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赤ちゃんを包む「羊膜」で視力が回復

森本毅郎 スタンバイ!

10月7日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)では、眼の治療に使われる羊膜移植について取り上げました。

羊膜移植とは、お母さんの子宮の中で、赤ちゃんを包んでいる「羊膜」=羊の膜と書くが、その羊膜を、「眼の病気やけがの治療」に使うものです。国内では1990年代から東京歯科大学市川総合病院や、京都府立医科大学などで臨床研究が始まり、2014年には保険適用なりましたが、認知度が低いのが現状です。

★羊膜とは?

羊膜とは、妊娠した時にできる胎盤の一部で、赤ちゃんを包み、 羊水を保持している、半透明の薄い膜のことです。そんな羊膜は、細胞とコラーゲンやラミニンなどのタンパクからできていて、 血管を含まない半透明の薄い袋状の膜です。

★羊膜が医療の現場で使われる理由

なぜ、この羊膜を使った移植が医療の現場で行われるのか。羊膜は、母体からの拒絶反応を抑えると考えられている組織なので、拒絶反応が起こりにくい。また、炎症反応を抑えて、傷の修復を助ける働きがあることも認められています。さらに、薄くて伸縮性に富んでいることも特徴です。

そんな羊膜ですが、すべての妊婦さんの羊膜が使われる、ということではなく、帝王切開をうける妊婦さんに同意を得て、提供してもらった羊膜を冷凍保存し、使うというもの。羊膜を滅菌して洗浄し、移植用に切り出されます。1人の妊婦さんから提供された羊膜で、20人分から30人分の患者さんに移植可能な羊膜を採取できます。

★羊膜はどんな病気に使われるのか?

羊膜は、やけどを覆って皮膚を修復する治療や手術後の臓器の癒着防止に使われてきましたが、1995年頃にアメリカで眼の治療に使われ始めて広がりました。日本では2003年に高度先進医療に認定され、2014年には、治療が難しい目の病気を
対象に保険適用となりました。

日本角膜学会によると、現在、およそ60の医療機関で行われています。眼の病気といってもいろいろありますが、現在適応になっている病気は、黒目の部分=角膜と、白目の部分=結膜など眼の表面に起こる病気です。

まず、黒目=角膜ですが、光を通す透明な膜で覆われていて、この角膜が何らかの原因で傷ついて透明性を失うと、眼球に光が入らなくなり視力低下や失明が生じます。・角膜が濁る病気はたくさんありますが、特に眼球とまぶたがくっついてしまうような瞼球癒着(けんきゅうゆちゃく)という病気があります。

このような病気では、手術をしても再びくっついてしまったり濁ったりして、従来の治療法では、治すのが難しいとされる病気でした。このような眼の病気の治療のために登場したのが羊膜移植です。羊膜には血管がなく透明であるため、角膜への移植材料として適しています。

また、炎症を抑える働きがあることから、術後の角膜の混濁や癒着を防止できます。
さらに、傷の修復が早まることも確認されています。加えて、羊膜は弾力性に富むため、眼球にきれいに縫いあわせることが容易という特徴もある。瞼球癒着以外の角膜の病気では、角膜の傷が治らない病気の「角膜上皮欠損」や、角膜に穴が開いてしまう「角膜穿孔」、洗剤やパーマ液、コンタクトレンズの洗浄液などが誤って目に入ってしまい角膜を傷つける化学物質による外傷にも有効です。

★翼状片には羊膜移植が有効?

白目と黒目に関わる「翼状片(よくじょうへん)」という病気も適用となります。白目の表面を覆っている結膜が、目頭側から黒目部分に三角形上に入り込む病気で、日常的によく見られる眼の病気の1つです。

翼状片は、50歳以降の中高年に見られることが多く、屋外で活動する人に発症しやすいので、紫外線との関係が指摘されていますが、原因はわかっていません。症状の進行はゆっくりですが、白目に増殖した部分が盛り上がってくると、異物感を感じるほか充血しやすいため、外見上の悩みも出てくる病気です。さらに翼状片が黒目の部分に侵入するに従って、角膜が引っ張られて乱視が出てきてしまい、視力がだんだん低下してきます。そして翼状片が動向を完全に覆ってしまうと、視力が失われることもあります。

今のところ、翼状片の進行を抑える薬はないため、手術で切除して治すしかありません。ただ、翼状片は手術しても再発しやすいことがわかっていて、様々な予防策を講じても再発をなん度も繰り返すことがあるのですが、この再発翼状片に対して使われているのが羊膜の移植手術です。

方法は、翼状片を目から切り離して、そのあとに羊膜で作ったシートを白目の部分に貼り付ける、というものです。再発予防にも結びつきます。このように、羊膜移植の対象となる眼の病気は、様々あります。

★羊膜移植の課題は?

羊膜そのものが眼の表面で増殖したり、再生したりするわけではなく、あくまでも、その足がかりにすぎないのです。患者さん本人の黒目や白目の細胞が残っていなければ、この治療は成功しません。また、羊膜は半透明の膜なので、黒目の部分をすべて羊膜で覆ってしまうと視力が下がります。

ただ、今後期待できるのがiPS細胞との組み合わせです。iPS細胞から作った黒目の部分を羊膜移植と組み合わせることによって、さらに眼の病気の治療が発展する可能性があります。

一方で、眼以外の病気でも羊膜の活用が考えられています。例えば、富山大学では、羊膜を乾燥させて保存しやすくして、人工皮膚として様々な部位のやけどやけがの治療に使う研究を進めています。

まずは、羊膜移植の認知度をもっと高める必要があります。そのためには、眼科のすべての開業医さんに羊膜移植を知ってもらうことが何より大事です。眼科の開業医さんに勉強会で羊膜移植を“徹底周知させる必要”があります。患者さんは、まずは眼科の開業医さんに診てもらうのですから。そこで正しく次の専門医を紹介されると、患者さんは正しい治療を受けることができます。

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20191007080130

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