の名人役。いろんな刑務所に身分を隠して入っては脱獄をして、セキュリティの穴を指摘するという、本来はそういうプロ、というキャラクターですね。「本来は」っていうのはつまり、二作目、三作目と、どんどんとその設定はいかされなくなってくるからなんですけど。

まあとにかくその脱獄のプロ、レイ・ブレスリンさんが、最先端の厳重な警備が凝らされたという私設刑務所、通称「墓場」というのに例によって入ってみたら、実は何者かによる罠で、マジで出られなくなっちゃった。さあ、どうする?っていうところで、アーノルド・シュワルツェネッガー演じる謎の男と組んで、大暴れ!っていうね。要は『エクスペンダブルズ』から来る流れ、80年代、90年代のアメリカ肉体派大味アクション映画リバイバル的なノリで、今度はスタローンとシュワがサシでデート! というね。そのあたりがメインの企画だった。

加えて一応一作目は、その墓場という架空の監獄も、中盤で、何も知らないで見た状態ならそれなりに驚ける、ある大仕掛けがひとつ用意されていたりする。まあ、宣伝でそこをモロにネタバレしちゃっててさすがにそれはどうか?っていうのはありましたけれども。まあ、ジャンルムービーとして十分楽しめる一作ではあったと思います、一作目『大脱出』。で、『2』『3』を見終えた後に、今回僕はまた前作を見直したんですけども、一作目はやっぱりちゃんと、それなりにお金もかかっているし……みたいな感じがありましたね。問題は、その二作目以降でございまして。

■稚拙すぎて逆に難解! な2作目

スタローンは、一作目『大脱出』の後、2015年の『クリード』で、役者としての格が再び大きく浮上した後のはずなのに……やっぱりアカデミー賞よりも、ラジー賞が似合う男なのか?っていうことで。その『大脱出2(Escape Plan 2: Hades)』。とにかく……これはいまでも公式書き起こしが残っています、僕は今年の4月12日に評したばかりです。日本では今年3月に公開、アメリカで去年の6月に公開されました。

とにかく、一気に全てのつくりがチープに……この手の映画としても目に余るほど、雑でチャチくなってですね。中国資本が入って、実質ホアン・シャオミンさん主演。まあ、それはいいとして、スタローンは15分くらししか出てこないし……ちなみに同じく2018年の『バックトレース』という作品では、さらにその省エネスタンスが加速しててね。ほとんど全編ホワイトボードの前にいる!っていうね、スタローンでしたけども。

プラス、そのスタローンが演じるこのレイ・ブレスリンというキャラクターが、皆さんもおっしゃってる通り、はっきり“感じが悪い”というね。パワハラ上司という。「お前、嫌いだし、クビ」みたいな感じで(笑)、本当に感じ悪かった。で、SFチックな設定も含めて、とにかく全てが……僕はね、「小学校4年生が考えたようなストーリー」って言いましたけど。全てが、稚拙すぎて飲み込みづらい。逆に難解!という、まあ珍作中の珍作だった、ということですね。

まあ、いま振り返れば……オープニングトークでもね、山本(匠晃)さんとキャッキャ言いましたけども、いま振り返れば、「おまんじゅう、からの電気ビリビリ!」とかですね、「バトルの勝者には、漫喫風レクリエーションルームで2時間休憩の特典!」とかですね、50セントの「俺、3日徹夜してるぜ!」とか、記憶に残る突っ込みどころも多くて、まあそれなりに楽しんだ、という風にも言えなくもないような気がしなくもない、という『2』でございました。

ちなみにその二作目の評の中でも紹介しましたけど、スタローン自身が、ご自身の公式Instagramで、「『大脱出3』、いま作ってるからみんな楽しみにしててくれよな!」って告知していて、それについてのファンのコメントで「『2』よりはいいことを願っています……」というのがあった。それに対して、スタローンの返信が、「うん、俺もそう思う! 『2』はひどすぎた!」っていうね(笑)。豪快なことを言い放っていたという。日本ではその週に『2』が公開されているのにこの言い草!っていうね。

■監督のジョン・ハーツフェルドはスタローン旧知の仲

ということで、まさにその『大脱出3』、アメリカでもこの7月に公開されたばかりなんですが。『2』の公開前にはもう制作がスタートしていたということで、非常に短いスパンでつくっている。で、撮影期間も、わずか4週間だそうです。非常にだから、低予算ですね。監督は、一作目のミカエル・ハフストロームから二作目のスティーブン・C・ミラーさん、そこから今回、ジョン・ハーツフェルドさんという方にバトンタッチしています。

このジョン・ハーツフェルドさん、今回は、『大脱出』シリーズ全作の脚本にクレジットされているマイルズ・チャップマンさんと共同で、脚本にもクレジットされています。で、この方は、実はほとんどスタローンと同世代で。資料によれば、なんとマイアミ大学に在学してた当時、スタローンと出会って意気投合して。一緒に舞台公演を打ったり、挙句の果てには、ジョン・ハーツフェルドさんの下宿に、スタローンが居候してた時期もあった。で、その頃の思い出を、2人してキャッキャウフフとインタビューで語っていたりする。

そんぐらいの古い付き合いの方なんですね。で、映画監督・脚本家としては、古くは1983年。あの、ジョン・トラボルタのキャリアを一旦どん底まで落としてしまったひとつのきっかけとも言われる、『セカンド・チャンス』という作品とかですね。あとは90年代に入って、シャーリーズ・セロンの本格映画デビュー作としても知られる、『2 days トゥー・デイズ』という96年の作品とか。あとは、デ・ニーロも出てるいる『15ミニッツ』という2001年の作品とか。ポール・ウォーカー主演の『ボビーZ』とか。

あと、いちばん近作で言うと、2014年の『ゲットバッカーズ』という……これ、スタローンも出ていて。スタローンがやっぱり、異常に感じ悪い役なんですよ。本当にこのね、『ゲットバッカーズ』のスタローン、本当に感じ悪い!(笑) まあ、群像劇なんですけども。特にこの『2 days トゥー・デイズ』という96年の作品以降は、大きく言えば、タランティーノ・フォロワーっていうことなのかな? タランティーノ・フォロワー的な、癖のある登場人物が入り乱れてリンクしていく、っていう、ちょっとノワールテイストのコメディ群像劇。ちょっと、負け犬たちがもう1回立ち上がる、というような話が多いんですけども。そういう作品を多く撮ってきた方です。ジョン・ハーツフェルドさん。

あとは、テレビドラマとかテレビ映画で活動してきて、エミー賞を取ったりノミネートされたりもしている、というような方なんですけども……ここまで説明してきておいてなんですが、今回の『大脱出3』は、そういうジョン・ハーツフェルドさんのこれまでのキャリアとか作風とか、正直あんまり、関係ございません! ないと思います、はい。まあ、スタローンがたぶん、頼みやすかったんじゃないかな、という風に思うんですけどね。

さらに言えば、前作『大脱出2』とも、今回の『3』、ほとんど繋がっていません! 前作、出演者は一部続投はしていますが、『2』をご覧になった方は、前作のラストで、最後スタローン、レイ・ブレスリンたちが、裏で糸を引いている黒幕に対して、「お前らに宣戦布告だ! 首を洗って待っていろ!」みたいな感じのフリをしましたよね?……今回、一切回収されません! さっき言ったような二作目、そのSF的なテクノロジー感とも、あるいは一作目の、その80年代、90年的な豪快さとも、今回の三作目は、全く違う作品になっております。

■オハイオで始まり、オハイオの近所(らしき場所)で話が進む

どうなっているのか? 全体に薄暗くて陰鬱。予算感もはっきり、『2』よりもさらにかかってない感がモロに出てしまってる。ただただ地味に、どよーんとした一作となっております、今回の『3』。順を追っていきますね。まず冒頭ね。冒頭からして本当に、「ああ、これは今回も、ダメかな……」って(笑)。冒頭2分強ぐらい、延々と、特に何の説明もなく、オハイオ州のマンスフィールドという、ちょっと寂れた感じの工業都市の風景が、非常に散文的な……というか、ぶっちゃけ散漫な編集テンポで、ポロポロポロポロと映し出されていく、という感じなんですね。

その後に続くドラマパートとの繋がりを考えれば、まあたぶんそのオハイオ州マンスフィールドが、寂れた地域だ、っていうことを示したいんだろうけど……でもなんか、ドキュメンタリー的な見せ方なのかな?って思いきや、途中でなぜか、たとえば急に、空軍予備役募集の看板を、意味ありげに見てる青年。で、その看板を見て、なんならカットバックして、切り返しでなんかこう、うなずいている。じゃあ、この人がなんかで出てくるのかな?って思ったら、その青年は、二度と出てこないんですよ! 「なんだ、いまの劇映画的な演出は?」みたいなのが出てきて。

とにかくね、タッチとしても画としても中途半端な、そのオハイオ州マンスフィールドの路上の日常風景が、2分強……結構長いですよ。なんの説明もなくの2分強ですから、結構長いんですけども。で、そこから、中国の大企業の社長の娘が、オハイオでなんか事業を始めようとしている。で、この大企業っていうのが、どうやら一作目の墓場含めて、世界中にその私設監獄を売りつけている、という設定なんですが。まあ、その娘が、オハイオで事業を始めようとした矢先に、誘拐をされてしまう。だからその娘のお父さん、世界的な大企業である中国の会社の社長も、オハイオの警察に来て、その後も誘拐犯と電話したり……あるいはその誘拐犯からの電話に出る、出ないで、オハイオ警察のおじさんやおばさんと、モメたりするわけです。「プルルルル……」「ちょっとあんた、電話出なさいよ!」「いや、ちょっとこれは『出るな』って言われてるんで……」「出なさいって!」みたいな。

そういう揉め事を、オハイオ警察……アメリカの片田舎で、一応社長も、「なんか他の地域から、応援とか呼ばないでいいんですか?」みたいなことを言ったりしてるんだけど。でね、ここで出る疑問は、「……なんでオハイオ?」っていうところなんですよ。お話的にはその後、オハイオである必然性は全くないんですよ。全然オハイオとお話、関係ないんですよ。なんだけど、なぜかオハイオでさらわれて、オハイオ警察ですったもんだしてるわけ。

これは要するに理由がございまして。今回のメインの舞台となる悪魔砦(デビルズ・ステーション)というこの私設刑務所のロケを、オハイオ州マンスフィールドにある、マンスフィールド救護院という古い跡地。ここはあの『ショーシャンクの空に』とか『エアフォース・ワン』の、そういう刑務所描写でもロケで使われた場所として有名なんです。そこでロケをしているからなんですね。ぶっちゃけたぶんこの映画、全部オハイオで撮ってます。

なので、たとえばブレスリンたちのオフィスが、一応ロサンゼルスって言ってんだけど、なんか照明がものすごく部分的にしか当てられてなくて、明らかにガランとした倉庫なんですよ。俺、最初に娘が買付けに行く、あのフロアで撮っていると思う(笑)。たぶん。という感じで、全体をオハイオでロケしてるからなんですね。だからオハイオ警察なんですけど。まあ、それはいいんだけど、一応その刑務所が、設定上は「ベラルーシから何百キロ」みたいなことを言ってるわけです。

すごく離れたところ、奥地にあるということになっているんだけど、その話が進行していくに従って、先ほどのアメリカのオハイオで誘拐された娘とか、あと、後の場面でロサンゼルスである人が誘拐されるわけですが、その誘拐された人たちが、次のシーンではもう、その悪魔砦にいたりする。なのでこれ、時間間隔的に言っても、観客が感じる距離感も、「これ……やっぱりオハイオにあるんじゃないかな?」(笑)。「これ、さらわれた場所ってたぶん、近所ですよね?」っていう距離感に、観客も感じる、という感じなんですよね。

■アクション映画としては見どころも確かにある。ただそのぶん……

で、とにかく金持ちの家のご子息がさらわれちゃって、悪漢はその企業の、金になる情報を引き出そうとする。これ、やっていること、基本的な話の構造は、『2』と同じなんですよ。なんだけど、今回の『3』のキモは、その悪漢っていうのが、一作目、レイ・ブレスリンを裏切って、最終的に死の制裁を受けることになる、あるキャラクターの息子、ということなんですね。まあ、一作目の悪役の親族が出てくるっていうことだと、『ダイ・ハード3』とかね、そういうような構造ですよ。

で、これね、演じているデヴォン・サワさん。これ、『ファイナル・デスティネーション』の主演とかやっているような方ですけども。一応フォローしておくと、このデヴォン・サワさんは、とっても印象的な力演をされていると思います。いい演技するな〜!って思いました。まあ、ちょっとジェラルド・バトラーとメル・ギブソンを混ぜたようなね、ちょっと冷酷で狂気を秘めた、でも熱情も込もっているような、いい演技をされていると思います。デヴォン・サワさん。

あとね、いいところで言うと、前作のホアン・シャオミンさんから、今回はなにしろ、マックス・チャン、中国側のカンフー寄りアクションヒーローの格が、上がっていますから。このマックス・チャンが終始、異常なまでのかっこつけを崩さない。登場シーンの無意味なまでのドレスアップっぷり(笑)なんかも含めて、マックス・チャンの、アクションも含めた美しさを存分に堪能する、愛でられる、という意味では、『2』より楽しめた、という方がいてもおかしくないとは思います。「マックス・チャン映画として」ということなら。

あと、先ほどからおっしゃっている方も多かったですけども、スタローンやデイヴ・バウティスタの出番、アクションシーンも、『2』よりは大幅に増えています。まあスタローンは今回、正直レイ・ブレスリンというより、終盤はほぼランボーですけどね。ほとんどランボーになっていますけども。たとえばデイヴ・バウティスタさんは、これも強力な火器を持って、「あれ? いつ中に入ったの?」っていうぐらい(笑)敵陣を堂々と、弾を避けもせずに正面突破していく、というスタイル。これ、前回とやっていることは同じなんですけども。今回はデイヴ・バウティスタ、肉弾格闘があるわけですよ。

しかも、お相手は、ずっとこのデイヴ・バウティスタのスタントダブルを務めてきた、ロブ・デ・ フルートさんという方なんだそうですね。なので、そういう意味では、アクション映画ファンとしては、そういう見どころもたしかにあるっちゃある。そういう意味では、前作よりは見ごたえが増している、と言えなくもない。ただですね……やっぱり『2』よりも、わかりやすくバカっぽい荒唐無稽な世界観でなくなった分、なまじハードでダークなトーンになった分、やっぱりお話としての、そして作品の作りとしての、雑さ、稚拙さっていうのが、今回は単に、イライラの元になっていると言いましょうか。

■この刑務所特有のシステムや仕掛けは一切ない。話を引っ張るのは「不毛な言い合い」

まずなによりも、せっかくの『大脱出』シリーズなのに、今回の悪魔砦、先ほど言った「近いところにあるな」っていう感じもありましたし……あと、アビゲイルっていうブレスリンさんの恋人でありビジネスパートナーがさらわれるんですけど、さらわれたところまではいいとして、「悪魔砦にいる」って別に言っていないですよね? 大慌てで荷物を積み込んで飛行機に乗っちゃって。「いいのかな?」って思うんだけども。まあいいや。

で、今回の悪魔砦。セリフで「迷宮のようだ」とか「地獄のようだ」なんてことを言うだけで、はっきり言って、ただの荒れた廃墟を数少ない人数がウロウロしてるだけにしか、やっぱり見えないわけです。これ、メールでも多かったですけど。で、その刑務所特有のユニークなシステムとか罠とか、そういうのが一切ないから、レイ・ブレスリンがそれを破っていく、という作品上のカタルシスもない。どころか、明らかにこの刑務所っていうか牢屋みたいなところ、ザルなんですよ。全体地図も、最初から入手できちゃってますし。

なんなら、地下道の抜け道があるっていうことも、ネットなんですか? なんかいきなり図がボーン!って出てきちゃって。で、あまつさえこの通っていく下水道にですね、みなさん、見逃さないでくださいよ……グラフィティが描いてあります! 「誰でも入れるんかーい!」っていうね。「キッズかーい! グラフィティかーい!」みたいな。で、一応地雷原があったりもするんだけど、その地雷原も、走り抜けられます! 死にません! まあ、「たけし城」レベルですね。

あと、警備もものすごく甘くて……『2』も甘かったですけど。俺、「巣鴨学園の方がまだハデスより厳しいわ!」って言ってましたけども。『3』はより甘くて。服とか全部そのまんまで(牢に)入れてるんですよ。なにを隠しているかも調べないで入れちゃうし。あと、警備の皆さんがですね、だいたい迂闊すぎで。なんか異常があると、すぐに鍵を開けて中に入るんですよ。で、やられるんですよ。「うかつに中に入ってやられる」っていうくだりが、クライマックスでさえ続くんですよ。「バカなの?」みたいなのがあって。

とにかく刑務所の仕掛けっていうのを見せ場にはしていないし、なんなら予算的にできなかったのかもしれません。この時点で『大脱出』シリーズとしてはダメ、失格だろうって思うんですけども。じゃあ、どうやってお話の起伏を持たせるか、どうやってお話を引っ張っていくかっていうと……「登場人物同士に不毛な言い合いをいっぱいさせる」というところで話を増やしてる、ということですね。「おい、作戦通りにやれよ」「嫌だ!」「シット!」とか言って。「シット!」じゃねえよっていうね(笑)。

「こいつ、殺しちゃおうぜ」「いや、うーん……」「でもやっぱり殺しちまおうぜ」「いや……」とかね。こういうやり取りとか。あとね、俺が呆れたのは、「お前ら、ひょっとしてデキてねえ? ちょっといま、じっと見つめてたけど。デキてねえ?」みたいなことを言うくだりとか(笑)。とにかく、全編にイラッとさせられる言い合いが満載、ということになっております。あと、悪漢たちの脅しも本当に単調で。基本的には「殺すぞ!」しか言わないんですよ。「殺すぞ!」しか言わないから、なんかやらせても結局ダメ、みたいな。めちゃめちゃ単調なことになっている。

■自分がスタローンに何を求めているのか分かった。それはやっぱり、「いい人」

で、その不毛な言い合いが全編に敷き詰められていて、その行き着く果てが、クライマックス。当然、悪漢側は父の敵を取ろうとしているんですけども。で、こちら側もやっぱり、復讐に燃えてるスタローンの一騎打ち。そこにおける、このレイ・ブレスリンさん、あまりといえばあんまりな、「なんで急にそんな話をしだすの?」的な、感じ悪さ全開トークを急に始めるわけなんですよ。なんで自分のお父さんの話とか急にするの?っていうね。「オヤジはお前のこと嫌ってたぞコラァ! 来いお前、なんだそれがパンチか? コラァ!」みたいな。感じ悪い……。

『2』でもそうでしたけど、スタローン史上、異例なまでの感じ悪いキャラクターになっている。あと、意外とはっきり見せるバイオレンス描写込みで、非常に後味が悪いわけですね。そのくせラスト、デイヴ・バウティスタとのホモソーシャルなウヒウヒ感だけは残る。「お前ら、なにウヒウヒいってるんだよ? そんな事態じゃねえだろ?」っていうね。さらにエンディング、たった1人、完全に忘れられて置き去りにされた、あるキャラクター。観客も忘れているんですよ。「ああ、ああ。こいつ、いたな」みたいな。そいつが置き去りにされて、悲惨な目にあってる姿を映し出して、終わるんですよ。「えっ……どんな気持ちになれと?」っていうね。

で、最後にね、先ほどオープニングでも流れた『007』のテーマソング風の曲が流れて、クレジットなんですけども。そのクレジット、字が『ロッキー』ばりにドーン!って大きいのが出るんですけど、そこで出るのが、「プロデューサー!」とか、「コ・プロデューサー!」とか、そっちの、「役職の名前」のほうをでっかく出すっていう……ちょっと、いままで見たことないタイプのかっこ悪さ。「なんなんだろう?」っていう。

ということで、たしかにスタローン、マックス・チャン、それぞれの見せ場っていうのが増えたという意味では『2』よりはいいんですけど、スタローンとマックス・チャンのアクションの在り方は全然違う、世界観も合っていないんで、まあチグハグなんです。やっぱりそれは、それぞれで見たいなっていう。それでいて『2』のようなチャームもないし……僕はやっぱりね、自分がスタローンに何を求めているのか、改めてわかりました。

やっぱり、「いい人」を求めているんですよ。こんな嫌なやつのスタローンを見たくない、っていうのもあって。正直、『ランボー5』が心配になってくる出来ではございました。が、やはり『大脱出』を、『1』『2』『3』とこうやって見てきて、みんなでこういう文句も含めてキャッキャするって……完全に元は取ってね? ぜひぜひ劇場でウォッチしてください!

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画は『蜜蜂と遠雷』です)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

(以下、ガチャパートにて)

『大脱出3』について1個だけ補足。今回の『大脱出3』における、(『2』の)「おまんじゅうビリビリ」に匹敵する1アイテム、言い忘れてました……「『レイ・ブレスリン』と名前がでっかく書かれたUSB」ですね!

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