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武田砂鉄「いちいち、わざわざ、を大事に」

新番組「ACTION」全パーソナリティ・ロングインタビュー
金曜パーソナリティ:武田砂鉄


「ACTION」金曜日パーソナリティはフリーライターの武田砂鉄氏。政治や社会、芸能や音楽など、幅広いテーマを批評やエッセイで取り扱ってきた氏に、これまでのラジオ遍歴や新番組への抱負を語っていただきました。

(取材・文)高木”JET”晋一郎
(撮影)中村彰男



小学校の頃から半ば強制的にラジオを

── 新番組「ACTION」の金曜パーソナリティに就かれての率直なご感想は?

新番組が始まる前ということもあって、まだ何の輪郭も見えない状況なので、今のところ、実感は無いですね(笑)。番組が始まってしばらくしてから、その輪郭が徐々に見えてくるんだと思っています。ただ「TBSラジオのパーソナリティをやる」という事実に対しては、とにかく感慨深いです。TBSラジオで番組を始める多くの方が「自分はTBSラジオをずっと聴いてきて……」とおっしゃると思うんですが、自分はそれよりもちょっと上のレベルで聴いてきたって自負を秘めておりまして……。

── それを具体的に教えて頂けますか?

実家住まいの頃、朝、テレビを見るのが禁止されており、とにかくTBSラジオを流しっぱなしになっていました。アナログでチューニングするタイプのラジオだったので、ツマミをいじるとノイズが入るため、ダイヤルが「954」に固定されていた。それもあって、小学校の頃から半ば強制的にTBSラジオを聴くようになり、朝は「榎さんのおはようさん~!」や「生島ヒロシのおはよう一直線」、それから「森本毅郎・スタンバイ!」を聴きながら朝ごはんを食べ、支度をしていた。何年か前、八代亜紀さんにインタビューした時に、「榎さんのおはようさん~!」の中の1コーナーだった「八代亜紀の演歌特急便」を聴いていましたという話をしたら、とても喜んでくださって(笑)。

── その時の経験がインタビューの役に立ったと(笑)。

高校時代は弱小バレー部のキャプテンだったんですけど、僕があまり部活が好きではなかったので、週休二日制を導入した上に、時折、雨を理由に練習を中止にしていたんです。体育館だから天候は関係ないんだけど、「大事をとって」って理由で(笑)。帰宅部ぐらい帰りが早い日も多く、4時前には家に着いちゃう。なので、「荒川強啓 デイ・キャッチ!」を聴いていました。「TBSラジオを聴いてました!」というか、TBSラジオを聴かざるを得ない状況にあったんです。

── 武田さんのご著書「紋切型社会」の一章「禿同。良記事。」も、伊集院光さんが「深夜の馬鹿力」で話されたエピソードから広がっていきますね。

僕らの世代で「深夜の馬鹿力」を聴いてきたっていうのは、「うんうん、だよね」ってくらい「世代あるある」だし、自分も例に漏れず、120分のカセットテープに録音して、自転車通学の間にそれを聴きながら登校していました。自転車を漕いだまま、A面とB面を入れ替えるスキルも身につけました(笑)。

それから自分は、大学の頃にヘヴィメタル専門誌「BURRN!」に寄稿したのがこの仕事を始めたきっかけだったぐらいヘヴィメタルが好きなので、音楽評論家の伊藤政則さんがパーソナリティのラジオ「ROCKADOM」(FM-FUJI)を欠かさず聴いていました。高校の頃はハガキを投稿して、リクエストが読まれた時の放送は、未だにカセットに録って手元にあります。

── その意味でも、情報源の一つとしてラジオは大きなファクターであったと。

そうですね。僕が日頃書いているテレビや芸能人についての文章も、その頃に植え付けられた価値観が大きく影響していると思います。

── テレビで活躍する芸能人批評や、テレビ番組批評のようなトークも、ラジオでは多く語られていますし、ラジオはテレビというメディアへのカウンター的な側面もありますね。

高校生時代の日課って、自転車での登下校中に伊集院さんのラジオを繰り返し聴いて、その途中でコンビニに立ち寄って週刊誌のコラムを読む、というものでした。特にナンシー関さんのコラムが好きで。その頃に培われた、テレビや新聞、あるいは「偉い大人」っていう存在に対してツッコんでいく考え方が、自分の文章の基軸になっていると思っています。だから今、色々な媒体で書かせてもらっているメンタリティと、「チャリ通」の頃のメンタリティは、ほぼ変わってないと思います。



「いちいち」とか「わざわざ」って感じを大事にしていきたいんです

── では、新番組「ACTION」の「やってみた/やってみたい」というコンセプトについてはどう考えられていますか?

個々のパーソナリティが、何かに対してアプローチしていくというコンセプトは挑戦的で楽しみです。頭の中の意識にあるのは、やっぱり、先程話に出た「紋切型社会」の中で引用した伊集院さんの「片方だけ落ちてる軍手の、もう片方を探す」というエピソード。それって行動としてはスゴく「無駄」だと思いますが、でも、そういう「こんな事やらなくてもいいだろ」っていう事にこそ面白さも醍醐味もあるはずなんです。

── 無駄の中にある美しさ、というか。

今って、何かを解説する時に、3つくらい箇条書きにして、分かりやすく解説するようなモノが求められていますよね。それによって、解説された側も全てを理解できたような気がしてしまう。でも、そもそも3つの要素だけにしちゃっていいんだろうかと考えるべきだし、物事には、本当はもっと複雑で様々な要素があるはずですよね。

── しかし単純化して、ざっくりと切り取ることで、ある種の思考停止をさせられてしまう。

特に平成の後半は、すぐに分かりやすい回答を求める傾向が強まってきたと思います。自分の文章はそういうタイプでは無いので、しょっちゅう「いちいちうるさい」なんて言われるんですけど、細かいことが「無駄だろ」や「面倒臭いよ」って思われる状況ってどうなのよ、って思う。「いちいち」とか「わざわざ」って感じを大事にしていきたいんです。だから、自分の担当する日は、いろんな選択肢を考えたり、選択肢を増やしたり、こういう考えもあってもいいんじゃないかな、っていう部分を出していきたい。今回のパーソナリティ陣の顔ぶれをみても、いちいち面倒臭そうな人たちだと感じるので(笑)、誰が何をどう言うのか、そういう部分も楽しみです。

── 今回のパーソナリティ陣では、木曜の羽田圭介さんとはご面識があるそうですね。

羽田さんとは僕が出版社に勤めていた時からの知り合いなんです。彼の「走ル」(2008年)という自転車小説が出版された後、一緒に東京中の書店を自転車で回り、自著の宣伝をするってプロモーションをしたんです。でも、ある書店の控え室に入り、サイン本を書いてもらおうとすると、そこに積み上がっていたのは、羽田さんの小説ではなく、秦建日子さんの小説だった。さすがに血の気が引きましたね(笑)。羽田さんのそういう時期に知り合ってるので、2015年に「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を獲って以降、テレビで頻繁に見かけるようになった状況にいまだに慣れないし、今回、この番組でも木曜の彼から金曜の自分にバトンタッチされるのは、不思議な気持ちです。

── 武田さんにとって「書く」ことと「ラジオ」の違いはどう考えられていますか?

これまで様々なラジオ番組に出てきて、根っこは近いものがある、と感じてきました。ラジオで喋るのは、雑誌でコラムを書くのにも似ているのかなと。10分や15分という決められた時間の中で「イントロがあって、本題に入って、決着らしきもの見つける、いや、やっぱ見つからない……」という流れは、頭の中の作業としてもコラムと遠くない。自分は思いつきで文章を書き始めることが多いんですが、その思いつきを本題とどう繋げていくか、どう展開させていくかを書きながら悩んだり楽しんだりしている。ラジオも一緒で、話の接続が番組やパーソナリティなりのカラーになると思うし、ゲストの方とどう話を膨らませていくかという部分も、番組の面白さに繋がると思う。それが作為的に出来るかどうかは分かりませんが、その気持ちは持っていたいと思いますね。

── 呼びたいゲストなどはもう想定されていますか?

出版業界にいる人間なので、新しい物書きの方や、魅力的な本を出している人への感度は高いと思っています。そういう人に話を聞いてみたいですね。それって、企画としてはありきたりかも知れないけど、内容紹介にとどまるのではない、「いつもの感じ」じゃない話ができればと。「モノを細かく考える」という部分でも、ラジオと本の親和性は高いと思うので、そこで相乗効果も生まれるんじゃないかな、と。

── 武田さんは金曜日という週の終わりを担当されます。

「デイ・キャッチ!」は社会問題を積極的に扱ってきた番組なので、番組が終了するというニュースが流れた時に、次の番組ではそういった方向性はどうなるんだよ、という意見がSNSでも多く見られたし、自分もまずそう思いました。「デイ・キャッチ!」のリスナーは、一日に起きた社会的な事象を、この番組で振り返り、考えてきたはずです。自分は新パーソナリティの5人の中では、積極的に社会問題について書いたり、論じたりしてきたので、一週間に起きた社会的事象に対して、週の終わりの金曜日に考え、リスナーの皆さんと一緒に議論したい、と思います。これから、オリンピックも含めて、社会的に大きな事象が増えてくるし、その中でキレイさっぱり健やかな社会がやってくるというよりは、どうもキナ臭い案件が増えてくる気がする。社会で起きていることを、意識的に拾い上げて、話す必要があると思います。週の終わりの金曜日は、そういうポジションの日であるのかな、とも思っていますね。

── 最後に、リスナー層は意識されていますか?

世代というよりは、「ゾーン」を意識しているかもしれません。自分がそうだったように、学校から早めに帰りがちなゾーン、部活が上手くいかなかったゾーン、無我夢中でバリバリ働くっていうよりはどこかしら首をかしげているようなゾーン……そういう人たちとの親和性があるかな、と思っていますね。ラジオというメディア自体、つけた瞬間に必要な情報が端的に入ってくる媒体ではないので、「答えだけを求める人」にはまだるっこしいのかも知れないけど、そうじゃなくて、色々あれこれ考えたり、会話の流れの中で思考したい人には、とても大切なメディアです。子供の頃から長年ラジオを聞いてきた自分にはその自覚があるし、その自分を裏切らないような放送に出来ればと思っています。

武田 砂鉄(たけだ さてつ)

1982年生まれ 東京都出身 大学卒業後、出版社勤務を経て、2014年からフリー。
著書『紋切型社会』では、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。連載も多数で、現在、cakes/女性自身/日経MJ/文學界/すばる/VERY/暮しの手帖/SPUR/SPA! /週刊現代/サンデー毎日/ヘドバン/EX大衆/一冊の本/UOMO/with/フットボール批評にて連載中。
政治から、スポーツ・カルチャーまで広範囲で執筆



4月1日(月)スタート!
TBSラジオ 新番組「ACTION」

月〜金曜日 15:30〜17:30
パーソナリティ:【月】宮藤官九郎、【火】尾崎世界観、【水】DJ松永(Creepy Nuts)、【木】羽田圭介、【金】武田砂鉄
アシスタント:幸坂理加

よりワクワクする明日がくるように。
より楽しい日々が過ごせるように。
よりよい社会になるように。

この番組は、パーソナリティ、ゲスト、スポンサー、リスナーたちが「やってみた/やってみたい」という様々な「ACTION」を持ち寄り、呼びかけ、連鎖していくプラットフォーム。

なんでも受け身じゃつまらない!「やってみたい」を「やってみる」情報エンタテインメントプログラムです。